人事評価制度でワークライフバランスの実現へ 残業を削減し、業績アップと給与アップを達成様

人事評価制度でワークライフバランスの実現へ 残業を削減し、業績アップと給与アップを達成

2018年7月ご導入

株式会社松本鉄工

代表

代表取締役社長 杉原 佑友太 

※インタビューの内容は取材時のものになります。

株式会社松本鉄工

事業内容
ロボットシステムの設計・製作・据え付け・メンテナンス
従業員数
12名
設立
1967年7月1日
所在地
岡山県
課題
頑張る人が正当に報われる人事評価制度を作りたい

    ※インタビュー内容は、2023 年4月20日取材時のものになります。

    人事評価制度を導入された背景を教えてください。

    あしたのチームさんの提唱する人事評価制度が、私の求めている人事評価制度と一致したため導入しました。
    先代社長の時代は、社長がペン舐め査定で感覚的に社員の給与を決めていて、採用も縁故採用ばかりでした11年ほど前に私が社長に就任し、いざ外部からの採用を始めようとした時、求人情報に“給与”をどう書いて良いか分からなくて。(笑)最初の頃は適当に必要事項だけ埋めて求人を始めましたが、中々応募もなく、社内では優秀な人からどんどん辞めていく状態で…。漠然とこれではダメだと感じていました。優秀な人が集まり働き続けてくれるような会社にするためには、“頑張る人が正当に報われる”人事評価が必要だと思ったんです
    私は高校・大学とアメリカにいたのですが、そこで経験したのは『頑張る人が正当に報われる仕組み』でした。例えば、成績が全体で100%だとすると、その内訳は20%がテスト、20%が授業態度、10%が出欠など、評価されるポイントが細かく分けられています。つまり、テストだけ頑張れば良いのではなく、総合的に出来ていなければ良い成績が取れません。授業に出席して積極的に質問し、その上でテストも良い点数を取る。全部頑張らないと、良い成績が取れない仕組みです。また、機会平等という考え方で、成績アップのチャンスは誰にでも平等に与えられ、全員頑張れば全員の成績が上がります。
    社内でもそんな仕組みを作りたいと思い、様々な本を読み調べながら自分でなんとかしようと考えていました。しかし、頭の中で “やりたいこと”を考えられても“仕組み”にすることが非常に難しく、制度を形にして運用を開始するに至らなかったんです。そんな時にあしたのチームさんに出会い、「私のやりたい人事評価はこれだ」と思いました。すぐホームページを調べて問い合わせ、担当者から説明を聞き、その日のうちに導入を決めました。

    人事評価制度を運用していく中で苦労したこと、また、その局面をどのように乗り越えたのかを教えてください。

    制度を定着させるために何をすべきか考えていた時期が一番大変でしたね。
    新しい物事は3週間“サザエさん3回分”過ごすと人間慣れてくると言われています。人事評価制度も、「最初の3週間を真剣に取り組むことが出来れば定着するだろう」と考えていました。
    その重要な3週間に「社員にどのようにメッセージを伝えるか」を考えた結果、最初から評価結果を100%給与に連動することにしました。実際に給与が上がったり下がったりすることを経験しなければ、従業員が人事評価制度に本気になってくれないと思ったからです。
    いざ始めようとすると、顧問税理士や会計士、懇意にしている銀行さん、社内の経理や役員など、それはもう四方八方から反対されました。(笑)「業績が上がらず社員の給与ばかりが上がり続けたらどうするの?」と心配してくれたんですよね。それでも私は、報酬連動をしなければ「頑張りは報われる」というメッセージが弱くなると思いましたし、リスクを承知の上で社員と人事評価制度を信じて報酬連動することに決めました。
    結果、私の狙い通り、社員には頑張れば給与が上がることを実感してもらうことができ、私の本気度が社員に伝わったことで制度をスムーズに定着させることが出来ました。
    肝心の業績と給与のバランスという点においても、運用開始1年後には会社の業績も社員の給与も両方が上がっている状態でした。リスク覚悟の決断でしたが、その状態を見て「このまま続けて大丈夫」という確信を持つことが出来ました。
    業績と評価、すなわち会社の利益と社員の給与が連動できているかは、査定の際にしっかりと確認し、翌期の目標項目や評価尺度(達成基準)も綿密に調整するようにしています。毎年項目を増やしたり減らしたり、内容を変えたりしながら細かく調整するのは大変です。しかし、会社だけが儲かっていても社員に還元できていなければ意味がないですし、逆の場合もいつか破綻してしまいます。社員の頑張りに報い、社員が作り出してくれる利益を給与で還元し続けるための、私の重要な役割として、時間がかかっても細かく計算して評価と業績を適切に連動できるようにしています。

    もうひとつ、これは苦労や乗り越えたというエピソードとは異なるかもしれませんが、残念ながら評価制度の導入をきっかけに離職した従業員もいました。しかし、残った従業員が「給与を上げたいなら頑張ればいいだけなのに。辞めるなんて勿体ないね」と会話しているのを聞いて、導入は間違っていなかったという自信に繋がりました。
    反対や不安もあり大きな決断ではありましたが、評価の報酬連動は従業員の本気度を高め、制度を早く効果的に定着させるために有効だったと思います。

    人事評価制度を導入後、どのような効果を感じていますか?

    人事評価制度があることで従業員は残業を削減しながら給与アップを達成し、私の思い描いていた理想の会社になってきました
    評価項目は「こういう会社にしたい」とか「従業員にこういうことをして欲しい」とか、私が求めている理想を設定できます。評価項目で与えた目標を達成すれば報酬に直結するので、従業員は自然と私が求めていることを意識して仕事をしてくれるようになったんです。
    導入前は残業時間の多い人・少ない人のばらつきがあったので、評価項目に「残業時間」を入れ、尺度の合格ラインには、これまでの月平均残業時間以下を設定したところ、必要最低限以外の残業は減りました。
    以前は残業するほど手当で給与が上がる仕組みでしたが、導入後は残業時間が少なくなるほど基本給が上がるので、自然と残業は減りました。同時に、別の評価項目で会社の業績に関する項目も入れることで、「いかに時間をかけずに、利益を上げていくか」を一人ひとりが考えて仕事してくれるようになりました。結果的に、作業効率が上がって残業が減り、業績も向上しています。

    また、業務改善に繋がった例をあげると「エンジニアの稼働力アップ」が実現しました。これは業績に関する評価項目「粗利率」を、それぞれ職種の仕事内容に合わせた方法で算出していることから得た効果だと思います詳しくお伝えしますね。
    元々、「社内エンジニアがいるのに、期日などの無理を頼みやすいという理由で外注する。その結果、社内エンジニアは手持ち無沙汰になり、当然会社としての利益率は下がる」という課題がありました。それを防ぐために、「営業向け粗利率」の実績を計算する際に、売上から外注を含めた経費を差し引くことにしました。営業メンバーは、少しでも利益がでるよう外注ではなく社内エンジニアへの依頼をするようになり、「外注費」を大幅に削減できました。

    さらに、「社内エンジニア向けの粗利率」では、作業の工数を計算に含めるようにしました。本来は想定工数5時間で依頼された作業を4時間で終わらせたら、その分粗利率が上がるように設定したんです。エンジニアには空いた時間を有効活用してもらうために、「工場整備」をして貰っているんですが、「工場整備の時間」という評価項目も設けて、工場整備の時間=空き時間が多いと評価が下がるように設定しています。つまり、効率よく期日通りに仕上げてくれる優秀なエンジニアは「粗利率」も上がるし、営業からの依頼が増えるので「工場整備」をする時間も無くなりその分更に評価が上がります。工場整備の時間が多いエンジニアも、自ら営業に仕事を取りに行き、人気のエンジニアの手伝いに入ることで、「工場整備の時間」を減らすようになりました。人気のエンジニアは技術力があるので、手伝いに入ることで学べることも多く育成にも繋がっています。これは、思ってもみなかった効果の一つでした。
    様々な経営課題は、人事評価制度で解決できると実感した事例ですね。

    課題解決するために、私がやっていることは評価項目の策定だけです。それぞれの数値を計測して利益に繋がるように尺度として設定しています。一度決めた項目は1年間試し、ダメだったら1年後は見直しをかけて運用を繰り返す。業績と従業員の給与が連動して上がる仕組みになるように、緻密に何度も見直しをしています。一方で、細かい目標内容に関しては現場の意見を頼りにもしています。弊社は溶接など専門職が多く、今から私が勉強しても「とても追いつけないな」と感じることもたくさんあります。現場を熟知している人たちに任せた方が、私も楽ですし、本人たちも納得感を持って取り組んでもらえると思うんです。この方法が弊社の従業員に上手くハマり、業績や給与アップに繋がりました。

    採用面においても、人事評価制度が会社の魅力の一つになっています弊社では、採用時に給与テーブルなど細かい部分まで見せています。報酬連動の人事評価制度があることで、応募者からの給与や人事評価に対する細かい質問にも全て答えられるので助かっています。それに、「定時まで何となく働いて、安定した給与が欲しい」という人は自然と会社から去り、新たに入っても来なくなりました。今では、「頑張って高い給与をもらいたい」と思うような上昇志向の強い人だけが集まった会社になっています。私の理想が徐々に現実化し、嬉しい限りです。

    今後、人事評価制度の運用により実現したいことを教えてください。

    弊社は製造業ですが、今年9月からは「完全フレックス」「リモートワーク」を導入する予定です。人事評価制度の導入以降、ここまでにお話したとおり従業員の給与水準が上がり、新たな採用や残業をしない働き方も実現できたので当初の導入目的は殆ど達成することができました。今後は、従業員の働きやすさやワークライフバランスを実現できることを重視して、会社の魅力を高めていきたいと思っています。
    「リモートワークだと働きぶりが見えないからさぼるかもしれない」「フレックスでだらけてしまうのではないか」と、社内の管理部署からの反対もありますが、私はそうは思いません。
    人事評価制度によって、生産性を上げることで給与が上がるため、生産性が低下することはないだろうと思っています。逆に、完全フレックスであれば社員一人ひとりがより効率のよい時間に集中して業務にあたることが出来ますし、「今日は遅くまで働いたから、明日はお昼から仕事しよう」など、体調やプライベートの予定に合わせて自由に働けます。さらには、残業時間を項目として入れなくて良くなる可能性もあるので、「有給取得率」に変えて有給取得を推進すれば、従業員のリフレッシュもできて、心のゆとりや健康的な生活が送れるようになるので、結果として生産性も向上するのではないかと思います。
    今後、新型コロナウイルスのような緊急事態が起きたとしても、「完全フレックス」「リモートワーク」であれば、変わらずに働くことができるので安心ですよね。「完全フレックス」「リモートワーク」は求人検索の人気ワードでもあるので、会社の魅力を高めるうえで必要な要素だと思います。

    人事評価制度を導入する企業に対してのアドバイスをお願いします。

    弊社は地方のよくある町工場の一企業ですが、同業者や似た境遇の会社さんに人事評価制度の話をすると、「うちには導入できそうにない」「数値化できない」など言われることがあります。しかし、一度導入してみてダメだった点は次に見直して改善すれば良いので、何とかなる!と伝えたいです。始めてすぐに結果が見えてくるものではないので、弊社の場合は1年間試してみて、結果を見てから改善するようにしています。
    他にも、人事評価制度で利益に関する目標があることで「銭ゲバになりたくない」という意見も聞きますが、評価項目の組み合わせ次第では、残業時間を削減したり有給取得率を上げるなど従業員の健康的な働き方の促進もできます。弊社では「残業時間削減」の項目を使うことで、定時に帰ることが当たり前になり、以前より健康的な働き方ができるようになりました。売上や利益だけに限らず、従業員が健康的に余裕をもって働いてもらうために活用することもできるんです。

    「これは数値化できないから、評価項目にはできないだろう」と悩んでいることでも、意外とどうにかなりますし、あれこれ悩まずに一度導入してみて欲しいなと思います。

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      ※デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社
       HRTechクラウド市場の実態と展望2019年度版」より。

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