上司と部下の人事面談。それぞれが気をつけるべき点は?

(写真=Indypendenz/Shutterstock.com)

春は年度をまたぐので、人事評価の面談を実施する企業も多い時期です。面談は社員が設定した目標の進捗状況を確認し、上司はアドバイスや指導を行い、次の目標に向けた課題を可視化するのが目的です。

効果的な面談は社員の成長を促し、上司も目標達成で経営へ貢献。タイムリーな目標修正も可能で、双方が前向きなコンセンサスを得る過程でコミュニケーションも強化できます。

面談での評価は、社員の昇給や昇進を決めるだけでなく、エンゲージメントを高める上でも重要な役割を果たします。

組織も活性化して生産性が向上し、企業業績のアップにも繋がるものです。

今回は、面談で上司と部下が注意すべき点を考えます。

面談とは?意味や面接との違い

ここでは、「面談」の基本的な意味について解説します。

面談の意味

面談とは、対面して直接話をすることです。

企業においては人事担当者と社員がお互いに情報を共有し、成長を促したりモチベーションを引き出したりするなど、動機づけを目的に実施されることが多いです。面談を行うことで社員の強みや弱みを理解し、キャリア形成やスキルアップのために役立てることが求められています。

面接との違い

面談と似た言葉「面接」とは、応募者の中から適した人材を選ぶために行うものです。面談が相互理解のための話し合いである一方、面接は相手を評価するためのプロセスです。面接では求職者が自己アピールをし、企業が合否を判定します。

基本的には面接官が質問し求職者が答えるというスタイルで、質疑応答から求職者の性格や業務に対する適正・意欲・スキルなどの確認を行うために実施されます。とはいえ、同時に求職者が企業を判断する場でもあるため、求職者側から企業へ対して質問することもあります。

面談の種類

ビジネスシーンの面談にはさまざまな種類があります。社内で行う人事面談は、社員のパフォーマンスを高めることを目的に、全社員を対象に実施されます。うまく活用することで企業と社員が一体となり、目標を達成しやすくなります。

採用時のカジュアル面談は、採用活動における面接よりも前段階で実施されます。一般的に合否に直接的な影響はないとされ、和やかな雰囲気の中、求職者は社風や業務内容などについてヒアリングできます。

特に新卒採用時に活用されるリクルーター面談は、OBやOGが自身の出身大学の後輩に対してアプローチする手法です。社外で行われることが多く、リラックスして自社のアピールをすることができます。

採用予定者を対象に実施するのが内定者面談です。内定者に入社後の流れや勤務条件などの情報を伝える場です。また、内定者の疑問や不安を拾い上げ、入社後のミスマッチを防ぐ目的もあります。

人事面談を実施する目的

人事面談を実施する目的には、主に「人事考課」「人材育成」「マネジメント改善」「動機形成(モチベーション管理)」の4つがあります。それそれどのような目的なのか、ご紹介いたします。

人事考課

人事考課とは、昇降格や給与を検討する目的で、従業員の業績やスキル、勤務態度などを分析することです。一般的に、人事面談の中で人事考課が行われます。ちなみに人事考課は、従業員の処遇を決定する人事評価とはまた別のプロセスです。

人材育成

人事面談には人材育成の役割もあり、面談を通して成果や課題の特定を行います。強みや弱み、会社がどのようなことを求めているのかなどを客観的に把握できる場となるでしょう。面談で従業員の強みや優れた点を積極的に取り上げることで信頼感が伝わり、部下の成長へとつながります。

動機形成

人事面談をうまく活用することで、従業員のモチベーションアップも期待できます。部下それぞれの動機付けとなるポイントを把握し、伝え方を工夫してみましょう。本人の「やりたい仕事」「なりたい理想像」などを共有し、仕事の意義を説明する良い機会です。

マネジメント改善

人事面談にはマネジメント改善の目的もあります。一緒に仕事をするチームやメンバー、上司との関わり方を見直す機会となるでしょう。目標や計画を振り返り、結果を分析することも重要です。計画立案や業務の進め方などにおける改善点を見つける機会としても活用できます。

人事面談における3つの評価ポイント

人事面談における評価ポイントは「能力評価」「成果評価(業績評価)」「情意評価」の3つです。

能力評価

能力評価とは、従業員のスキルや知識といった能力を基準に評価すること。給与面に直結する評価ではなく、あくまで一人ひとりの成長や育成を目的に実施されます。チームワークやリスクマネジメント能力、コンプライアンス意識なども評価の対象となります。

成果評価業績評価

成果評価(業績評価)とは、成果や業績をもとに行われる評価です。ここでは「目標達成率」「顧客獲得件数」など、目標ごとに達成した客観的な数字を見ていきます。成果を出した従業員には昇進・昇格、給与アップなどのチャンスとなり、モチベーションアップにもつながります。

情意評価

情意評価とは、組織への貢献度を評価することです。会社の理念に基づいて仕事をしているか、勤務姿勢は良いかなどの観点から評価を行います。ほかの評価に比べて定量化しにくいのが難点ですが、数字に表れにくい組織への貢献度を評価することで、従業員のモチベーションアップが期待できるでしょう。

人事面談の主な種類

ここからは、人事面談の4つの種類について解説します。実施目的やタイミングなどを考慮し、適切なものを選ぶ必要があります。

1on1面談

1on1面談とは、上司と部下の1対1で行う面談です。人事評価に直接的に関わるものではないとされ、部下の現状を把握し能力を引き出すなど、人材育成のために活用されます。

1〜2週間に1回や月1回などの短いサイクルで実施することで、部下のモチベーション管理や効率的な人材育成に効果的です。対話を通じて密なコミュニケーションを図り、上司が部下に寄り添う形で実施するのが望ましいとされています。

フィードバック面談

フィードバック面談とは文字通り、上司から部下へ評価結果をフィードバックするためのものです。評価期間ごとの結果を共有し、課題や改善点を明確にすることが目的です。上司と部下が一緒に振り返りを行い、今後どのようなアクションが必要かを話し合います。

上司はただ結果を伝えるだけでなく、部下の成長を考えて対話を進めることが求められます。

中間面談

中間面談とは、評価期間の途中で進捗状況の確認や目標の再確認を行う面談です。評価期間が長期にわたると当初の目標を忘れたり、進捗が滞ったりすることもあるでしょう。中間地点で面談の機会を持つことは、モチベーションの維持にも役立ちます。

評価期間の後半に向けて課題がある場合は洗い出し、解決策を話し合える良い機会となります。

目標設定面談

目標設定面談とは、上司が部下の目標を確認して設定する面談です。必要があればアドバイスや修正も行います。目標は漠然としたものではなく、具体的に「いつまでに」「何を」「どこまで」行うかを明確にする必要があります。

また、業務の遂行にあたり課題や不安がある場合は双方で共有し、上司がアドバイスをすることで解消できるでしょう。目標設定面談は必要に応じ、年に1〜2回程度実施されます。

面談の効果的な進め方

前述のように、面談は上司と社員の双方が前向きなコンセンサスを得るために実施するので、社員が話しやすい環境を整える工夫も大切です。

まして人事評価を前提とした1対1での面談となると緊張するものです。冒頭では仕事以外の話題で社員の緊張を和らげる雰囲気づくりも大事なことです。

冒頭で社員の緊張を和らげたら、まず部下の自己評価からスタートします。社内に専用の書式などがあれば面談はスムーズに進みます。無くても事前に目標への達成度や、良い点・悪い点などの自己評価を記入した書類を準備しておくと有益です。

そして、上司から社員の評価や課題、改善点などを伝えます。その際、大事なのは判断理由です。部下の自己評価と大きく差がある場合は問題点を話し合い、双方で擦り合わせて最終的な評価とします。

最後に、上司は部下に今後の目標や将来的な志望なども聞いておきましょう。その際、企業の方針や目標、ビジョンに沿うことが大切で、社員と企業の目標を共有することが方向性がブレないために重要です。

面談後は、課題や改善点、設定目標などについて日常的に部下の状況や個性に合わせてアドバイスや指導します。折に触れてコミュニケーションする機会を設けることで、社員は常に目標を意識し、達成に向けて貢献意欲を高め、双方の信頼関係も深まります。

面談で社員が納得するポイント

面談の結果を社員が納得するには、上司は可能な限り主観を排し、一方的な判断とならないことを心掛ける必要があります。

上司は一方通行とならないよう部下の成長を念頭に置き、質問形式で社員の考えを聞いてから自らの判断を示す支援型のマネジメントを忘れてはいけません。
その際、初めに結論ありきとならないように、真剣に部下と向き合って話を聞くことが欠かせません。

成果が出なかったケースでも、課題や改善点の指摘だけでなく、社員から背景や行動なども聞いた上で、過程での努力や成長を評価することも大事な要素です。

上司は部下のスキルや長所を把握することで、よりスキルアップさせることも可能です。また、次に目標を達成するためにはどうすればよいのか、具体的な行動レベルまで落とし込むことが大切です。どのような行動改善をすればよいのかが具体的になると、より目標の達成イメージが明確になります。

部下の信頼と納得を得ることで、より社員のエンゲージメントは高まります。成果が出ない時こそ面談で人間関係や悩みを引き出し、コミュニケーションを取ることで社員を自律型の人材へと育成する次へのステップとなります。

面談で社員が上司に評価されるポイント

・ アポイントは上司の都合が優先
上司も多忙なので、都合を聞いて面談のアポイントを取ります。原則として、面談では上司の都合が優先します。上司から部下の日時を聞かれても、常識的には上司の都合に合わせて調整するのが礼儀です。

・ 事前に面談の準備
限られた時間で行われる面談では、大切なことを上司に分かりやすく考えを伝える努力が必要です。そのために準備は欠かせません。

具体的には何をどう伝えるかなどポイント絞って、明瞭で簡潔に伝わるように、事前に想定される問答などを整理しておきます。

・ 親しい上司でも礼儀をわきまえる
面談では、相手が親しい上司であっても礼儀や敬語という社会人の基本的なマナーを忘れてはいけません。

上司との面談で評価が高い点は、社員の意欲や成長を実感できる場合です。上司は面談を通して社員のすべてを評価します。今後への意欲や成長を感じると、人材育成という視点から期待します。

社員はしっかり事前準備をしてベストを尽くし、意欲や成長を伝える姿勢を忘れないように心掛けて、実りある面談としてください。上司も面談を通して、自らをより高次のマネジメントレベルへ引き上げることを目指してください。

人事面談で部下が話したくなるフレーズ

人事面談では、部下が話したくなるようなフレーズを効果的に活用しましょう。ここでは4つのフレーズを紹介するので、面談時や日頃のコミュニケーションなどで積極的に使ってみてください。

「日々の努力が成果につながったね」

日々成長していることを部下に知らせることは、部下の自信につながります。上司が部下を見守り、部下の考えや行動を認めていることを伝えられるフレーズです。

「この点を改善するためにはどうすればいい?」

時には、部下が自発的に考えられるような問いかけをするのも効果的です。部下が気づいていない点を補えるよう、問いかけをしながら自然とアドバイスすることもできます。

「こういう点があなたの強みですよ」

部下自身が気づいていない強みを伝えることで、自己理解を助け自信を持たせることができます。また、上司から「見てもらえている」と気付けば、部下も心を開いて話せるようになるはずです。

「一緒に考えてみよう」

上司からこのような言葉をかけられたら、部下は「上司が同じ方向を見てくれている」と感じられるでしょう。信頼感と安心感が得られ、上司・部下の関係性の構築に役立ちます。

人事面談を行う上司の注意点

人事面談を最大限に活かすため、上司は以下の3つのポイントに気をつけましょう。

上司は聞き手になることを意識する

部下からの信頼を得るためには、まず「話を聞く」ことが大切です。人事面談では上司が自分の持論を一方的に披露するケースもありますが、考えを押しつけるのではなく、あくまで部下と対話をすることが目的です。

上司が話してばかりの面談では話を深められず、部下との信頼関係は生まれにくいもの。聞くこと8割、話すこと2割程度と考えておくと良いでしょう。

人間性やプライベートな話は避ける 

人事面談とは業務の改善や部下の成長・育成のために行うものなので、人間性を問う質問やプライベートな話は避けましょう。特に、上司が「この部下とは日頃からうまくコミュニケーションを取れている」と思っている場合、面談でもプライベートな話題に触れやすいので注意が必要です。

ただし、プライベートについて深く詮索するのはNGですが、ライフステージの変化はキャリア形成にも関係してくるため、業務に関わる場合のみ、必要最低限の質問をするのは良いでしょう。

自分の考えを話せる質問をする

人事面談では、部下が自分の考えを話せる質問をしましょう。「はい」「いいえ」の2択で答えられる質問はせず、部下本人の気持ちがわかるような質問をして、本人の気持ちを汲み取ることが大切です。

とはいえ、答えるのがあまりにも難しい質もNG。あまり深く考えずに答えられるようなシンプルな質問を用意しておきましょう。

ポイントを押さえて人事面談に臨もう

人事面談には人事考課、人材育成、マネジメント効果、動機形成などの目的があり、効果的に実施することで従業員のモチベーションをアップさせたり、隠れた能力を引き出したりすることもできます。

面談の進め方は一通り確立されてはいますが、従業員一人ひとりに合わせて内容を調整することも大切です。この記事で紹介した人事面談のポイントをぜひ参考にしてみてください。

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