コンピテンシー評価とは?行動特性に注目した人事評価制度

(写真=svtdesign/Shutterstock.com)

ITの革新やコロナ禍によるリモートワーク制度の定着など我々のビジネス環境は急速な変化を迎えています。このような社会状況で、これまでの人事評価制度に課題を抱えている会社も多いようです。

そこで、リモートワーク下でも機能する公正公平な評価方法として期待されているのが、コンピテンシー評価。

今回はコンピテンシー評価の概要、メリット、3つのタイプ、導入手順について紹介します。

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは、高いレベルの業務成果を生み出す、「仕事のできる人の行動特性(コンピテンシー)」を基に評価項目や評価基準を設定して、人事評価を行うものです。

仕事のできる人のコンピテンシーは、行動観察やインタビューなどからその行動や思考の傾向を調査・分析し、項目を抽出します。

会社が社員に求める「仕事ができる人」を評価項目として明示することで、自社の方向性や理念を社員と共有し、明確な目標に向けて社員の意識が高まることが期待できます。

コンピテンシー評価の重要性とは

コンピテンシー評価では、従来からある成果主義や曖昧な基準での業務プロセスに対しての評価が見直され、多面的な評価が可能となるでしょう。

これまで成果でしか明確な指標が示せなかった会社にとっては、成果ではない部分の基準が作りやすくなります。

業務プロセスと成果両方を評価でき、従業員の納得も得られやすい評価システムと言えるでしょう。

コンピテンシー評価の目的

コンピテンシー評価の主な目的を3つ説明します。

従業員のパフォーマンス向上

コンピテンシー評価は、従業員のスキル、能力、知識、および行動を評価するために使用されます。この評価を通じて、従業員の強みや改善の余地を特定し、パフォーマンスの向上を図ることができます。具体的なフィードバックや開発プランを提供することで、従業員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

キャリア開発と昇進の基準

コンピテンシー評価は、従業員のキャリア開発や昇進の基準として使用されます。従業員のスキルや能力の評価を通じて、組織は従業員の適性や成長のポテンシャルを把握し、適切なキャリアパスや昇進の機会を提供することができます。コンピテンシー評価は、従業員と組織の目標を合わせるための重要な手段です。

組織の人材マネジメント戦略の支援

コンピテンシー評価は、組織の人材マネジメント戦略の一環として使用されます。評価を通じて、組織は従業員の強みや改善点、スキルギャップなどを把握し、適切なトレーニングや開発プログラムを設計することができます。また、優れたパフォーマーの特定や将来のリーダーシップポジションの候補者の特定など、組織の将来のニーズに応じた戦略的な人材プランニングをサポートする役割も果たします。

コンピテンシー評価のメリット

コンピテンシー評価の導入には、主に以下の4つのメリットが考えられます。

効率的な能力開発と育成が可能

コンピテンシー評価は理想的な行動特性を評価項目として設定するため、評価項目が行動指針になり、従業員にとっては具体的な行動をイメージしやすく成長へとつながります。

また、評価者にとっても指導基準となることから、能力開発や育成を実現しやすくなるでしょう。

業績や成果の向上につながりやすい

コンピテンシー評価では、高い成果につながる行動特性を直接的に実践するため、成果につながるスピードが速くなり、業績向上が期待できます。

行動評価では基準が曖昧になりがちですが、コンピテンシー評価なら基準が明確なため成果が出やすいのが特徴です。

納得感のある人事評価の実現

コンピテンシー評価は、評価項目に落とし込むことで行動特性の「見える化」が可能になります。

評価のポイントが明確になり、プロセスも評価することになるため、評価者の主観によって評価を歪める余地が少なくなるでしょう。公平な評価によって従業員からの納得感を得やすくなります。

経営ビジョンの浸透

コンピテンシー評価の全社共通の項目では、経営ビジョンを反映した、企業が理想とする人物像を基準として設定できます。

企業理念や方向性を従業員と共有し、日々の業務の中で意識を高めてもらうことが可能です。

コンピテンシー評価のデメリット

コンピテンシー評価の導入には、主に以下の3つのデメリットが考えられます。

バイアスや主観性の影響

コンピテンシー評価は、適切に運用しなければ、主観的な要素に基づいて行われバイアスや主観性の影響を受けることがあります。コンピテンシー評価は行動目標であり数値のみの評価基準ではないため、事前に調査の上適切な目標設定を企業側が実施しなければなりません。

このような事前の目標設定を企業側が行わなかった場合、評価者の主観的な評価により公平性や客観性に欠けることがあり、従業員の不満や不公平感を引き起こすことがあります。

運用に手間がかかる

コンピテンシー評価は、評価基準を細かく設定する必要があります。また、評価対象者も特定のスキルや能力、行動を評価するために、具体的な行動目標を設定することが求められます。そのため、評価者や評価対象者の手間と時間が増える可能性があります。また、評価基準や目標の設定が複雑であるため、システムやプロセスの運用にも慎重な計画とリソースが必要です。

職務評価の方が有効な場合がある

コンピテンシー評価は、優秀な社員の行動に焦点を当てて評価基準の策定を行いますが、すべての職種に適しているとは限りません。成果がわかるまでに時間がかかるといった一部の職種では、職務評価の方が評価基準や評価項目を明確に捉えるのに適している場合があります。

また、企業文化によっても、職務評価の方がマッチするケースもあるでしょう。コンピテンシー評価は、運用していく中で自社に合った形で修正を重ねながら運用していくことが重要です。

コンピテンシーモデルとは?3つのタイプ

コンピテンシー評価をするためには、評価基準となるモデルの設計が必要です。
コンピテンシーモデルには、以下の3つのタイプがあります。

理想モデル型
企業にとって理想的な人物像に基づいて設計します。
モデルとなる生産性の高い人材が存在しない場合に適用します。自社で理想となるモデルを細かく設定することは難しい場合が多いので、設計経験の豊富なコンサルタントに依頼することが有効でしょう。

実在型モデル
企業内に実在する生産性の高い人材を参考に設計します。
多くの企業では実在型モデルを使用しています。但し、その行動特性は他の従業員にとって再現性がなければなりません。そうでない場合、モデルとして参考にするか否かを検討する必要がります。

ハイブリッド型モデル
実在する生産性の高い人材をベースに、企業の理想像で補完した人物像に基づいて設計します。
全く完全な生産性の高い人材が各職種・役職で存在することはなかなかないので、実用面ではこちらのモデルを適用するケースが多いでしょう。

コンピテンシー評価の基準

コンピテンシー評価の評価基準は、大別して「全社共通」と「個別」に分かれます。
全社共通の評価基準は、企業のミッションや状況、経営方針や理念などで、個別の評価基準は、職種や役職などから設定されます。

大まかな評価項目(大分類)が決まったら、項目ごとに実際にコンピテンシー評価で使う細かい評価項目(小分類)を設定しましょう。

コンピテンシー評価の導入手順

1.ヒアリング

評価項目作成のため、生産性の高い人材にヒアリングを行います。該当する人物が存在しなかった場合には、理想モデル型を使用します。

注意点としては、「何をしたか」という結果ばかりを集めるのではなく、「なぜそのような行動をしたのか」といった、思考パターンも抽出できるようにすることが大切です。

2.評価項目の作成

ヒアリングによって集めた情報を分析し、評価項目に落とし込みます。その際はできるだけ具体的で、成否がはっきりする表現にしましょう。

評価項目の作成は、職種・役職など勘案して多岐にわたって作成する必要があります。自社で設定するのはかなり手間がかかるので、経験豊富なコンサルティング会社に依頼するのも一手です。

3.目標設定

対象となる従業員自身に目標を設定してもらいます。
目標設定は全社共通や個別の内容どちらかに偏らないように、予め大枠のカテゴリーを指定しておきましょう。

内容について部下が上司に相談する際には、上司からの要望等を押し付けないように気をつけましょう。

4.評価と行動の改善

従業員がモデルに沿った行動をとっていなければ無意味なものとなってしまうため、定期的なチェックが必要です。評価までの期間を定め、随時チェックを行います。

評価について、5段階ではなく4段階評価で尺度・点数を設定するとよいでしょう。4段階評価では、5段階評価の3「普通」の項目が発生しないため、より明確に評価できます。

また、評価者により偏りが発生しないよう、複数名の周囲の評価を募る「360度周囲評価」も併せて適用しましょう。
評価後、評価者は社員が行動を改善するようしっかりとフィードバックを行うことも必要です。

コンピテンシー評価の書き方

コンピテンシー評価の行動目標は、企業が優秀な社員の行動を参考にして設定した目標設定を参照しながら、自身で主体的に記載します。一項目ずつ参照することで、組織が設定している目標の大枠からズレがないように意識します。

また、目標は曖昧ではなく具体的に明記し、測定可能な数値を記載できる場合は記載しましょう。自身の業務状況を振り返り、あくまでも達成可能な範囲で記載します。「週に1 回報告書を提出する」などいつまでに、どのような頻度で実施するかを意識的に記入することで、より具体性のある内容にできるでしょう。

コンピテンシー評価の具体例

コンピテンシー評価の具体例は上記の通りです。
企業側があらかじめ設定したコンピテンシーマスターの中から項目を選択し、方向性をもとに具体的に目標を設定します。自身の業務内容と照らし合わせて具体的にどのような行動をとるのかを記載します。

コンピテンシー評価の導入時の注意点

ここでは、コンピテンシー評価を導入する際の注意点を4つ紹介します。

目標の明確化

コンピテンシー評価を導入する前に、明確な目標設定を行うことが重要です。組織が何を評価し、どのような結果を得たいのかを明確にし、評価が組織の戦略や人材マネジメントにどのように寄与するかを把握します。目標が明確であれば、評価基準の設計やフィードバックの提供が適切に行われ、評価の成果を最大限に活用できるでしょう。

信頼性と公平性の確保

コンピテンシー評価は従業員にとって重要なプロセスであり、信頼性と公平性を保つことが不可欠です。評価基準は客観的で偏りのないものにするために、複数の評価者の協力やトレーニングが必要です。また、フィードバックの提供は具体的で公平性があり、個々の能力や行動を適切に評価します。公平な評価は従業員のモチベーションや信頼感を向上させ、組織全体のパフォーマンスに寄与します。

コミュニケーションの促進

コンピテンシー評価の導入時には、従業員とのコミュニケーションを積極的に促進する必要があります。評価プロセスの意図や目的を従業員に対して明確に説明し、評価に対する理解を深めます。従業員の意見やフィードバックを尊重し、評価プロセスへの参加意欲を高めることで、評価の効果を最大限に引き出すことができます。

トレーニングとサポートの提供

コンピテンシー評価の導入は、評価者や従業員に新しいスキルや知識を求める場合があります。評価者には適切な評価方法やフィードバックの提供方法についてのトレーニングを行い、評価の精度を向上させます。一方で、従業員にも自己評価の手法などノウハウを提供し、目標設定から達成までのサポートを行います。トレーニングとサポートを充実させることは、コンピテンシー評価の成功に不可欠な要素です。

コンピテンシー評価の導入事例

ここでは、実際にマクソンジャパン株式会社様のコンピテンシー評価の導入事例を紹介します。

課題

該社では社員の給与は感覚的な評価で決められており、評価記録も残されていなかったため、「なぜこの評価なのか」「なぜこの給与なのか」について誰も分からない状態で、社員から不満の声が上がっていました。また、社員からの声をきっかけに、社員の成長やモチベーションアップの仕組みを作ることについて考えるようになりました。そこで、社員のモチベーションアップと情報共有のために人事評価制度の導入を決定しました。

導入の流れ

導入の初期段階では、経営コンサルタントに依頼し、制度を作ることも考えましたが、クラウドシステムを使って運用したいという要望があったため、社内責任者の担当者を任命し、導入システムの選定を始めました。最終的に5社から話を聞いた結果、制度構築や運用のコンサルティングとクラウドシステムをセットで提供してくれるあしたのチームを選びました。

導入結果

導入後、社員は根拠をもって自己アピールできるようになりました。また、情報共有やベクトル合わせ、進捗管理、振り返りなどを定期的に実施することができるようになりました。
導入後、コンピテンシー評価がマッチしにくい職種については職務評価に変更し、自社に合う形でアップデートしながら運用をしています。

社員が自己成長するために必要な行動や意識、考え方が少しずつ身に付いてきたことが、導入から得られた大きな成果です。自分の目標達成(=自分の成長)が会社の成長に繋がると理解できたことで、自分の仕事の領域外まで、自ら「やりたいです」と志願してくれるようになった社員もいます。

参考:あしたのチーム「マクソンジャパン株式会社様導入事例」

コンピテンシー評価はクラウドシステム上で管理しよう

コンピテンシー評価は、優秀な人材の行動特性を評価項目にすることで、曖昧な評価や成果に偏った評価システムを改善できるメリットがあります。

ただ、コンピテンシー評価を導入するには、職種や役職によっても評価項目を設定する必要があり、企業にとってかなりの手間やノウハウが必要。

あしたのクラウド™HR」コンピテンシー評価と数値による目標設定・評価・査定・給与金額確定まで人事評価の運用を一元管理できます。
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