モチベーションとは?アプローチ方法や理論、上げるための4つの方法・事例を紹介

モチベーションアップをイメージさせる画像

モチベーションとは、社員が仕事に熱意を持って取り組む源泉になります。

モチベーションが高い社員は、自主的に業務に取り組み高い成果を発揮します。しかしながら、高いモチベーションの維持には、整った就業環境や高い給与だけでは十分とはいえません。

ここでは、モチベーションの意味や向上の理論を解説し、社員のモチベーションアップにつながる方法について紹介します。

モチベーションとは

モチベーションとは、「やる気」「意欲」「動機」という意味で用いられる言葉です。組織においては、社員が企業やチームのミッション達成に積極的に貢献しようという動機付けのことを指します。

人事領域では、社員が仕事へ取り組む自主性などを育む要因として重視されます。働くモチベーションには、労働条件や職番環境のほか、人間関係や業務内容などさまざまな要素が関係します。

また、個人によって重視するモチベーションの動機づけは異なります。自社の社員それぞれにとって、仕事の意欲を掻き立てる要因がなにであるか、適したアプローチ方法を検討することが重要です。

モチベーションの低下が企業にもたらすリスクとは

モチベーションが低下すると、まず仕事に対する創意工夫が起きず作業効率が低下します。与えられた仕事をそのまま行うというように、業務に取り組む過程で改善などが行われないため、生産性の低下だけではなく、創造性豊かなアウトプットが出にくくなります。

モチベーションの低下が引き起こすリスクは、それだけではありません。仕事への責任感やコンプライアンスが欠如することで、ミスやインシデントが発生しやすくなります。さらに、個人の無断欠勤や遅刻といった規律を無視した行動が見られる要因なります。

こうした個人が組織のルールを無視した行動が続くと、やがて組織が硬直化し、企業の不祥事と呼ばれるような大きな事故につながります。
モチベーションの低下は社員個人の問題ではなく、ひいては企業の存続にかかわる重大な課題といえるでしょう。

モチベーションを上げることの効果

では個人のモチベーションが向上することで、どのようなメリットが企業にもたらされるでしょうか。

1.生産性のアップ

ひとつは、生産性のアップです。仕事への意欲が高まることで、創意工夫を凝らすようになります。業務フローが複雑であれば、機械化や省力化の道を試すようになるでしょう。新たなアイディアを実践しようとプロジェクトを立ち上げるかもしれません。

このように、社員自らの働きかけによって仕事の成果が変化し、評価されることでさらにモチベーションを高めていくという、正のサイクルが生まれます。

2.企業競争力の向上

社員のモチベーションが高い企業は、生産性がアップし、自社サービスや商品が持続的に改善・改良されていきます。顧客の声に耳をかたむけ、サービス向上への努力を惜しみません。市場から求められているアウトプットを模索し、よりよいサービス作りに努めます。

このような仕事への取り組みは長期的には企業の業績に反映されます。また、仕事への熱意が高い社員がいることで、同じように働くことにやりがいを感じ、挑戦心を持った社員が集まってきます。

3.離職率の低下

モチベーションが高い社員は、働くことで充実感を得られます。日々の業務で創造性を発揮し、仕事を通じて自らの変化を実感します。いまの職場が正しい選択であり、中長期的なキャリアアップにつながると実感できます。

そうした社員にとっては、仕事は単純に稼ぎを得るためのものだけではありません。労働条件や職場にネガティブな印象を抱いても、仕事の充実感というポジティブな印象があるため、結果としてその職場で働き続けることを選ぶでしょう。

モチベーションを解明する2つのアプローチ方法

では、このように人や組織に影響を与えるモチベーションとは、いったいどのような要因でどのように人々に作用するのでしょうか。

見えない人のモチベーションを理解するのに役立つのが、これまでに行われてきたモチベーションについての研究と理論です。モチベーションの研究は諸説ありますが、大きく分けて「組織メンバーが持つ欲求に重点を置く」理論と、「メンバーがモチベーションを高めていくプロセスに重点を置く」理論の2つがあります。

1.組織メンバーが持つ欲求に重点を置く理論

この理論は、モチベーションの内容に関するアプローチ方法です。人が何かに取り組むとき意欲を起こさせるものの「中身」について研究しています。モチベーションの欲求説、もしくは内容説ともよばれます。

人は共通したモチベーションへの欲求を持っているという考えがベースになっており、代表的な例としては欲求の内容をピラミッドのように配置した「マズローの欲求階層説」や、外側から与えられる動機と内面から湧きあがる動機とに分類した「ハーズバーグの動機付け衛生理論」があります。

2.メンバーがモチベーションを高めていくプロセスに重点を置く理論

こちらの理論では、モチベーションの発生する内容(欲求)ではなく、モチベーションが動機付けられるプロセス(過程)に重きを置いています。過程説、文脈説ともよばれる考え方です。

この理論のベースには、人々のモチベーションがあがる内容は、状況や条件によって異なるという考えがあります。
代表例として、最初にモチベーションの仕組みを明示した「ブルームの期待理論」があります。

知っておきたい6つのモチベーション理論

モチベーションについてさらに理解を深めるために、上述した2つの研究アプローチ方法について、属する代表的な理論を6つ紹介します。

欲求説①マズローの欲求段階説

人は自己実現のために絶えず成長する生き物だという考えを根幹としています。人の欲求には、「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5つがあり、生理的欲求を一次欲求として、下位の欲求が満たされると上位の欲求が生じるというものです。

生理的欲求は食欲や睡眠欲、安全欲求は外敵から身を守りたいという欲求を指します。これを現代におきかえると、生理的欲求は衣食住を満たす雇用を得ることであり、安全欲求は雇用を失うことがない保障であるといえます。

これらの低次の欲求がみたされると、人は同僚や仲間との一体感や仕事を通じて社会に貢献しているという社会的欲求を満たしたいと思うようになります。そしてより良い評価を求め承認欲求を満たすようになり、自己実現欲求として自らの能力を最大限発揮できる自分を目指すようになります。

欲求説②マグレガーのX理論、Y理論

マズローの欲求段階説を、経営的観点からさらに深めたのがマグレガーのX理論、Y理論です。この理論では、人の本性を「仕事嫌いで怠け者なネガティブな面(X部分)」「自己実現したいポジティブな面(Y部分)」にわけ、それぞれに対する管理者の行動様式をX理論・Y理論として説明しています。

X理論では、人はなまけたがる生き物のため、アメとムチと呼ばれるような厳しい管理体制にする必要があります。命令や強制で人を動かし、達成度合いによって賞罰を与えます。

対してY理論では人は進んで働きたがる生き物です。そのため、管理者がコントロールするのではなく社員に裁量を多く持たせ、協力関係を築くことが重要になります。

生活水準が向上し、生理的欲求や安全欲求が満たされている現代では、X理論のような厳しい管理体制ではモチベーションを向上させる効果は低く、むしろY理論に基づいたマネジメントが求められると考えられています。

欲求説③ハーズバーグの2要因理論

ハーズバーグの2要因理論では、企業で社員が不満を招いた要因と満足を招いた要因を分けて整理しています。

不満を招いた要因には、労働条件、給与、身分、安全、マネジメントの在り方などがありこれらは「衛生要因」と呼ばれます。一方、満足を招いた要因には、達成感、他者からの評価、仕事への満足感、責任、昇進などがあり、「動機付け要因」と名付けられました。

この理論で注目されるのは、衛生要因である労働環境や給与は不満の要因にはなっても、改善したところで社員の満足度向上にはつながらないという点です。

仕事の不満を生み出す原因を改善してもモチベーションは向上せず、意欲を引き出すには動機付け要因を高めることが効果的です。
とりわけ、給与は社員の働く動機付けと考えられがちですが、衛生要因に位置付けられています。社員のモチベーションを高めるには給与アップを行うだけでなく、人事評価と連動した制度を構築することが重要です。

過程説①ブルームの期待理論

現代モチベーション理論の代表例であるブルームの期待理論は、人の行動は、定められた報酬につながる期待と、達成される成果が本人にとってどれだけ魅力的であるかという考えをベースにしています。

モチベーションを引き起こす誘因に、「対象の魅力度」「達成への直結度」「実現の可能性」の3つをあげ、これらを掛け合わせたものが高いほどモチベーションが高まるとします。

対象への魅力度は、本人によって異なります。いくら一般的に魅力的な報酬が用意されていたとしても、本人が魅力に感じなければモチベーションの高まりは発生しません。達成への直結度は、言い換えればどれくらいの努力で達成できるかという見通しです。

途方もない努力が必要と感じれば、本人のやる気は低下してしまうでしょう。実現の可能性とは、行動し報酬を手に入れられる確率を指します。

期待理論では、まずは社員にとって魅力が高い結果を用意する必要があります。重要なのは、会社が考える魅力ある結果と社員本人が考える魅力ある結果をすり合わせることです。つぎに、結果を得るための目標と達成までのプロセスを明確にします。そしてさらに、本人が達成可能性を感じられるよう、サポートするマネジメントが求められるでしょう。

過程説②衝平理論

衝平理論とは、人が他者と比較し、不公平を感じる場合に公平性を感じるような行動をとるとされる理論です。

組織のなかで、社員は報酬(アウトプット)に対する満足度を、自分が投入した努力や経験(インプット)だけでなく、他者のアウトプットとインプットの比率を用いて考えます。
たとえば、自分が努力で得た報酬の比率が他者のそれよりも小さい場合は、低報酬と認識します。逆に、自分の努力で得た報酬の比率が他社のそれよりも大きい場合は、高報酬と認識します。

不公平を解消するための行動としては、仕事を熱心にしなくなったり、不当な手段で成果を大きくしたりすることが考えられます。不公平を感じている社員へは、給与改定などのアウトプットの変更や、具体性のある評価の提供といった働きかけが必要です。

過程説③目標設定理論

目標設定理論とは、目標への認識とモチベーションの関係を明らかにしたものです。
困難な目標があり、それを本人が自分ごととしてとらえ達成することでモチベーションが向上します。このとき、達成には適切なフィードバックが必要です。

目標設定理論では、目標を達成し、行動と結果が適切に評価を得、報酬を得ることが満足感を生み出しモチベーションを向上させるとしています。このサイクルによって、人は自らの行動で目標を達成できるという自己効力感を強め、さらに困難な目標に立ち向かうことが可能になります。

参考:「モチベーションを低減させないためのヒント」

東京海上日動リスクコンサルティング

モチベーションを上げる4つの方法

紹介した6つの理論で異なる角度からモチベーションが解明されているように、モチベーションを向上させる唯一の正解があるわけではありません。
しかしながら、各理論は企業でのモチベーション向上施策を考える大きなヒントになります。ここでは、モチベーション向上につながる制度や仕組みを4つ紹介します。

1.プロセスが明瞭な目標管理制度

目標管理制度(MBO)とは、個人の目標を設定しそれに対する達成度合いで評価を決める制度のことをいいます。組織とリンクした個人の目標を、社員が自主的に設定することで「やらされる感」が減少します。

本人が魅力に感じる目標や目標への納得度が、目標を達成できるという自信を高めモチベーションの向上につながるのです。
目標管理制度は、社員が自主的に目標設定をするだけではなく、上司と部下がコミュニケーションを取りながら適切なフィードバックを用いて、目標達成までを支援することが大切です。

さらに、成果だけでなく達成までの行動が、明確な評価基準で評価されることで、より納得度の高い管理制度となります。

2.公正公平な評価制度

目標を達成し、報酬を経ても、その評価が不公平だと感じる場合社員のモチベーションは向上しません。
たとえば評価者によって基準にばらつきがあると公平であるとはいえません。さらに、評価基準が不明確な場合、評価された内容へ不満を抱くようになります。
公正公平な評価制度を構築し、かつ運用するには、管理者の主観的な判断だけにゆだねるのではなく、コンピテンシー評価など基準が確立されている制度を導入し、自社の状況にあわせ構築する必要があります。
また、評価制度システムを用いて目標・評価を可視化することも重要です。

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3.福利厚生の充実

ここでいう福利厚生とは、キャリアアップにつながるような教育・研修機会の提供や、育児や介護関係のサポートのことを指します。

仕事に関連したスキルアップは、達成感や満足度を高め、内的動機付けにつながります。さらに、ベビーシッター費用の補助など、仕事と両立する必要のあるサポートが充実していることで、安全欲求や社会的欲求が満たされます。

自らの成長に会社が投資してくれていると感じ、社員と組織の信頼関係構築につながります。

4.それぞれにとっての最適なモチベーションの状態を考える

モチベーションアップの施策は、すべての社員に対して行うのではなく、それぞれの特性や個人の考えを反映させることが大切です。

人によって、なにが魅力的な目標になるかは異なります。キャリアアップのため、チャレンジングな仕事に挑戦したい社員もいれば、家庭と仕事のバランスを維持したいという社員もいます。

個々の社員のモチベーションの動機となる理由をヒアリングしながら、適した施策を選ぶ必要があります。

企業のモチベーションアップ成功事例

最後に、モチベーションアップにつながった企業の具体例を紹介します。

半年に一度自らの課題を洗い出す目標管理制度

運送業のA社では、業務効率向上の目標設定を行い、半年に一度各自で振り返る機会を設定しました。

社員自らが、いまの課題を洗い出し、どうしたら目標達成に近づけるのか必要な行動を上司とすり合わせることで、達成にむけた自信が高まり、仕事への取り組む姿勢にも変化が見られました。

個人のスキルを見える化した適切な教育体制

印刷業D社では、社員それぞれのできる業務や習熟度を表にして見える化。自己認識を高めるとともに、スキルアップに必要な教育を管理者とすり合わせ、教育体制を見直しました。

業務に求められるスキルを研修で身につけられることで、社員の仕事の満足度が向上。さらに、難易度の高い業務にも携われるようになるなど、達成感も向上しました。

参考:「時間外労働削減の好事例集」

平成23年 厚生労働省受託事業 中小企業における長時間労働見直し支援事業検討委員会

社員のモチベーションアップを促し働きやすい会社を目指そう

社員のモチベーション向上には、なにが動機付けになるのか社員の声を聞くことが大切です。

そして目標は会社が押し付けるノルマではなく、社員のマネジメントの一貫として位置づけ、明確な評価基準や適切なフィードバックを用いることで、目標達成度合いを高めることができます。

納得度の高い目標を達成し、魅力ある報酬を得ることが、モチベーションアップのサイクルを生み出します。

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