等級制度とは、社員を能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、処遇などの根拠となる制度です。
適切に等級制度が導入されると、従業員のモチベーション向上や人材育成の強化につなげられます。
一方で、近年ではノーレイティング(No Rating)と呼ばれる等級制度を廃止する動きも広がっており、自社にどちらの仕組みが適しているのか迷う企業も少なくありません。
本記事では、等級制度の種類や目的、メリットやデメリットなどを詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてください。
目次
等級制度とは?従業員を等級分けする評価制度

等級制度とは、社員を能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、処遇などの根拠となる制度のことです。人事制度を構成する評価制度、報酬制度と並び、3本柱のうちの一つとなります。
また、等級制度はその組織がどのような人材を必要としているのかのモデルにもなるため、組織の風土や企業文化などとも関連する、重要な役割を担う制度です。
代表的な等級制度には、職能等級制度、職務等級制度、役割等級制度の3つがあります。それぞれ詳しく紹介します。
何ができる?等級制度の3つの目的

等級制度の目的は、企業内での従業員の能力や職務、役割に基づいてランク付けを行い、組織の運営の効率化を実施していくことです。具体的には以下のような目的があります。
- 従業員の処遇を決定する基準の確立
- 従業員が目指す業務レベルの明確化
- 従業員の自律的なキャリア形成の促進
適切な手順で設計された等級制度は、従業員のモチベーション向上や人材育成の強化、企業の成長にもつながります。本章で目的を学びましょう。
従業員の処遇を決定する基準の確立
等級制度により、各等級に達するために必要な要件があらかじめ明示されており、各基準に基づいて給与や職位が決まります。そのため、処遇の根拠が分かりやすく、従業員からの納得感が向上します。
職務主義の等級制度では、各等級の職務内容の難易度や複雑さが定義されています。従業員は、担当職務の等級に応じて処遇が決定されるため、仕事内容と処遇の関係が明確です。
一方、職能主義では、各等級の能力レベルが定義されます。従業員は、能力レベルに応じて等級が決定され、処遇が決まります。
従業員が目指す業務レベルの明確化
等級制度は、従業員がキャリア形成の中で目指すべき業務レベルを明確に示す役割を担います。
各等級で求められる能力や役割を明文化すると、従業員は自身のスキルアップの方向性を理解し、成長のための具体的な目標設定が可能です。
例えば、ある従業員が将来は管理職を目指しているとします。等級制度で管理職の等級に求められる能力や役割が定義されていれば、その従業員は必要な能力を身につけるための学習計画を立てたり、管理職の経験を積むために必要な業務に挑戦したりできるでしょう。
目標が定まることで、従業員のモチベーション向上や主体的なキャリア形成にもつながっていきます。
従業員の自律的なキャリア形成の促進
等級制度は、従業員が自身のキャリアプランを立て、主体的にキャリア形成していくことを促す効果も期待できます。
等級が上がるごとに、求められる能力や役割が高度化していく様子を示すことで、従業員は従業員は自分の成長過程をイメージしやすくなり、将来のキャリア形成の道筋を描きやすくなるでしょう。
また、等級制度と連動した研修制度や人事異動制度を整備すると、従業員が自身のキャリア目標に合わせて必要な経験を積んだり、能力開発の機会を得たりできるようになります。
等級制度を効果的に活用すると、従業員の自律的なキャリア形成が促進され、長期的な人材育成につながります。
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等級制度は要らない?廃止する動きもある

近年、一部の企業では「ノーレイティング(No Rating)」と呼ばれる、等級制度を廃止する動きも見られます。
従業員の業績を数値的な等級や評価ではなく、柔軟な方法で評価する手法です。具体的には、ランク付けの代わりに目標設定をし、その達成度や日々の行動について上司がフィードバックを行い評価します。上司との1on1面談で運用されている企業が多いでしょう。
ただし、ノーレイティングには課題もあります。ランク付けの評価を行わないため、評価の公平性の確保が難しく、評価者のバイアスや感情が評価に影響を与えるおそれがあるからです。
そのため、ノーレイティングを採用する企業では、フィードバックの質の担保や効果的なコーチングを提供するため、管理者や上司のスキルアップが必要とされます。
ノーレイティングは従来型の評価制度よりも、評価者の力量が強く問われる難易度の高い評価方法といえるでしょう。
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従業員は気にする?等級制度が与える影響3つ

等級制度は、従業員のキャリア形成や給与に多大な影響を与える仕組みです。以下で、具体的な影響を解説します。
- キャリアへの影響
- 給与への影響
- 普段の業務への影響
どのようにキャリアが築け、給与に反映されるのかを理解して組織全体の活性化に役立てましょう。
キャリアへの影響
等級制度により、各等級の役割や期待されるスキルが明示されるため、従業員は自分のキャリアパスを具体的に描きやすくなります。
従業員は、等級制度をもとに自分のスキルや知識のレベルを把握でき、次にどの能力を伸ばせばよいのかも理解しやすくなります。
結果として、自身の将来をイメージしやすくなり、今後の目標に向けて計画的に努力できるため、日々のモチベーション向上にも直結します。
また、各等級に応じた基準が設定され、従業員が自身の能力を向上させるための具体的な指針を理解できると、組織全体のスキル向上に寄与するでしょう。
給与への影響
等級制度は、従業員に対する処遇決定の基準を明確にするため、給与や賞与の決定が透明かつ公平に行われます。従業員は、自身の給与額の根拠を理解しやすく、納得感を持って働くけます。
また、一般的に、等級が上がるほど給与も高くなるように設計されています。従業員は、昇格がモチベーションアップの要因となり、自身の能力や成果を意欲的に追い求めるでしょう。
給与基準が明確な仕組みは、キャリア形成の道筋を示すと同時に、従業員が主体的に成長を目指す姿勢を後押しする効果もあります。
関連記事:昇給率についてまとめた記事はこちら
普段の業務への影響
等級制度は評価や給与だけでなく、従業員の普段の業務にも影響を与えます。等級ごとに必要な役割や責任範囲が定められているため、日々の業務内容や取り組み方の指針になるためです。
例えば、等級が低い段階では「上司の指示にしたがって業務を遂行する」「基本的なスキルを身につける」といった役割が中心になります。
一方、等級が上がると「チームをまとめる」「新しい提案を行う」など、より主体的な業務やリーダーシップが求められるようになります。
等級制度は単に処遇を決めるだけではなく、従業員が普段の業務をどのように取り組むか、どのように成長を意識するかに大きな影響を与える制度です。
【具体的な制度内容】等級制度の3つの種類

等級制度の3つの種類を紹介します。
- 職能等級制度|能力主体の評価システム
- 職務等級制度|職務内容に基づく格付け
- 役割等級制度|期待や役割に応じた等級付け
等級制度の種類を知ることで、自社に最適な制度選択が可能になります。
1.職能等級制度|能力主体の評価システム
職能等級制度とは、仕事を通じて能力が蓄積され成熟していくことを前提とした等級制度です。企業が社員に求める職務遂行能力を基準に、区分・序列化します。
勤続年数が長くなれば、職務を遂行する能力が高いと定義付けるため、「年功序列」や「終身雇用」を前提とした制度です。
従来、日本の多くの企業が取り入れてきた等級制度で、日本固有の仕組みだと言われています。一方で、以下のようなデメリットがあり、改革が必要と言われている等級制度でもあります。
- 長期的には人件費が高騰する
- 年功序列による若手社員のモチベーション低下
- 評価基準が曖昧になる など
職能等級制度の下では、人材を雇用してから、部署異動や転勤などを繰り返して、キャリアアップをしていくのが一般的です。
そのため、企業への帰属意識が高まり人材の長期確保が可能で、組織改編やポスト不足への不満解消を期待できるメリットがあります。
2.職務等級制度|職務内容に基づく格付け
職務等級制度とは、職能等級制度とは対照的にジョブ(職務)の価値のみを査定する等級制度です。
職務等級制度は欧米では主流の制度で、あらかじめ職務記述書に業務内容・求める能力・労働時間・勤務地を明確に定めたうえで、人材を採用し、社員は基本的に職務の範囲内の仕事に責任を負います。
会社は定められた職務以外の配置転換はできない一方、その職務がなくなった場合は契約の解除もあります。欠員が出た場合に採用活動するため、通年採用が一般的です。
職務等級制度の下では、給与と労働の関係が明確なため、評価も明瞭で、実力主義の人材にとってはモチベーションアップにつながりやすいでしょう。 人件費の変動が少なく、スペシャリストの育成や優秀な人材の確保にメリットのある仕組みです。
一方で、職務を明確にするための記述書を作成する負担が増え、既存の人材による環境変化への対応が難しく組織の柔軟性が低くなるなどのデメリットがあります。また、熟練したスキルを持って、高い賃金など条件のよいほかの企業に転職するリスクもあるでしょう。
3.役割等級制度|期待や役割に応じた等級付け
役割等級制度とは、ジョブ(職務)に対してよりも、本人の能力も考慮する社員の役割を査定する等級制度です。
管理職・非管理職に関わらず、社員一人ひとりに企業が求める役割を設定し、その成果に応じて等級を区別・序列化する仕組みとなります。
年功制を排除し勤続年数や年齢、キャリアの有無に関係なく、高い成果を出すことで若手社員も昇格・昇給が可能です。一方で、「役割を果たしていない」と判断されると降格・降給も考えられるでしょう。
目標設定が明確になり、職務と能力双方にバランスのとれた合理的な評価が可能です。組織改編など柔軟性のある対応ができ、従業員の主体性をひきだせるメリットがあります。
一方で、実例が少ないため運用にはノウハウが必要で、役割が変更した場合に再定義が必要になるデメリットもあります。
近年、大手企業では「ジョブ型」(職務等級制度)の導入が進んでいますが、実態は、職務等級と職能等級の間をとった役割等級制度を導入しているケースが多いでしょう。
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職能等級制度のメリット・デメリット

職能等級制度のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
| ・人材の長期確保が可能 ・組織改編を迅速に行える ・役職やポスト不足に対する不満解消につながる | ・長期的には人件費が高騰する ・年功序列による若手社員のモチベーション低下 ・評価基準が曖昧になる |
以下で、メリット・デメリットを詳細に解説していきます。
職能等級制度のメリット3つ
職能等級制度のメリットは以下の3つです。
- 人材の長期確保が可能
- 組織改編を迅速に行える
- 役職やポスト不足に対する不満解消につながる
職能等級制度を検討している方は、メリットを理解して自社への効果を具体的にイメージしていきましょう。
人材の長期確保が可能
職能等級制度は、終身雇用が前提の仕組みであり、従業員に長期的に働いてもらえるよう設計されます。
従業員は、年功序列をベースに自身のスキルや経験を向上させて段階的に次の等級へと昇進し、その結果、報酬やキャリアの発展が見込めます。
また、年功序列による安心感から従業員は会社を辞めにくくなり、組織も人材を長期間にわたって確保できるメリットがあるでしょう。
組織改編を迅速に行える
職能等級制度は、組織内で発生する業務や役割の変化に、比較的迅速にかつ柔軟に対応できます。
職能等級制度では、ジョブローテーションによって幅広い職務に対応できるよう従業員は育成されます。そのため、新しい部門が設立された場合や業務の見直しが行われた場合でも、これまでに培われたスキルや経験を基盤に、適切な配置転換や人員活用が可能です。
結果として、組織は人材を無駄なく活かしながら、変化する経営環境に対応しやすくなります。
役職やポスト不足に対する不満解消につながる
職能等級制度は、役職やポストをめぐる競争の激化を防ぎます。年功序列により、従業員へ順々に等級を与えることで、将来的にどの程度の役職やポストを確保するべきかあらかじめ予測し、計画的に組織運営できるようになります。
また、従業員の帰属意識を高め、組織内の不満や対立を緩和する効果が期待できるでしょう。社内の不満や対立を緩和する効果が期待できるため、安定した人材マネジメントの実現につながります。
職能等級制度のデメリット3つ
職能等級制度のデメリットは以下の3つです。
- 長期的には人件費が高騰する
- 年功序列による若手社員のモチベーション低下
- 評価基準が曖昧になる
職能等級制度を検討している方は、メリットだけでなくデメリットも理解し、より自社に適した制度設計に役立てていきましょう。
長期的には人件費が高騰する
職能等級制度では、年功序列に応じて従業員の給与が上昇するため、長期的に見ると組織全体の人件費が増加するおそれがあります。
特に、勤続年数の長い経験豊富なベテラン社員の報酬が高額になるにつれて、人件費の比率が大きくなり、コストアップにつながる傾向があります。
制度を運用する際には、昇給幅や人件費バランスの調整が重要な課題となるでしょう。
年功序列による若手社員のモチベーション低下
職能等級制度では、昇進や報酬が年功序列に基づいているため、優秀な若手社員のモチベーションが低下するおそれがあります。若手社員が仕事で実力を発揮しても、昇進や報酬に直結せず、「努力しても評価につながらない」という不満を抱きやすくなるためです。
年功序列は、長期雇用の安心感と裏腹に、若手社員の離職や次世代の育成ができなくなる点がデメリットです。導入する際は、柔軟に制度を変化させたり、自社に適しているかじっくり検討する必要があります。
評価基準が曖昧になる
職能等級制度は、年功序列をベースとしているため、評価基準が曖昧になりやすいデメリットがあります。明確な評価指標が不足していると、実力や成果よりも勤続年数が重視されがちになり、努力が正しく評価されないケースが出てきます。
また、評価基準が曖昧だと公平な評価が難しくなり、従業員の不満や不和が生じる場合もあり結果的に、組織全体のパフォーマンスにも影響を及ぼす可能性があります。
職務等級制度のメリット・デメリット
職務等級制度のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
| ・給与と労働の関係が明確 ・人件費の変動が少ない ・スペシャリスト育成に効果的 ・スペシャリスト育成に効果的 | ・職務記述書を作成する人事業務の負担が増える ・環境変化への柔軟性が乏しい ・人材/組織の硬直化を招く ・人材が離職しやすい |
以下で、メリット・デメリットを詳細に解説していきます。
職務等級制度のメリット4つ
職務等級制度のメリットは以下の4つです。
- 給与と労働の関係が明確
- 人件費の変動が少ない
- スペシャリスト育成に効果的
- スペシャリスト育成に効果的
職務等級制度を検討している方は、メリットを理解して自社への効果を具体的にイメージしていきましょう。
給与と労働の関係が明確
職務等級制度は、従業員の職務内容と給与を明確に関連付けます。等級ごとに定められた職務基準に応じて、従業員の職務が設定・評価され、その結果に応じた給与や報酬が与えられます。
こうした仕組みは、処遇の根拠が明確化されるため従業員の納得感が高まり、組織全体としても公平性が高まります。
人件費の変動が少ない
職務等級制度では、給与と職務の関係が明瞭で、人件費の変動が少なく、将来的なコストの予測も比較的容易です。そのため、組織の予算や財務計画を立案する際に、安定性を確保する助けとなります。
また、人件費の見通しが立てやすいことで、経営資源を効率的に配分できるという利点もあります。
スペシャリスト育成に効果的
職務等級制度は、職務に応じて必要とされるスキルや知識の習得を促します。
従業員はさまざまな職務を行き来するジェネラリストではなく、特定分野の専門性を高めるプロフェッショナルとしてステップアップしながら報酬やキャリアアップが見込めます。
そのため、職務等級制度はスペシャリストの育成にメリットのある等級制度といえるでしょう。
優秀な人材を採用しやすい
職務等級制度では職務をベースとした明確なキャリアパスを提示できるので、優秀な人材を採用しやすいメリットがあります。
将来的にどのような職務を担い、どのような段階で昇進や成長の機会が得られるのかが制度として明示されるため、求職者も安心感や将来性を感じやすくなります。
将来の昇進や成長が見込める制度は、競争の激しい労働市場で組織の魅力を出す一因となります。
職務等級制度のデメリット4つ
職務等級制度のデメリットは以下の4つです。
- 職務記述書を作成する人事業務の負担が増える
- 環境変化への柔軟性が乏しい
- 人材/組織の硬直化を招く
- 人材が離職しやすい
職務等級制度を検討している方は、メリットだけでなくデメリットも理解し、より自社に適した制度設計に役立てていきましょう。
職務記述書を作成する人事業務の負担が増える
職務等級制度では、各等級に対する職務内容や評価基準を詳細に記述する必要があります。そのため、制度を運用するうえで人事部門の業務量が大きくなります。
特に、職務記述書の作成や定期的な更新作業には多くの時間と労力を要し、変化の激しい環境下では頻繁な見直しも避けられません。
人事業務の負担増加や制度の維持や改善にコストがかかる点は職務等級制度のデメリットのひとつです。
環境変化への柔軟性が乏しい
職務等級制度は定型化された評価基準に基づいて運用されるため、社会の急速な変化にともなうビジネス環境の変化への適応が難しい場合があります。
特に、職務等級制度はスペシャリストで構成されているため、これまで想定されていなかった新しい役割や職務が必要となった際に柔軟な対応が難しくなる恐れがあります。
人材配置の選択肢が限られたり、組織としての機動力や変化対応力が低下したりするリスクがある点は、制度の大きなデメリットです。
人材/組織の硬直化を招く
職務等級制度では、従業員の昇進や報酬が職務の成果に基づいて進行するため、個々の能力潜在的な成長力を十分に反映した柔軟な評価が行いづらくなります。
そのため、努力してスキルを磨いてもすぐに報酬や昇進につながらないケースが生じ、従業員や組織の成長が阻害されるおそれがあります。
組織としても人材の成長機会を十分に活かせず、長期的な発展を妨げるリスクがある点はデメリットです。
人材が離職しやすい
職務等級制度では、同様の等級制度を採用している他企業の同ポジションを見つけることが容易です。
給与や職務内容が明確に提示されているため、従業員は自分のスキルや経験が他社でどの等級に該当するのかを把握しやすくなり、その結果、他の企業に移りやすくなります。
従業員が離職しやすくなるため、優秀な人材の定着や長期的なキャリア育成に課題をもたらすおそれがあります。
役割等級制度のメリット・デメリット

役割等級制度のメリット・デメリットは、以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
| ・目標設定が明確になる ・信賞必罰の報酬設定が可能 ・合理的な評価が可能 ・組織改編や環境変化にも柔軟に対応できる ・従業員の主体性 / 自発性を促す | ・豊富な運用実績やノウハウが必要 ・役割変更が発生した場合の再定義などの運用負荷 ・一部の社員から不満が生じる |
以下で、メリット・デメリットを詳細に解説していきます。
役割等級制度のメリット5つ
役割等級制度のメリットは以下の5つです。
- 目標設定が明確になる
- 信賞必罰の報酬設定が可能
- 合理的な評価が可能
- 組織改編や環境変化にも柔軟に対応できる
- 従業員の主体性 / 自発性を促す
役割等級制度を検討している方は、メリットを理解して自社への効果を具体的にイメージしていきましょう。
目標設定が明確になる
役割等級制度は、等級ごとに明確な役割と責任を定義するため、従業員が目標設定をしやすくなる点がメリットです。必要とされる役割を基に、自身の職務や能力を客観的に把握できるため、キャリア形成やスキルアップに向けた目標を設定しやすくなります。
さらに、役割と成果が連動して示されるため、従業員は日々の業務の中でも伸ばすスキルを意識しやすくなり、成長への意欲向上にもつながります。
信賞必罰の報酬設定が可能
役割等級制度では、各等級に定められた役割や責任に応じた報酬の設定が可能です。そのため、優れた業績を上げた従業員に対しては報奨や昇進を行い、逆に業績が不振だった場合には減給や降格の措置を取れます。
組織としてメリハリのある評価制度を運用できるため、従業員は常に成果を意識して働くようになり、結果的に組織全体のパフォーマンス向上につながります。
合理的な評価が可能
役割等級制度では、従業員の貢献度や実績を役割に基づいて評価するため、公平で合理的な評価が可能です。
主観的な評価要素が少なくなるため、従業員も「なぜこの評価なのか」を理解しやすくなり、偏りのない評価を実施できます。
評価の透明性が高まると、偏りの少ない公正な評価の実施が期待できるため、従業員の納得感や信頼感を醸成する効果も得られるでしょう。
組織改編や環境変化にも柔軟に対応できる
役割等級制度は、組織の変化や環境の変動に比較的柔軟に対応できる特性があります。従来の職務だけに評価基準を置く等級制度とは異なり、能力面に評価基準があるため、制度の運用に柔軟性が生まれます。
その結果、組織改編やビジネス環境の変化にも対応が可能となり、必要に応じて人材配置や役割の見直しを迅速に行える点が大きなメリットです。
従業員の主体性/自発性を促す
役割等級制度は、従業員に対して自らの役割を理解し、責任を果たす機会を提供します。
年功序列による評価ではなく、役割の成果に対しての評価が重視されるため、従業員は「どのように成果を出すか」を意識しながら、自らの成長やキャリアパスを見据え、主体的に業務に取り組めます。
役割に応じた明確な基準が示されることで、努力の方向性が分かりやすくなり、モチベーションの向上やキャリア形成の加速にもつながるでしょう。
役割等級制度のデメリット3つ
役割等級制度のデメリットは以下の3つです。
- 豊富な運用実績やノウハウが必要
- 役割変更が発生した場合の再定義などの運用負荷
- 一部の社員から不満が生じる
役割等級制度を検討している方は、メリットだけでなくデメリットも理解し、より自社に適した制度設計に役立てていきましょう。
豊富な運用実績やノウハウが必要
役割等級制度の運用には、適切な評価基準や報酬設定などを確立するために十分な運用実績やノウハウが必要です。
特に、初めて制度を導入する場合は、基準の明確化や評価方法の整備に時間がかかり、運用に向けた試行錯誤が発生するおそれがあります。
そのため、制度設計の段階から専門的な知見を取り入れたり、段階的に導入して改善を図ったりする姿勢が重要になるでしょう。
役割変更が発生した場合の再定義などの運用負荷
役割等級制度は、組織の変化や業務の変動により、役割の再定義が必要とされる場合があります。また、役割等級制度自体も時代や業務の変化に合わせて、定期的な見直しが必要です。
このような改善作業は、運用負荷を増加させ、人事部門や管理者にとっての負担となる可能性が考えられます。
一部の社員から不満が生じる
役割等級制度では、個々の従業員のスキルや業績に応じた報酬設定のため、成果主義を反映した柔軟な処遇が可能です。
ただし、評価の過程や結果に納得できない一部の社員から不満が生じるおそれもあるため、公平性の確保やコミュニケーションの重要性を考慮し、従業員との適切な対話が求められます。
制度を円滑に運用するには、評価の基準を分かりやすく示し、公平性をいかに担保するかが重要です。
【企業別】等級制度を導入した具体例4選

等級制度は、企業の成長や従業員のモチベーション向上に大きく貢献します。ここでは、実際に等級制度を導入し、成果を上げている企業の事例を4つ紹介します。
- 株式会社ココナラ
- 株式会社アジケ
- 株式会社ISAO
- ユナイテッド株式会社
それぞれの事例を、自社事業へ置き換えながら詳しく理解していきましょう。
株式会社ココナラ
株式会社ココナラでは、従業員が評価や処遇に納得感を持てるようにするために等級制度を導入しました。制度導入後は、等級を11段階に細分化し、「裁量」「コミット範囲」「育成責任」「業務レベル」「ノウハウレベル」の5つの軸で明確に定義しています。
複数の観点から設定された等級制度は、マネージャー間の評価基準のばらつきをなくし、評価の透明性と一貫性を高めることにつながりました。
結果として、従来の基準があいまいで議論がかみ合わなかった「空中戦」の回避に成功しています。
株式会社アジケ
UXデザインカンパニーである株式会社アジケは、これまでグレードごとに求められる役割の定義がなく、職種別にスキルの高い人が昇級する傾向にあったため、新たに4段階の等級制度を導入しました。
具体的にはG(ジェネラルマネージャー)・M(マネージャー)・L(リーダー)・S(スタッフ)の、各等級に求められる役割とスキルを明確化しています。これにより、従業員は自身の役割を理解し、主体的に業務に取り組むことが可能になりました。
また、多くの社員がクリエイターであるため、全社共通の役割に加えて「職種別スキル」と「行動指針」を評価軸に導入しました。
評価軸を「等級30%、職種別スキル55%、行動指針15%」とし、専門性と企業文化への貢献度をバランス良く評価しています。
株式会社ISAO
株式会社ISAOは、等級が同じ社員の強みや弱みをどうフィードバックすべきかが課題であり、等級制度を導入しました。そこで従業員の成長を促進するために、従来の5段階等級制度を11段階へと刷新しました。
新しい等級制度では、市場価値に基づく「コア」を基準とし、5つの要素を加減点することで最終的な等級を決定します。
さらには従業員が自ら評価者を選び、360度評価によって等級が決まります。等級と給与が連動し、全社員に等級が公開されることで、透明性の高い評価と成長機会を提供しています。
ユナイテッド株式会社
ユナイテッド株式会社では、従業員の自律的な成長を支援するため、2015年から「グレードアップ宣言」という育成支援制度の運用を開始しました。
総合職・エンジニア職・デザイナー職の職種と、L職(リーダーシップ)・P職(プロフェッショナル)の役割で構成されています。また、グレード2への昇格時に、L職とP職の選択が可能で、マネジメントか専門性の追求かを自身で決定します。
制度を導入することにより、従業員は自身のキャリア目標を明確にし、主体的に成長に取り組むようになりました。グレードアップ宣言後、年間昇格数が倍以上に増加しています。
どの等級制度を導入すべき?役割等級制度がおすすめ
等級制度の導入を検討している場合は、役割等級制度がおすすめです。
従来から広く採用されてきた職能等級制度は、年功序列の色合いが強く、モチベーションを低下させる要因になると指摘されています。
そのため、職務内容に応じて処遇を決めるジョブ型(職務等級制度)が注目されています。しかし、日本企業の慣習や文化とは大きく異なる仕組みであり、乖離解離が大きいため馴染まない企業も少なくありません。
そこで、等級制度には、職能等級制度と職務等級制度の両者のメリットを盛り込んだ「役割等級制度」がおすすめです。役割等級制度は、役割や責任を基準に成果と処遇を結びつけるため、従業員の成長やキャリア形成の支援にもつながります。
ただし、組織の特性や文化に合わせた適切な制度の構築が欠かせません。役割等級制度の導入・運用では、制度の設計や運用の工夫が必要でしょう。
まずは現状を正しく把握し、自社に合った形で役割等級制度を導入をおすすめします。
等級制度の作り方は?基本の手順4つ

具体的に等級制度の設計方法を紹介します。
- 等級制度の方針を決める
- 等級数を決める
- 等級ごとの定義を決める
- 等級ごとに具体的な内容を決める
各等級の役割や期待される能力を明確にすると、従業員の成長とモチベーション向上につなげられます。
Step1 等級制度の方針を決める
まず大切なのは、等級制度の方針を決めることです。
今まで見てきた通り、各等級制度にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。
それぞれのメリット・デメリットを十分に把握したうえで、自社の課題と照らして、どの等級制度が現状改善に1番近いかどうかの選定が重要です。
また、等級制度はその組織がどのような人材を必要としているのか、経営目標や実現したい組織の姿に直結します。企業組織としてありたい姿を考えたうえで、選定を行いましょう。
Step2 等級数を決める
等級制度の方向性が固まったら、各等級に細分化して等級数を決定しましょう。
管理職層2〜3、一般社員層3〜4程度で区分するのが適当です。
等級数が少なすぎると等級の幅が広がるため、同じ等級のなかで明らかにレベルの差がある社員が混在してしまいます。逆に、多すぎると、等級の差がわかりにくくなるデメリットがあるでしょう。

関連記事:会社の役職についてまとめた記事はこちら
Step3 等級ごとの定義を決める
次に等級ごとに定義を決めましょう。役割等級制度での設計方法を記載していき、行うべき役割と、達成できる能力を定義します。
部門や職種に関わらず適用できる内容にしましょう。

Step4 等級ごとに具体的な内容を決める
さらに細分化し、等級ごとに職種軸で役割を整理し、具体的な内容を記述します。
役割を具体化すると、等級と職種ごとに、具体的な役割に沿った目標設定も容易となるでしょう。

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【注意点】等級制度を作る際のポイント5つ

ここからは、等級制度を設計する際に押さえたいポイントを5つ解説します。
- 目的を明確にする
- わかりやすい制度にする
- 公平性を意識する
- 社員の理解を得る
- 継続的に改善していく
上記の注意点を理解して等級制度を設計しなければ、企業成長へつながる効果を発揮できません。制度設計の時間や費用を無駄にしないためにも、上記ポイントを押さえた等級制度を作っていきましょう。
目的を明確にする
等級制度を作る際は、目的の明確化が必要です。目的が曖昧な等級制度は、精度の内容が一貫せず、社員の不満や運用の形骸化を招きます。
以下に等級制度を作る際の目的の具体例をまとめました。
| 目的 | 取り組む内容 |
| 公平感・納得感を醸成 | 処遇の基準化をするため等級ごとに給与・昇格基準を整理する |
| キャリア形成を支援 | 能力開発の推進に向けて必要スキルや役割を明示する |
| マネジメント効率化 | 組織運営の権限や責任範囲を整理する |
上記のように、異なる企業課題や戦略によって、設計すべき等級制度の内容もさまざまです。
制度を設ける理由やなぜ実施するのかがわかりやすくなっていると、組織全体へも浸透しやすくなり、最短で効果を実感しやすくなるでしょう。
わかりやすい制度にする
等級制度は、社員が理解しやすい内容であることが重要です。
複雑すぎる制度は理解しづらく、誰も使いこなせない仕組みになってしまい、評価も育成も中途半端で終わります。以下はわかりやすさを高める工夫の例です。
- 等級制度を表形式で簡潔に整理する
- 「リーダー」「マネージャー」などの混同しやすい用語を明確化する
- 制度を説明する文章をどのような人でも理解できるように簡素にする
シンプルで見やすい制度は現場で意識されやすくなり、結果として当初の目的に沿った組織運営が可能になります。
公平性を意識する
等級制度を設計する際は、公平性が何よりも欠かせません。
公平性を欠いた等級制度は必ず不満を生みます。例えば、基準が不透明な等級制度は「忖度している」「上司の好みで評価されている」などの疑念が芽生えやすく、制度が形骸化します。
以下は等級制度の公平性を確保するポイントです。
- 定量と定性を組み合わせる
定量:売上達成率、顧客数、KPI
定性:行動特性、リーダーシップ、協働姿勢
- 共通基準と職種別基準を両立する
全社員に共通する「行動基準」
職種別に必要な「専門能力」
- 評価者研修の実施
評価する側の人間の認識違いを抑える
公平な評価制度には、仕組みによるアプローチと、評価者の透明性の両輪が重要です。
時間の経過とともに評価者や制度内容が変化しても、常に公平性の保たれる内容を意識し続けることで、組織運営に貢献する評価制度を維持できます。
社員の理解を得る
等級制度を設計する際は、社員の理解と納得を得ることも重要です。経営層のみで確定した評価制度は、「一方的に押し付けられた」と社員に受け取られやすく、評価される仕組みではなく管理される仕組みになる恐れがあります。
事前説明会やQ&Aの場を設けたり、制度改善への参加を促したりして、社員の声を拾う姿勢を見せることで、社員の理解を得られる等級制度を設計できます。
特に、「なぜこの基準なのか」「どのように給与へ反映されるのか」、具体的な説明が不可欠です。
継続的に改善していく
等級制度は完成して終わりではなく、常にアップデートが必要です。事業環境や社員の価値観が変わると制度が機能しなくなり、当初の目的や目標を達成できなくなります。
等級制度の改善は、定期的なレビューや現場のフィードバックなどを重ねて、小さな改善が重要です。
例えば、市場や競合が変化して従来の等級制度では企業価値の低下を招くリスクが発生した場合、年に一度のような大きな改定だけでは他社に遅れをとってしまいます。
等級制度を設計したら、小さなフィードバックと改善を繰り返し、変化に合わせて進化させることで、長期的な成功につながります。
等級制度の見直しによって業務が改善した事例

実際に、職能等級制度から役割等級制度へと移行した電子機器関連商社の事例を見てみましょう。
- 導入の経緯
- 役割等級制度の内容
- 導入後の効果
- 総括
等級制度の見直しにより、組織の活性化と人材の最適配置を実現した過程を知り、自社への導入を検討してください。
1.導入の経緯
当社は従来、職能等級を採用してきましたが、急激な社会環境の変化にともない事業を維持・成長させるために役割等級制度の導入へと至りました。
1番の要因は、商社ビジネスそのものの変化。IT技術の進歩によりビジネスが急速に普及し、商社の伝統的な役割であった物流・納期管理、売掛債権管理などの仲介機能を必要としないメーカーも増加していきました。
結果、商社として必要とされることは、アイデアを提案しメーカーと共同で製品を開発する機能へと変化してきています。このように、中核をなすビジネスが変化したことで、従業員に求めるスキルも変化していったのです。
役割等級制度を導入したのは、従来積み上がってきた陳腐化したスキルよりも、環境変化に柔軟に対応できるスキルを社内に求めるようになった経緯があります。
2.役割等級制度の内容
非管理職は従来通り職能等級制度を維持しつつ、2000年から管理職を対象として役割等級制度を導入しました。
経営戦略に対して貢献度を設定し、そのための役割を分類して各社員を等級分けする制度です。役割等級制度のポイントは、厳密には職務分析を経ない点でしょう。
また、工夫している点として、一定の割合については過去の査定点の合計を「貢献等級」として下げない仕組みを採用しています。
役割等級制度は、毎回の評価ごとに、その期間の役割への貢献度によって賃金が決まるため、さまざまな要因により賃金が激しくアップダウンするリスクもあります。 等級によっても割合は違うようですが、評価時の役割への貢献度で基本給の60%、過去の貢献度で40%が決まる仕組みです。
3.導入後の効果
役割等級制度を導入する前の1996年時点では勤続年数を10年かけるとほかの査定点がまったく変わっていなくても賃金が10%上昇する状態でした。
導入後の2001年では、たとえ勤続年数を30年に延ばしたとしても2.6%としか賃金が上昇しないものの、査定点が80点まで上がると103.9に上がり1996年と比較して査定による効果が大きくなっていることがわかります。
職能等級制度で特徴的な年功序列での評価が薄まる一方で、個人の成績や貢献度で決まる役職による評価が強まっている結果となりました。
4.総括
IT技術によりビジネス環境のスピードが急速に変化し、次々に新たなサービスが登場しています。
そういった状況下で会社が生き残るためには、割合に違いはあるものの役割等級制度に近い仕組みを活用すると、柔軟かつ成長が期待できる組織を目指せるでしょう。
参考文献:「日本企業の賃金改革を検証する」
自社に合った等級制度を構築しよう

等級制度には代表的なものとして、職能等級制度、職務等級制度、役割等級制度の3つがあります。実際の運用は、自社で培ってきた従来の制度を残しつつ、今の時代に合った制度を部分的に導入している企業が多いようです。
そのなかでも、役割等級制度は職能等級制度と職務等級制度の中間のような立ち位置で、日本企業に合った等級制度として注目されています。
しかし、比較的最近登場した制度のため事例が蓄積されておらず、構築・運用の面では工夫が必要となります。自社の特性や文化に合わせた等級制度の構築が重要ですので、まずは現状を把握し、自社に最適な等級制度を選定しましょう。外部コンサルタントの力を借りるのも一つの手段です。
導入後も、運用しながら定期的に見直しを行い、PDCAサイクルを回して継続的な改善につなげていきましょう。
等級制度に関するよくある質問

等級制度に関するよくある質問は、以下の通りです。
- 会社の4等級とはなんですか?
- 等級のない人事制度とはなんですか?
- 等級制度は給与に影響がありますか?
それぞれ、以下で詳しく解説します。
会社の4等級とはなんですか?
会社の4等級制度とは、従業員を能力や役割の違いによって4つの段階に分ける人事の仕組みです。
一般的には、入社直後の社員が1等級からスタートし、業務の熟練度や責任の範囲に応じて等級が上がっていきます。等級による役割の例を、以下に紹介します。
| 等級 | 役割 |
| 1等級 | 業務の基本を覚える段階 |
| 2等級 | 業務の基本を覚える段階 |
| 3等級 | 後輩指導なども含まれる中堅層 |
| 4等級 | チームやプロジェクトを統括する立場 |
この等級分けによって、会社は人材の能力を可視化しやすくなり、教育や評価、配置の方針を明確にできます。
ただし、4等級という区分はあくまで一例であり、業種や企業規模によって数や内容は異なるため、自社の方針に合った設計が必要です。
等級のない人事制度とはなんですか?
等級のない人事制度とは、従業員を階層的にランク付けしない人事の仕組みのことです。
従来の制度では、能力や経験、職務内容に応じた等級によって給与や昇格が決まっていましたが、このような固定的な枠組みをなくして柔軟な評価を重視します。
この制度のメリットは、変化の激しいビジネス環境でもスピーディーに人材マネジメントが行える点です。一方で、明確な基準がないことから、評価に対する納得感や公平性を保つために、丁寧なコミュニケーションと透明な運用が求められます。
等級のない人事制度を適切に運用して、成果につなげましょう。
等級制度は給与に影響がありますか?
等級制度は、給与の決定に関わる重要な指標のひとつです。企業は、等級ごとに求められるスキルや責任の重さに応じて処遇基準を設け、給与テーブルを設定するからです。
例えば、同じ職種であっても、3等級の社員と5等級の社員では、基本給や賞与の水準が異なります。
これにより、業務の成果や役割の重さに応じた報酬が支払われる仕組みとなり、従業員の成長意欲やキャリア意識を高める効果が期待できます。
ただし、運用の仕方によっては「年功序列」と誤解されることもあるため、実力や貢献度が正しく反映される評価制度と連動させることが重要です。給与と等級を連動させて、公平性と透明性を両立させた処遇を実現させましょう。
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