等級制度とは?職能・職務・役割等級の概要と事例を基に作り方を解説

等級制度のイメージ

近年コロナ禍の影響によりリモートワーク導入など働き方が変化する一方で、等級制度を含めた人事制度について変革が迫られています。

2021年1月には日本経済団体連合会より、従来の画一的な日本型慣習慣行の限界が顕著化していることが指摘されており、企業は新卒を含める全体的な人事制度の改革が求められている状態です。

そこで今回は、人事制度の中核を担う「等級制度」について、種類や実例、制度の設計方法などを重点的に解説します。

等級制度とは

そもそも等級制度とは、社員を能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、さらには処遇などの根拠となる制度のことです。

人事制度を構成する評価制度、報酬制度と並び、3本柱のうちのひとつとなります。
また、等級制度はその組織がどのような人材を必要としているのかというモデルにもなるため、組織の風土や企業文化などとも関連する、重要な役割を担う制度と言えるでしょう。

代表的な等級制度には、職能等級制度、職務等級制度、役割等級制度の3つがあります。

1.職能等級制度とは

メリット デメリット
人材の長期確保が可能 長期的には人件費が高騰する
組織改編を迅速に行える 年功序列による若手社員のモチベーション低下
役職やポスト不足に対する不満解消に繋がる 評価基準が曖昧になる

職能等級制度とは、仕事を通じて能力が蓄積され成熟していくことを前提とした等級制度です。企業が社員に求める職務務遂行能力を基準に、区分・序列化します。

勤続年数が長くなれば、それだけ職務を遂行する能力が高いと定義付けるため、「年功序列」や「終身雇用」を前提とした制度です。
従来から日本の多くの企業で取り入れられてきた等級制度で、日本固有の仕組みだと言われています。

一方で、長期的には人件費が高騰する、年功序列による若手社員のモチベーション低下、評価基準が曖昧になるなどのデメリットがあり、近年特に改革が必要と言われている等級制度でしょう。

職能等級制度の下では、人材を雇用してから、部署異動や転勤などを繰り返して、キャリアアップをしていくのが一般的です。そのため、企業への帰属意識が高まり人材の長期確保が可能で、組織改編やポスト不足への不満解消が期待できるメリットがあります。

2.職務等級制度とは

メリット デメリット
給与と労働の関係が明確 職務記述書を作成する人事業務の負担が増える
人件費の変動が少ない 環境変化への柔軟性が乏しい
スペシャリスト育成に効果的 人材/組織の硬直化を招く
優秀な人材を採用しやすい 転職しやすい

職務等級制度とは、職能等級制度とは対照的にジョブ(職務)の価値のみを査定する等級制度です。

職務等級制度は欧米では主流の制度で、あらかじめ職務記述書に業務内容・求める能力・労働時間・勤務地を明確に定めた上で、人材を採用し、社員は基本的に職務の範囲内の仕事に責任を負います。

会社は定められた職務以外の配置転換はできない一方、その職務がなくなった場合は契約を解除することがあります。そして、欠員が出た場合に採用活動を行うため、通年採用が一般的です。

職務等級制度の下では、給与と労働の関係が明確なため、評価も明瞭で、実力主義の人材にとってはモチベーションアップにつながりやすいでしょう。 また、人件費の変動が少なく、スペシャリストの育成や優秀な人材の確保にメリットのある仕組みです。

一方で、職務を明確にするための記述書を作成する負担が増え、既存の人材による環境変化への対応が難しく組織の柔軟性が低くなるなどのデメリットがあります。また、熟練したスキルを持って、高い賃金など条件のよい他の企業に転職するリスクもあるでしょう。

3.役割等級制度とは

メリット デメリット
目標設定が明確になる 豊富な運用実績やノウハウが必要
信賞必罰の報酬設定が可能 役割変更が発生した場合の再定義などの運用負荷
合理的な評価が可能 一部の社員から不満が生じる
組織改編や環境変化にも柔軟に対応できる  
従業員の主体性 / 自発性を促す  

役割等級制度とは、ジョブ(職務)に対してだけでなく、本人の能力も考慮する社員の役割について査定する等級制度です。
管理職・非管理職に関わらず、社員一人一人に企業が求める役割を設定し、その成果に応じて等級を区別・序列化する仕組みとなります。

年功制を排除し、勤続年数や年齢、キャリアの有無に関係なく、高い成果を出すことで若手社員でも昇格・昇給が可能です。一方で、「役割を果たしていない」と判断されると降格・降級もあり得ます。

目標設定が明確になり、職務と能力双方にバランスのとれた合理的な評価が可能です。組織改編など柔軟性のある対応ができ、従業員の主体性をひきだせるメリットがあります。
一方で、実例が少ないため運用にはノウハウが必要で、役割が変更した場合に再定義が必要というデメリットがあるでしょう。

近年、大手企業では「ジョブ型」(職務等級制度)の導入が進んでいます。ただ、実態としては、職務等級と職能等級の間をとった役割等級制度を導入しているケースが多いでしょう。

等級制度の事例

実際に、職能等級制度から役割等級制度へと移行した電子機器関連商社の事例を見てみましょう。

導入の経緯

該社は従来から職能等級を採用してきましたが、急激な社会環境の変化に伴い事業を維持・成長させるために役割等級制度の導入へと至りました。

一番の要因は、商社ビジネスそのものの変化。IT技術の進歩によりeビジネスが急速に普及し、商社の伝統的な役割であった物流・納期管理、売掛債権管理などの仲介機能を必要としないメーカーも増加することになりました。

結果、商社として必要とされることは、アイデアを提案しメーカーと共同で製品を開発するという機能へと変化してきています。
このように、中核をなすビジネスが変化したことで、従業員に求めるスキルも変化することとなったのです。

役割等級制度を導入したのは、従来から積み上がってきた陳腐化したスキルよりも、環境変化に柔軟に対応できるスキルを社内に求めるようになったという経緯があります。

役割等級制度の内容

非管理職は従来通り職能等級制度を維持しつつ、2000年から管理職を対象として役割等級制度を導入しました。

経営戦略に対して貢献度を設定し、そのための役割を分類して各社員を等級分けする制度です。この役割等級制度のポイントは、厳密には職務分析を経ないという点でしょう。

また、工夫している点として、一定の割合については過去の査定点の合計を「貢献等級」として下げない仕組みを採用しています。

役割等級制度は、毎回の評価ごとに、その期間の役割への貢献度によって賃金が決まるため、様々な要因により賃金が激しくアップダウンするリスクもあります。 等級によっても%は違うようですが、だいたい評価時の役割への貢献度で基本給の60%が決まり、過去の貢献度で40%が決まる仕組みです。

導入後の効果

役割等級制度を導入前の1996年時点では勤続年数を10年かけると他の査定点が全く変わっていなかったとしても賃金が10%上昇する状態でした。

導入後の2001年では、たとえ勤続年数を30年に延ばしたとしても2.6%としか賃金が上昇しないものの、査定点が80点まで上がると103.9に上がり1996年と比較して査定による効果が大きくなっていることがわかります。

職能等級制度で特徴的な年功序列での評価が薄まる一方で、個人の成績や貢献度で決まる役職による評価が強まっているという結果となりました。

総括

IT技術によりビジネス環境のスピードが急速に変化し、次々に新たなサービスが登場しています。

そういった状況下で会社が生き残るためには、割合に違いはあるものの役割等級制度に近い仕組みを活用することで、柔軟かつ成長が期待できる組織を目指せる可能性が高まると言えるでしょう。

参考文献:「日本企業の賃金改革を検証する

第8回労働調査セミナー

等級制度の作り方

それでは、具体的に等級制度の設計方法を紹介します。

Step1 等級制度の方針を決める

まず大切なのは、等級制度の方針を決めることです。
今まで見てきた通り、各等級制度にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。

それぞれのメリット・デメリットを十分に把握した上で、自社の課題と照らして、どの等級制度が現状改善に一番近いかを選定することが重要です。

また、等級制度はその組織がどのような人材を必要としているのか、経営目標や実現したい組織の姿に直結します。企業組織としてありたい姿を考えた上で、選定を行いましょう。

Step2 等級数を決める

等級制度の方向性が固まったら、各等級に細分化して等級数を決定しましょう。
管理職層2~3、一般社員層3~4程度で区分するのが適当でしょう。

等級数が少なすぎると等級の幅が広がるため、同じ等級の中に明らかにレベルに差がある社員が混在してしまいます。逆に、多すぎると、等級の差がわかりにくくなるデメリットがあるでしょう。

Step3 等級ごとの定義を決める

次に等級ごとに定義を決めていきます。ここでは、役割等級制度での設計方法を記載しています。行うべき役割と、達成できる能力について定義します。
部門や職種に関わらず適用できる内容にしましょう。

Step4 等級ごとに具体的な内容を決める

さらに細分化し、等級ごとに職種軸で役割を整理し具体的な内容を記述します。
そうすることで、等級と職種ごとに、具体的な役割に沿った目標設定も容易となるでしょう。

自社に合った等級制度を構築しよう

等級制度は代表的なものとして、紹介させて頂いた通り3つの制度あります。
ただ、実際の運用としては、自社で培ってきた従来の制度は残しつつ今の時代にあった制度を部分的に導入している会社が多いようです。

その中でも、役割等級制度は職能等級と職務等級の中間のような立ち位置で、日本企業には合った等級制度として注目されています。

しかし、 比較的最近登場した制度のため事例が蓄積されておらず、構築・運用の面では工夫が必要となります。外部コンサルタントの力を借りるのも一手でしょう。

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