サボタージュの意味とは?ただ単にサボるとは違う!企業は種類を知って注意しよう

(画像=Tero Vesalainen/iStock)

サボタージュとは、怠業と呼ばれる労働争議の一種です。
日本においては「サボる」の語源になっており、単に業務を怠ける行為を連想する人も少なくありません。

しかし、実際のサボタージュは労働者が企業に対して、自分たちの要求を通すための手段です。

企業の人事・労務担当者は、争議手段であるサボタージュについてよく理解したうえで、対策や防止策を考えていく必要があります。

今回は、サボタージュの基本的な知識と組織への影響、具体的な対応策について詳しく見ていきましょう。

サボタージュの意味とは?

サボタージュは、労働者による争議手段の1つです。一般的に、怠業の意味で理解されていますが、語源については諸説があります。

諸説の内のひとつとしては、フランスの労働者が、フランス語で木靴を意味するサボ(sabot)を使用して、生産の停止や、仕事の効率を低下させる行為が語源となって、労働者が行う怠業的行為にサボタージュという名がつけられたと言われています。

サボタージュの種類

サボタージュは大きく下記、3種類に分けられます。

  1. 積極的サボタージュ:機械や製品を破壊し、故意に不良品を生産するなど業務を積極的に妨害する行為
  2. 開口サボタージュ:製品の悪口などを外部に吹聴するなどによって間接的に業務を妨害する行為
  3. 消極的サボタージュ:表面的には通常通り仕事を続けながら、上司の業務命令に対して、意図的かつ部分的に服さない行為

日本では、消極的サボタージュとして、「サボタージュ」を捉えるのが一般的です。
また、日本ではサボタージュという言葉が変化して、単に業務を怠ける行為を「サボる」というようにもなりました。

争議手段の中のサボタージュの立ち位置とは?

日本においては、怠業という意味のサボタージュが単なる「怠け」という意味を持ち、「サボる」という言葉になりました。

しかし、本来のサボタージュは労働者にとって正当な争議手段です。
では、さまざまな種類がある労働争議のなかにおいて、サボタージュの立ち位置とはどういうものでしょうか。

ストライキ

労働者が一斉に業務を停止する争議行動を「ストライキ」と呼びます。日本語では同盟罷業と訳されますが、単に「スト」と略されることが多いです。

ストライキは、争議行為のうち最もよく使用される手法で、業務を阻害することによって、使用者に圧力をかけ、労働者側の要求を通すことを目的とします。

時限ストや部分ストと呼ばれるものもあり、これらが一種のサボタージュとみなされるケースもあります。

サボタージュ

労働者が団結・協力して、意図的に業務の量や質を低下させる行為を言います。

完全に労務を提供していないわけではないので、その点で通常のストライキとは区別されます。

サボタージュには、先ほど説明した通り、3種類の争議方法があり、正当な労働争議と認められる可能性が高いのは、消極的サボタージュのみです。

ピケッティング

ピケッティングは、労働争議の際に工場の入口でスクラムを組んだり座り込んだりして、ストライキをスト破りから防衛する行為です。

また、一般市民にボイコットを呼びかけることも、ピケッティングの一種とされます。

ストライキの有効性を確保するための補助的かつ不可欠な行為ではあるものの、労働者の就労阻止や原材料の搬入阻止などの積極的行為です。

そのため、ピケッティングのどこまでが、正当な争議行動かという問題もあります。

ロックアウト

ロックアウトとは、ピケッティングとは反対に労働者を締め出し、就労を妨げる行為を指します。

労働争議発生により、労使勢力の均衡が破れた場合や、使用者が極端に不利な状況に陥った場合など、限られた状況限定で労働争議として認められます。

会社や店舗などを閉鎖することにより、労働者が業務を行えない状況に仕向け、労働者に対して賃金を支払わないことでストライキに対抗することを目的に実行されます。

ボイコット

ボイコットとは、労働者が団結して「自社製品・自社サービスを購入しない」という不買運動を実施する争議行為です。

ボイコットにより、企業の売上が直接下がるため、大手の企業にとっては圧力になるケースもあります。

労働者が争議行為の目的達成のために、ボイコットを行うことは原則的には、合法とされています。

ただし、ボイコットの対象となる企業の取引先に対して、取引停止や不買を訴えかけることは、違法とされているようです。

消極的サボタージュであれば免責を受けられる

日本において、労働者の争議行為に関する権利は法律で認められています。
それを保証するものとして、争議行為に対する免責があります。

労働争議に対する免責には、刑事免責と民事免責があり、正当な争議行為については刑事罰の対象にならず、損害賠償を求められることもありません。

さらに、「不利益取扱の禁止」も認められており、争議行為に参加した労働者について、争議に参加したことを理由に、解雇や懲戒処分を科すことも禁じられています。

ただし、正当な争議行為とは、あらゆる争議行為を指すわけではありません。

例えばサボタージュであれば、先ほども触れた通り、原則として積極的サボタージュと開口サボタージュは正当な争議行為として認められず、消極的サボタージュのみが免責を受けられる可能性があります。

サボタージュが起きる原因は主に4つ

労働争議が行われる理由はさまざまですが、その主な原因は4つあり、「賃金」「労働条件」「経営・雇用・人事」「政治的な要因(規制緩和反対など)」です。

1.賃金

賃金に関するサボタージュは、いわゆる賃上げ交渉のための争議行為です。

労働者が自分たちの労働と賃金が見合っていないと感じる際、使用者と賃金に関して交渉を行います。

しかし、使用者側との交渉が難航したり拒絶されたりした場合、サボタージュを通じて圧力をかける場合があるのです。

2.労働条件

労働条件について行われるサボタージュは、例えば労働者側が希望する勤務時間を超過するなど、望ましくない労働環境を与えられた際に行われます。

ただし、一般的にはサボタージュが行われる前に使用者と交渉するケースが多く、そこで解決が見いだせない場合のみ争議行為に発展します。

3.経営・雇用・人事

経営陣の方針や、雇用・解雇に関する問題から、サボタージュに発展するケースもあります。

自社の現状に対して、労働者側が経営方針の変更を求めるための争議行為としてサボタージュを選択するのです。

また、不当な解雇通告や、不公平な人事評価に対抗するという目的で行われる場合もあります。

4.政治的な要因(規制緩和反対など)

政治的な要因によってサボタージュが行われるケースもあります。

たとえば、特定の業界にとって不利となるような規制緩和が行われそうになっている場合、その業界の労働者が団結して大規模なサボタージュに発展することがあるのです。

この場合、他のケースと異なり、経営陣との交渉よりも社会に対する訴えに重点が置かれています。その意味でも、規模が大きくなる可能性があるでしょう。

サボタージュが組織に与える影響

労働者によるサボタージュが発生すると、企業などの組織にとって好ましくない影響が発生します。

労働者が業務を休んだり、あるいは一部の業務を拒否したりするため、どうしても製品・サービスの量や質が低下します。

それは売上の減少につながり、利益も低下することになります。

また、業務のスピードが下がるために納期に間に合わず、顧客や取引先からの信用を失う可能性もあるでしょう。

賃金に関するサボタージュが行われると、労働者に支払う賃金を上昇しなければならないケースもあります。

他にも、人事制度や雇用条件などの変更を迫られ、企業側が想定していなかった制度変更を承認せざるを得なくなる場合も考えられます。

サボタージュを含めた労働争議は、企業にとってはリスクではありますが、これは労働者に認められた権利でもあるため、企業はしっかりと対策をしておくことが大切です。

サボタージュへの対策

サボタージュへの対策を考えるうえで、もっとも重要なのは原因を理解することです。

例えば、賃金や人事制度への不満が発生する大きな要因のひとつには、評価制度の不備が原因として考えられます。

公平性のある人事評価が行われないからこそ、賃金が低いと感じたり人事が不当に思えたりするのです。

こういった場合は、事前に社内の評価制度を整備し直すことで、労働者がサボタージュを行う原因を取り除ける可能性があります。

まずは、労働者が抱いている不満を把握することで、不満が発生している原因を特定し改善していくことが重要でしょう。

また、そのような労働者の不満を見逃さないように、受け口となる場をつくることも大切です。

労働相談窓口を整備することで、労働者が抱く不満や希望について、企業側に訴えられる仕組みを作るようにします。

労働争議に発展する前に、労働者側の希望にできる限り応じるようにすれば、サボタージュを未然に防ぐことも可能でしょう。

実際に起きたサボタージュの事例

日本で最初にサボタージュ闘争を起こしたのは、神戸の川崎造船所といわれています。1919年に、川崎造船所本社の従業員たちは、賃上げや賞与支給といった労働条件の改定を会社側に要求します。しかし、当時の社長が明確な回答を避けたため、約1,600人の従業員はサボタージュに踏み切ったのです。

これを受けて、会社側は8時間労働制の実施し、かつ同額賃金を支給することを表明。10日間続いた争議は収束することとなります。この事件は全国的にも大きな反響を呼び、他の工場でも労働条件の改善を呼びかける動きが広まりました。

参考:神戸市役所「神戸を知る 8時間労働発祥の地」

米国戦略諜報局(OSS)の「サボタージュ・マニュアル」とは?

米国戦略諜報局(OSS)の「サボタージュ・マニュアル」とはCIAの前身の組織が発表した、サボタージュによって組織の機能を低下させる方法を網羅したマニュアルのことです。第二次世界大戦時に作成されたものであり、敵国を弱体化させるために使用されました。

例えば、管理職として潜入したスパイに対しては、能力の低い従業員を厚遇し、能力の高い従業員を粗雑に扱うことで、従業員の生産性を下げる方法が掲載されています。また、従業員として潜入した場合は、便利なツールがある場合であっても可能な限り不便なツールを使用し、時間をかけて作業する方法などについて記載されています。

上記の例のような「サボタージュ・マニュアル」に該当する社員が在籍している場合、会社が弱体化します。サボタージュの知識を通して、逆説的にマネジメントの本質を学ぶことができます。

サボタージュを含めた労働争議に備えよう

サボタージュは日本において「サボる」という言葉に変化し、それに近い意味を連想しがちです。

しかし、本来は労働争議の手段を意味し、労働者には労働争議の手段としてのサボタージュを行う権利があります。

ただし、サボタージュには免責を受けられる正当なものと、そうではないものがあるため、きちんと分けて理解しておくべきです。

日本ではサボタージュを含め、労働争議の件数が少なくなってきていますが、今後、海外展開をしている会社は、特にアジアなどを中心に、サボタージュなどの労働争議が起こるリスクが高まっています。

担当者は争議に発展しないように、社員が労働に不安を抱かずに済む組織づくりを心がけましょう。

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