クレドとは?企業が導入する効果や注意点、導入事例を紹介

(画像=itakayuki/iStock)

企業が事業を継続するために注目されているのが「クレド」です。
クレドとは、企業の活動方針を簡潔に表した言葉で、全従業員の行動や考え方の模範となるものです。

このクレドを企業が明確に掲げることで、従業員の意識改革やモチベーション・アップが期待できます。そのため、人事担当や経営層はクレドの効果やメリット、従業員へ浸透させる方法などを把握しておかなければいけません。

そこで、ここではクレドの意味や企業が導入する効果、注意点などを具体的な導入事例を挙げて解説していきます。

クレドとは?

クレドという言葉自体は、アメリカの大手医療品メーカーである「ジョンソン・エンド・ジョンソン」の13代社長ロバート・ウッド・ジョンソンJrによって考案され、世間に広まりました。近年では、日本国内でも導入する企業が目立ってきています。

クレドの意味は?

クレドは、ラテン語「Credo」が語源で、「信条」や「行動方針」などと訳されます。従業員の行動方針を具体的に定めた内容で、業務において判断に迷ったときに参考にしたりします。

例えば、次のような内容です。

  • 「常に顧客満足の最大化を考えて行動する」
  • 「現状に満足せず、常に新しいチャレンジを」

従業員に共有されるクレドですが、部署やグループ単位、もしくは個人単位に定められるものではなく、経営層も含めた全従業員を対象としているのが特徴です。

ミッションやビジョンとの違いは?

また、クレドに似た言葉で、企業が掲げる「ミッション」や「ビジョン」があります。

ミッションとは

ミッションとは企業が事業活動を行っていくにあたり、従業員が果たすべき社会的使命や価値観を指しています。

ビジョンとは

ビジョンとは、企業の目標や進むべき方向性を言語化したもので、企業のあるべき姿として従業員に共有するものです。

これらの「ミッション」や「ビジョン」は、その性質から抽象的な表現になる傾向があります。しかし、クレドは、より具体的な行動を示しているのが大きな違いであり、特徴でもあるのです。

企業理念や経営理念との違いは?

また、近いニュアンスとして「企業理念」や「経営理念」という言葉も使われます。いずれも、企業や組織が何のために存在しているのかを明文化したものです。

企業の創業者の信条や大切にしている考え方などが反映されたものであり、従業員の具体的な行動に関して触れているクレドとは大きく異なります。

「企業理念」や「経営理念」に関しても、抽象的な言葉で表現されることが多く、この点に関してもクレドとは違いがあります。

クレドが注目される理由とは

近年、クレドが注目されるようになった背景には、度重なる企業の不祥事が関係してきます。

米国のエンロン事件に代表される不祥事が起きたことから、企業はコンプライアンスの強化や法令遵守に力を入れてきました。その流れのなかで、従業員の具体的な行動規則を表現した「クレド」が注目されるようになったのです。

前述したとおり、クレドはアメリカで生まれた概念ですが、日本企業にも同様にコンプライアンス対策や法令遵守に対する意識は高まっています。そのため、クレド自体も、日本に浸透しつつあります。

クレドの導入効果と注意点

それでは、企業がこのクレドを導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。企業が一方的にクレドを掲げても、従業員に浸透しなければ何の効果も期待できないですよね。そこで、ここでは企業がクレドを導入するメリットや注意点について解説していきます。

クレドの導入効果

導入の効果には、まず従業員のモチベーション・アップがあります。コンプライアンス対策を踏まえたクレドに従って行動することで、社会への貢献がより実感できるからです。

さらに、クレドによる、従業員の意識改革といった効果も期待できます。クレドは、より具体的な行動として落とし込まれているので、従業員は実践しやすく、意識にも変化が生まれるからです。もちろん、従業員の個人的な成長、人材育成にも繋げることができます。

さらに、全従業員がクレドに従って行動すれば、組織全体の仲間意識や統一感が生まれ、組織にとって大きなプラスとなります。

クレド導入における注意点

このクレドを導入する際に注意しなければいけないことが、経営者の独自の判断で内容を決めないことです。

ここまで説明している通り、クレドは全従業員の行動方針を示したものです。当然ながら、経営者の独断と偏見で内容を定めてしまっては、従業員がスムーズに受け入れることはできません。

導入にあっては、全従業員にアンケートを取り、その意見や考え方、アイデアを土台としてクレドを作っていくのが一般的とされています。

また、企業によっては、自社のお客様からアンケートを取り、それをクレドに反映させている会社もあるほどです。

クレドを従業員に浸透させるには

そして、このクレドですが、企業として定めただけでは、従業員に浸透するものではありません。

当然ながら、従業員が活用しなければ、何の効果も生まれません。それでは、組織で働く従業員に浸透させるためには、どのような方法があるのでしょうか。

クレドカード

クレドを従業員に浸透させる方法として最も有名なのが「クレドカード」です。クレドの内容を記載したカードを発行し、それを全従業員に配布します。
従業員はクレドカードを常に携帯することで業務中にいつでもクレドを見返せるようになります。

クレドの導入事例

さて、ここまで企業が導入する「クレド」の概念や効果などについて話してきました。ここからは、さらに理解を深めてもらうため、実際の企業の導入事例を紹介していきます。

従業員の意識改革やモチベーション・アップに繋がっている成功事例ですので、人事担当の方は、ぜひ参考にしてください。

事例1:ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレド

最初に紹介する導入事例が、クレドの発祥元として有名な「ジョンソン・エンド・ジョンソン」です。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、自社のクレドを「我が信条(Our Credo) 」として定めています。

実際のクレドの内容を一部紹介します。

第一の責任は、我々の製品およびサービスを利用してくれる患者、医師、看護師、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。

第二の責任は、世界中で共に働く全社員に対するものである。

第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。

そして、最後の責任は、会社の株主に対するものである

ジョンソン・エンド・ジョンソン「我が信条(Our Credo)

このように、具体的に誰を対象として、どのように考えるべきかが解りやすく定められているのがクレドです。

事例2: 株式会社楽天のクレド

次に紹介するのが、国内の企業でクレドの導入企業として有名な「株式会社楽天」です。株式会社楽天は、クレドを「成功のコンセプト」と位置づけて、従業員に共有しています。

実際のクレドの内容を一部紹介します。

・常に改善、常に前進

・Professionalismの徹底

・仮説→実行→検証→仕組化

・顧客満足の最大化

・スピード!!スピード!!スピード!!

株式会社楽天「成功のコンセプト」

楽天のクレドは、非常に短い言葉で簡潔に表現されているのが特徴です。
このように、シンプルであれば、従業員も覚えやすいでしょう。

事例3: ニチレイフーズのクレド

クレドの導入事例として最後に挙げるのが「ニチレイフーズ」です。ニチレイフーズは、クレドを「従業員のモットー、及び行動方針」として社員に共有しています。

実際のクレドの内容を一部紹介します。

1. 法と社会の秩序を守り、高い倫理観をもって行動します。

2. お役に立つ価値提案のために食と生活を見つめます。

3. 互いに多様性を認め合い、対話を通じて連携します。

4. 誠実な気質を継承し、ていねいなものづくりを心がけます。

5. 謙虚に自己を見つめ、挑戦することで成長し続けます。

ニチレイフーズ「従業員のモットー及び行動指針」

このように、ニチレイフーズの業務内容に沿って、具体的な行動や考え方のポイントが定められています。

行動に迷ったときに参考にすることで、解決のヒントが見つかるでしょう。

クレドの導入手順

それでは、実際に企業がクレドを導入する際の手順を紹介します。

STEP1. 総務部を中心にプロジェクトチームを編成

まずは、クレドを導入するためのチームを編成します。
総務部などの管理部門を中心として、できるだけ幅広い部門の人に参画してもらいます。

企画の段で様々な人を巻き込むことで、全社的に浸透させる際に有効です。

また、クレドに入れる内容や定着しやすい文章を考える際に、現場での観点を交えて話し合うことで、表面上ではなく実態にあった内容にできるでしょう。

STEP2. 経営層・社員へのヒアリング

次に、経営層と社員へのヒアリングを行います。
まず、経営理念やビジョンやミッションが既にある場合には、そういったものを整理しながら経営層とクレドの要となる部分を話し合います。

クレドはそれ単体で存在するよりも経営理念やビジョンを行動指針に落とし込んだものを記載します。そのため、経営層が描く経営理念とクレドは連携関係になくてはならず、また経営者の想いも反映されるべきでしょう。

一方で、クレドは社員が行動指針として心に留めておくものでもあるため、社員にとって会社がどうあるべきか、その中で自分はどうありたいかという意見も重要です。

経営者からのヒアリングでクレドのこしが決まった後は、社員にアンケートを行い、どういったクレドであってほしいか意見を募りましょう。

STEP3. 文章の作成

次に実際に文章に落とし込んでいきます。
企業の事例でもあった通り、クレドの文章は、ひとつひとつが短くシンプルかつ耳に残りやすいものです。

クレドは複数の指針が箇条書きになっていることが多いですが、社員がクレドカードなどを見なくとも暗唱できるようわかりやすくキャッチーな文章を目指しましょう。

STEP4. 伝達方法の選定

経営理念やクレドはカードの配布や社内ポスターなどにより周知を図る方法が一般的ですが、せっかく策定したにもかかわらず形だけで社員に浸透しないケースがよくあります。

そこで、社員に浸透するよう伝達方法を計画立て、実施することが非常に重要です。

・なぜこのクレドが選ばれたのか背景を共有する研修の実施
・クレドを仕事に反映した人向けに表彰を設ける
・クレドを踏まえた仕事の報告制度や人事評価制度の策定


など、通常の業務にも絡めて伝達方法を工夫することが必要でしょう。

テレワークが進む中で、経営理念やクレドの浸透をはじめ社員への企業文化の醸成がますます難しくなっています。
だからこそ、クレドの浸透方法を工夫して、帰属意識の醸成にも寄与するよう活用しましょう。

クレドを活用して組織をボトムアップしよう

クレドはコンプライアンスの遵守はもちろんのこと、企業理念を行動指針に落とし込んで社員に伝えるために有効な手段です。

しかし、クレドはせっかく策定しても、形だけで社員に定着しないことも。テレワーク制度導入が進み、組織のコミュニケーションが気薄になる中で、クレド浸透に力を入れることで企業への帰属意識の向上も期待できます。

クレドを上手に活用して、ベースから強い組織としてボトムアップを目指しましょう。

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