人事評価シートは、業績、能力、意欲などの評価項目を管理するシートで、よいシートを作成することは人事評価の質や透明性を高めるためにも重要です。人事評価シートは、人事評価の目的や期待する効果によって項目が変わってきます。
また、職種や役職によっても項目に違いがあります。人事評価シートを作成する際には、目的を明確にしたうえで評価項目を決めることが大切です。
本記事では、経営者や人事担当者に向けて、人事評価シートを作成する目的や、業種・職種別に書き方のポイントを紹介します。人事評価シートを作成するときのポイントがわかるので、ぜひ参考にしてください。
人事評価シートとは
人事評価シートとは、人事評価を実施するにあたって、スキルや課題などの重要項目を管理するためのシートです。
一般的に、人事評価の際は、評価する項目を定めた上で基準に沿って評価を行います。例えば、社員が与えられた職務を実行するためには専門知識や技能といった職務遂行能力が必要です。また、こういった職務遂行能力は仕事をする上で高い水準であることが望ましいとされています。
このように、社員がどのような能力をどの程度保有しているのかを把握することはマネジメントにおいて重要です。また、社員の能力や課題を正確に把握することで、処遇や人材開発にも反映する必要があります。人事評価シートとは、人事評価においてこういった重要項目を整理した上で、適切に管理するツールです。
ただし、適切な人事評価シートを作成することは簡単ではありません。また、人事評価シートを導入したものの、うまく運用できていないケースもあるでしょう。業種や職種によっても盛り込むべき項目が異なります。そのため、自社に合った人事評価シートを作成するためにはノウハウが必要です。
「あしたのチーム」では、豊富な経験と実績をもとに作成した人事評価シートを提供しています。あらゆる業種や職種、役職などに対応した適切な運用が可能です。人事評価制度の運用を成功させ、自社の成長につなげたい経営者・人事担当者の方は、ぜひ無料の「あした式人事評価シート」を参考にしてください。
人事評価シートを作成する目的
人事評価シートを作成する主な目的は、人事評価の質向上、人事の公平性の確保、社員の成長の3つです。ここでは順番に解説します。
人事評価の質を高める
人事評価においてシートを活用すれば人事評価の質を高めることができます。
人事評価において、どのような項目を評価すべきなのかが曖昧であったり、評価基準が不明確であったりすると、評価内容そのものも曖昧なものになってしまい、適切に評価することができません。本来評価しなければならないポイントを逸脱していたり、上司によって評価方法が異なったりするといった問題が起こる可能性もあるでしょう。
一方、人事評価シートを用いれば、評価項目や評価基準が明確です。重要な項目については漏れなく適切に評価できるようになります。
人事評価の公平性を保つ
人事評価シートは、人事評価を公平にする目的もあります。
先述のように、人事評価の方法が部下にとって分かりづらかったり、そもそも評価方法が統一されていなかったりすると、評価される側である社員は不公平感を感じてしまうでしょう。その結果、モチベーションが低下して業績に悪影響が出てしまう可能性もあります。
人事評価シートを導入すれば、あらかじめ評価項目や基準を定めた上で、それに沿って評価することが可能です。人事評価の透明性が高まり、社員が公平感を感じやすくなります。
社員の成長を促す
人事評価シートは、社員の自主的な成長を促す目的もあります。
人事評価において、会社側が社員のどのようなスキルや成果を評価するのか、どの程度の能力を求めるのかが分からなければ、社員は何を頑張ればよいのかが分からず、自発的な行動に繋がりづらいでしょう。また、会社側が社員に求める行動とミスマッチを起こしてしまう可能性もあります。
人事評価シートがあれば、評価される項目があらかじめ明らかなので、どのようなスキルを優先的に身につければよいのかが把握しやすく、社員が仕事に取り組む際の指針になるのです。
人事評価シートによる評価方法
人事評価では、一般的に業績、能力、情意の3点を評価します。これらの項目は、人事評価シートを作成する際にも重要です。
業績考課
業績考課とは、期間内に達成した成果についての評価です。通常は、事前に部下と上司が話し合いで業績の目標や達成率を定めておいた上で、該当の期間が終了した後に達成状況を取りまとめて評価します。
業績は数値化して表しやすいため、評価する側もされる側も透明性が高い点が特徴です。対象期間は企業によってさまざまですが、一般的には1年間や半年間ごとに区切られています。
能力考課
能力考課とは、与えられた仕事に対する職務遂行能力についての評価です。職務を遂行するためには、その職務ごとに専門の知能や技能などが欠かせません。例えば、技術職には専門技術や技術的な知見が、企画職には分析力やプレゼンテーション能力などが求められます。
もちろん、職種を問わず必要なロジカルな思考力やコミュニケーション能力といったスキルもあります。能力考課ではこういった必要な能力を整理し、社員のレベルを評価します。
情意考課
情意考課とは、仕事への意欲や勤務態度についての評価です。業務意欲に関しては、設定した目標に対する取り組み方やモチベーションなどを評価します。
勤務態度に関しては、就業規則の遵守や遅刻・欠勤といった勤怠項目などが評価の対象です。前者については評価者の主観が入り込む余地がありますが、後者については勤怠実績などをもとに定量的に評価できます。
業種ごとの人事評価シートの書き方・記入例
人事評価で重視する項目は、業種や職種ごとに異なります。そのため、人事評価シートを作成する際は、そういった特有の要素を盛り込むこと必要です。ここでは業種・職種ごとの書き方を紹介します。
営業職の例
営業職は、契約獲得件数などの目標を数字で表しやすく、その達成度も客観的に表すことができます。そのため、人事評価シートには、具体的な目標を示したうえでそれを達成するために必要なアクションなどを記して評価する形がよいでしょう。
記載例:
・今期は新規顧客を50件増やし、売上目標2,000万円を達成できた
・月に1回のオンラインセミナーを開催し、新規顧客の獲得につなげた
・成績上位者の営業スキルを共有し、部門全体の売上を10%アップさせた
企画職の例
企画職はリサーチや分析、提案力などの能力が求められ、よりよいアイデアを追求する意欲も求められます。評価の数値化が簡単ではない項目も多いため、能力、業績、情意をバランス良く盛り込むと評価の公平性が高まるでしょう。
記載例:
・プレゼンのスキルを高めるための講習に参加し、企画の採用率20%を達成した
・ファミリー層の消費行動に関するリサーチを行い、ファミリー向けの新たなプロジェクトの採用につなげた
・ポイントカードの入会金無料キャンペーンを企画し、新規会員数2,200人の増加につなげた
人事職の例
人事部門は、人材採用など成果を数値化しやすい業務もある一方、人材開発や人事評価業務など数値化が難しい業務もあります。担当している業務の種類によって、数値で表せない部分はいくつかの段階を定めて評価するとよいでしょう。
記載例:
・勤怠管理システムを導入し、各部門の勤怠管理を効率化した
・6カ月に1回、各部門の管理職に個別面談を実施してもらい、離職率を10%削減した
・テレワークの導入に向け就業規則を改正し、テレワークの実施率60%を実現した
製造職の例
製造業は、設計、生産、検査といった製造工程があり、製造に関するスキルは体系化されているものもあるので、段階的に評価することが可能です。現状はどのようなステップなのか、今後はどのような能力を獲得することを期待するのかを盛り込みましょう。
記載例:
・1年以内に生産管理ツールを導入し、自社工場の生産量を10%アップさせた
・3カ月以内に製造用の機材や材料の保管場所を整理し、効率的に作業ができるようにした
・ISO9001を取得することによって、不具合品の件数を下げた
看護職の例
看護師は医療分野の知識と専門スキルだけでなく、事務処理能力やコミュニケーション能力、チームプレーをする能力が求められます。そのため、個人的な能力だけでなく、周囲と協力しながら業務を遂行できるかどうかも重要な評価項目です。
記載例:
・今年度は研修や学会に積極的に参加し、看護師としてのスキルアップを実現した
・認定看護師になるための研修プログラムを受講し、認定看護師の審査に合格した
・先輩看護師から受けた指導をノートにまとめ、現場でスムーズに活かせるようにした
介護職の例
介護職には、要介護者に対する介助や生活支援スキル、同僚や要介護者などとのコミュニケーションスキル、事務処理能力などが求められます。さまざまな能力を身につけさせる必要があるため、具体的なスキルを挙げながら評価するようにしましょう。
記載例:
・実務者研修を受け、現場で役立つ実践的なスキルを身につけた
・認知症に関するオンライン講習を受講し、認知症への理解を深めた
・訪問介護の効率的な運用のために、携帯品チェックシートを作成し、置き忘れ防止につなげた
公務員の例
公務員は、行政の効率性や信頼性を損なわないためにも、業務改善の企画力だけでなく業務の正確性・安定性が求められる特徴があります。そういった項目と、能力や情意などを結びつけて評価するとよいでしょう。
記載例:
・文書管理システムを職員に周知し、文書の保存や検索をスムーズにした
・ホームページの「よくある質問」をわかりやすくリニューアルし、市民からの問い合わせ件数を減らした
・非常勤職員の研修プログラムを構築し、研修の効率化と窓口サービスの向上につなげた
人事評価の仕組み化により最適な人事評価を実現
人事評価シートは、人事評価で重視する業績、能力、意欲などの評価項目を管理するもので、よい人事評価シートを作成して適切に運用すれば、人事評価そのものの質を高めることにも繋がります。
人事評価シートを活用する際は、紙やファイルで管理するよりも、クラウドで管理するのが効率的です。人事評価システム「あしたのクラウド」は、クラウド上で人事制度の構築、運用が可能で、人事評価の運用に役立ちます。人事評価の体系や運用方法を改善することを検討している方は、導入を検討されてはいかがでしょうか。
また、あしたの人事では人事評価シートの無料フォーマットをご用意しております。評価にあたってシートを導入する際はぜひご活用ください。
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