生産性を向上させるために正しく内容を理解しよう|効率化の具体的な方法・事例

(画像=TommL/iStock)

働き方改革によって労働環境や雇用市場が変化していくなか、企業における生産性の向上はますます必要に迫られています。人口減少によって有効求人倍率は上昇をたどっており、競合他社との競争のなかで人材確保は今後も厳しくなっていくでしょう。

そうした状況下で、社員のワークワイフバランスを守りつつ生産性を向上させるためには、生産性に対する正しい知識を身につけて取り組んでいくことが大切です。

生産性には、「労働生産性」「資本生産性」「全要素生産性」がありますが、今回は主に労働生産性について取り上げます。労働生産性の計算方法や労働生産性を向上させる方法・事例などを紹介するので、参考にしてください。

そもそも生産性とは

生産性とは、有形・無形を問わず投入したモノから、どれくらい効率的に産出物が生み出されるかを測る指標となるものです。

何かを生産する際に、「投入するモノ」に当たる「資本」「労働力」「原材料」と、投入することによって得られる産出物との相対的な割合のことを指します。

具体的な生産性の計算としては、「産出÷投入=生産性」によって求められます。

生産性が良いパターンは投入したものができるだけ少なく、より多くの産出物を得ている状態にあるといえるでしょう。

たとえ、最新鋭の設備を投入したとしても、その設備を操作する人材が未熟で少ない産出物しか得られていない場合は、生産性が低い状態にあります。

設備投資を行ったり、プロジェクトを組んだりするときには、生産性を考慮して判断していくことが大切です。

生産性の種類とは

生産性には大きく分けて、労働生産性・資本生産性・全要素生産性の3つがあります。

労働生産性

労働生産性は、労働の観点から生産性を判断するものであり、最もよく用いられるものです。労働者1人あたりもしくは、労働時間単位の産出量・産出額によって示されます。

資本生産性

資本生産性は資本の観点から判断するものです。
投入した資本に対して、どの程度の産出物や産出額を得られたかを計測します。

全要素生産性

全要素生産性とは投入したすべての生産要素に対して、どの程度の産出物・産出額が得られたのかを示す指標となります。

このように、生産性は種類によって分類される指標なので、生産性の内どこの生産性に焦点をあてるのかを明確にしてから、生産性の向上に取り組むことが大切でしょう。

労働生産性の向上に注力する必要あり

資本生産性や全要素生産性を高めることは、経費節減・原材料費削減といった取り組みによって、比較的多くの企業が取り組んでいるのではないでしょうか?

ただ、これらの取り組みによって生産性を高める方法は、コスト削減には限界がありますし、投資を過剰に少なくしてしまえば、将来の成長につながる出資も減らしてしまう恐れがあるでしょう。

そのため、企業の生産性を向上させる上で注目したいのは、方法によって限りない可能性がある「人」の生産性に焦点をあてた、労働生産性を向上させることでしょう。

日本の労働生産性は先進国のなかでも低い水準となっています。OECDが発表した2018年のデータによると、日本における1時間あたりの労働生産性は46.8ドルです。これは、OECDに加盟する36カ国のなかで21番目です。また、主要先進7カ国のなかでは最下位となっています。

労働生産性は、高ければ高いほど少ない労働力で効率的に生産活動を行っていることを示します。経済的に豊かになるには、労働生産性の向上が重要です。日本は少子高齢化により、将来的に労働人口がますます減少していくと考えられています。労働力が減少しても生産性を高めるには、労働生産性を向上させる必要があるのです。

また、労働生産性を高めることで、1人あたりの労働時間を削減することにもつながります。1つの仕事を短時間でこなすことができれば、残業時間の削減や休暇の取得が可能になります。働き方改革やワークライフバランスの実現のためにも、労働生産性の向上が必要です。

労働生産性を数値化する方法と注意点

社員の労働生産性を上げるためには、指標となる労働生産性の計算方法を押さえておくことも大切です。ここでは、労働生産性の計算方法を詳しく解説します。

そもそも、生産性の計算は、産出物の違いごとに「物的生産性」と「付加価値生産性」の2つに分けられます。

物的生産性とは、生産物の大きさ・重さ・個数といった物質的なものを産出物の単位とするものです。

一方、付加価値生産性は企業が新しく生み出した付加価値によって生産性を捉えるものであり、売上高-外部から調達した分のコスト(原材料費・外注加工費・運賃など)を引いた金額ベースで表します。

労働生産性の計算方法は、物的生産性を労働者1人あたりで判断するときには「生産量÷労働者数」となり、労働時間で見る場合には「生産量÷(労働者数×労働時間)」となります。

例えば、従業員500人の会社で生産量が自動車1万台だったとすると、労働者1人あたりの労働生産性は自動車20台です。また、従業員5人が1人160時間働き、自動車を30台売った場合の労働生産性は1時間あたり0.375台となります。

付加価値生産性で労働者1人あたりの生産性を計算するには「付加価値額÷労働者数」労働時間で見る場合には「付加価値額÷(労働者数×労働時間)」で算出できます。

例えば、自動車1台分の付加価値が50万円の場合、従業員500人で1万台の自動車を生産したら労働者1人あたりの労働生産性は1,000万円です。また、付加価値20万円の自動車を従業員5人が1人160時間働き、30台売ったとすると労働時間で見た場合の労働生産性は、1時間あたり7,500円となります。

ただ、この指標の取扱いで注意が必要なのが、管理職や研究職といった職種は営業職やエンジニアなどと違い、生産物や売上が上がらないため数値化することが難しいです。

数値化できない職種であっても、労働生産性を高めること自体はできるので、こちらの指標は臨機応変に使い分けることをおすすめします。

労働生産性が低い理由とは

企業の中には、労働生産性を高めることに成功している企業と、労働生産性が向上しない企業があります。

なぜ、このような違いが生まれてしまうのでしょうか?
ここでは、労働生産性が向上しない企業にありがちな、向上を阻む理由をお伝えします。

1.生産性を上げる体制が整っていない

労働生産性が低くなってしまう要因としては、労働生産性を向上させるための、社内の体制が整っていないことが挙げられます。

労働生産性は、個人でいくら意欲的に取り組んでも、限界があります。

社員の労働生産性を高めるためには、社員の業務にかかる無駄な時間を減らし、業務の効率化を測れる体制を企業が提供しなければ、組織として効果を高めることは難しいです。

後に説明する、労働生産性を向上させる方法を参考に、生産性を向上させる体制づくりを組織として行っていきましょう。

2.そもそも企業が生産性を下げさせている

労働生産性の低い組織は、そもそも企業サイドが社員の労働生産性を低下させてしまっている恐れがあります。

社員の生産性が低い組織の特徴として、労働時間が長時間に及ぶもしくは、社員の体調不調が頻発している組織が挙げられます。

社員に長時間労働を強いることで、物理的に生産性が低下することはもちろん、そのような労働環境は疲労や頭痛、もしくはうつ病など、社員に体調不良をもたらしてしまうこともあります。

この状況が長く続いてしまうと、社員は「仕事をやりたくない」といったネガティブな感情を仕事に対して持ってしまい、さらに、業務効率を下げてしまう要因となります。

業務に関する負のループがどんどんと生産性を低下させる要因となるため、企業は自ら社員の労働生産性を下げる行為である、長時間労働や高負荷な仕事量の見直しを図りましょう。

生産性が高い人の特徴

常に生産性を意識して行動することは生産性を向上させるための基本です。生産性が高い人は、どのような業務においても常に生産性を強く意識しています。

また、生産性が高い人は日頃から積極的な情報収集を怠りません。それだけでなく、デジタルツールなどを駆使して効率的に情報を整理してあり、必要になったタイミングで速やかに情報を取り出せるようにしていることも生産性が高い人の特徴です。

くわえて、生産性が高い人は優れた集中力を有しており、時間を効率的に管理することが得意です。複数の業務を並行してこなせるマルチタスク能力もときには必要かもしれませんが、時間ばかりかけて、結果的にどれも中途半端な結果になってしまっては元も子もありません。生産性が高い人はタスクの優先順位をつけ、1つのことに集中して取り組みます。その結果、時間を効率的に使えるため、生産性が高くなるのです。

労働生産性を向上させる5つの方法

労働生産性を向上させるためには、さまざまな方法があります。
ここでは、具体的に取り組める5つの方法について紹介していくので、すぐに導入できるものから活用してみましょう。

1.ペーパーレス化

業務に必要な書類をペーパーレス化することで、資料の作成や管理にかかる作業を減らすことができます。

例えば、会議などで作成していた資料を電子化すれば、ペーパーを用意する時間の節約につながるだけでなく、印刷代を削減することにもつながるでしょう。

また、ペーパーレス化することで、書類の確認や決済をスムーズに行えるため、結果として労働時間の短縮が図れます。

2.ビジネスチャットツールの活用

ビジネス用のチャットツールを活用すれば、社内・社外とのコニュニケーションに係る時間の短縮が図れます。

案外時間のかかるメールの確認・返信する手間を短縮できますし、関係者同士の情報共有を手軽に行えるため、共有にかかる時間削減の効果も期待できるでしょう。

その他、それぞれの社員のスケジュールの管理も容易になるため、その点でも業務の効率化を図ることができます。

3.ITシステムの活用

ITシステムの活用によって、これまで人が行っていた作業をシステム化することでも大幅な業務効率化が期待できます。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)によってシステムを組んでしまえば、Excelなどへの入力作業などを削減させ、システムによって業務を自動化することができます。

各種クラウドサービスの利用によって会計、顧客管理、採用管理、人事評価などの業務を効率化することが可能です。

例えば、生産性向上に効果が期待できるクラウドサービスの一つに、人事評価クラウドがあります。従業員の経歴やスキル、経験など、人事評価に関わる従業員のデータをクラウドで一元管理できるサービスです。従来、手書きやエクセルなどで管理されてきた人事データを効率的に管理することができます。

また、データ管理だけでなく、人事評価に関わる一連の作業をクラウドで行うことも可能です。人事評価をするためには、目標設定や面談、評価シートの記入、フィードバックなどさまざまなプロセスがあります。従業員が多い会社では、それぞれのプロセスを管理するだけでも、かなりの労力が必要です。しかし、人事評価クラウドを活用すれば、人事評価者の負担を軽減することができます。

さらに、これまで人事担当者の経験や価値観に頼ってきた人事評価を客観的に行うことが可能です。人材の育成にも活用できるため、全社で労働生産性を高められる可能性があります。

さまざまなクラウドサービスを活用することで、社内で生産性を上げる体制を整えていきましょう。

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4.働く時間を確保しやすい体制の整備

労働生産性を向上させるためには、働きやすい勤務体制を整備することも欠かせません。

ライフワークバランスや女性の労働力確保が推進される中で、いかに通勤に係る負担を減らして、働きやすい時間に、集中的に仕事をしてもらう体制を整備することで生産性の向上を図ります。

具体的には、リモートワークによって在宅でも業務が行えるようにしたり、フレックスタイムの導入によって柔軟性のある勤怠管理を行ったりすると良いでしょう。

また、早朝割増賃金制度の導入によって、残業を減らす取り組みによる成果も報告されています。

さまざまな取り組みを参考にして、自社の働く時間を確保しやすい体制の確立を目指すと良いでしょう。

5.社員に余白を与えること

労働生産性向上のために業務効率化を目指すあまり、管理しすぎ・ムダの削減をしすぎていませんか?

業務効率化を求めるあまり、過剰な管理を行ったり、本来必要であることまで削り過ぎたりすることで、逆に社員の労働生産性を下げてしまう恐れがあります。

新しいアイデアを生み出したり、より良い改善を促したりするためには、逆にムダな時間・余白を社員に与えることが大切です。

さらに、必要な業務の合間に、軽めのムダな作業を挟むことによって生産効率が上がるという報告もあります。

あまりに、「ムダを削減する」ということに集中しすぎて、本来の目的を見失わないよう、社員には余裕や余白を持たせてあげることを、意識的に行いましょう。

生産性の向上に成功した事例

このように、社員の生産性を向上させるためには、さまざまな取り組みがあるわけですが、ここでは、取組を実施したことにより、生産性の向上に成功した2つの事例を紹介します。

1.Chatworkを活用して2万5000時間削減に成功した事例

大手IT系広告代理店として知られる株式会社サイバーエージェントが、Chatworkをビジネスチャットツールとして導入したことで、大幅に業務効率を高めることに成功した事例です。

従来はメールのやりとりが主流で、広告の効果を確認する際に、情報の不足や改善内容を伝えるのに手間がかかっていました。

そこで、セキュリティも安心して使用できるビジネスチャットツールを探していたところ、関連部署が使用していたChatworkに辿り着きました。

実際に導入担当者が使用してみると、直観で誰でも使いこなせる仕様で、営業が多い会社事業部との親和性が高いと感じ、上司の協力を得て、全社的なChatworkの導入へと進みました。

導入の結果、レスポンスの向上・業務の効率化を図ることに成功し、1000人規模の事業部で月間2万5000時間以上の作業を削減できました。

社員ひとりひとりのコミュニケーションに掛ける時間を削減できたことで、全体的に大きな生産性の向上につながった好事例と言えます。

ひと月あたり2万5千時間以上の業務の効率化を可能にした大手広告代理店のチャット活用法

導入事例:株式会社サイバーエージェント | Chatwork

2.人事評価クラウドを使用して生産性が向上した事例

株式会社村田(葬祭業) の生産性向上の事例

創業100年を迎える葬祭業企業が、人事評価クラウドサービスを導入したことにより生産性が向上した事例です。

人事評価クラウドシステムを導入する前は、独自で人事評価制度を構築しようとしていましたが、普段の業務に追われ思うように進まず、残業時間の長さにも課題を抱えていました。

導入後には、社員同士の情報共有が円滑になり、効率的に時間が使えるようになったことで労働時間の削減につながりました。

結果として、残業時間が短縮し、社員の潜在的な生産性を引き出すことによって、業績の向上にも寄与しました。

このように、企業として公平で効率化につながる人事評価制度・システムを整備しておくことも、業務の生産性向上に良い影響を与えることが期待できるでしょう。

企業の生産性は人が肝心!業務効率化の体制を整えよう

生産性の向上には、社員ひとりひとりの意識ももちろん大切ですが、管理者側が生産性を上げる体制づくりを行うことが欠かせません。

社員が効率的で働きやすい環境をつくることが生産性の向上、ひいては離職率の低減・人材不足解消につながります。

福利厚生制度の見直しや、ITサービスの導入など生産性に貢献する仕組みについては、積極的に導入を進めましょう。

また、事例でも紹介させて頂いた、人事評価クラウドシステムを活用するのも一案です。

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