QC(品質管理)とは?検定内容や7つの道具、導入手順、進め方のポイントを紹介

企業活動のさまざまな場面で、QC(品質管理)の考え方を持つことは大切です。QCは特に製造の現場で使われる考え方ですが、「品質」が大切なのは製品だけではありません。「仕事の品質」に当てはめれば、QCは企業活動全体に当てはまる考え方だといえます。当ページでは、QCの基本について、導入手順などを詳しく解説します。

QC(品質管理)とは

QCとは、「Quality Control」の略語で、「品質管理」を意味します。業種を問わず使用される言葉ですが、特に製造業における製品の品質管理に対して用いられることが多くあります。製造業において製品の品質は、製造コストや収益性、企業の信頼性などにも直結する重要な要素です。そのための対策として重要な役割を担うのがQCです。

QCを実施する過程は、「デミングサイクル」(PDCAサイクル)や「QCストーリー」とも呼ばれます。QCストーリーについて詳しくは、当ページの「QC(品質管理)の導入手順」をご参照ください。

QC検定とは

QCの知識レベルを評価する資格として「QC検定」があります。QC検定は日本規格協会(JSA)が管理する民間資格で、品質管理についての知識レベルを4段階で評価するものです。

資格の対象者は、主に「学生」や「人材派遣会社に登録している人」です。製造業では派遣社員を採用することも多くありますが、品質管理の教育をするには多くのコストがかかるため、できれば既に一定レベルの知識がある人を採用したいところです。

QC検定の資格を持っている人なら、ある程度の品質に対する知識があると判断でき、採用の際の参考にできます。

参考:品質管理検定(QC検定)とは | 日本規格協会 JSA Group Webdesk

QC(品質管理)の7つ道具とは

品質管理の具体的な手法として「QC7つ道具」が知られています。QC7つ道具とは、品質管理のためのデータ整理や分析に用いられる7種類のツールのことです。具体的には以下の7つのツールを指しています。

  • パレート図
  • ヒストグラム
  • 特性要因図
  • 散布図
  • 管理図
  • グラフ
  • チェックシート

それぞれ詳しく見ていきましょう。

パレート図

パレート図とは、データの数値が大きい順に並べた棒グラフと、累積比率の折れ線グラフを組み合わせたものです。QCでは、改善・解決すべき重要な項目を特定するために利用されます。

例えば「傷」「凹み」「割れ」など不良の種類を横軸にした棒グラフを作成し、発生件数の大きい順に並べ、その上に折れ線グラフで累積比率を重ねます。この場合の累積比率とは、各項目の発生件数を、不良の発生件数全体で割ったものです。

パレート図を作成することで、最も発生件数の多い不良や、その原因などが特定され、重点的に取り組むべき課題が視覚化されます。

ヒストグラム

ヒストグラムは、データを区間ごとに分けて棒グラフにしたものを指します。品質特性を示すデータがどのように分布しているか、品質のばらつきなどを分析するために作成される図です。

例えば横軸を製品の外形寸法として、0.1mmごとなどいくつかの区画に分け、縦軸を個数として棒グラフを作成します。ヒストグラムを作成することで、規格外品がどの区分に集中しているかなど、データのばらつきやピークなどを分析できます。

特性要因図

特性要因図は、結果と要因の関係性を図にしたもので、「フィッシュボーン図」とも呼ばれます。QCでは、問題の原因について分析するために作成される図です。例えば「不良品の発生」という結果に対して、考えられる結果を書き出し、それらを矢印でつなげていきます。

QCでは特に「4M」と呼ばれる「人・機械・材料・方法」の4つの視点から原因を検討していくことが重要です。4Mについて詳しくは当ページの「原因分析」の項目で解説しています。

散布図

散布図とは、データを点の集合として示した図です。2つのデータの相関関係を調べるために作成されます。データ分析では定番のツールですが、QCでは、課題解決のために「どの要因を改善すべきか」を検討する場面などで使用されるツールです。

例えば横軸に回転数などの「製造条件」、縦軸に「不良率」を設定して、当てはまるデータを点で示します。作成した散布図に右肩上がりの傾向があれば、設定した製造条件と不良率に「正の相関」が、右肩下がりなら「負の相関」の関係があることを推測できます。

そのような傾向がなく、点が図の全体に散らばっているなら「相関関係がない」ことが推測でき、それも一つの情報として有用です。
相関関係のある製造条件が分かれば、その条件値を「下げる・上げる」などの調整をすることで、不良率を改善できることが予想できます。

管理図

管理図は、工程などの品質管理のために作成されます。品質のばらつきを折れ線で示して、「問題のないばらつき」と「異常なばらつき」を区別できるようにした図です。

目標値を中心線として、誤差の上限・下限値を示す「管理限界線」を上下に表示します。横軸には日付などを設定して、時系列にそって数値を折れ線グラフで示していくことで、日ごとの数値の変化を視覚化できます。

管理限界線の範囲から外れた「管理外れ」の値が一目瞭然で分かり、異常の発生をすぐに探知することが可能です。

グラフ

グラフとは、さまざまなデータを視覚的に示したものです。これまで紹介したツールも広義ではグラフの一種ですが、他にもさまざまなグラフが、品質管理の分析に用いられます。代表的なグラフとして以下の例が挙げられます。

  • 棒グラフ
  • 折れ線グラフ
  • 円グラフ(面積グラフ)
  • レーダーチャート

QCで用いられるデータをグラフ化することで、データの比較・割合・傾向などさまざまな要素を分析でき、視覚的に分かりやすく示すことで共有しやすくなります。

チェックシート

チェックシートとは、チェック項目についての記録や点検をするために担当者が使用する表のことです。点検項目ごとに完了したことを示すチェックマークを書き込んでいくものや、不良品の発生件数を記録するために「正の字」や「タリーマークス」を記載していくものなどがあります。

データの集計・記録や、必須作業の抜け防止などのために作成されるツールです。

QC(品質管理)に欠かせない5S

5Sとは、職場環境の改善のために必要な5つの要素をまとめたもので、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つの頭文字「S」から来ています。5Sは職場環境の改善だけでなく、QCのためにも欠かせないものです。

「整理」とは、必要なものと不要なものを分け、不要なものは処分することです。破棄すべきものを放置しないよう、また必要なものを誤って処分しないよう管理することを意味します。「整頓」は、必要なものを使いやすく適切な場所に置くことです。物の置き場所について、3定と呼ばれる3つの要素「定品(何を)・定位(どこに)・定量(いくつ)」を定め、決めたとおりに配置します。整頓を実施することで、「どこに何がいくつあるか」が誰にとっても分かりやすくなります。

「清掃」は、職場を汚れやほこりなどがない「きれいな状態」にすることです。
「清潔」は、上記3つの活動「整理・整頓・清掃」が定期的に行われ、良い状態を「維持」できるようにすることを意味します。3つの活動が継続して行われるよう仕組み化したり、チェック体制を整えたりすることです。

「しつけ」とは、5Sの活動を従業員が自主的・習慣的に行うよう教育することを意味します。ポスターなどによる意識づけや、強化月間の導入など、5Sを促進する活動のことです。以上の5Sのいずれかに不十分な点があると、不良品の発生などにつながる可能性もあり、品質にも影響することがあります。5Sを徹底することは、QCの大前提ともいえるでしょう。

QC(品質管理)のメリット

QCを実施することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。基本的な3つのメリットを以下に解説します。

コスト削減・売上アップにつながる

QCはコスト削減や売上アップにつながる活動です。

QCを徹底するには多くの手間がかかり、人件費などのコストがかかりますが、製品の品質が向上することは不良品によるロスや返品の減少などにつながります。

その結果、トータルではコスト削減の効果が期待できます。
また品質が向上することは顧客・取引先からの好印象にもつながり、受注件数が増えることによる売上アップも期待できるのです。

現状分析・可視化ができる

QCの活動を通じて、自社の業務体制についての「現状分析」と「可視化」ができる点もメリットです。QCで自社の現状をデータ化・グラフ化することで、自社の現状を分かりやすい形で把握できます。

改善すべき点やその方法などが明確になり、現状について情報共有しながらの業務もしやすくなります。その結果、会社全体で品質に対する意識づけを促進することにもなるのです。

従業員満足度の向上につながる

QCは、従業員満足度(ES)の向上にもつながります。QCは管理者だけが行うものではなく、従業員一人一人が行う必要があるものです。従業員は工夫しながらQC活動に主体的に関わることができ、目に見える成果を通して達成感を得られます。

また高品質の製品を作っているという意識にもつながり、仕事に対する「やりがい」の向上も期待できます。

QC(品質管理)の導入手順

一般的にQCは「QCストーリー」と呼ばれる手順で進めていきます。QCストーリーとは、以下の7つの手順で問題を解決していく手法です。

  1. テーマの選定
  2. 現状把握
  3. 目標設定
  4. 原因分析
  5. 対策立案・実施
  6. 効果確認
  7. 歯止め・反省・今後の方針
    各ステップについて、以下に詳しく見ていきましょう。

テーマの選定

まずは品質管理の対象とする問題点・課題など、テーマを決めます。
テーマの候補として、日々の業務で感じた点などを列挙し、その中から取り組むべきものを選定していきます。多くのテーマが見つかる場合もありますが、緊急性の高いものや、影響の大きいものから優先的に取り組むことが重要です。

現状把握

次に、設定したテーマについての現状分析をします。まずは分析に必要なデータの収集が必要です。例えば発生した不良品の種類・件数など、テーマに沿って必要なデータを集めていきます。集めたデータは、前述の「QCの7つ道具」などを用いて可視化します。

目標設定

現状把握ができたら、次は具体的な目標を設定します。
取り組むべきテーマだけを決めても、具体的な目標がなければ達成が難しくなり、適切な評価もできません。目標とする項目と、数値、期限などを具体的に設定することで、テーマを達成可能な目標に落とし込むことが重要です。

原因分析

目標達成のための具体的な対策を決めていくにあたり、問題の原因を分析する必要があります。原因分析では「4M」と呼ばれる4つの要素を考慮することが重要です。4Mとは以下の4つの頭文字から来ています。

  • 人(Man)
  • 機械(Machine)
  • 材料(Material)
  • 方法(Method)

例えば問題の原因が人(Man)であれば「担当スタッフのスキル不足」、方法(Method)であれば「手順」などに問題があるということです。4つの要素のうち、どこに問題があるかを分析していくことで、原因の全体像を把握しやすくなり、解決策も決めやすくなります。

参考:コンサルソーシング株式会社「QC手法:問題解決ストーリーとは~解決ステップとポイントを事例で解説」

対策立案・実施

原因が明確になると、対策の立案と実施がしやすくなります。例えば原因分析で方法(Method)に問題があることが分かったなら、手順をどのように改善すればよいかを検討していきます。

対策の立案では、できるだけ現場への負担が増えない方法を検討することが重要です。例えば「チェックの手順を増やす」など、負担が増える方法では、現場の負担が増えてさらなるミスを誘発することにもなりかねません。ミスにつながる無駄な手順の排除やシンプル化など、できるだけ現場の負担を軽くできないかを検討することも重要です。

効果確認

目標に向けた対策を実施した後は、その効果を確認します。対策の実施前と比較して、どの程度の効果があったのかを測定して評価する段階です。効果確認は、目標とする期限が来る前の、「途中段階」でも継続的に行うことがポイントです。

途中経過を確認しながら、必要に応じて対策の修正を加えていきます。目標とする期限が来たら、設定した目標に対してどこまで達成できたのかを計測して評価します。

歯止め・反省・今後の方針

最後のステップは「歯止め」と「反省・今後の方針」です。
「歯止め」とは、後戻りをしないよう防止することを意味します。改善前の状態に戻らないための防止策を講じ、誰が業務を担当しても同じ水準の品質が保たれるよう「標準化」を行う段階です。

そして、これまでの過程を振り返って反省点などを検討し、今後の方針や次の計画の立案に進みます。

QC(品質管理)の進め方のポイント

QCを適切に実施するために、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。特に重要な4つのポイントを以下に解説します。

「5ゲン主義」を意識する

QCで重要な考え方として「5ゲン主義」があります。「5ゲン主義」は、ビジネスを成功に導くために重要な考え方の一つとして知られています。「現場・現物・現実」の3つを指す三現主義を発展させ、「原理・原則」の2つを加えたものが5ゲン主義です。

そもそも三現主義とは、ビジネスを机上の空論や単なる書類上のやり取りだけで済ませるのではなく、「現場・現物・現実」の3つを把握することが重要であることを示す考え方です。

それに「原理・原則」を加えた5ゲン主義では、物事のメカニズムや法則にまで踏み込んで考えます。QCにおいても、原因分析をデータだけで見るのではなく、5ゲン主義に基づいて「現場・現物・現実」を実際に見て調査し、「原理・原則」にまで踏み込んで検討することが重要です。

優先度の高いものから取り組む

QCでは、優先度の高いものから取り組むことが重要です。「問題が見つかった順番に始める」「気になるところから始める」など、注意していないと優先順を考えずに取り組んでしまう場合があります。

QCの7つ道具の一つであるパレート図などを作成して、影響度の高いものなどから始めるようにしましょう。優先順位を考える際は「源流管理」という考え方も重要です。

源流管理とは、「不具合」「不良」などの現象(下流工程)だけを見るのではなく、源流(上流工程)にひそむ原因を突き止めることが重要という考え方です。源流管理を意識して、不具合の直接的な原因だけでなく、その原因となる状況が「なぜ発生するのか?」と工程全体を踏まえた分析をしましょう。

目標と途中経過を数値化しながら行う

目標は「数値化」して評価しやすくすることも重要です。「よく確認する」「丁寧に作業する」などあいまいな目標では、達成度の評価が難しくなってしまいます。目標とする数値は、あまりに高すぎたり、項目が多すぎたりしないよう、達成可能な目標を適切な数だけ設定しましょう。

また目標だけでなく途中経過も数値化して、達成度の進捗状況を確認できるようにすることも重要です。数値化したものは可視化して社内で共有することで、関係者は進捗状況を確認しやすくなり、社員全体のモチベーション向上なども期待できます。

QC(品質管理)の導入事例

QCの導入のお手本といえる企業の事例を2つ紹介します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車では「品質は工程で造りこむ」という考え方を浸透させていましたが、それが形骸化していることに課題を感じ、それを確実に実行するための取り組みをスタート。

各工程を細かい要素作業に分解して精査していく「科学的なアプローチ」を導入することで、「品質は工程で造りこむ」を確実に実行できる管理体制を実現しています。

参考:トヨタ企業サイト|トヨタ自動車75年史|TQM(Total Quality Management)|詳細解説

アスカカンパニー株式会社

プラスチック成型で知られるアスカカンパニー株式会社では「MK活動」という名称で、QC活動を行っています。MKとは「みんなで活動」もしくは「みんなで改善」の頭文字から来ており、全員で活動することに力を入れていることが特徴です。

製造部門に限らず、営業や総務、生産管理部門でも、MK活動を実施しています。半年ごとに成果発表会を実施し、その2カ月後には歯止め監査を実施して、取り組みが逆戻りしていないか評価する活動も実施しています。

参考:QCサークル活動事例紹介 – |アスカカンパニー

QC(品質管理)を徹底して改善を図ろう

QCを徹底することは、製造業の現場だけでなく、あらゆる部門・業種にとって重要なことです。QCは注意していないと漠然とした活動になりがちですが、「QCストーリー」や「QCの7つ道具」などの基本を押さえ、データ収集・分析をしながら実施することで、具体的で効果のある活動となります。

QCを徹底することで、コスト削減や売上アップ、従業員満足度の向上などを実現し、ビジネスを成功へと導いていきましょう。

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