早期退職とは?企業が導入するメリット・デメリットや流れを解説

早期退職制度は企業のみならず労働者側にもメリットのある制度として、近年導入を進める企業が増えつつあります。しかし一般的にはまだ労働者側にはネガティブな印象を持たれるケースも多く、導入に慎重になっている企業も少なくありません。そこで重要となるのが、早期退職制度の概要、メリット・デメリット理解し、社員に対して正しく伝えることです。

本記事では、早期退職制度導入を検討している人事担当者に向け、スムーズに導入を実現させるためのポイントについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

早期退職とは?

早期退職とは、定年を迎える前の社員に対し、通常の退職よりも退職金の割り増しや再就職支援など有利な条件を提示し、定年前に退職を促す制度を指します。

早期退職制度の対象となる年齢は、企業により異なりますが、定年退職まで5~15年以内の社員を対象にするケースが多いようです。ちなみに国家公務員の早期退職制度では、定年前15年以内、勤続期間20年以上の職員を対象としています。

希望退職制度との違い

早期退職制度と勘違いしやすい制度として希望退職制度がありますが、異なるのは恒常的な制度ではない点です。希望退職制度は、主に業績悪化や事業縮小などで人員削減を目的として期間を限定して行います。

また、どちらの制度も社員側から退職の申出を待つ形になりますが、早期退職制度の場合、社員側の意思であるとして自主退職。希望退職制度は企業側の理由によって退職者を募るため、企業側都合での退職となります。

選択定年制との違い

もう一つ早期退職制度に近い制度が、一定の年齢に達した社員が定年の年齢を企業側と協議したうえで決められる選択定年制です。

具体的には令和3年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、定年が最長で70歳に引き上げられたため、その年齢に達する前に協議をして退職年を決定します。

早期退職の近年の動向

一般的に早期退職制度を導入するのは、赤字の企業が人件費削減や事業縮小を目的に行うものといったイメージがあるかもしれません。しかし、近年は黒字企業であっても早期退職制度を導入するケースが増えています。

東京商工リサーチが2022年11月に発表した、2022年(1-9月)上場企業「早期・希望退職」実施状況によると、早期・希望退職を募集した企業の54.5%が黒字という結果です。

黒字企業が早期退職者を募集する背景としては、コロナ禍やウクライナ情勢の影響による、円安や物価上昇のほか、DX推進やAIによる業務の自動化への投資などが挙げられます。早い段階から不採算事業の撤退、新事業の創出、業務効率化など今後を見据え、人材の再配置を目的に早期退職制度を活用する企業が増加しているのが近年の動向です。

企業が早期退職制度を導入するメリット

企業にとって早期退職制度の導入により得られるメリットはいくつか考えられますが、主なものとして挙げられるのは、次の3点です。

人件費の削減

早期退職制度は基本的に勤続年数の長い40代後半以降の社員を対象とした制度です。多くの企業では勤続年数が長くなるほどに給与額も高くなるため、勤続年数の長い社員が早期退職制度を利用して退職すれば、大幅な人件費削減が可能になります。

業績悪化による資金不足解消策としてはもちろん、DX推進や新製品開発など新たな事業への資金捻出目的としても、人件費削減が可能になるのは大きなメリットです。

会社の若返りを図る

少子高齢化や高年齢者雇用安定法改正による定年年齢の引き上げにより、多くの日本企業では社員の平均年齢が上昇傾向にあります。経験や知識が豊富な社員を多く抱えることは企業にとって大きなメリットですが、どちらかといえば保守的になってしまうケースも少なくありません。

しかし、ベテランの社員ばかりが活躍するようでは、若い社員が成長しにくくなり、他社に転職してしまうリスクも高まってしまうでしょう。企業が継続的に成長していくには定期的な若返りが必須であり、早期退職制度は、若い社員の活躍の場を広げ成長を促すうえでも大きなメリットが見込める制度です。

円満に人員の調整ができる

人件費の削減や会社の若返りが重要だとしても、企業側が一方的に人員整理を始めれば労使間の信頼が崩れ、退職者だけではなく、残った社員も働きにくい環境になってしまいます。場合によっては不当解雇として紛争になってしまう可能性もあるでしょう。

しかし、早期退職制度は社員自らの意思で退職を決められる制度のため、労使間の信頼を崩すことなく円満な人員調整が可能です。

企業が早期退職制度を導入するデメリット

企業側にさまざまなメリットをもたらす早期退職制度ですが、少なからずデメリットも存在します。具体的には次の2点です。

優秀な人材が辞めてしまうリスクがある

早期退職制度は社員側の意思により、退職を決められる制度です。そのため、企業側が辞めて欲しくない人材であっても、退職されてしまうリスクがあります。企業にとってかけがえのない優秀な人材が退職してしまえば、場合によっては一時的に業務が回らなくなり、生産性が落ちてしまうかもしれません。そうした意味でも優秀な人材を失うのは大きな損失であり、デメリットといえるでしょう。

割り増しの退職金に多くのコストがかかる

早期退職制度は,割り増しの退職金や再就職支援などの優遇措置を設けて、社員に早期退職促す制度です。そのため、本来支払うべき退職金よりも支出が増えてしまい、短期的には大きな損失になってしまう可能性があります。

もちろん、長期的に見れば給与の高い社員が減ることで人件費が抑制され、短期での損失もプラスに転じるでしょう。しかし、退職者の数によって一時的とはいえ、損失を生んでしまうのは企業にとってデメリットといえます。

業績が悪いとウワサが立つ可能性がある

近年、黒字企業であっても早期退職制度を導入する企業が増えています。しかし、世間的にはまだまだ業績悪化や事業縮小による人件費削減といった、マイナスイメージで捉えられてしまうケースは少なくありません。

そのため、新規事業創出のための人材再配置のようなポジティブな目的であっても、世間的には「業績悪化が理由なのでは」といった風評被害に遭うリスクも十分考えられます。

同業種のなかで悪い評判が立ってしまえば、採用活動に悪影響が出てしまい、優秀な人材の獲得が困難になってしまう可能性があるというデメリットも生じてしまうでしょう。

早期退職制度の主な優遇措置

早期退職制度の導入で欠かせないのが早期退職を希望する社員に対する優遇措置です。前述した退職金の割り増しや再就職支援のほかにも、特別休暇や有給休暇の買い上げなどが挙げられます。それぞれの概要は次のとおりです。

退職金の割り増し

早期退職制度の優遇措置で代表的なのが退職金の割り増しです。増額の割合は企業や退職する年齢、勤続年数によっても異なりますが、ここでは厚生労働省が発表した「平成30年就労条件総合調査」を基に一般的な例を紹介します。

上記の調査では、45歳で勤続20年以上の早期退職者の平均退職金額は、2,326万円です。これに対し、自己都合での退職による平均退職金額は1,519万円で、早期退職者の方が約1.5倍も高くなっています。

再就職支援

早期退職をする側の社員にとって、早期退職をためらってしまう理由の一つが再就職への不安です。早期退職制どの対象となる40代後半以降は、スキルがあったとしても再就職は簡単ではありません。そこで、優遇措置として再就職支援を実施することで、早期退職を後押しします。

特別休暇

特別休暇とは、法で定められている有給休暇のほかに企業が独自で設定した休暇です。

早期退職者に付与する特別休暇は、単純に慰労のためだけではなく、再就職をするための準備や面接などに充てることを想定しています。もちろん、再就職が決まっていた場合でも、リフレッシュ休暇として付与することも可能です。

有給休暇の買い上げ

早期退職希望者のなかで、有給休暇を消化しきれなかった社員については、残った有給休暇を買い上げ、別途支払いもしくは退職金に上乗せする措置です。

早期退職の対象者は勤続年数が長いため、退職日までに引継ぎや残務処理などで有給休暇を使い切れないケースも珍しくありません。その際に、企業が残った有給休暇を買い上げる制度を設けていれば、安心して引継ぎが行えます。

早期退職制度導入の流れ

早期退職制度をスムーズに導入するには、スケジューリングが欠かせません。ここでは一般的な早期退職制度導入の流れを解説します。

制度導入の目的を定める

なぜ、早期退職制度を導入するのか、その目的を明確にします。「人材の流動化」「人件費の削減」「一定年齢以上の社員へのセカンドキャリア支援」など自社の課題解決につながる明確な目的がないと、制度設計も進められません。

曖昧な目的のままで制度を導入しても不安を煽るだけで、早期退職を希望する社員は現れないでしょう。明確な導入目的と目標人数を見据えることで、制度の導入もスムーズに進みます。

制度の詳細を決定する

明確な目的を決めたら、次は制度の詳細を詰めていきます。まずは対象者の年齢や勤続年数を設定しましょう。

早期退職を希望する社員に対する優遇措置の内容も決めなければなりません。特に退職金の割り増しをする場合は予算設計も必要になります。

社内へ制度の内容を周知する

制度の詳細を決定し、就業規則を策定したら社内に向け、制度内容の周知を行います。周知を徹底しないと余計なトラブルを招きかねません。たとえば、早期退職は企業側の承認が必要だという規則が周知されないと、希望すれば必ず退職できると思われてしまう可能性があります。

「就業規則を改定したので確認するように」といった周知ではなく、リーフレットを作成する、対象者向けに周知のための説明会を行うなど、確実に伝わるまで周知を続ける努力が必要になるでしょう。

早期退職希望者の募集・面談

制度を導入し、希望者が出た場合は面談を行い、改めて詳細の確認を行います。制度内容に誤解はないか、再就職支援は求めているのか、退職金の割り増し金額はいくらになるのかなど現実的な問題を詰めていきましょう。

また、仮に退職して欲しくない社員が早期退職を希望した場合は、強制にならないよう注意しつつ雇用条件の見直しや配置転換などの提案を行い慰留の交渉も可能です。

早期退職の手続きを行う

制度内容に誤解がなく、面談が無事に進めば早期退職の手続きを行います。退職日や退職までの引継ぎ事項の確認、有給休暇が残っている場合の対応など、定期的に話し合いながら進めていきましょう。

早期退職制度導入に関する注意点

早期退職制度は、企業にとっても社員にとってもしっかりと理解したうえで実施しないとさまざまなトラブルの要因にもなりえます。特に次の3点については事前に確認し、早期退職制度導入時に注意しておきましょう。

意図しない人材流出を防ぐ

早期退職制度による企業側のメリットである人件費の削減、人員の調整なども、優秀な人材が多く流出してしまえば長期的にも大きな損失になってしまうかもしれません。そのため、意図しない人材流出はできるだけ避けられるような制度設計が重要です。

具体的には、退職する場合は必ず承諾を必要とする、制度への応募条件を明確にするなどの設計が求められるでしょう。ただし、企業側が決めた制度である以上、退職を希望する社員に対し過度な引き留めはトラブルの要因だけではなく法律違反になる場合もあるため、十分な注意が必要です。

社員への説明は丁寧に行う

早期退職制度が扱うのは、退職という企業や社員にとってかなりセンシティブな事柄です。そのため、ちょっとした誤解や間違いにより、労使間の関係性が悪化してしまうリスクも十分に孕んでいます。

無用な誤解やトラブルを避けるには、明確な制度設計をするとともに、社員への周知・説明は丁寧に行わなくてはなりません。退職するにしても残るにしても互いに納得のうえで進められるよう、十分な配慮が求められます。

情報漏洩を防ぐ措置を行う

退職をする社員に対しては、同業他社へ転職することを禁じる、「競業避止義務」。自社の機密事項やノウハウを転職先に流出させることを禁じる、「守秘義務」などを必ず書面で締結しておかなくてはなりません。

自社のメリットにばかり目が行き、その裏で大きな損失を抱えてしまわないためにも、退職する社員に対する情報漏洩措置は確実に明示しておくことが重要です。

事前準備をしっかりと行い早期退職制度を導入しよう

早期退職制度を導入する理由が業績悪化や事業縮小によるものといったイメージはすでに過去のものとなりつつあります。現在は不採算部門の廃止、DXの推進、新事業の創出などを理由に、黒字であっても早期退職制度を導入する企業が大半です。

しかし、退職は企業にとっても社員にとっても重要な問題であり、互いが正しく理解をしたうえで導入を進めないと無用なトラブルにつながってしまうでしょう。 企業、社員双方にとってメリットのあるものにするには、「明確な目的設定」「詳細な制度設計」「社内周知の徹底」が欠かせません。導入を検討している企業の担当者様は事前準備をしっかりと行ったうえで、進めていくことをおすすめします。

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