無断欠勤を繰り返す従業員の対応方法とは?解雇する場合の注意点

従業員が無断欠勤した場合、企業はどのように対応すべきでしょうか。

無断欠勤が続くからといって、すぐに解雇の処分をとることはできません。本人に状況を確認するよう動いたり、無断欠勤の原因をヒアリングするなど、適切な対処が求められます。

本人に状況を確認するよう動いたり、無断欠勤の原因をヒアリングするなど、適切な対処が求められます。

この記事では、無断欠勤を繰り返す従業員の対応方法や、解雇するときの注意点などについて解説します。

無断欠勤の意味

無断欠勤とは、従業員が連絡もなしに仕事を休むことを指します。メールや電話等、本人からの一報がなく、出社時間を過ぎても職場に表れない状況です。

電車の遅延や事故など、本人が連絡できないため突発的に無断欠席になるケースもあります。しかし繰り返される無断欠勤は、従業員本人の信頼を損ねるばかりか、業務にも支障が生まれます。

従業員が無断欠勤をする理由

連絡をきちんと行うのは、社会人として当然の行いです。従業員が無断欠勤をすると、管理者は呆れたり、信じられないという気持ちになります。「社会人として不真面目だ」と、叱責したい気持ちがわいてくるかもしれません。

しかし、これまで出社していた従業員が無断欠席をした背景には、なにか理由があるはずです。ここでは、無断欠勤の従業員によくみられる理由を、以下に3つご紹介します。

連絡する気力がわかないメンタル系の病気

「気分が落ち込む」といった強い抗うつ症状がでる、いわゆる「うつ病」の患者は年々増加しています。

厚生労働省の調査によれば、1996年に43.3万人だった気分障害患者数は、2008年には104.1万人まで増えました。

うつ病の診断基準に変化はあれど、現代のストレス度合いの強い社会では、働きながらうつ病を患う人は少なくありません。

うつ病の症状は感情や体に表れます。本人が悲しみや不安を感じることもあれば、涙を流すなど周囲から見てわかる症状が出ることも。また、食欲減退、不眠といった身体的症状もうつ病の特徴です。

ケガのように傍から見てすぐわかる病気ではないため、先週は元気だったのに今週から連絡がつかない、なんてこともあります。

うつ病の症状が進むと、無気力状態に陥ります。ベッドから起き上がれない、電話ができない、メールも読めないという状態にまでなることも。

無断欠席を繰り返す従業員が、どのような精神状態なのか。うつ病を患っている可能性を含め、まずは周囲に様子を聞きこみしたり、本人の状態を注意深く観察し、話を聞くことが大切です。

セクハラやパワハラで悩んでいる

無断欠席が発生する背景に、セクハラやパワハラなど、職場の人間関係が原因で精神的に損害を受けているケースが考えられます。

上司や同僚から、セクハラまがいのことをされる。仕事で恫喝されたり無視されるなどのパワハラがある。こうした就業環境は従業員の労働意欲を削ぐものであり、ひいては健全な精神状態を傷つけるものです。

悩みがあると、職場から距離を取りたくなり、ある日突然無断欠勤してしまうといったことが起こります。無断欠勤する従業員の話を聞き、その背景にセクハラやパワハラなど第三者の影響が認められた場合は、ハラスメントを行っている張本人に処罰を与えるなど、管理部門が適切な対応をしなければいけません。

不慮の事故や急な病気

まじめに勤務していた従業員が、急に連絡もなしに欠勤した場合、不慮の事故に巻き込まれたり、急な病に倒れたりしている可能性も考えられます。

会社が把握している連絡先にコンタクトをとるほか、あまりにも長期間連絡がつかない場合は自宅へも足を延ばして確認してみるなど、現状を正しく確認することが大切です。

無断欠勤した従業員は解雇できる?

無断欠勤そのものの、細かい定義は労働基準法等にはありません。そのため、無断欠勤に対する処分を決めるには、就業規則で対象となる無断欠勤を規定する必要があります。

「何時までに連絡がなければ無断欠勤とする」という形で、就業規則に明記した上で労働基準監督署へ届け出るのが基本の手続きです。

ただし、就業規則で定めているからといって、無断欠勤を理由に会社が従業員を即時解雇できるわけではありません。就業規則に重大な違反をした従業員を辞めさせる場合、懲戒解雇という手段があります。懲戒解雇には、以下の点で注意が必要です。

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は、権利の乱用として無効である(労働契約法16条)

事業主が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前以上前に解雇予告をするか、30日以上分の平均賃金である解雇予告手当を支払う必要がある(労働基準法第20条)

労働契約法

過去には、行政通達として「原則として2週間以上の正当な理由なく無断欠勤し、出勤の催促に応じない場合は、所轄労働基準監督署長の認定を受けたうえで即時解雇ができる」とした事例があります。

しかし、就業規則の内容および2週間以上の無断欠勤の状況を持って、即時解雇を会社が行うのは、本人の意向や状況を確認せず、適切な対応が足りなかったと判断される恐れもあります。

また、解雇予告通知をおくるとしても、本人との面談なく実施した場合、後日不当な手続きとして訴えられる可能性を考慮しましょう。無断欠席を理由とした解雇には、企業側の慎重な対応が求められます。

無断欠勤を繰り返す従業員への適切な対応方法

では、無断欠席を繰り返す従業員に対して、どのように対応するのが適切なのでしょうか。

本人に連絡をとる

まず企業、とくに管理部門がするべきは、無断欠席を続ける従業員に連絡を取ることです。

なるべく早くに、本人の無事が確認できるよう動きましょう。本人の携帯がつながらない場合でも、以下のような連絡先を当たってみるとよいでしょう。

  • 実家
  • 一緒に住んでいる家族
  • 友人や知人
  • 住んでいる場所の管理会社

無断欠席に対しては、病気や事故に巻き込まれたケースも想定し、放置しないことが大切です。

ケースごとに、処分検討や出社命令を下す

無断欠勤に対して、就業規則で処分が規定されている場合は、それに沿った手続きをすすめるか検討しましょう。

ただし、「無断欠勤は罰金」など、金銭が関与する処罰は注意が必要です。労働基準法では、違約金や契約不履行を労働契約に盛り込まないこと、また減給の上限額が定められています。

労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない(労働基準法16条)

減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない(労働基準法91条)

労働基準法

また、再三の連絡にも関わらず出社しない場合は、会社から出社命令を送付する方法があります。出社命令は、書面で通知するのが一般的です。

口頭での連絡だと、後々「出社命令の通知もなしに解雇された」と揉める可能性があるため、記録が残る形で本人に通知しましょう。

メンタル面の不調は産業医に紹介する

本人との面談で精神面での不調が見られた場合、速やかに産業医に報告したり、適切なクリニックを紹介する必要があります。

2019年4月から施行された「働き方改革関連法」では、産業医の機能強化が行われ、長時間労働をしている従業員の業務に関する情報を産業医に提供することが定められています。また、対象となる「長時間労働」は、月に100時間から月80時間に引き下げられました。

無断欠勤の原因がメンタルにある場合、休職させるなど、本人が治療に専念できる環境を整えることが先決です。

無断欠勤を繰り返す従業員を解雇する際の注意点

適切な対応を重ねても無断欠席を繰り返す従業員を解雇する際は、以下の点に注意が必要です。

「解雇権乱用の法理」に注意する

先にも述べたように、「客観的・合理的な理由を欠いた」解雇は、会社側が権利を濫用したとして無効になると、労働契約法第16条では述べられています。

無断欠席が続くから、という理由だけで会社が一方的に解雇通告を送り付けるのは、権利を濫用しているとみなされる恐れがあります。

本人と直接連絡を取ったうえ、メンタル面や身体的調子の確認、無断欠席の理由となる職場環境の改善を行います。解雇処分はあくまで最終的な手段です。まずは社員が出社できるよう、企業は対応しなければいけません。

また、出社命令や解雇予告通知を行う際は、記録が残る様に書式にて通達しましょう。郵送で、かつ配達記録が残る内容証明郵便のサービスを利用します。

口頭や、本人が確認できない仕事用のメールアドレスに通知するだけでは、後々言った言わないの水掛け論になります。正当な手続きを踏んだうえで、解雇処分を行った記録を残すため、やりとりは書面で行うことが大切です。

ハラスメントや精神疾患が原因の無断欠席は休職を優先する

セクハラ・パワハラといった職場でのハラスメントや、本人が精神疾患を患っているケースでは、職場が無断欠勤を理由に解雇することは正当な手続きではないと考えられています。

2012年の日本ヒューレット・パッカード事件では、精神疾患が原因で有給消化後40日にわたって無断欠勤した従業員を退職処分とした企業の対応を、不適切であると判断しています。従業員を出社させるためには、精神疾患の原因となった職場環境を改善させる必要があります。

企業は退職処分の前に精神科医による健康診断を実施するなどし、治療のための休職措置をとることが適切であったとしています。

上記の判例は、無断欠勤を巡る企業の対応の一つの指針となっています。ハラスメントや精神疾患など、職場に出社できない理由がある場合は、健康診断や休職などそのほかの措置を優先的に行いましょう。

無断欠勤の事後の有給申請には応じなくてもよい

無断欠勤を続けた従業員が、退職する間際になって、「欠勤分に有給消化をあててほしい」と願い出るケースがあります。この際、有給消化が無断欠勤後の事後である場合は、企業は応じる義務はありません。

なぜなら、従業員が有給の取得日を事前に指定することが原則です。これは、少なくとも取得希望日の前日までに申し出ることとされています。

よって、ハラスメントや精神疾患、病気や事故等、ほかに考慮するべき理由がなく、従業員が無断欠勤を重ねた場合、事後の有給申請に企業が応じる義務はありません。

しかし、無断欠勤のあと、出社した際の面談で退職日までにすでに付与されている有給休暇の申請があった場合は、企業は就業規則に沿って従う必要があります。

従業員が心地よく働ける職場づくりは正しい人事評価制度から

無断欠勤をする原因がどこにあるのかは、本人に聞いてみるしかありません。

ハラスメントや精神疾患といった特定の原因があるケースもあれば、働き方や人間関係に漠然とした不満を抱いているケースもあります。

風通しが悪い就業環境は、従業員の不満が溜まる原因の一つです。

風通しをよくするためには、従業員の働きぶりを適切に評価する人事評価制度が大切です。

仕事の結果が公平に給与に反映されていると実感できることで、従業員の働く意欲が高まります。無断欠勤につながるかもしれない原因を一つ減らし、従業員がやる気を出して働ける環境を作れるでしょう。

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