どの業界においても人手不足が叫ばれる今、企業は採用活動だけでなく、貴重な人材をどのように育てるかという点にも力を入れるべきでしょう。
そんな中、人材育成において注目されるのが「コーチング」という言葉。今回は、コーチングの概要や活用方法、メリットや導入の注意点などを説明します。
コーチングとは?
コーチングという言葉をご存じの方は多いですが、その詳細については理解できていないという方もいるでしょう。ここでは、コーチングの歴史や言葉の定義についてお伝えしていきます。
まずは、コーチングの歴史についてです。 コーチングという言葉は、16世紀に登場したと言われています。「馬車」が語源となっていて、その当時は人を目的地まで送り届けるという意味で使われていました。
そこから転じて、アメリカで20世紀半ばから、個人、組織の目標達成をサポートすることを示す言葉として、ビジネス、スポーツなど様々な場面で使われるように変化しました。
この歴史的な成り立ちから、コーチングという言葉には「目標達成」という意味が込められていることが推測できます。
実際に、コーチングという言葉の定義は、目標達成に必要な要件を相手の話を傾聴しながら確認し、巧みな質問を用いて、自発的な思考、行動を引き出していくこととされています。つまり、コーチングに取り組むコーチは、対象者を目的地、目標まで誘導する役割を持つ人となります。
ビジネスコーチングの活用スタイル
コーチングは分野によってやや手法に違いがあります。ここでは、コーチングの種類とビジネスコーチングの活用スタイルについて説明します。
コーチングの種類
(ビジネスコーチング・スポーツコーチング・エグゼクティブコーチングなど)
一般的にビジネスシーンにおいて社員教育や人材開発で用いられるのはビジネスコーチングです。
特徴として、会社の組織目標と、個人の価値観をすり合わせるプロセスがあります。
スポーツ分野で用いられるのはスポーツコーチングで、アスリートやスポーツ愛好家などに対して、必要な思考やテクニックなどを備えさせる手法です。
エグゼクティブコーチングとはビジネスの経営層といった幹部クラスを対象にしたもの。
ほかにも、人の人生設計に関わるライフコーチングや、健康分野ではヘルスコーチングなどがあります。
このようにコーチングは分野ごとに特色があります。
ビジネスコーチングの活用スタイル
ビジネスコーチングを行う方法は大きく分けて2つの種類があり、社内人材に実施させるパターンと、外部の専門企業に依頼するパターンに分かれます。
前者は、社内人材にビジネスコーチングのスキルを習得させる方法です。あるいは、コーチングのスキルを持っている人材を採用する方法も考えられます。
ビジネスコーチングを習得させる場合、コーチングのためのトレーニングや外部研修に参加させたり独学で勉強させたりする必要がありますが、人材を採用する場合はそういったコストがかかりません。
後者は、外部のコーチングを得意とする専門機関に依頼し、自社人材の能力開発をサポートしてもらう方法です。専門性の高いコーチがつくことで、高品質なコーチングを受けられます。
コーチングとコンサルティング、ティーチングの違い
「コーチング」に近しい意味をもつ言葉に「コンサルティング」や「ティーチング」があります。ここでは、コンサルティングとティーチングを説明した上で、コーチングとの違いを説明します。
コンサルティングとは
コンサルティングとは、専門的な知見を持ったコンサルタントが、相手の現状や要望をヒアリングした上で、目標達成に必要な戦略プランや実行計画、組織体制などを提案することを指します。
コーチングとコンサルティングの違い
コーチングとコンサルティングとの大きな違いは、目標達成に向けた方向性を示すかどうかです。
コンサルティングでは専門性の高いコンサルタントが目標を達成するための戦略策定や施策案を提案し、実行の一部を代行することもあります。一方、コーチングは相手に考えるきっかけを与え、主体的な思考や行動を促す点が特徴的です。
ティーチングとは
ティーチングとは、経験や知識を生かし、相手に対して目標達成に向けたノウハウやアドバイスを与えることを指します。コミュニケーションは基本的に教える側が主体となり、知識や手法を提供することが主眼です。
コーチングとティーチングの違い
コーチングとティーチングは、その目的も主体も違います。
ティーチングは、知識やノウハウを教えることを目的としており、コミュニケーションの主体は教える側です。
一方、コーチングは情報の提供が目的ではなく、自ら考える癖をつけさせたり、自発的に解決策を導いたりするサポートに重きを置いています。
コーチングのメリット
コーチングのメリットには、さまざまなものがあります。ここでは、特に期待できる3つを紹介します。
主体性を高める
コーチングは、主体性を高めることで自発的な思考や行動を促す効果があります。
コーチングは、相手に解決策を提案するコンサルティングや、知識・ノウハウを伝えるティーチングとは違い、相手の考えを引き出すことを重視する手法です。
そのため、安易に答えに頼る受け身の姿勢ではなく、自ら答えを導き出そうとする姿勢を形成します。
潜在能力を引き出す
コーチングは、潜在的な可能性を引き出す効果も期待できます。
目標を目指す時は、今自分が持っている力だけでなく、さらに力を高めなければならないという局面もあるでしょう。このような場合、今ある力にしか注目できなければ、狭い思考になってしまい限界もあります。
しかし、コーチングは目標達成に向けて「どうすれば達成できるのか」「自分の潜在的な力を引き出すにはどうすべきか」といった問いを繰り返すことで思いがけない力を発揮できることがあるのです。
学習意欲の向上
また、学習意欲の向上も期待できる効果です。
コーチングを通して、相手は主体的な行動を身につけます。その結果、言われたことを行うだけでなく、積極的に学習するモチベーションも獲得するのです。
コーチングの注意点(デメリット)
コーチングには注意点やデメリットもあります。
効果が出るまでには時間が必要
コーチングの効果が出るには時間がかかります。
コーチングはコーチとの対話の中で、思考や行動のパターンを変えていくプロセスを繰り返さなければなりません。
そのため、即効性がある手法ではないのです。
効率的な育成が困難
コーチングは、単にノウハウを提供する場合とは異なり、コーチは相手のペースに合わせながら徐々に成長していくのをサポートする必要があります。
そのため、一度に大人数を相手にできる講座とは異なり、効率の良い育成方法とはいえません。
コーチのスキルが必要
コーチングを行うためには、コーチの側にもコーチングスキルが求められます。前述した傾聴、承認、質問といったテクニックだけでなく、コーチとしてのメンタルを鍛える必要があります。
また、コミュニケーションにおいては、相手の成長を待ちながら辛抱強く取り組む必要があります。
コーチングの資格と学び方
社内人材にコーチングを習得させたい場合、コーチングの習得方法を知っておくと役立ちます。ここでは、コーチングの資格や学び方を紹介します。
コーチングの資格
コーチングの資格とは、コーチングの指導機関が認定・証明しているものです。国家資格ではなく、さまざまな民間団体が独自の基準で運営しています。
そのため、団体によって証明できるスキルやレベルが異なります。一般的に、資格を取得するためには指定のトレーニングや講義を受講し、試験に合格する必要があります。
コーチングの学び方
コーチングを学ぶには、コーチ資格認定機関などが提供している養成プログラムを受講するか、書籍などを使って独学するかという方法があります。
指導機関によっては座学やトレーニング形式といったコーチング講座を開講しており、中には資格取得を目指すかどうかにかかわらず受講できる講座もあります。
コーチングのやり方
コーチングの具体的なやり方について、順を追ってお伝えしていきます。
1.まずは相手を肯定し、認める
コーチングを進める上では、相手と信頼感を築くことが大切なポイントになるので、慌てずに相手の話を聞くことに専念しましょう。
発言を否定せずに同じ言葉を繰り返すことで、この人は話やすいという安心感を抱かせることを意識します。
2.親身になって話を聞き、相手を理解する
話の内容に興味を示し、相手の気持ちに寄り添って考え理解を深めます。
最終的に相手へ的確なフィードバックを与えるためには、相手が現状をどのように考えて、「どう変わりたいのか?」「何を改善していきたいのか?」を正確に把握する必要があります。そのため、コーチングの行程の中でも重要な部分となるでしょう。
3.質問することで情報を整理していく
「なぜ」「どうして」など、聞かれた相手が詰問されているように感じる質問の仕方は避けてください。あらゆる角度からの効果的な質問を通して、相手の頭の中を整理して、考えを具体化していくことが大切です。
4.フィードバックで気づきを与える
質問する中で見えてきた、相手にアドバイスできる部分を指摘し、新たな気づきを与えます。正しく相手のことを把握した上で、当時者以外の視点をフィードバックすることで、気づきが得られ、具体的な改善のための行動に繋げやすくなるはずです。
5.具体的な行動をリクエストする
フィードバックに基づいた具体的な行動を促し、背中を押します。しっかりと相手の考えを引き出した上で相手に行動を促せば、一方的な指示や命令ではなく自発的な行動のきっかけと受け取ってもらえるでしょう。
コーチングの効果を高めるには
コーチングの肝は、相手のことを把握し、的確なフィードバックを返すという部分にあります。この部分をコーチとなる方が、研修を受けるなどして技術を磨くことで効果を高めることができるでしょう。
しかし、コーチング対象者が多数いる場合、1人ないし数人のコーチが対象者一人ひとりとしっかりと向き合うには膨大な時間と手間が掛かります。
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コーチングによる人材育成と正しい人事評価が企業成長の鍵
企業にコーチングを導入することで、人材育成の質の向上が期待できます。
企業が成長するためには、人材育成と同時に、人材の成長度合いを正しく評価する仕組みの構築も非常に重要となります。
評価制度を構築する際は、クラウドシステムと運用コンサルティングで人事評価制度を支援する「ゼッタイ!評価®」の活用が効果的です。
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