組織改革抜きの事業改革は失敗のもと -雨宮玲於奈さん インタビュー後編-

30歳で、株式会社日本医療情報センター (現:株式会社リクルートメディカルキャリア) 代表取締役に就任。その後もリクルートグループ各社の執行役員や取締役を務め、2017年まで務めた株式会社インターワークスの社長としては、株式上場や東証一部への市場変更を最短で実現した雨宮玲於奈さん。

自身が20代前半で描いた通りのキャリアを実現してきた雨宮さんですが、その過程においては人事評価によって成功したこともあれば、躓いたこともあったのだそうです。そこでインタビュー後編では、経営に責任を負う立場になった雨宮さんが、人事評価制度をどう捉えてきたのかお話しいただきました。

【Profile】
雨宮 玲於奈(あめみや れおな)
株式会社スマートエージェンシー 代表取締役社長
法政大学経済学部卒業後、光通信を経て、リクルートホールディングス傘下の複数企業で代表取締役や執行役員を歴任。2013年に参画した就職情報サイト・人材採用支援大手のインターワークスでは、代表取締役社長に就任後、同社を東証マザーズに株式上場させ、その後最短で東証一部に市場変更に導いた。現在はスマートエージェンシーを設立し、経営顧問や投資活動などを行っている。

■リーマンショックを境にマネジメントの方針を180度変えた。

―リクルートに入社後、ほどなくして営業部長を務め、30歳にはグループ会社の取締役にも就任されています。社員を評価する側になってからは、何を大切にされてきたんですか

雨宮さん:組織マネジメントという観点でリクルート時代を振り返ると、私は前半と後半で考え方をかなり変えているんです。というのも、最初はかなり数字に厳密なマネジメントを徹底していました。前編でお話したように、リクルートは「WILL-CAN-MUST」で個人を評価するのですが、頭では分かっていてもメンバーとの会話はMUSTに力点を置いてしまったんです。極端な話、業績が99.8%だったら100%じゃないんだからマイナス評価だよねと、仕事のプロセスや個人の成長度合いがどんなに素晴らしくても厳しくジャッジしていました。それでも、リクルートのメンバーはみんなタフだし、当時は景気も上り調子だから、なんとか上手くいっていたんです。

―そのやり方を変えたのはなぜなんですか?

雨宮さん:一番はリーマンショックです。急激に景気が低迷し、会社の業績もかなり厳しい状況でした。もちろん当事は社会全体がそうだったのですが、人ひとりの力ではどうしようもない状況でMUSTを言い続けるコミュニケーションだと、みんなのモチベーションが著しく低下します。厳しい時期であっても個人の「WILL」や「CAN」を尊重し、実現の後押しができる組織であることの重要性を痛感しましたね。

それに、自分自身が見られる範囲の限界も感じました。当時社長を務めていた会社が300名を超えたあたりから、現場の状況がタイムリーに分からなくなってきたんです。もっと各部門のマネージャーやメンバーの成長に期待し任せていかなければ、事業成長も止まってしまうんだなと感じた時期でした。

景気の波って必ず訪れるものですよね。上向きのときは、多少至らないところがあったって事業は伸びるし、個人も少なからず達成感があるから自己肯定しやすい。でも、景気が悪くなったときにエネルギッシュに前を向いて働くには、目標達成だけではないモチベーションの拠り所がないといけない。事業を持続的に成長させるには、それが大事なんだと気づいてやり方を変えたからこそ、厳しい時期を乗り越えられたのだと思います。

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■どんなにビジョンや戦略が素晴らしくても、人が育つ環境でなければ失敗する。

―その後、雨宮さんは株式会社インターワークスに転じ、東証一部上場も実現されています。短期間で成し遂げた秘訣はどこにあるのですか。

雨宮さん:当時のインターワークスは、M&Aによって求人メディア・人材紹介・RPOの人材サービス系3事業が集まっていたものの、グループとして共通で何を目指していくのか、明確な指針がなく組織はバラバラな状態でした。きちんと利益を出してはいましたが、率直に言って大義も夢も見えなかった。まさしく、「WILL」や「CAN」がない状態だったと感じましたね。

だからこそ、社長に就任してから最初に宣言したことは、「自分たちが社会の期待に応えられる存在であると全員で自覚するためにも、上場会社になろう」と具体的な目標を示したこと。1年で実現できなかったら取締役会は解散するくらいの覚悟でした。大企業にはできないニッチトップを目指そうとビジョンを掲げ、事業戦略も引き直し、その年のうちに東証マザーズへ上場。その翌年には東証一部への市場変更を実現できたのは、明確な目標によって一体感が生まれ、急速に事業改革が進んだからだと思います。ただ、私はこのときにひとつだけ失策をしてしまったんです。

―上場がゴールになってしまったということでしょうか。

雨宮さん:上場はあくまでもスタートラインだとメッセージしていたのですが、結果的には一体感が失われて元の部門最適に逆戻りしてしまったんです。その原因は、目標管理のやり方を各事業に任せてしまったこと。部署によって評価の基準が曖昧になってしまい、絶対評価で厳しくマイナス査定をするところもあれば、組織長の主観が強すぎて「あまから」が発生してしまう部署もありました。これは社員にとって非常にアンフェアな状態。横並びでみると不平等になってしまい、「成果が正当に評価されている気がしない」、「会社は自分に何を期待しているのか分からない」と評価に対して納得感を得られなかった社員も少なくなかったはず。前を向いて成長を指向する組織コンディションとは言えません。

私は、ビジョンも戦略もシャープにしたけれど、MBOを疎かにしてしまった。それが企業の風土にも、社員のモチベーションにも影響を及ぼしてしまったんですよね。だから、私がインターワークスで最後に行った決断は、自身の退任。責任を取って退くことにしました。

―そうした苦い経験も、現在の活動に活かされているんですね。

雨宮さん:そうですね。やはり経験上、企業改革を行う時に組織改革よりも事業改革を優先すると失敗しがちなんです。特に人的資源であるHRの改革を疎かにすると、ほぼ上手くいきません。そういった観点は、現在の経営顧問活動においても重視していることです。また、どんなに優れた組織改革手法や評価制度を導入したとしても、定着や運用させなければ意味がありません。世の中で多いのは企画や導入で満足してしまって、持続しないケースではないでしょうか。経営者や人事のみなさんは、フレームやツールの導入以上に、実行・定着に注力することが大切。戦略だけでなく実行まで伴走してくれる外部パートナーを見つけることも有効だと思います。

 

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