
いよいよ、「同一労働同一賃金制度」が2020年4月から適用されます。
政府が掲げる働き方改革の目玉の一つでもある同一労働同一賃金とは、一体なんなのでしょうか。何となく言葉の意味は分かっていても、実際にどういう制度なのか説明できない方も多いはず。 本記事では同一労働同一賃金がどういうものかを解説します。
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金とは、 “同じ職務の内容であれば、同じ額の賃金を従業員に支払う “ という制度です。
端的にいうと「同一労働同一賃金」とは、現在の雇用をめぐる状況で問題視されている“正規社員と非正規社員の格差解消を図る”という点に集約されるといってよいでしょう。
同一労働同一賃金の改正法の施行は、2020年4月1日からとなっています。
そのため、各企業はそれまでに対策・準備をしておく必要があります。
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
引用:厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ
同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。
同一労働同一賃金のガイドライン
2016年8月、安倍首相が記者会見で「同一労働同一賃金」について言及したのが始まりとなり、「同一労働同一賃金」という言葉は注目されるようになりました。
それ以降、マスコミなどでも度々取り上げられるようになりました。そして同年の12月には厚生労働省から「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示されました。
本ガイドラインは、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものです。
同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを示しています。
この際、典型的な事例として整理できるものについては、問題とならない例・問題となる例という形で具体例を付しています。不合理な待遇差の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成・能力開発などを含めた取組が必要であるため、これらの待遇についても記載しています。
引用:厚生労働省 同一労働同一賃金ガイドライン
諸外国に比べ大きい正社員とパートの賃金格差
日本では、これまでも非正規社員に対する待遇格差を禁じる法律はありました。
しかし、欧州諸国との比較では正規と非正規の差は大きく広がっている現状となっています。
正社員と非正社員の賃金格差は、1時間当たりで日本が56.6%なのに対し、イギリスは71.4%、フランスが89.1%、ドイツは79.3%となっていて、厳しい格差がうかがえます。
首相官邸「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年)より
これに対し政府では、欧米並みの水準にまで引上げていくことが望ましいとしています。
合理的ではない待遇差の現状を改め、非正規雇用労働者の雇用状況を改善することが、早急な政策課題となっているのです。
厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドライン案が作成されたのは、このような背景を受けた取り組みといってよいでしょう。
同一労働同一賃金は「働き方改革の目玉」
経営のプラス材料として積極的に推進されていく同一労働同一賃金
このように政府の主導で進められている「働き方改革」を経済界も”経営にプラスになる”と前向きに捉え、積極的に取り組む企業も多くなってきました。
企業の人材確保・採用および定着、仕事の質向上などに役立てようという動きも活発化しています。
この働き方改革を推進する「働き方改革実現会議」では9つの討議テーマが掲げられています。
- 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
- 賃金引上げと労働生産性の向上
- 時間外労働の上限規制のあり方など長時間労働の是正
- 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
- テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
- 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性や若者が活躍しやすい環境整備
- 高齢者の就業促進
- 病気の治療や子育て・介護と仕事の両立
- 外国人材の受け入れの問題
いずれも日本の雇用をめぐる問題として、解消に向けた話し合いが行われていますが、その中でも「同一労働同一賃金」は目玉になる存在です。
また併せて大きな目標として掲げられているのは、やはり「労働生産性の向上」といえるでしょう。
現在は少子高齢化が急速に進み、働き手の確保が難しくなっています。女性や高齢者など幅広い働き手を活用してかつ高い時間単価賃金を両立させるためには、一人ひとりの生産性向上が重要になるのです。
そのためには、従来型の「年功給」、「職能給」から「業績・成果給」、「役割給」、「職務給」へと賃金体系を変革することが求められます。それがひいては非正規社員の待遇格差の改善にもつながっていくと思われるのです。
労働関連法規も見直しの方向へ
労働関連法規では正社員と非正規社員で、職務内容や配置の変更範囲などにおいて格差のある待遇を設けることを禁じています。
しかし、正社員と非正社員間で、どのような「差」があれば、不合理と判断されるのかは明示されていませんでした。先に触れた厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドライン案では格差に関する解釈が提示されています。
「働き方改革」での議論の進展に伴い、関連法規の改正なども今後速やかに進められていき、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法を改正していくことが予想されています。
大企業においても脱年功序列の取り組みが一般的になってきていますが、中小企業においては、成果と報酬が連動した賃金制度が必要となり、正社員と非正社員の格差を解消していくことが、人材の確保・定着にもつながっていくのです。
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