雇用保険とは?加入条件や仕組み、改正の動向についてわかりやすく解説

雇用保険

雇用保険は、社員が離職した後に失業手当(基本手当)などの各種給付を通じて再就職を支援する役割を持つ社会保険のひとつです。

在職中の社員にも、教育訓練給付金や育児休業給付金・介護休業給付金などの形で長期間働き続けるためのサポート制度を設けています。

本記事では雇用保険の仕組みや加入条件をはじめ、各種給付制度について解説します。2020年に改正された、雇用保険法の内容についても確認しておきましょう。

雇用保険とは

雇用保険とは、失業した労働者がスムーズに再就職を果たせるよう、生活費や就職活動に必要な費用を給付する制度です。社会保険の一つとして位置付けられており、条件を満たす企業と会社には加入が義務付けられています。

失業に関連する給付だけでなく、現在勤めている労働者に対する給付制度が用意されているのが、雇用保険の特徴です。育児・介護と両立して働くことができるよう収入の一部を給付する制度や、スキルアップを希望する労働者をサポートする教育訓練給付金制度も設けられています。高齢者の再雇用や再就職に伴う収入の減少を補う制度も用意されています。

また、離職後早い段階で再就職した人には、就職後一定期間が経過した後に再就職手当や就業促進定着手当といった形で失業手当(基本手当)の一部が給付されます。何らかの事情で離職を余儀なくされた人に対する、積極的な再就職活動に対するインセンティブとして機能する一面もあるのです。

雇用保険の加入条件

5人未満の労働者を雇う個人経営の農林水産業を除いて、労働者を1人でも雇っている企業は雇用保険に加入する義務を負っています。そのため、次の条件を満たす労働者については必ず雇用保険に加入させることになります。

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上の人
(2)31日以上雇用される見込みがある人

以上の条件を満たしている限り、正社員だけでなく契約社員・嘱託社員やパート・アルバイトの人も加入対象です。また、現在では65歳以上の労働者も「高年齢被保険者」として雇用保険に加入することになります。派遣社員を受け入れる場合は、派遣先ではなく派遣元(派遣会社)で雇用保険の加入手続きを行います。

雇用保険に加入したくないと労働者から申出を受けるケースが少数ながら見受けられます。会社として雇用保険の加入が義務づけられていることに触れながら、後述する雇用保険料や給付制度について丁寧に説明することで、制度への理解が得られるでしょう。

雇用保険料の負担率

雇用保険料は、国が定めた負担率に沿って会社と社員が共同で支払う仕組みです。雇用保険料は業種によって異なりますが、年1回見直しが行われています。2021年(令和3年)度の雇用保険料率は、次のとおりです。

事業の種類 会社負担 社員負担 雇用保険料率
一般の事業 0.6% 0.3% 0.9%
農林水産業・清酒製造業 0.7% 0.4% 1.1%
建設業 0.8% 0.4% 1.2%

参考:厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率について」

厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク

雇用保険料は毎月の給与だけでなく、賞与や決算手当など臨時に支給される手当にも発生します。また、所得税・住民税や社会保険料を控除する前の「総支給額」をもとに、上記の雇用保険料率をかけて保険料を決定します。保険料の計算例を紹介します。

一般の事業で働く、月給25万円の人の場合>
・会社負担分:25万円×0.6%=1,500円
・社員負担分:25万円×0.3%=750円

なお、雇用保険料は労災保険料とあわせて「労働保険の年度更新」で1年分の金額を確定してから納付する仕組みです。

雇用保険の種類

雇用保険では失業した人に対する給付だけでなく、再就職した人や在職中の人への給付制度も用意されています。人事部が社員から質問を受けるケースが多い給付を紹介します。

入社後間もない時期に受けられる給付

基本手当の支給残日数によって再就職手当・就業促進定着を受けられる場合があり、社員から在籍や賃金に関する証明書を求められるケースが少なくありません。証明業務だけとはいえ、給付制度の名前だけでもチェックしておきましょう。

再就職手当

就職の前日における基本手当の支給残日数に応じて、再就職から2〜3ヶ月前後で一時金の支給が受けられる制度です。受給にあたっては以下の条件が設けられているので、雇用契約を結ぶ際には考慮するとよいでしょう。

・入社段階で、1年を超えて雇用されることが確実視されていること
・有期雇用契約の場合は、1年を超えた更新が見込まれること
・いわゆる「出戻り」の採用ではないこと

就業促進定着手当

再就職手当の支給を受けた人が6ヶ月以上勤続し、かつ再就職後の賃金が離職前(前職)の賃金より低い場合に、6ヶ月分の賃金の差額が支給される制度です。入社後6ヶ月以内に雇用保険の被保険者資格を喪失すると、就業促進定着手当を受けられなくなります。所定労働時間の短縮や出向を検討する際には配慮が求められるでしょう。

在職中に受けられる給付

育児・介護で休業する場合に給与の一部が支給される制度や、高齢者の再雇用・再就職に伴う給与の低下分が補填される制度も用意されています。在職中の人への給付制度もあると案内することで、雇用保険に対する理解も深まるでしょう。

教育訓練給付金

雇用保険の被保険者期間が1年以上ある人が、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受けて修了した場合に、受講料の20%(最大10万円)が給付される制度です。専門学校や通信教育など幅広い分野の講座が指定されています。

国家資格の取得や専門職大学院への通学に対応した専門実践教育訓練の場合は、受講料の50%(年間上限額40万円)が最大3年間支給されます。

高年齢雇用継続給付

60歳になって以降の給与が60歳時点の給与と比べて25%以上減った人が、減った給与の一部を補填してもらえる制度です。雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者が対象なので、満60歳を過ぎてから再就職した人にも給付される場合があります。

育児休業給付金

男性・女性とも、育児休業をとった期間に給与が支給されなかった場合に給与の一部を雇用保険から給付を受けられる制度です。

1歳未満の子を育てる場合が対象ですが、保育所が見つからない場合は最長で2歳の誕生日の前日まで給付を受けられます。父母(夫婦)で育児休業を取ると最長1歳2ヶ月まで延長される制度や、養子を迎えた場合も育児休業給付金の対象になるなど、制度が多様化しています。

2021年6月の育児・介護休業法の改正で、育児休業を2回に分割して取得できる制度も新設されたため、最新の情報を収集した上で社員に情報提供しましょう。

介護休業給付金

介護休業をとった期間に給与が支給されなかった場合に、給与の一部を雇用保険から給付を受けられる制度です。常時介護を必要とする社員の父母や配偶者・子などの親族の介護が対象で、1名あたり最長93日分まで支給されます。最大3回までの分割取得も可能です。

退職後に受けられる給付

退職する社員から失業手当に関する相談を受けるケースは多いです。高齢者や季節労働者を雇っている場合は、専用の給付制度が設けられているため正しい情報を案内するようにしましょう。

失業手当(基本手当)

ハローワークで求職手続きをとった当日から7日間の待機期間の翌日から90日〜360日にわたって在職中の給与額に応じた割合で計算された失業手当(基本手当)が支給されます。

会社都合で退職した場合だけでなく、一身上の都合といった自己都合退職も対象になります。受給できる期間は退職理由や雇用保険の被保険者年数によって異なるため、詳しくはハローワークの公式サイトで確認してください。

高年齢求職者給付金

65歳以上の雇用保険の被保険者が退職した際に、基本手当の代わりに受け取れる給付金です。被保険者期間が1年未満の人は基本手当の30日分、1年以上だと基本手当の50日分が一括で支給されます。

受給額が基本手当より少なくなるため、定年退職する人から退職日を65歳の誕生日前日にしたいと相談を受けることもあるようです。

特例一時金

季節限定で働くことを前提とした短期雇用特例被保険者が離職した後、基本手当の40日分を一括で受け取れる制度です。以下の条件に当てはまる人が受給できます。

・雇用期間が4ヶ月を超えている人
・週の所定労働時間が30時間以上の人

受給期限が離職日の翌日から6ヶ月以内と短いため、離職票の発行手続きを含め迅速な対応が必要です。

入社時の資格取得手続き

社員が入社したら、入社日の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。入社した人の雇用保険被保険者番号がわからない場合でも、前職の勤務先の名前から被保険者番号を調べてもらえます。

資格取得手続きの際はマイナンバーの届出が必須なので、入社時に忘れずにマイナンバーを預かるようにしましょう。

退職時の資格喪失手続き

社員が退職した場合は、退職日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格取得届」「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。雇用保険被保険者離職証明書は、退職者の離職票となる書類です。

離職票は失業保険の給付手続きに必要となるので、できる限り早めに手続きを取るようにしましょう。

雇用保険被保険者離職証明書には、退職日から12ヶ月分の出勤日数や賃金支払対象期間・日数、賃金額を記載します。離職理由にチェックをつける欄があるので、事実に基づいて記載しましょう。

会社都合で離職票を作ってほしいと退職者から頼まれるケースがありますが、虚偽の記載が発覚した場合は不正受給として会社・退職者ともに罰則を受けるので注意してください。

知っておきたい失業保険を受給するまでの基本の流れ

退職した人がハローワークに離職票を提出した後の手続きについて解説します。退職する人から失業保険の手続きに関する質問を受けるケースが多いので、正しい情報を提供できるよう準備しておきましょう。

失業保険の受給手続きの流れ

失業保険の手続きは、退職者の住所を管轄するハローワークで行われます。主な流れは、次のとおりです。

・ハローワークに離職票と求職申込書など必要書類を提出する
・ハローワークから指定された日程で雇用保険受給者説明会に参加する
・初回の失業認定を受ける

ハローワークに離職票などを提出した後、初回の失業手当が振り込まれるまでに会社都合退職の場合だと1ヶ月半前後、自己都合退職の場合は3ヶ月~4ヶ月ほどかかります。

また、退職者が離職票に記載された退職理由が異なるとハローワークに申し出た場合は、退職理由に関する詳しい説明を求められる場合があります。退職理由をめぐってトラブルになりそうな場合は、退職者とのやりとりに関する記録をまとめておくとよいでしょう。

すぐに再就職活動ができない場合

雇用保険の受給期間は基本的に離職日の翌日から1年間ですが、次のような事情がある場合は受給期間の延長手続きが可能です。受給期間の延長は、退職日の翌日から30日経過後から行えます。

妊娠・出産の場合:最長3年
3歳未満の子を育てる場合:最長3年
病気やケガで働けない場合:最長3年
親族の介護で働けない場合:最長3年
定年退職後、しばらく休養する場合:最長1年

受給期間が延長できるかどうかは個別に判断されるので、上記の事情がある退職者にはハローワークに相談するよう案内しましょう。

法改正により雇用保険も多様な働き方に対応する流れへ

多様な働き方を選ぶ労働者へのセーフティーネットを拡充するため、2020年3月に雇用保険法が改正されました。自己都合で退職した後の失業給付の制限期間が短縮された他、2022年1月からは試験的に、65歳以上の労働者が複数の勤務先で雇用保険に加入できる制度も始まります。

失業等給付の給付制限期間が条件付きで短縮

2020年10月から、自己都合で退職した人に対する失業手当の給付制限期間が条件付きで2ヶ月に短縮されました。過去5年以内に2回までの自己都合退職が対象で、退職後に収入が得られない期間を短縮することで転職しやすい環境の整備が狙いとされています。

なお、懲戒解雇や諭旨解雇のように社員に責任がある重大な理由により退職させた場合は、給付制限期間が3ヶ月のままです。

被保険者期間の算定方法が変更

2020年8月からは、雇用保険の被保険者期間を月の労働時間数でも計算できるようになりました。これまでは、勤務時間にかかわらず11日以上働いた月を「1ヶ月」として計算していましたが、フレックスタイム制やシフト制といった柔軟な勤務体系に対応しきれない一面があったための改正です。

1ヶ月に働いた日が11日未満でも労働時間が80時間以上であれば「1ヶ月」と計算できるようになり、失業給付や育児休業給付金・介護休業給付金の受給資格を得られる人も増えるでしょう。

65歳以上の労働者は複数の事業所で雇用保険に加入可能

2022年1月からは、65歳以上の労働者に限定されるものの複数の勤務先で雇用保険に加入できる制度が始まります。

勤務先1ヶ所だけでは雇用保険の加入条件を満たさない場合でも、2つ以上の勤務先で働く時間の合計が週20時間以上であれば雇用保険に加入できるようになります。
例えば、勤務先Aで16時間・勤務先Bで8時間勤務するような人の場合でも雇用保険に加入でき、退職後に高年齢求職者給付金を得られる可能性が出てくるわけです。

労働者の自己申告により適用される制度ですが、すべての労働者に制度を拡大できるかを検証する、試験的な要素も含まれています。

人事担当者は雇用保険について正しい知識を基に働きやすい職場を目指そう

雇用保険では失業に対する給付だけでなく、現在働いている人に対してもさまざまな給付制度が設けられています。

人事部では、退職を検討している人や育児・介護と両立して働きたい人から雇用保険の給付制度に関する相談を受ける機会が少なくありません。相談した内容を踏まえて今後の人生設計を考える社員もいるため、正確な情報を提供することが大切です。

社員が長期間にわたり働きやすい職場を目指すためにも、人事担当者は雇用保険に関する正しい知識を身につけておくようにしましょう。

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