ミッションステートメントとは?個人も企業も活用するミッションステートメントの例・作り方

企業の価値観や社会的使命を、ミッションステートメントとして社会に向けて積極的に発信する企業が増えています。

これまでの「経営理念・社是」にあたるもので、企業・従業員の行動指針が具体化された、新しい経営ツールです。

今回は、ミッションステートメントの意義や作り方などを、5つの企業を実例として紹介しながら解説します。

ミッションステートメントとは?

ミッションステートメントは、企業の社会的役割や存在意義を役職員全員で共有し、顧客やステークホルダーにも公表する広報ツールの一つです。

ミッション(mission)という言葉には、組織の最重要目的という意味や、特定の目的を果たすための作戦という意味が含まれています。

すなわち、企業が商品やサービスを提供し続ける上での戦略であり、憲法の企業版といえるものです。

従業員にとっては、モチベーションを高めるツールの一つとなります。組織としての行動指針が明確化されていることから、業務全体における当事者意識を高めるために有効です。

個人のミッションステートメント

個人の価値観や生き方を明文化し、自己実現を図るためにもミッションステートメントを応用可能です。

自己分析を細かく行って自分を深く理解した上で、行動の軸を定めていきます。例えば、

  • 他人の話を謙虚に聞く
  • 何事もあきらめない
  • 必要とされる存在になる

という風に、シンプルにまとめると日々の行動に移しやすいでしょう。ライフスタイルの変化に合わせて、ミッションステートメントを更新していくことも、豊かな人生を送る上では大切です。

行動の軸が定まっていれば、就職・転職活動を行う際にも有利です。新卒採用の面接で「就活の軸」を質問された時には、仕事への価値観や企業選びの基準について具体的な回答を求められます。

中途採用の面接では、企業選びの基準や動機を深掘りする企業もあるようです。行動の軸を明確にしておくことで、自分に合った仕事や職場に出会えるチャンスが高まるでしょう。

サイバーエージェントなど。企業のミッションステートメントの例

ミッションステートメントがどのような形で発信されているか、5つの企業を例に挙げて解説します。

サイバーエージェントのミッションステートメント

サイバーエージェントでは、

「インターネットという成長産業から軸足はぶらさない。」
「迷ったら率直に言う。」「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを。」

など15項目のミッションステートメントを定めています。

失敗してもチャンスがあることを明確にして、果敢な挑戦を歓迎するという強い意志を感じさせられます。技術や顧客ニーズの変化へ柔軟に対応しながら、インターネット関連事業において着実な成長を遂げている企業です。

パタゴニアのミッションステートメント

アメリカ合衆国に本社を置き、アウトドア用品などを製造・販売するパタゴニアでは、

「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」
「従来のやり方にとらわれない 私たちの成功、そして楽しみの多くは、新しい方法を開拓することにあります。」

など6項目のミッションステートメントを定めています。

自然環境と共存しながら企業を運営し続けていくことが、「地球を救う」という言葉で明確に表明されています。最高の製品作りにこだわりを持ちながら、時代の変化を受け入れる柔軟性を持った企業です。

ファーストリテイリングのミッションステートメント

ユニクロなどのアパレル事業を統括するファーストリテイリングでは、

「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

というステートメントが掲げられています。

企業の使命であるミッションは「本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します」「独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します」の2つです。

低価格で良質なファッションを体験できることが世界各地で支持された結果、世界のアパレル製造小売業の中で売上第3位を誇るまでに成長しました。

スターバックスのミッションステートメント

コーヒーショップを世界各地で展開するスターバックスは、

「人々の心を豊かで活力あるものにするためにーひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」

をミッションに掲げています。「私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます。」が、企業共通の価値観であるバリューの一つです。

接客にあたっては、従業員(パートナー)の意思で判断し、行動することが求められるといわれています。多様性を受け入れる姿勢を「ひとり」「ひとつ」を大切にする形で実践している企業です。

大塚商会のミッションステートメント

大手ソリューションプロバイダーである大塚商会では、ミッションステートメントの中で

「大塚商会は多くの企業に、情報・通信技術の革新によってもたらされる新しい事業機会や経営改善の手段を具体的な形で提供し、企業活動全般にわたってサポートします。そして、各企業の成長を支援し、わが国のさらなる発展と心豊かな社会の創造に貢献しつづけます。」

という使命を宣言しています。

無料の経営支援サービスの提供を通じて社会との共存共栄を図り、ミッションステートメントの実現に取り組んでいる企業です。

ミッションステートメントの意義

ミッションステートメントを発信する意義について、経営戦略に関連する3つの視点から考えてみましょう。

意思決定の判断基準とする

ミッションステートメントは、経営判断の最終的な軸として機能します。

企業の業績や業界の動向・国内外の経済状況によって経営判断の基準は変動しがちです。

時には、数値による指標がない状況や反対意見が多い状況でも、判断を下さざるを得ない場面にも出会うでしょう。

企業としての社会的役割や行動指針を明確にしておくことで、重大な局面に遭遇したとしても的確な判断を下すことができます。

ステークホルダーから意思決定のプロセスについて説明を求められた場合も、ミッションステートメントを根拠として説明責任を果たせます。

ミッションステートメントが公開された時点で経営方針、すなわち投資判断に必要な情報の開示が済んでいるからです。密室で議論を行っていないという証跡になるともいえます。

従業員と目的を共有する

ミッションステートメントは、企業の存在目的や業務遂行の軸をすべての役員・従業員と共有するコミュニケーションツールとしても機能します。

従業員数や拠点数が多い企業にとって、業務の遂行方針(会社の経営方針)を正確に伝えることは、経営層における課題の一つです。

ミッションステートメントを掲げることで、経営層からのメッセージを簡単かつ正確に伝えることができますし、従業員のモチベーション向上や部署・チームとの結束力を高めるためにも効果的です。

360度評価を実施して、上司が経営方針に忠実かどうかをチェックする機能に期待している会社もあります。

企業の存在目的を従業員と共有することは、退職する人を減らす(エンゲージメントの向上)にも効果的です。

退職者が減少することで、技術やノウハウの外部流出リスクを軽減できる他採用コストの軽減にも結びつき、経営上の負担も減少します。

中小企業にとっては、退職者の発生そのものが事業継続に影響を及ぼす恐れがあるため、ミッションステートメントを打ち出す価値は高いでしょう。

企業の価値観を外部へアピールする

ミッションステートメントを利用して、経済活動の進め方や企業のポリシー(信念)を社外にアピールできます。

株主をはじめとするステークホルダーに、事業計画や経営方針の理解を得るためにも有効なツールです。

近年ではSDGsに取り組む一環として、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関する表明を行う企業も見られます。

人材の採用活動においても、ミッションステートメントの公開によるメリットが発揮されます。

採用難が深刻化する中、特に中途採用の場面では入社のしやすさにフォーカスを当てて就職先を決める人がいるようです。それに伴い、入社後のミスマッチが業務遂行上の問題として認識される傾向にあります。

企業の理念に共感できる人に入社してもらうためには、ミッションステートメントを通じて企業の考え方を明らかにしておくことが効果的です。

ミッションステートメントの作り方・書き方

ミッションステートメントを掲げると、社会への約束事として広く知られることになります。ミッションステートメントの作り方・書き方について解説します。

ミッションステートメントに欠かせない9つの要素への理解

ミッションステートメントを作成する前に、次の9つの要素について理解を深めておくことが大切です。

顧客

商品やサービスの提供範囲を明確にする必要があります。企業が顧客となる場合に、客先の消費者やビジネスパートナーを顧客と考えるのかを掘り下げておくと万全です。

製品とサービス

自社が提供する製品やサービスの特徴や社会的使命を明文化しておくことをおすすめします。顧客満足度や付加価値について分析することも効果的です。

市場(マーケット)

どのような市場で事業を展開していくのかを検討します。地理的な要素や情勢の変化、企業価値の創造方法についても掘り下げておきましょう。

技術(テクノロジー)

事業活動に必要な技術や、イノベーションの可能性について精査を行います。市場や顧客層の変化に対応できるよう、最新の技術をビジネスに取り入れることが大切です。

企業理念

既存の企業理念をミッションステートメントに加えるか、その他の要素を考慮して新しい理念を作るのかを検討します。

時代や市場の変化に応じて、理念修正をいとわない姿勢も必要です。

企業の強み(競争優位性)

事業の成長・健全性を確保するため、自社が持つ強みについて整理します。競合他社の動向に目を向けながら、優位性を確保できる道筋を用意しておきましょう。

企業の成長性や財務の健全性

企業が持続的に成長できるのか、財務状況が健全なのかを再確認します。

長期にわたり社会的使命を果たし、ミッションステートメントに説得力を持たせるために大切な要素の一つです。

社会的責任と自然環境への配慮(パブリックイメージ)

SDGsの達成目標として、持続可能な消費と生活のパターンの確保や海・陸の豊かさの保全が提示されているため、自然環境へのきめ細やかな配慮が必要です。

市民社会の一員として、健全な形で地域社会に参加する姿勢も求められます。

社員に対する姿勢

人間である社員が企業を運営することを念頭に置き、社員に対する姿勢を再確認します。

働き方改革の一環として、ディーセントワークを導入する企業が増加している点に留意が必要です。

作成専門チームを結成

多様な意見を収集するためには、役職や能力にかかわらず企業に所属する人を全員を対象に、作成メンバーを募集するのが効果的です。

企業の行動指針となるミッションステートメントは、組織全体で等しく理解・浸透するものでなければなりません。

そのため、広報やIR部門だけでなく、可能な限り多くの部署に関与してもらうことが望ましいといえます。

ミッションステートメントを作成する際は、ステークホルダーだけではなく、社会全体に対するわかりやすさを意識することが大切です。

社会通念や法令遵守(コンプライアンス)への配慮も求められます。必要に応じて、ステークホルダーの代表や弁護士等の専門家を加えることが望ましいです。

9つの要素を明確化

ミッションステートメントに必要不可欠な9つの要素について、チーム全員で議論を深め、明確にしていきます。議論中に指名して発言を促すなど、発言しない人が出ないよう工夫するとよいでしょう。

特に「顧客」「パブリックイメージ」「企業理念」「社員に対する姿勢」は、企業の存続(サスティナビリティ)にとって重要であるため、徹底的に議論することが大切です。

整理した意見を文章化

明確になった要素(ミッション)をつなぎ合わせて、文章(ステートメント)にまとめていきます。広く情報を発信する視点で、社会から共感を得やすい言葉を選ぶことが大切です。

ミッションステートメントを作成する際は人事評価制度の見直しもお忘れなく

ミッションステートメントは、企業の価値観・行動指針を顧客やステークホルダーに明確に示すことができる効果的なツールです。

同時に、従業員にとっては日常業務の中で働く意義を再確認するためのツールとして機能します。

ミッションステートメントを作成する際は、企業の行動基準や経営戦略に合わせて人事評価制度の見直しも忘れずに行いましょう。

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