PL法(製造物責任法)とは?企業ができる対策や事例を紹介

PL法とは、欠陥のある製造物により消費者に損害が生じた場合に、製造業者に損害賠償責任を負わせる法律です。免責事由に該当しない限り、たとえ製造業者側に過失がなくてもこの責任は回避できません。また、損害賠償責任は製造業者以外の関係業者にも課されることがあります。

物を製造し流通させている企業にとって非常に重要な法律なので、詳しい内容や対策、PL方が適用された事例などを見ていきましょう。

PL法(製造物責任法)とは?

まずはPL法の概要を詳しく解説します。

PL法の概要

PL法は平成7年7月1日に消費者保護の目的で施行された法律です。製造物の欠陥によって生命や身体・財産に損害が生じた場合、被害者は製造業者に損害賠償できることを定めています。民事上の問題で損害賠償請求する場合、通常被害者側が加害者の過失・責任を証明しなければなりません。

しかしPL法では、被害者は製造物に欠陥があったことさえ立証できれば損害賠償請求できるとされているのです。

PL法における「製造物」とは?

PL法において製造物は、製造または加工された動産を指します。不動産やサービス、ソフトウェアなどは対象外です。

PL法における「欠陥」とは?

PL法の「欠陥」とは「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定義されています。製品ごとの製造物の特性や使用形態などの事情を考慮して、個別的・具体的に安全性を欠いていたかを判断されます。

PL法における欠陥について、以下の3つの要素に不備がないかも重要になります。

  • 製造上の欠陥:製造過程の問題で生じた欠陥
  • 設計上の欠陥:設計の問題から生じた欠陥
  • 警告上の欠陥:製造物に関する注意喚起が不十分で生じた欠陥

PL法の内容

PL法は全6条から成り立つ法律です。特に重要な3~5条の内容を見ていきましょう。

損害賠償責任

製造業者が負う賠償責任については、PL法第3条において以下のように定められています。

製造物の欠陥により製造物を使用した人(消費者)の生命・身体・財産に損害が生じた場合、製造者は損害賠償責任を負わなければなりません。

製造物に欠陥があっただけで消費者の生命・身体・財産に損害が出ていない場合は、PL法が定める損害賠償責任は発生しません。

免責事由

免責事由とは、「製造物の欠陥で消費者の生命・身体・財産に損害が生じても、製造者の損害賠償責任が免除される事由」を言います。具体的な免責事由はPL法第4条に定められており、以下の通りです。

  • その製造物が流通した当時の技術や化学の水準では欠陥を発見できなかった場合(開発危険)
  • 当該製造物の部品を下請けとして指示通りに製造しただけであり、製造物の欠陥に対して責任があるとは言えない場合(設計指示の抗弁/部品・原材料製造業者の抗弁)

設計指示の抗弁についてはもう少し詳しく解説します。

製造物の部品は、下請け会社が製造元から依頼されて作っていることも多いです。そうした下請け会社はただ指示に従って部品を製造しているだけで、その部品がどのように使われるか詳しく把握していないことも珍しくありません。

そのような下請け会社にまで製造物の欠陥で生じた損害の補償をさせるのは妥当ではないため、免責の対象となることがあるのです。

時効

PL法第5条には時効についての規定があり、時効が過ぎると被害者は損害賠償請求する権利を失います。

時効が成立するまでの期間は、「被害者またはその法定代理人が、欠陥のある製造物による損害および損害賠償責任を負う者を知った日」から数えて次の通りです。

  • 財産に関する被害:3年間
  • 身体・生命に関する被害:5年間

時効は、製造業者が当該製造物を引き渡したとき(一定の潜伏期間ののち症状が現れた場合はその症状が生じたとき)から10年間とされることもあります。

PL法の義務者とは?

PL法の義務者、つまり「欠陥のある製造物で損害を受けた人への損害賠償責任がある者」は、当該製造物の製造業者だけではありません。詳しく見ていきましょう。

製造業者・輸入業者

製造業者とは「実際に製造に携わり、製造物の欠陥を生み出し流通させた者」のことです。設計を担当しただけの設計業者や完成した製造物を販売しただけの販売業者は、基本的に該当しません。

輸入業者は、欠陥のある危険物を国内に持ち込んだこと、海外の製造業者に損害賠償責任を負わせるのは難しいことから、PL法の義務者とされます。

表示製造業者

実際に製造物を製造していない場合でも、製造業者として氏名等を表示した「表示製造業者」は製造物責任を負います。表示製造業者とは、次のような者を指します。

  • 〇〇謹製という表示を出すなど製造者として自らを表示した者
  • 製造物にブランドロゴを表示するなど、製造者と誤認されるような表示をした者

実質的な製造業者

実質的な製造業者とは、製造・輸入・販売といった実際の状況から見て、実質的に製造業者だと言える者を指します。例えば製造物の共同開発者は、実質的な製造業者と見なされることがあります。

PL法の責任回避のためのガイドライン

PL法には責任回避のためのガイドラインがあり、「警告上の欠陥」を防ぐための取扱説明書の制作方法が記載されています。内容は表紙を含む各章の書き方、消費者に注意を促すべき危険の洗い出し方、見やすい取扱説明書にするための方法などです。

取扱い説明書の内容に漏れがあったり重要な部分の記載方法が不適切だったりすると、製造物による被害が生じたときに警告上の欠陥であるとされる可能性があります。

ガイドラインを活用してPL法による損害賠償責任が生じるリスクを下げることがおすすめです。

製造物責任を回避する方法はある?

製造物の欠陥によって消費者に損害が生じた場合、PL法の義務者は免責事由に該当しない限り、製造物責任つまり損害賠償責任を回避できません。

なぜなら製造物責任は「無過失責任」だからです。無過失責任とは、たとえ過失がなくても負わなければならない責任を指します。

よって、製造物に欠陥がないよう細心の注意を払って危機管理体制を整えるとともに、製造物の欠陥で被害を受けた人が出たら直ちに対処することが重要です。

企業ができるPL法対策

無過失責任である製造物責任に対しては、先に紹介した「製造上」「設計上」「警告上」の3つの欠陥が生じないようにすること、責任が生じたときに迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。企業ができるPL法対策を4つ紹介します。

欠陥が発生しないシステム作りを行う

3つの欠陥のうち「製造上の欠陥」「設計上の欠陥」を防ぐには、次のようなシステム作りをすることが重要です。

  • 過去の事故事例などを参考にした安全水準に基づく設計・製造
  • 外注した部品・原材料の徹底した検品
  • 製造ラインの保守管理
  • 完成した製造物の徹底した検品

警告表示を徹底する

「警告上の欠陥」対策としては、警告表示を徹底することが有効です。

正しい使い方を表示することはもちろん、誤った使い方をしないよう注意喚起したり、耐用年数・使用期限について明記したりすることもポイントです。

しかし、消費者が使い方を説明した文章をきちんと読むとは限りません。そこで、想定される不具合やリスクが視覚的にわかる「PLラベル(警告ラベル)」やマークを製造物に貼ることも検討しましょう。

リスクマネジメント体制を構築する

どんなに製造工程に注意を払っても、欠陥が生じるリスクは0にはできません。

よって、製造物に欠陥が発覚した際には消費者の手に届かないよう速やかに回収したり、欠陥により損害を受けた消費者に迅速に対応したりする、リスクマネジメント体制の構築も必要です。

具体的には次のようなことを行いましょう。

  • 欠陥のある製造物が見つかったときに対応する部署・人員の選定
  • 対応マニュアルの作成
  • 製造物の欠陥に関する情報収集・蓄積

PL保険の加入

欠陥のある製造物で消費者に損害が出た場合、対応のためにさまざまな費用がかかります。こうした費用を保険金として補償してもらえるのが、PL保険です。

PL保険とは?

上でも簡単に紹介したPL保険について、より詳しく解説していきます。

PL保険の内容

PL保険では、製造物の欠陥で消費者に損害が生じた際に必要になる、以下のような費用を補償してもらえます。

  • 被害者への損害賠償金:治療費や休業損害などの損害賠償金
  • 訴訟費用:弁護士費用も含む
  • 緊急措置費用:応急手当や護送にかかる費用
  • 求償権保全・行使費用:他の製造責任者への求償費用

PL保険の対象となる損害

PL保険の補償対象となるのは、以下のケースです。

  • 製造・販売した製品の欠陥により消費者が損害を受けた場合

例:製造した電子レンジが発火して火事になった

  • 行なった仕事の結果によって第三者に損害が生じた場合

例:設置ミスにより看板が落下し、歩行者がケガをした

PL保険の対象とならない損害

PL保険が下りないケースを一部挙げると、次の通りです。

  • 故意または重大な過失による法令違反で生じた欠陥で、消費者に損害が生じた場合
  • 製造物の性能などに関する不当表示・虚偽の表示で損害が生じた場合
  • 作業中に第三者に損害が生じた場合

例えば看板設置作業中に看板が落ちて歩行者がケガした場合は、作業中の事故であるためPL保険の対象になりません。なお、リコールにかかる費用は特約を付ければ保険の対象となることがあります。

PL法が適用された事例

最後に、PL法が適用された事例を5つ紹介します。ここまで解説してきたPL法の内容などがより具体的にわかるでしょう。

パナソニックのバッテリーパック発火

パナソニックのノートパソコンに搭載されていたバッテリーパックが発火し、男性がやけどを負った事案です。

裁判所は以下の点からPL法にのっとり、パナソニックに損害賠償を命じました。

  • パソコンの使い方は適切であった
  • バッテリーパックの発火で火災が発生した
  • ノートパソコンの欠陥以外に火災の原因は見当たらない

「茶のしずく石鹸」による小麦アレルギーの発症

茶のしずく石鹸がアレルギーを引き起こしたとして、石鹸の製造業者、アレルギー成分を含む原材料の製造業者に賠償命令が下された事案です。

それぞれに対して賠償責任が認められた理由は、次の通りです。

【石鹸の製造業者】

  • アレルギーの発症・増悪防止を期待できる注意表示をしなかった
  • アレルギー成分を含まない設計も可能であった

【原材料の製造業者】

  • 原材料にアレルギー成分が含まれていた
  • 原材料の危険性について的確に警告しなかった

医療機器の使用による患者の死亡事例

乳児の気管切開手術にてA社製のチューブにB社製の回路を接続したところ、接続部が閉塞して呼吸困難を引き起こし、乳児が死亡した事案です。

この事案では、以下の理由からA社・B社双方に損害賠償が命じられました。

  • 双方の機器に設計上の欠陥があった
  • 他社製品を組み合わせて使うことに関する危険性の指示・警告が不十分だった

森永ヒ素ミルク事件

ヒ素が混入した「森永ドライミルク」により、岡山、広島、香川を中心とした全国で1万3,000人以上の被害者が出た、1955年の事案です。乳児100人以上が死亡し、重い障害が残り自立した生活ができない被害者も多く出た非常に大きな事件でした。

被害者を救済するための恒久的な財団法人が設立され、今でもこの財団による被害者救済が行なわれています。

事件当時はまだ、PL法はおろか「消費者の権利」も浸透していませんでした。被害者への十分な救済がスムーズには行われなかった経緯を踏まえると、PL法による消費者保護がいかに重要であるかわかる事案です。

ゴム紐によって視力低下・アパレルメーカーの事例

ダウンジャケットのフードのゴム紐が視力低下を招いたとして、メーカー側に4,000万円の賠償命令が下った事案です。

ジャケット着用者の男性がポケットから携帯電話を出した際、ゴム紐が引っかかり、外れたはずみでゴム紐先端の留め具が目に当たったのです。

裁判では男性側にも一定の過失があるとされましたが、以下の点からメーカー側にも設計上の欠陥が認められました。

  • ゴム紐が長く、着用者の顔や目を負傷させるおそれがあった
  • フードのゴム紐の危険性は以前から指摘されており、メーカー側も認識できたはずである

欠陥・事故未然に防ぐ対策をしよう

欠陥のある製造物により消費者に損害が生じた場合、製造業者は原則として消費者に対して損害賠償しなければなりません。これは無過失責任とされるため、製造業者側はPL法の定める「3つの欠陥」を回避するとともに、PL法が適用された場合の対策をしておく必要があります。

本記事で紹介した過去の事例やPL保険の内容を踏まえ、起こりうる欠陥・事故を想定して未然に防ぐ対策を取ったり、保険加入を検討したりしてください。

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