ガバナンスとは?必要とされる背景、強化方法、企業の事例を紹介

コーポレートガバナンスのイメージ画像

企業の不祥事や違法行為がニュースになるたび、「ガバナンス」の重要性が話題となります。

企業に対する社会の目がますます厳しくなる昨今では、中小企業といえどもガバナンス強化に取り組む姿勢が求められます。しかし、言葉はなんとなく知っていても、その意義や具体的な取り組み方については知らない人も多いのではないでしょうか。

今回は、ガバナンスの意味や重要視される背景、企業における強化方法、成功事例などを解説します。

ガバナンスとは

「ガバナンス」とは、「統治、支配、管理」といった意味を持つ言葉です。政府が法的拘束力を持って行う統治システムである「ガバメント」とは対照的に、組織が自主的に行う意思決定や合意形成のことをガバナンスといいます。

現在、一般的なビジネスシーンにおいてガバナンスというと「コーポレートガバナンス」のことを指すようになっています。コーポレートガバナンスとは企業統治を指す言葉で、企業経営を管理・監督する仕組みのことをいいます。

具体的には、経営者がその責任を果たしているかどうか監督するための株主総会、取締役会、監査といったシステムや役職がコーポレートガバナンスにあたります。

混同されやすい言葉として「内部統制」があげられますが、内部統制は不正や違法行為、人的ミスを防止して業務が効率的に遂行されるよう管理する仕組みのことです。

つまり、内部統制の責任者は経営者ということになりますが、経営者自身が統治を無視する可能性があるという点で統治には限界があります。そこで、内部統制のリスクを管理する機能としてガバナンスの重要性が着目されるようになっています。

ガバナンス・コードとは

ガバナンス・コードとは、金融庁と東京証券取引所により公表された、上場企業がコーポレートガバナンスを構築する際に参照すべきガイドラインです。企業における持続的な成長や中長期的な価値を向上させ、企業収益力を強化させることを目的としています。

ガバナンス・コードは、以下の5つの基本原則から構成されています。
1.株主の権利・平等性の確保
2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働
3.適切な情報開示と透明性の確保
4.取締役会等の責務
5.株主との対話

5つの基本原則の下には各原則が30、補充原則が38示されています。ステークホルダーとの適切な関係性構築や、取締役会等の役割や活用などについて記載されています。

上場企業においてはガバナンス・コードに関する実施報告が求められますが、どの原則にも遵守義務はありません。しかし、なんらかの理由で実施しない場合には、株主にその理由を説明する必要があります。

ガバナンスが必要とされる背景

コーポレートガバナンスは、粉飾決算や横領といった企業の不正、不祥事が相次いで報告されたことを背景に注目を集めるようになりました。

アメリカで大きな契機となったのは、2001年に発覚したエンロン事件です。エネルギー会社として80年代から急成長を続けてきた同社は、簿外債務の隠ぺいをはじめとする不祥事が次々と明るみになり、倒産にとどまらない大事件に発展しました。この事件をきっかけに、アメリカでは不祥事に対する罰則を盛り込んだ企業改革法(SOX法)が制定されています。

ガバナンスが行き届いていないと、利益を失うだけでなく社会的信用を大きく損なうというリスクから、世界的にガバナンスが重要視されるようになりました。

ガバナンスを強化する4つの方法

社内のガバナンスを強化するには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。ここでは、代表的な強化方法を紹介します。

内部統制の強化

不正や違法行為を防止して健全な業務遂行を促進する内部統制が正しく機能していれば、社内外に対して透明性の高い情報開示が可能になります。

そのため、ガバナンスを強化するには内部統制の強化が必要不可欠なのです。社内で遵守すべきルールを厳密に定め、ルールに沿って業務が行なわれているか管理・監督する体制を整えましょう。

社外取締役や社外監査役の設置

ガバナンスは、従業員の監視だけではなく、経営陣の暴走を防ぐことも重要な目的です。そのためには、社外取締役や監査役といった第三者視点の委員会を設置することが効果的です。

独立性をもって客観的な評価を下せる専門家に取締役や監査役を依頼することで、業務のブラックボックスを失くし、問題点を発見しやすくなります。

経営責任者不在の取締役会を開催

代表取締役やCEOといった意思決定における権力者は、議会において大きな影響力を持っています。経営責任者が強く意見を述べると、その一存で意思決定がされてしまう可能性も否定できません。

必要に応じて経営責任者が参加しない取締役会を実施すると、透明性の高い意思決定ができるケースもあります。

社員への啓蒙活動

制定されたコーポレートガバナンスは、社外のステークホルダーだけでなく、社員に対して徹底的に周知することも重要です。ルールの意義を理解し、日頃から不正を行わないよう業務を行うのは社員自身です。

倫理憲章や行動規範の制定、業務フローのマニュアル化などを行い、ルールを可視化すると社員の理解も進みやすいでしょう。

ガバナンスの強化に成功している企業3選

最後に、ガバナンス強化に取り組み、中長期的な成長を遂げた企業の成功事例を紹介します。

キリンホールディングス株式会社

2020年度のコーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーで「Grand Prize Company」を受賞したキリンホールディングスは、グループの中長期的な理念である「2027年目指す姿」をもとに、透明性・公平性の高いガバナンス体制を構築しています。

理念を実現するためには各ステークホルダーとの協働が必要不可欠であるとして、株主との積極的な対話や説明責任を果たすことを明示しています。多様性があり高い専門スキルを持った人材を社外経営者として招き、透明性の高いガバナンスを構築していることも、受賞の決め手となりました。

テルモ株式会社

同社では、指名委員会が経営チームとしての観点から社長と会長をセットで選ぶという考え方を採用しています。従来のパターンでは社長経験者が会長となって取締役会の議長を兼任することが一般的ですが、指名委員会が選任することで、組織の客観性を確保しています。

また、前社長は会長にならずそのまま退任しており、自律的ガバナンスが機能している点が評価されています。指名委員会や報酬委員会のほかにガバナンス委員会を設けており、ガバナンス向上に向けた意欲的な体勢が構築されています。

TDK株式会社

同社では、社外取締役が過半数を占める指名諮問(しもん)委員会を設置しており、定期的に第三者視点を取り入れる体制をとっています。

現社長を指名した際も、指名委員会を中心に外部専門機関を取り入れて候補者へのインタビューを行い、適性を客観的に判断しました。その結果、現社長が幹部候補者の育成プログラムを立ち上げるなど、将来を見据えた計画的な経営が進められています。

ガバナンスを強化して企業リスクを低減しよう

現代のビジネスシーンにおいて、ガバナンスに取り組む姿勢は企業が社会的信頼を得るために必要不可欠な要素となっています。

中小企業には関係のない話に感じるかもしれませんが、経営者の一存が通りやすい中小規模の企業だからこそ、情報の透明性や公平性を確保することで企業の成長を促進させることができるかもしれません。

まずは社内ルールの強化や、社員に対する啓蒙活動から始めてみてはいかがでしょうか。

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