パワハラとは?定義や種類、人事担当が取るべき対策、事例紹介

「パワハラ」という言葉が、頻繁に新聞やニュースなどで聞かれるようになったように、近年では職場のさまざまな「ハラスメント」が増えています。

しかし、ハラスメントの定義や種類などを理解しておらず、改善されていないケースがあり問題です。職場内にハラスメントが横行すると、企業イメージや従業員モチベーションの低下などに繋がり、企業にとって大きな損失が生じる可能性もあります。

社内対策を考えるべき人事担当者は、パワハラに関する正しい知識を身に着けておかなければいけません。ここではパワーハラスメントに関する正しい意味や具体例、有効な人事施策、パワハラの裁判事例などを解説していきます。

パワハラ(パワーハラスメント)とは

パワハラとは、「パワーハラスメント」の略称で、職場内での地位や立場を利用して、同じ職場で働く従業員に対して、精神的や心身的な苦痛を与えるいじめや嫌がらせのことです。

職場での役職やポジションといった地位を利用して、上司から部下への嫌がらせが発生するケースが多いのが大きな特徴です。また、役職やポジションにかかわらず、同僚どうしや、なかには部下から上司に対してハラスメントが行われるケースもあります。

パワーハラスメントという言葉は和製英語で、「power」と「harassment」が語源となっています。欧米諸国で法制化されたことで、世界中にパワーハラスメントという概念が浸透していきました。古くは、スウェーデンで1993年に制定された雇用環境規則(AFS1993:17)で、職場におけるいじめの規制や予防を定義しました。

続いて、イギリスにおける「ハラスメントからの保護法(1997年)」、ベルギー「職場における暴力、モラルハラスメント及びセクシャルハラスメントからの保護に関する法律(2002年)」などが制定され、世界的にパワーハラスメントに対する関心が高まりました。

日本では、このような背景を受けて2000年頃から、パワーハラスメントという言葉が注目され、対策が提唱されるようになりました。

パワハラの定義

欧米諸国から浸透したパワーハラスメントですが、日本ではどのような定義になっているのでしょうか。

ここでは、厚生労働省が運営する「ハラスメント対策の総合情報サイト:あかるい職場応援団」での定義にもとづいて解説していきます。

厚生労働省では、パワーハラスメントを以下のように定義しています。

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

厚生労働省

ここでのポイントが、「職場内での優位性」「業務の適切な範囲」です。

職場での優位性

「職場での優位性」とは、職場における役職や地位、ポジションによる上下関係のことを指しています。この上下関係を利用して、上位にいる従業員が下位の立場にいる従業員に対して、嫌がらせやいじめを行うことを指しています。

業務の適切な範囲

「業務の適切な範囲」とは、パワハラを判断する基準になるものです。例えば、部下に対して業務上の指示や指導を与えるのは、上司の役目でもあります。部下に対する指示や指導が、業務の適切な範囲であればパワーハラスメントにはあたりません。これが、「業務の適切な範囲」にあたります。

しかし、担当する業務ごとに働き方が異なる職場において、どこまでが適切な範囲で、どこまでが違うのか、を規定するのは難しいのが現状です。そのため、パワーハラスメントに該当するかどうかの判断は、とても困難なのです。

具体的な「業務の適切な範囲」については、つぎで詳しく解説します。

パワハラの種類を6つ紹介

それでは、パワーハラスメントには、どのような種類があるのでしょうか。

ここからは、労働厚生省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」において定義されている「パワーハラスメントの6つの行為類型」について解説していきます。

1.身体的な攻撃

上司が部下に対して、殴打、足蹴りをすることを指します。具体的なケースとして、以下のような事例をあげています。

・ 指導に熱が入り、手が出てしまった(頭を小突く、肩をたたく、胸倉を掴むなど)。
・ 繰り返しミスをする部下に対し、ヘルメットの上から叩く 等の体罰を与えた。
・ 指導に熱が入り、物を投げて怪我をさせた。
・ 宴会の席でのマナーに関する注意が過熱し、後輩を蹴飛ばした。

厚生労働省

●業務の適切な範囲と考えられる例

  • 故意的ではなく誤ってぶつかってしまった
  • 業務に関係のない(プライベートでの)同僚との喧嘩

2.精神的な攻撃

上司が部下に対して、人格を否定するような発言が該当します。遅刻や業務におけるミスに対してではなく、部下の人間性を否定するような言動を指しています。

具体的には、以下のようなケースをあげています。

・ 「馬鹿」「ふざけるな」「役立たず」「給料泥棒」「死ね」等暴言を吐く。
・ 大勢の前で叱責する、大勢を宛先に入れたメールで暴言を吐く。
・ 十分な指導をせず、放置する。
・ 指導の過程で個人の人格を否定するような発言で叱責する。
・ ため息をつく、物を机にたたきつけるなど威圧的な態度を取る。

厚生労働省

業務の適切な範囲と考えられる例

  • 遅刻など社会人としての基本的ルールを守らず、注意を繰り返しても改善されないため、数回強く注意する
  • 企業にとって重大となる問題行動を起こしたため、数回強く注意するなど

3.人間関係からの切り離し

業務上の適切な範囲から外れ、個人的な意向で部下をメンバーから外したり、別室に隔離したりすることを指します。具体的なケースとして、以下のような事例をあげています。

・ ある社員のみを意図的に会議や打ち合わせから外す。
・ 仕事を割り振らず、プロジェクトから疎外する。

厚生労働省

業務の適切な範囲と考えられる例

  • 新人教育や職務復帰を目的とし、短期間だけ集中して別室で研修や説明などを行う

4.過大な要求

肉体的苦痛を伴う過酷な環境下において、勤務に直接関係のない作業を部下に命令すること、と定めています。また、あきらかに必要のないことや私的な雑用を強要することも該当します。

具体的には、以下のようなケースをあげています。

・ 英語が苦手な社員を海外業務に就かせる。
・ 十分な指導を行わないまま、過去に経験のない業務に就かせる。
・ 自分の業務で手一杯であるのに、他の同僚の仕事を振られた。
・ 資料作成を行うため、休日出勤を強いられた。

厚生労働省

業務の適切な範囲と考えられる例

  • 育成を目的とし、現状行っている業務よりも若干レベルが高い業務を任せる
  • 繁忙期など必要性を伴い通常業務よりも多い業務を任せる

5.過小な要求

先程の「過大な要求」とは逆で、誰にでもできるような簡単で、責任のないような業務を行わせることを指します。具体的な事例として、以下のようなケースをあげています。

・ プロジェクトに参加させてもらえず、本人から「経営に貢献したい」と相談があった。

厚生労働省

●業務の適切な範囲と考えられる例

  • 対応できるレベルや能力を考えて業務内容を変更したり、業務量を軽減したりする
  • 経営上の理由などやむを得ない理由により、一時的に簡単な業務を任せる

6.個の侵害

特定のひとりの従業員に対して、職場の内外で継続的に監視したり、他の従業員に接触しないよう働きかけたりすること、と定義しています。具体的な事例としては、以下になります。

・ パートナーや配偶者との関係など、プライベートを詮索する。
・ しつこく飲み会に誘う、職場の懇親会を欠席するに当たり理由を言うことを強要する。

厚生労働省

業務の適切な範囲と考えられる例

  • 業務上、知る必要があって家族状況などをヒアリングする
  • 業務上必要な個人情報を従業員の了承を得たうえで人事部門に共有する

人事担当が取るべき6つのパワハラ対策

ここからは、厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」において効果のあった、人事担当が取るべきパワーハラスメント対策について解説していきます。

1.社内・外の相談窓口の設置

アンケートにおける企業調査の結果、「実施している取組み」が(82.9%)で、最も多かったのが相談窓口の設置です。企業内のみならず、公的機関にもパワーハラスメントに対する相談窓口があるので、従業員に公開しましょう。

2.管理職・一般社員向け研修の実施

アンケートの調査結果で、最も「効果を実感できた取組」(74.2%)として多かったのが、管理職向けのパワーハラスメントについての講演や研修会の実施でした。次いで、2番目が一般社員向けの講演や研修会の実施(69.6%)です。

3.就業規則や社内規定に明示する

就業規則や社内規定にパワーハラスメントに対する規定を新たに設けることも、61.1%の企業が実施しています。

4.ポスター等啓発資料の掲示

社内にパワーハラスメント対策のポスターや啓発資料を掲示することも、34.9%という多くの企業が実施しています。

5.アンケート等社内実態の把握

現場におけるパワハラの実態を把握するために有効な社内アンケートの実施も、約3割(28.3%)の企業が実施しています。

6.事実関係の迅速な確認と対応

事実関係を確認したら、行為者と被害者に適切な措置を行い、再発防止策を講じることも大切です。

パワハラの裁判事例

ここからは、日本におけるパワーハラスメントの現状を理解してもらうため、具体的な裁判事例を紹介していきます。

ファーストリテイリング(ユニクロ店舗)事件

アパレル販売として有名な株式会社ファーストリテイリングの「ユニクロ」でおきた裁判事例です。店長代行として勤務していたA氏が、店舗運営日誌に店長であるB氏の業務上の不備を記載した。

これに対し店長のB氏は、A氏に説明を求めるなかで、その態度に激高し暴力を振るう。さらに、店舗の管理職であるC氏が、A氏がPTSDないし神経症である旨の診断を担当医師から告知されていたにもかかわらず、本件に関してA氏に暴言をふるった。

店長であるB氏の暴行と管理職C氏の暴言は、不法行為にあたるとして、慰謝料請求が認めた事例。

JR東日本(本荘保線区)事件

JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)において、現場労働者に対する教育訓練が、裁量権を逸脱違法した指導だと認められた裁判事例です。

区長Aが、勤務中に就業規則に違反したベルトを着用していることを、現場労働者のB氏に指摘。これに応じなかったB氏に対して、区長Aが就業規則の書き写し等の教育訓練を命じる。その際、就業規則の書き写しの手を休めていると怒鳴る、机を叩いたり蹴ったりするなどの行為が行われる。

現場労働者のB氏に対して、肉体的や精神的な苦痛を与える違法なものであるとして、弁護士費用の支払いが命じられた事例。

パワハラ防止法が 2020年6月に施行

パワハラ防止法は、大企業に関しては 2020年6月からすでに施行されており、中小企業については 2022年4月から施行されます。

人によって捉え方の違う “パワハラ” 。では、何をしたらパワハラに該当するのか?自社の管理職一人ひとりが定義及び概念を知っておく必要があります。

また、パワハラ防止法の「改正労働施策総合推進法」により、職場におけるパワーハラスメント対策が義務化されました。(大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から)

これにより、企業に対して相談窓口の設置や再発防止策を求め、改善に従わない場合は、厚生労働省が企業名を公表するケースもあります。

企業イメージや業務効率化の低下、人材流出などのリスクを避けるためにもパワハラ対策は重要です。また、パワハラが起こりやすい人事評価の防止策を取り入れる必要があります。

社内からパワハラを一掃するための、管理職の評価の仕組みも捉えておけば、万全の対策を取ることが可能です。

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