有給消化とは?義務化された日数や条件、期限、罰則、促す施策を紹介

有給休暇は企業が労働者に提供する福利厚生の、重要な要素の一つです。
とはいえ単に有給休暇として使える日数を労働者に付与しても、実際に「消化」しなければ意味がありません。特に日本はアメリカやヨーロッパ諸国と比較して、有給休暇の消化される割合を示す「取得率」が低いことが問題視されています。

本記事では、有給消化とはどのような意味なのか、詳しい規定などを解説します。特に2019年より義務化された有給休暇の消化日数や、違反した場合の罰則についても確認しておきましょう。さらに、会社全体として有給休暇を消化するよう促すにはどのような施策が有効なのかも解説します。

有給消化とは

そもそも「有給消化」とは、労働者が保持する有給休暇の日数を使用して、労働者が実際に有給休暇を取ることです。有給休暇は使わなければ保持したままになり、有給休暇の日数だけが溜まっていくことになります。

有給休暇を付与しただけでは、労働者から有給休暇を使用する申請があるとは限りません。「みんなに迷惑がかかる」などと気が引けて、溜まった有給休暇をそのままにしてしまうケースも少なくありません。

労働者に付与された有給休暇をできるだけ消化するよう、会社側が促すなどの対応をすることが求められています。

有給休暇とは

そもそも有給休暇とは、労働者がゆとりのある生活を実現するために、「賃金が発生する状態」を保ちながら休暇を取れる制度のことです。

労働者に対し、継続勤務年数や所定勤務日数などに応じて一定の有給休暇日数を付与することが、労働基準法によって義務付けられています。正社員はもちろんパートタイム労働者も対象の制度です。

有給消化義務化の内容

労働基準法が改正され、2019年4月より一定の基準のもとで有給の消化が義務化されました。具体的には、労働者ごとに「有給休暇を付与した日」を基準として、「1年以内に5日」を取得させる必要があるという内容です。

この義務に違反した場合、「30万円以下の罰金」が課される場合もあります。罰金は「労働者1人あたり」に対して課されるため、適切な対応をしない場合、大きな損失につながりかねません。罰則について詳しくは、当ページ内「有給消化させなかった場合の罰則」を参照してください。

ただしこの義務の対象になるのは、有給休暇が10日以上付与される労働者です。詳しい条件は、次の項目で解説しているので参考にしてください。

有給消化の条件

有給消化の義務として定められている条件を満たすには、どのように対応すればよいのでしょうか。まずは具体的な条件について確認しておきましょう。

正社員の有給消化条件

義務化された有給消化の条件は、「有給休暇を付与した日」を基準として、「1年以内に5日」を取得させるというものです。有給休暇を付与した日とは、多くの場合「入社日」を基準に決められます。最初に有給休暇を付与されるのは「入社日の6か月後」です。最初に付与された日の1年後にも同様に有給休暇が付与され、その後も毎年「有給休暇を付与する日」が到来します。

付与される有給休暇の日数は毎年増え、6年後には最大で20日付与されることになりますが、有給消化の義務である条件は「1年以内に5日」で変わりません。

パートタイマーの有給消化条件

パートタイマーも有給消化の条件は正社員と同じ「1年以内に5日」ですが、そもそもの付与される有給休暇の日数が正社員とは異なる場合があり、有給消化義務の対象外になるケースもあります。

付与される有給休暇の日数は、継続勤務年数と、所定の労働日数で決まるためです。パートタイムの場合は所定の労働日数が正社員より少ないことが多く、その場合、毎年付与される有給休暇の日数は、正社員よりも少なくなります。有給消化の義務があるのは、1年あたり「10日以上」の有給休暇日数を付与される場合に限られますが、一部のパートタイマーはこの条件を満たせないことがあるという点に注意が必要です。

ただし一定の条件を満たせば、パートタイマーでも正社員と同様の有給休暇日数が付与されることもあります。有給休暇の付与日数について詳しくは、次の項目で解説しているので参考にしてください。

有給消化の日数

有給消化について理解するには、そもそも有給休暇を付与される日数がどのぐらいかを把握しておくことも大切です。具体的な基準について、以下に解説します。

正社員の有給消化日数

有給休暇は、勤続年数に応じて以下のように1年ごとに付与されます。

継続勤務年数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

厚生労働省|リーフレットシリーズ労基法39条

これは正社員やパートタイムなどの契約形態に限らず、週の所定労働時間が30時間もしくは週5日、または1年間の所定労働日数が217日以上の場合に適用されます。ただし「全労働日の8割以上」を出勤していることが条件です。

例えば6か月目「勤続年数0.5年」の条件を満たして有給休暇10日を取得した場合、それを1年以内に5日消化することが義務です。とはいえ義務を達成しても全日数を消化したわけではなく、残り5日は付与された有給休暇が残っていることに注意が必要です。

残った日数は次の年に繰り越しされますが、2年後には消滅してしまうという点も把握しておく必要があります。その点について詳しくは、当ページ内の「有給消化の期限」を参照してください。

パートタイマーの有休消化日数

パートタイマーで上記の条件を満たせない場合、有給休暇の付与日数は以下のようになります。

週所定労働日数1年間の所定
労働日数



継続勤務年数      
   6か月 1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年
6か月以上
4日169日~
216日
 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~
168日 
 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~
120日
 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~
72日 
 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

厚生労働省|リーフレットシリーズ労基法39条

正社員と比べて有給休暇の付与日数が少なくなり、所定労働日数によっては「1年あたり10日」の条件を満たせず、有給消化義務の対象外になることが分かります。

表を見ると、パートタイマーで「1年あたり10日付与」の条件を満たせるのは、所定労働日数が3日以上で、勤続年数が長い場合に限られることも確認できるでしょう。

消化が義務付けられている日数は「1年以内に5日」で、正社員と共通です。正社員と同様、残った有給休暇の繰り越しができますが、2年後には消滅します。

有給消化の期限

付与された有給休暇の保有期限は「2年」と労働基準法第115条で定められています。つまり付与された日から2年間は、消化する猶予があるということです。

1年間に付与される最大の日数は、勤続6年6カ月以上の「20日」なので、繰り越せる日数は最大で20日。つまり労働者1人あたりが保有できる有給休暇の最大日数は、繰り越しできる最大日数の20日に加えて、次の年度に付与される20日分を合計した「40日」ということになります。

「1年以内に5日」の消化義務を達成していても、付与される有給休暇の多くは残ってしまうのです。

有給消化させなかった場合の罰則

労働基準法によると、労働者に対して年5日の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金が雇用者である企業に対して課せられます。

この罰金は「1人の労働者」に対して発生するため、大勢の従業員がいる企業では大きな金額になる可能性があります。例えば従業員100人の企業なら、合計で3,000万円の罰金になる可能性があるということです。

罰則が発生しないように徹底するには、義務である「5日」の基準を守るだけにとどまらず、できれば全員が全ての有給休暇を完全に消化できるような体制をつくることが重要です。

退職時の有給消化のルール

有給休暇を適切に消化できていないと、退職時に多くの日数が残ってしまうことになります。退職者の有給休暇をどのように取り扱えばよいのでしょうか。把握しておくべき基本のルールを確認しておきましょう。

退職すると有給休暇は消滅する

退職すると、有給休暇は消滅してしまいます。これまで有給休暇をほとんど使用しておらず、多くの日数が繰り越されて溜まっているとしても、全日数を失ってしまうのです。

転職先の会社に繰り越しできるなどの仕組みはなく、転職先では有給休暇付与の基準となる継続勤務年数はゼロからのスタートとなります。
できれば退職日までに計画的に有給休暇を消化することが重要です。

退職前については時季変更権を行使できない

労働者が「退職日までに残りの有給休暇を全て消化したい」と申請した場合でも、雇用者は基本的に拒否できません。

通常は「時季変更権」を行使できるため、一定の条件を満たす場合に限り有給休暇の申請を断ることも可能です。なぜなら労働基準法第39条第5項では「正常な運営を妨げる場合」に限り、有給休暇の取得を、請求した日とは別の日に取得させることも可能としているためです。これを「時季変更権」といいます。

ただし、あくまでも「別の日に取得させる」ということなので、それができない退職前については、時季変更権を行使できません。退職日が決まっていて、それまでに有給の消化が難しい場合、たとえ繁忙期などで「休まれると困る」という状況でも、雇用者側は拒否できないということです。

買取による消化は原則的に禁止されている

退職日までに有給を全て消化することが難しい場合でも、「買取」によって解決することは基本的に禁止されています。有給休暇の買取とは、実際に休暇を取得せず、有給休暇の日数に応じて賃金分を上乗せして支払うことによって消化することです。これでは本来の有給休暇の目的を達成できないため、買取による消化は原則的に禁止されています。

ただし退職前で消化できないなどの事情があり、労働者と雇用者双方の合意があれば買取が認められるケースもあります。とはいえあくまでも例外的な対応であり、基本的には買取はできないものとして、適切に有給休暇を消化していくことが大切です。

日本の有給消化の現状

日本では2019年の義務化以降、有給消化は実際に進んでいるのでしょうか。
厚生労働省の作成した「令和3年就労条件総合調査」によると、2020年の有給休暇取得率は「56.6%」と、70〜80%に達するアメリカやヨーロッパの先進国と比較するとはるかに低い結果です。

厚生労働省|令和3年就労条件総合調査の概況(P6)

厚生労働省が公開している調査結果によると、有給休暇を取得することに「ためらい感じる」「ややためらいを感じる」と回答した人の割合は合計で「56.3%」です。つまり過半数の人が、取得することに抵抗を感じていることが分かります。有給休暇を取得しにくい風潮があり、有給休暇取得率の改善を妨げていることが分かるでしょう。

年次有給休暇取得促進特設サイト|なぜ年次有給休暇の取得率は低いのでしょうか?

有給消化が義務化されたとはいえ、「付与される日数の一部」の取得が義務になったに過ぎません。単に法律上の義務を満たすだけでなく、有給を取得しやすい組織体制や環境をつくることが大切だといえます。

有給消化の4つのメリット

有給を適切に消化させることには、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。主な4つのポイントを解説します。

労働者の生産性アップ

有給休暇で心身をリフレッシュすることで、労働者は生産性を向上しやすくなります。逆に有給休暇が取得しづらく、リフレッシュできない環境が続くと、労働者の生産性が低下するだけでなく、心身を壊して突然の入院や退職といった事態にもつながりかねません。

有給休暇を取得する割合が増える分、「1人あたりの稼働日数」は減るかもしれませんが、労働者1人あたりのパフォーマンスが高まることで、減った稼働日数分を超える生産性を得ることも期待できるのです。

企業のイメージアップ

有給休暇の取得率が高いことは、労働環境が良い会社として、企業としての社会的なイメージアップにつながります。イメージアップによって良い人材が集まりやすくなったり、ひいては取引先やユーザーからの印象アップにつながったりなど、さまざまなプラス効果が期待できるのです。

人材の離脱防止・採用コスト軽減

有給休暇の消化を促すことは、人材の離職を防ぐというメリットにもつながります。人材確保が難しい時代、今の人材を失わないだけでなく、人材に「選ばれる」会社になることも不可欠です。

有給休暇の取得率を高めることは、「働きやすい会社」として求職者からの印象アップにもつながり、求人での応募が増えることが期待できます。その結果、採用の効率化や求人広告費などのコスト削減がしやすくなるのです。

労務管理の効率化・トラブル防止

有給消化を促し、有給休暇の日数が多く溜まっている人を減らすことは、労務上のトラブル防止の面でも重要です。有給消化ができない人が増えてしまうと、前述のような「退職時に一気に消化される」などのトラブルにつながるリスクが高まります。

会社全体として有給を計画的に消化できるようにすることは、そのようなトラブルを防止するために重要です。さらに、退職時に残っている有給休暇をどうするのか、労働者と交渉するなどの余計な業務の手間を省き、効率的な労務管理の体制を実現しやすくなります。

有給消化を促す3つの施策

会社全体として有給消化を促すために、どのような施策をすればよいのでしょうか。主な3つの施策を紹介します。

グループ・チーム単位でのタスク管理を導入する

グループ・チームごとにタスクを管理すると、休みを取りやすい体制を構築しやすくなります。特定のタスクを個人の担当者ではなく「グループ単位」で割り当てていれば、急に有給休暇を取る人が出てきても、同じグループの他のメンバーが補うなどの対応がしやすくなります。

企業活動に必要な全てのタスクをグループ単位に置き換えることは難しくても、可能な範囲でグループタスク化することで、有給休暇だけでなく通常の休暇も取りやすい環境をつくることができるのです。

計画的付与制度を導入する

計画的付与制度も、有給消化がしやすい体制づくりに活用できます。計画的付与制度とは、個人ごとに有給休暇の申請が出るのを待つのではなく、あらかじめ計画的に有給休暇の取得日を決めておく方式のことです。

事業所ごとやグループごとに、特定の日に全員が一斉に有給休暇を取得するよう計画したり、個人ごとにあらかじめ有給休暇の計画表を作ったりなどの方法があります。

ただし全ての日数を計画的に付与することは禁止されていて、「付与日数のうち5日を除いた残りの日数」までに限定されています。つまり最低でも5日は、労働者が自由に取得できる日数として残しておく必要があるということです。

時間単位の有給休暇を導入する

通常の「1日単位」ではなく「1時間単位」で有給休暇を取得できるようにすることも、有給消化を促す方法の一つです。

「1日あたり8時間」など、所定労働時間に合わせて1日相当の時間数を規定しておき、1年ごとに「40時間」など、1日単位の場合と同じように毎年付与するという方法です。

1時間単位で少しずつ有給休暇を取得できることで、「みんなに迷惑がかかる」などの労働者が感じる心配を軽減でき、有給消化を促す効果が期待できます。
ただし時間単位で有給休暇を付与できる日数は最大で「1年あたり5日まで」で、それ以上は通常通り1日単位で付与する必要があります。

有給消化を促進して働きやすい企業を目指そう

有給休暇は労働者にとって「働きやすさ」につながる大切な制度です。有給消化を促すことは、労働者の生産性向上や会社のイメージアップにもなり、労働者を雇う側にとって多くのメリットがあります。

単に法律で定められた付与日数と消化義務を果たすだけでなく、気兼ねなく有給休暇を取得できる環境をつくることが重要です。会社全体で有給消化を促すよう、具体的な対策を講じていきましょう。

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