有給休暇とは?法律上の義務や罰則、取得を促進させる方法を解説

有給休暇のイメージ画像

有給休暇という言葉に馴染みは深いかもしれません。しかし、あらためて有給休暇の意味や正しい知識、メリット、促進させる方法まで考えると、「決して簡単に捉えてはいけない制度」と感じるのではないでしょうか。

特に人事部の社員は有給休暇に携わる機会が多いので、「有給休暇を取得する条件」や「有給休暇の時季指定義務」などは正確に把握しておきたいところです。

そこで今回は、企業の有給休暇について詳しく解説していきます。

有給休暇とは

有給休暇は「有給」で休むことができる権利です。賃金が減らされない休暇とも言えます。

有給休暇の歴史は古く、1930年代に欧米の先進諸国によって普及が始まりました。第二次世界大戦後、1970年代と拡大化が進み、現在では多くの先進国が有給休暇制度を確立しています。

日本の場合は労働基準法第39条で年次有給休暇が定められています。

もともと日本では、1年間の継続勤務、全労働日8割以上の出勤者に対して、年6日間の有給休暇が与えられていました。その後、1987年に最低付与日数が年10日間となり、1993年には継続期間が6ヵ月に短縮されています。

それでも日本の有給休暇制度は、先進諸国と比較して低い水準と言われています。フランスやデンマークなどでは、すでに1980年代に5労働週の有給休暇が規定されていたそうです。

有給休暇の取得率はなぜ低いのか

2020年の就労条件総合調査において、労働者1人平均の年次有給休暇取得率は「56.3%」という低い水準に留まっています。

2019年の「仕事と生活の調和」に関する意識調査によれば、「有給取得にためらいを感じる」と答えた人は15.4%、「ややためらいを感じる」と答えた人は40.9%となっています。全体の半数以上が、有給休暇の取得に抵抗を感じていることが分かります。

「令和2年就労条件総合調査の概況」

「年次休暇取得促進特設サイト」

厚生労働省

有給休暇の取得をためらう原因

有給休暇の取得をためらう原因には「周囲に迷惑がかかる」「あとで多忙になる」「職場の雰囲気で取得しづらい」「上位に嫌な顔をされる」「昇格や査定に悪影響がある」などがあります。

「周囲に迷惑がかかる」や「職場の雰囲気で取得しづらい」という理由は、協調性を重視する日本人特有のものかもしれません。

欧米の先進諸国のように、仕事とプライベートを切り分ける習慣に乏しいこともまた、有給休暇の取得をためらう原因になっているのではないでしょうか。

ただし有給休暇は法律で定められた労働者の権利です。有給を取得できないことでストレスが増加し、職場の雰囲気が悪化することも十分に考えられます。

会社としても残業コストが増える可能性がありますので、しっかりと有給休暇を与える必要があるでしょう。

有給休暇を取得する条件

労働者が最初に有給休暇を取得する条件には次の2つがあります。

1.雇用日から6ヵ月が経過していること
2.雇用日から6ヵ月間に8割以上出勤していること

上記を満たすと10日間の有給休暇が付与されます。その後も1年ごとに8割以上の出勤によって有給休暇が与えられます。

付与される有休休暇の日数は次の通りです。

・雇用日から6ヵ月 → 10日間
・雇用日から1年6ヵ月 → 11日間
・雇用日から2年6ヵ月 → 12日間
・雇用日から3年6ヵ月 → 13日間
・雇用日から4年6ヵ月 → 16日間
・雇用日から5年6ヵ月 → 18日間
・雇用日から6年6ヵ月以上 → 20日間

パートタイムなど所定労働日数が少ない場合

有給休暇は労働日数の少ないパートタイムにも付与されますが、フルタイムの正社員と比較して有給休暇の日数は少なくなります。

たとえば週労働日数が4日で週労働時間が30時間未満の場合、雇用日から6ヵ月が経過して付与される有給休暇日数は7日です。
同じ労働時間で週労働日数3日なら有給休暇は5日、週労働日数が2日なら有給休暇は3日、そして週労働日数1日なら、有給休暇も1日となります。

その後1年ごとに8割以上の出勤で有給休暇が付与されるのは、フルタイムの正社員と変わりません。

このように労働日数、労働時間が少ないパートタイムでも、条件を満たせば有給休暇の権利を得ることができます。

有給休暇の法律上の義務と罰則

労働者の有給休暇は法律で認められた権利なので、企業は労働者が希望すれば取得させる必要があります。違反した場合は次のような罰則があります。

1. 年5日間の有給休暇を取得させなかった場合 → 30万円以下の罰金

2.使用者による時季指定を行う場合に就業規則に記載していない場合 → 30万円以下の罰金

3.労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合 → 6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金

なお、労働者1人につき1つの罪として扱われます。仮に複数の労働者に有給休暇を取得させなかった場合、人数に応じて60万円、90万円、120万円と罰金が科されるでしょう。

労働基準法を遵守する意識が低い経営者は、「うちの会社に有給はない」と簡単に言い切るかもしれません。しかし有給休暇は法律で認められた労働者の権利ですから、違反すると必然的に罰則の対象になります。

有給休暇の時季指定義務

有給休暇の時季指定義務とは、企業側が労働者に対して「時季を指定して有給休暇を与えなければならない」という義務を指します。

対象になるのは年10日以上の有給休暇が付与される労働者(管理監督者や有期雇用労働者も含む)で、そのうち5日間は企業側が取得させなければなりません。ただし、すでに有給休暇を5日以上取得している労働者に対しては不要です。

時季指定の方法として、まずは労働者ひとりひとりの意見を聞く必要があります。そして労働者の意見を尊重し、可能な限り希望に沿う時季に有給休暇を与えるように努めなければなりません。

なお、有給休暇の時季指定義務は2019年4月からの規定です。その背景には「年5日間は有給休暇を確実に取得させる」という趣旨があると考えられています。

会社員の中には、「このごろ上司が有給を使うように言っているな」と感じている方がいるかもしれません。その理由も、有給休暇の時季指定義務があるからです。

有給休暇の有効期限とは

有給休暇の有効期限は2年間です。労働基準法第115条によって消滅時効が規定されています。つまり労働者は、有給休暇の権利を取得しても、2年の間に使わなければ権利を失うということです。

また、有給休暇を企業側が買い取ることは禁止されています。余った有給休暇をお金で買い取る行為は労働基準法違反に該当し、最大30万円以下の罰金が科されるので注意しましょう。

有給休暇取得のメリットとは

労働者に有給休暇を取得させるメリットとして、次のような効果が期待できます。

・心身の疲労回復に繋がる
・生産性の向上が期待できる
・離職率の低下が望める
・働きやすい会社として周知される

休暇には疲労回復の効果が期待できます。特に有給休暇は「賃金が減らされない」という安心感から、精神的にリフレッシュしやすいのではないでしょうか。

疲労回復によって生産性の向上が期待できますし、「有給を取りやすい職場なんだ」と労働者の満足度がアップすれば、離職率の低下も望めます。

そのような労働者が増えることにより、働きやすい会社として周知される可能性もあります。職場環境に関する良い口コミが広がれば、「人材採用のコストを抑えられる」「優秀な人材が集まりやすい」といった副次的なメリットも得られるでしょう。

有給休暇の取得を促進させる3つの方法

有給休暇の取得を促進させる3つの方法を解説します。

チームで仕事を進める体制を構築する

仕事をチームで行う体制が構築されていると、チームの1人が有給休暇を取得しても影響を抑えやすくなります。個々の労働者が自覚を持って仕事に臨む姿勢は大切ですが、不在者がいてもスムーズに業務が回るシステムも重要です。

そのためにはチーム内の積極的な情報共有が必要でしょう。普段からコミュニケーションが取れていれば、有給休暇で不在の労働者がいても、日常業務への影響は限定的です。

逆に有給取得する段階になって、他のメンバーに細かく指示を出しているようでは、チーム体制が構築されているとは言えません。

実際に厚生労働省の調査では、有給休暇の取得が進んでいる企業は1週間ごとにミーティングなどを行っていたそうです。そのように1人が不在でも業務が回る仕組みが、有給取得の促進には大切です。

年次有給休暇の計画的付与制度を導入する

年次有給休暇の計画的付与制度の導入により、企業側から有給休暇を割り振ることができます。

先述した有給休暇の時季指定義務と似ていますが、計画的付与制度は労働者ひとりひとりに希望を聞く必要がありません。その代わり計画的付与制度を導入するには、労使協定の締結などが必要となります。

また、計画的付与制度を導入している企業は有給休暇の取得率が高く、労働者側もためらいを感じることなく有給を取得できるようです。

導入方法には一斉付与方式・交代制付与方式・個人別付与方式があります。中でも個人別付与方式は有給休暇の分散化が望めますが、どの計画的付与方式を採用しても、有給休暇の取得促進に繋がるでしょう。

時間単位の年次有給休暇制度を導入するなど

通常の年次有給休暇制度は1日単位ですが、労使協定の締結などにより、年5日の範囲内で時間単位の有給休暇を与えることが可能です。

時間単位の有給休暇制度には「始業時刻や終業時刻を変更しやすい」「フレックスタイム制度を導入しやすい」といったメリットがありますが、それと共に「労働者に有給休暇を取得させやすい」といった効果も望めます。

「有給で1日休むのはためらいがあるけれども、午前中のみ、午後限定なら使いやすい」という労働者も多いのではないでしょうか。

時間単位の年次有給休暇制度は1時間単位で取得できるので、有給休暇の利用促進効果が期待できます。

有給休暇の取得を促進して働きやすい会社を目指そう

有給休暇は労使基準法で定められた労働者の権利です。正社員だけでなく、パートタイムで働く場合も、出勤条件・週所定労働日数・所定労働時間をクリアすれば有給休暇が付与されます。

有休の取得にためらいを感じる労働者も多い状況ですが、企業側としても「労働者の疲労回復に繋がる」「離職率の低下が望める」などのメリットが期待できるので、積極的に推進していきたいところです。

2019年4月からは有給休暇の時季指定義務がスタートしていますし、労使協定を結ぶことで計画的付与方式も選択できます。「チーム体制の構築」や「時間単位の有給休暇制度」の導入も促進効果が高いでしょう。

いずれにしても有給休暇の取得を促進して、働きやすい会社を目指すことが大切と言えます。

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