士業とは?士業の種類一覧と年収や企業での活用方法を紹介

弁護士、司法書士、行政書士など、末尾に「士」がつく職業を士業といいます。士業は各分野における専門的な資格と知見を持っているため、企業経営に士業を活用することで多くのメリットが得られるのです。

本記事では士業の全種類や年収について解説するとともに、企業で士業を活用する方法について紹介します。経営上のお悩みを抱えている方はぜひ、本記事の内容を参考にしてください。

士業とは

士業(しぎょう)とは、高度な専門資格を必要とする職業の通称であり、ほとんどの場合は末尾に「~士」がつきます。たとえば、弁護士や弁理士、行政書士、公認会計士などはよく知られている士業の種類です。

士業を「さむらいぎょう」と呼ぶこともありますが、それは「士」を「さむらい」とも読むことからきています。

8士業とは

士業の中でも特に、職務上の必要から住民票や戸籍謄本などを請求することが認められている8つの職業を8士業と呼びます。8士業は弁護士、弁理士、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士、土地家屋調査士、海事代理士です。

8士業を含む士業の概要や仕事内容については後ほど詳しく解説します。

士業がなぜ必要とされるのか

士業を活用すれば、経営者は煩雑な手続きに煩わされて貴重な時間を消費することなく、経営に専念できます。かつ、専門性の高い内容に対しては専門資格を持つ士業に任せるほうが、より正確・確実に処理できるでしょう。また、専門家の知見を事業に役立てることも可能です。

14種類の士業一覧

ここでは8士業を含む代表的な14種類の士業の仕事内容を紹介します。

・弁護士
法律問題の専門家として、司法書士・行政書士の取り扱う仕事を含む法律事務全般を取り扱います。法廷の内外で依頼者の権利や人権、利益を守ることが主な仕事です。

また、弁護士は弁理士・税務士の取り扱う業務も行うこともできます。企業が経営難に陥った場合は、経営再建あるいは破産手続きのために弁護士が代理人となって裁判所に法的手続きを申し立てることもあります。

・弁理士
知的財産に関する専門家として、考案や発明・実用新案・意匠・商標・デザイン・マークなどを保護するための手続きを代行します。弁理士の業務範囲は特許庁への出願から登録までです。

特許申請手続きには専門的な知識が要求されるため、発案者は多くの場合、弁理士に書類作成や手続きを依頼します。また、弁理士は知的財産や研究開発に関する助言も行います。企業の知名度が上がると製品・サービス名などに商号を使用する可能性があるため、商標登録について事前に税理士に相談しておくとよいでしょう。

・司法書士
登記手続の専門家として、不動産登記や商業登記を行います。登記手続きの他に供託手続きの取り扱いも可能です。また、訴状など必要書類の作成といった裁判事務や、依頼者に法律的な観点からアドバイスをすることもあります。

行政書士との違いは、司法書士が裁判所・法務局・検察庁など法務的な官庁に提出する書類を作成する仕事である点です。また、司法書士の扱える事件は140万円を下回る民事事件に限られる点が弁護士と異なります。

・行政書士
経営と法律の専門家として、個人・企業の経営上・法律に関する相談に乗ったり、行政手続きを代行したりします。具体的には、県庁・官庁・市役所・国の機関などに提出する書類や権利事務・事実証明に関する書類の作成相談、書類作成・提出手続きの代理などが行政書士の仕事です。

助成金申請や各種営業許可申請など、企業活動にも幅広く関わります。行政書士に依頼できる書類の種類は非常に多いため、行政書士によって得意とする分野・業務が異なる場合もあります。

・税理士
税務分野の専門家として、税務相談に対応したり、税務関連の書類作成、手続きなどを代行したりします。税理士の主な仕事は、確定申告など税金関連の書類作成、税務官公署への申告・申請、税務署の決定に対する不服申し立てや税務調査立ち合い、過誤納税金の還付請求などの税理代理業務です。

その他、会計顧問業務や記帳代行業務、顧問先企業の巡回監査、事業主に対する経営助言業務なども行います。

・社会保険労務士(社労士)
労働基準法や労務管理の専門家として、契約先企業の保険に関する届出書・申請書・報告書などを作成したり、労働基準監督署・公共職業安定所・社会保険事務所などへの事務手続きを代行したりします。

また、契約先企業の賃金形態や労働時間、就業規則などの作成や人員の採用・配置など労務全般のコンサルティングを行うケースも少なくありません。さらに、雇用に関連する助成金・給付金についてのアドバイスも行います。

・土地家屋調査士
主な業務は不動産の表示登記申請代理などです。依頼者の不動産表示に関する登記に必要な土地家屋の調査・測量を行ったり、登記の申請手続きや審査請求の手続きなどの手続きを代行したりします。

・海事代理士
海事に関する行政機関への申請、届出などの手続きを代行します。主な依頼者は海運や造船分野の法人企業、また船主などです。依頼者が保有する船舶の登記・登録・検査や船舶免許の取得・更新の申請代行などが海事代理士の主な業務です。

・会計士
企業会計監査の専門家として、会計・財務に関する調査・立案・相談などを行います。特に、財務諸表監査は会計士にしかできない業務といわれており、公正な第三者の立場から企業が作成した財務諸表に誤りや粉飾決算がないかを監査・調査・判断しなければなりません。

また、経営・業務改善に向けたアドバイスや指導(MAS:マネージメント・アドバイザリー・サービス)や株式公開支援、M&A、税務、情報システムの設計・監査などの業務も行います。税理士会に加入している会計士なら税理士との兼務も可能です。

・中小企業診断士
中小企業の経営診断に関する専門家として、民間企業や公的支援事業において経営に関するコンサルティングを行います。依頼者の経営状態を合理的に分析したうえで経営上の問題を診断し、それに基づいて事業計画の作成や成長戦略の策定・実行をしたり、改善・経営革新に向けたアドバイスをしたりといった内容が中小企業診断士の主な業務です。

また、企業と行政のパイプ役を務めるという役割もあります。独立開業している中小企業診断士と、一社員として企業に勤務している中小企業診断士(企業内診断士)がいます。

・経営コンサルタント
経営改善指導を行う専門家として、顧客企業の経営戦略や組織改革、マーケティングといった経営全般の相談に対応し、問題解決に向けて支援を行います。また、企業を対象としたセミナーの講師をしたり、リスクマネジメントや環境問題、生産・販売・人事・財務・情報などの各分野に対応したりといった業務も経営コンサルタントの職域です。

経営コンサルティングで対応する範囲は広いため、得意分野・専門分野は経営コンサルタントごとに異なります。経営者は、自社に合った経営コンサルタントを選択することが大切です。

・保険コンサルタント(保険代理士)
保険に関する専門家・保険会社の代理として、保険契約者のリスクを分析し、その人に適した保険提案を行います。委託される保険の種類は、生命保険、自動車保険、バイク保険、レジャー保険、ゴルフ保険など、さまざまです。

保険商品・サービスの多様化や価格自由化が進む中、保険の幅広い知見を持つ保険コンサルタントが保証内容を検討して優先順位を判断し、契約者に合った保険を提案します。

・不動産鑑定士
不動産鑑定評価法に基づき、不動産の鑑定評価を行う国家資格保有者です。不動産鑑定士の具体的な仕事内容としては、土地や建物の経済価値判定や、賃借権など土地・建物に関する所有権以外の権利の経済価値の判定を行ったうえで、判定結果として価額表示を行うことなどが挙げられます。

・ファイナンシャルプランナー(ファイナンシャル・プランニング技能士)
顧客一人ひとりの資産に合わせて、貯蓄や投資など総合的な資産設計やライフプラン設計に関する相談に対応し、アドバイスを行います。「FP技能士」と呼ばれることもあります。「職業能力開発促進法」で定められた国家資格です。

士業の平均年収

ここでは、士業のうち税理士、弁護士、社会保険労務士の平均年収を紹介します。

※政府統計の総合窓口サイト「e-Stat」で発表された2019年のデータに基づき、所定内給与額×12カ月分+年間賞与その他特別給与額=年収(千円未満四捨五入)としています。社員数ごとに集計されています(10人以上/10~99人/100~999人/1000人以上)。

税理士

税理士の平均年収は、企業規模により約554万1,000~1,072万9,000円です。

所定内給与額 年間賞与その他特別給与額 年収
社員数10人以上(全体平均) 約42万円 約117万2,000円 約621万4,000円
社員数10~99人 約38万円 約99万8,000円 約554万1,000円
社員数100~999人 約80万7,000円 約104万7,000円 約1072万9,000円
社員数1000人以上 約43万3,000円 約168万3,000円 約687万9,000円

※上記には公認会計士の統計データも含む

弁護士

弁護士の平均年収は、企業規模により約645万9,000円~764万7,000円です。

所定内給与額 年間賞与その他特別給与額 年収
社員数10人以上(全体平均) 約50万1,000円 約125万6,000円 約727万円
社員数10~99人 約53万9,000円 約117万5,000円 約764万7,000円
社員数100~999人 約42万7,000円 約134万円 約645万9,000円
社員数1000人以上 約46万2,000円 約190万3,000円 約744万5,000円

社会保険労務士

社会保険労務士の平均年収は、企業規模により約372万2,000円~624万3,000円です。

所定内給与額 年間賞与その他特別給与額 年収
社員数10人以上(全体平均) 約31万4,000円 約84万1,000円 約460万3,000円
社員数10~99人 約32万7,000円 約76万5,000円 約469万3,000円
社員数100~999人 約21万9,000円 約109万3,000円 約372万2,000円
社員数1000人以上 約34万5,000円 約210万4,000円 約624万3,000円

士業を企業で活用する例

ここでは、士業を企業で活用する例を4つ紹介します。

法律関係の業務を士業に依頼する

法律関係の業務は、弁護士・司法書士・行政書士など、法律の専門家に依頼することがおすすめです。企業を経営するうえで注意すべき法律や法的手続きが多数あります。

法律関係の申請や必要書類の作成、手続きや、法律に関するリスクマネジメント、問題解決などは、それぞれを専門とする士業を活用しましょう。そうすれば、経営者はそれらに忙殺されることなく、経営に専念できます。

企業会計・財務・税務に関する業務を士業に依頼する

会計士や税理士と契約することによって、適正な企業会計や記帳、確定申告などを行えます。税理士資格を持つ会計士を活用することも可能です。

会計士と税理士の兼務の場合、税務調査の対象になるリスクを軽減できるだけでなく、税務調査が入った場合に立ち会ってもらうことができ、税務署の決定に対する不服申し立てや過誤納税金の還付請求など交渉を代行してもらえます。

経営改善への対策を士業に依頼する

経営コンサルタントや中小企業診断士を活用することによって、経営状態の診断や課題を発見してもらえ、経営改善や問題解決に向けた対策について策定・提案・実行してもらえます。

労務関係の業務を士業に依頼する

求人や賃金・労働時間管理など人事や労務に関係する業務の中には、社会保険労務士に依頼できるものもあります。特に、保険料の納付などを総務課や経理課が行っている場合、その業務を社会保険労務士に依頼すれば人的ソースや経費削減も可能です。

士業を経営に上手く活用しよう

士業は法律や財務・税務、経営、労務など、それぞれの分野における専門家です。士業を活用することによって経営者は経営に専念できる他、自社に有益なアドバイスを受けることによって売上アップや問題解決につなげられる可能性があります。

最近は中小企業でも士業と契約する例が増えているため、自社に必要な専門スキルを持つ士業との契約を検討してみてはいかがでしょうか。

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