エグゼクティブとは?人材を確保する方法や必要なスキル、人材育成方法など紹介

ホテルや飛行機の他、役職としても使用される「エグゼクティブ」。
コロナ禍で急速に社会変化が進む中で、企業ではエグゼクティブ人材をいかに確保するか、育成するかが課題となっています。

本記事ではエグゼクティブの意味、エグゼクティブ、エグゼクティブ人材の確保・育成状況、転職が増えている背景、必要とされるスキル、人材育成の課題と成功のコツなど紹介します。企業事例も併せて紹介するので、自社の人材育成にお役立てください。

エグゼクティブとは

エグゼクティブとは、英語のexecutiveのことで実行力のある、行政上の、役員、経営者、行政官、執行部などの意味があります。上級管理職や経営幹部の意味から転じて、高級や贅沢といった意味もある言葉です。

役職としてのエグゼクティブ

エグゼクティブとは企業など組織のマネジメントに関わる最高責任者・執行役員・上級管理職などの幹部を表しますが、役職名として使用されることもあります。具体的にはエグゼクティブオフィサー(executive officer)は執行役員のことです。

また、エグゼクティブダイレクター(executive director)は執行役員、常任理事、専務、エグゼクティブマネージャー(executive manager)は執行役員、事業部長を指します。最高経営責任者のことをCEO と呼びますが、こちらはチームエグゼクティブオフィサー(chief executive officer)の略です。

その他のエグゼクティブ

役職以外でよくエグゼクティブという言葉を目にするのは、ホテルや飛行機ではないでしょうか。飛行機のエグゼクティブシート、ホテルのエグゼクティブルームは通常の席や部屋よりも広く贅沢なつくりになっており、価格帯も高いため、「エグゼクティブ」という言葉が使用されています。

エグゼクティブ人材とは

エグゼクティブ人材とはつまり経営人材のことで、エグゼクティブという役職がつく人材を指します。CEO、COO、社長、副社長、専務、常務、執行役員などを指す場合が多いです。ただ、エグゼクティブ人材の育成に力を入れている会社は、主要工場長、事業責任者、海外子会社社長など幅広い人材をエグゼクティブ人材ととらえている会社が多いです。

エグゼクティブの転職が増えている背景

企業でのエグゼクティブ人材への求めが増す中で、エグゼクティブが転職する機会も増えきています。ここではエグゼクティブの転職が増えている背景を説明します。

エグゼクティブ層の高齢化

まず、最高責任者をはじめエグゼクティブ層の高齢化が進んでおり、エグゼクティブ層の後継者候補の人材が不足している背景があります。企業内で候補となる人材がいないために、エグゼクティブ層の転職が増えているのです。

日本における高齢化はますます進むと考えられており、今後もエグゼクティブ人材の不足が懸念されるでしょう。従来は米国などの海外での求人が多かったですが、日本でもエグゼクティブ層の転職は活発化してきています。

コロナ禍による新規事業

コロナ禍により急速に社会環境が変化し、IT躍進がさらに進みました。コロナ禍で不要不急の外出がひかえられる中、在宅勤務は一般的になり、家で楽しめるサービスに需要が集中しました。

そんな中で、企業も新たな社会環境の中で既存ビジネスの取捨選択と、新規事業への進出が激化しています。そこで新規事業を実施するための事業責任者、ノウハウを持つエグゼクティブ人材を求める企業が増えてきているのです。

M&Aの急増

コロナ禍による急速な社会変化により、企業のM&A(合併と買収)も増加してきています。海外では頻繁に行われてきたM&Aですが、日本ではその歴史は浅く取り組みについての知見も十分ではありません。

そのためM&Aの経験があり推進できる人材、買収側と買収先の経営者へのニーズが高まっています。そういった要件にマッチしたエグゼクティブ人材への求人が高まっているのです。

外資企業・ファンドからの要請

ここ10数年ほど、外資系企業の日本企業買収によるエグゼティブの採用や、ファンドの投資先へのエグゼクティブ採用も増えてきました。外資系企業からの要請では、海外でのビジネス経験に精通してる人、ファンドの投資先へのエグゼクティブ採用は、デューデリジェンスを基に経営に最適な能力や経験分野を持った人材を選定します。

外資系企業およびファンドが主導となって採用することが多いですが、先方企業の経営陣の意向を重視して採用する場合もあるでしょう。

エグゼクティブ人材を確保する方法

エグゼクティブ人材を確保する方法には、大きくわけて社内人材を育成することと、外部からの採用とがあります。ここでは、概要を紹介します。

社内人材の育成

エグゼクティブ人材を確保するために、社内で人材育成した上でエグゼクティブに登用する方法です。外部からの採用では自社にはないシナジー効果は期待できるものの、社風とのマッチングや社員同士の信頼関係の構築に時間がかかります。

内部での育成であれば社内事情をよく知り仕事に慣れた上での登用となるので、よりスムーズにエグゼクティブとしての活躍が見込めるでしょう。ただし、社内で長年育てたとしても途中で転職してしまうリスクや、育成のコスト負担が発生するため必要性は理解していても取り組めていない会社も少なくありません。

外部からの採用

外部からの要件や能力に合ったエグゼクティブを採用することもひとつです。
外部のエグゼクティブを採用する方法として、知り合いの紹介などつてを使ってリファラル採用・ヘッドハンティングする方法や、ヘッドハンティング会社のサービスを利用する方法があります。

エグゼクティブ向けのヘッドハンティングサービスは、大きく分けると2種類です。希望の求める条件を基に、ヘッドハンターが他企業のエグゼクティブへ直接アプローチする方法と、ヘッドハンティング会社で登録された候補者の中から何人かをピックアップして提案する方法とがあります。

後者の登録された候補者は、エグゼクティブにふさわしい人材を選定するために、ヘッドハンターによる面談や面接をパスした優秀な人材のみを保有しています。転職意欲の有無が不明な中でアプローチを行う前者は時間がかかるのに対して、後者の方がマッチングさえ合えば迅速に成約できるメリットがあるでしょう。

エグゼクティブ人材の確保・育成状況

それでは、現在企業でのエグゼクティブ人材の確保や育成状況はどのようなものなのでしょうか。ここでは、2017年に経済産業省が調査した「経営人材育成」に関する調査結果報告書よりエグゼクティブ人材の確保や育成状況を紹介します。

報告によると、エグゼクティブ人材の確保・育成について、「順調」と言える企業は7.2%、「どちらかといえば順調」と答えたのは、30.4%です。その他はどちらかと言えば不安以下なので、不安をあまり抱えていない企業は全体の37.6%にとどまります。

また、エグゼクティブ人材候補育成の取り組みをしている企業の内、52.9%が不安と回答しており、エグゼクティブ人材の確保・育成は、多くの企業とって喫緊の課題と言えるでしょう。

エグゼクティブ人材に必要とされるスキル

エグゼクティブに必要とされるスキルは、要件によっても違いますが共通して必要される項目もあります。ここでは、主に必要とされるスキルを3つ紹介します。

コンプライアンス経営への理解

粉飾決算など企業不祥事に関する問題が多く発生したことから、企業に対のコンプライアンスへの対応は必要不可欠になっています。企業経営者をはじめエグゼクティブ層には、ステークホルダーのみならず社会に対しての倫理観やモラルが問われるようになりました。

また、内部統制システムへの対応、会社法の改正、CSRへの対応、環境経営、ダイバシティへの対応などコンプライアンスへの配慮領域も広くなってきています。

ビジネス経験の強み

エグゼクティブ層にはある分野で強みのある経験が必要とされます。経営企画、新規事業統括、事業管理、人事関連、情報システムなどの管理部門や、セールスマーケティング、生産、物流、R&Dなどでの経験も求められやすいスキルでしょう。エグゼクティブ人材に実務経験と管理経験の両方を積んだ人材が求められます。

近年では、新興企業やM&Aの買収先などで、新規事業に強みのある30代位40代の若年層のエグゼクティブを登用するケースも増えてきました。

高いリーダーシップ

エグゼクティブは組織をまとめけん引する立ち位置のため、基本的に高いリーダーシップが必要とされます。所属してきた企業文化や属性、自身の特性にもよって実務や企画に強いタイプ、情緒的で感情表現が強い、合理的、短期決戦派、長期決戦派などそれぞれ特色がありますが、どのような特色があってもリーダーシップは必要不可欠です。

エグゼクティブはその特色に合わせて変革型リーダーシップと、保守型リーダーシップのどちらかのスキルが必要とされるでしょう。

エグゼクティブの人材育成方法

エグゼクティブの人材育成方法は会社によって様々です。ここでは、基本的な人材育成方法を紹介します。

エグゼクティブ人材の要件の明確化

まずは社内でエグゼクティブ人材を定義し、必要とされる能力など要件を明確化します。育成したいエグゼクティブ人材は会社によって多様です。事業責任者からトップまで多数のエグゼクティブ人材を育成する場合と、トップのみを対象とする場合とでは社内で取り組む規模に違いがあります。定義後、各役職に必要とされる能力・経験を整理します。

エグゼクティブ人材の選定

次に候補となるエグゼクティブ人材の選定を行います。エグゼクティブ人材の選定はさまざまな方法がありますが、大きく分けるとエグゼクティブ人材だけを抽出する方法と、一人ひとりのタレントに合わせたキャリプランの中にエグゼクティブの方向性も含めるやり方です。

実際には、公募、アセスメントの実施、過去の人事評価、人事による総合判断、上司による推薦があります。エグゼクティブ候補としてのキャリアプラン以外の社員へのケアはひとつ課題として挙げられるでしょう。

育成計画・制度の整備

次に育成計画の策定や、育成環境・制度の整備を進めます。能力・経験の両面で必要な研修や配置転換など実施します。経営に必要とされる経営・事業戦略、経営課題解決、リーダーシップ、組織・人材論、財務・会計、ガバナンス・法務など幅広い経営知識を学べるよう調整しましょう。

さらに、既存の事業部門の責任者、関連会社の責任者、新規事業の責任者など責任のあるポストで、経営全般に関与する経験を積ませる会社が多いようです。

評価と見直し

育成計画の実施後に、育成状況を図るための評価と見直しが必要です。評価結果の情報の一元化と可視化、職務経験などの情報把握体制の構築を図ることで、配置換えや育成担当者が変わった際も、円滑に状況を確認できます。

人材管理のクラウドシステム、人事評価管理システム、タレントマネジメントのシステムなどを活用し、一定期間で見直しや本人との面談を重ねながら次期の育成内容を決定していくことになります。

エグゼクティブの人材育成の課題

エグゼクティブの人材育成制度は取り入れているものの、期待した通りの成果を得ていない会社は少なくありません。エグゼクティブの人材育成の課題とは何なのでしょうか。

配置転換のミスマッチング

エグゼクティブ人材の育成で難しいのが、配置転換によるミスマッチングです。エグゼクティブの育成には要件にあわせて経験してほしい部署へ定期的に配置転換が行われる場合があります。しかし、先方での実務は経験したことがない分野ではないことも少なくないため、業務実行に負荷がかかったり、受け入れ側の負担が多かったりしてミスマッチングが起きやすいのです。

タレントに合った育成体制の不足

社員一人ひとりの能力に合ったタレントマネジメントが十分ではないという指摘も多いです。エグゼクティブ人材候補全体への育成体制は整っているものの、個人に合わせた施策が効果的であるにもかかわらず着手できていない企業は少なくありません。効果的なエグゼクティブ人材の育成には、社員一人ひとりのタレント情報を蓄積して、個人個人の目標にそった取り組みの実施が求められます。

能力要件や経験が明確でない

エグゼクティブ人材の能力要件や経験があいまいである点も、人材の育成を阻む課題のひとつです。日本企業は従来から年功序列の職能等級制度が一般的で、仕事・成果と報酬が結びついていないとして変革が求められていますが、慣習として根強く残っている企業が多いでしょう。

欧米式の職務等級制度など仕事と報酬が結びついている制度の場合であれば、必要とされる能力経験がはっきりとしているためエグゼクティブ人材に求める要件も明確になりやすいのです。

エグゼクティブ人材の育成を成功させる3つのポイント

ここではエグゼクティブ人材の育成を成功させるポイントを3つ紹介します。

配置先との連携

エグゼクティブ人材の育成のために、配置転換する場合は配置先との連携が欠かせません。まず、どういった意図で当該部署へ移動となるのかを本人・配属先とですり合わせをします。

そして、期間終了後に得ておきたいスキルや経験を伝え、これまでに実施した研修内容や現状のスキルなどについても配属先へ十分に説明しましょう。そして、配属先からもどういった仕事で活躍してほしいか戦力をつけてほしい要望を聞いて話し合います。

トップの関わり合いの強化

トップから直接的にエグゼクティブ人材候補者へ指導があった場合、育成に成功しやすい傾向があります。幹部からの研修実施は行っているものの、結果が芳しくないと言う会社にはしっかりとトップが指導をすることで改善見込めます。トップは候補者へスピーチを行うのみならず、自ら動いて将来会社を担う人材を育成することが重要です。

マッチした人事評価制度の構築

エグゼクティブ人材の育成制度を整備することと並行して、人事評価制度を再構築することも成功には欠かせません。エグゼクティブ人材を育成するためには、各人材の情報をデータベースで確認できることと、仕事と能力とを明らかにする職務等級や役割等級の導入は欠かせません。人事評価制度を再構築はエグゼクティブ人材の育成を成功させるキーポイントとなります。

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エグゼクティブの人材育成の企業事例

それでは実際にエグゼクティブの人材育成に成功している企業はどのような制度を取り入れているのでしょうか。ここでは日本オラクル株式会社の事例を紹介します。

クラウド・アプリケーションやプラットフォームなどを提供するグローバル企業であるオラクルは、人材を「エグゼクティブ層」「ミドルマネジャー」「マネジャー」「一般社員」に分けて組織化しています。各分類で、タレントの分布、後継者の内部充足率、内部昇格率、ダイバーシティ比率などのあるべき姿(KPI)を設定し現実とのギャップをレビューします。

各ポジションに2名程度後継者をあげ、内部充足と外部採用の両面で計画を立てる他、エグゼクティブ層の育成については、トップタレントプログラムでの教育と、異動・昇進・昇格の加速による実務での能力向上を図っています。トップと事業部長とが強くコミットメントして、人材育成に力を入れている点も留意すべきポイントでしょう。

参考:経済産業省「(付録1)経営リーダー人材育成の各企業の取り組み」

エグゼクティブの人材の育成は人事評価制度の再構築とセットで行おう

エグゼクティブ人材の確保は、急激な社会変化と相まって企業の喫緊の課題となってきています。自社の育成制度の整備と外部からの採用両面で計画的に進める必要があるでしょう。

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