休業手当とは?目的や種類、支給の条件、有給休暇との違いを解説

(画像=samxmeg/iStock)

休業手当は、使用者側の理由で労働者を休業させた場合に、労働者に支給する手当です。

人事担当者であれば、休業手当を支払うべきケースや目的、金額の算出方法など、知っておくべきポイントは少なくありません。

今回は、休業手当の概要や目的、算出方法や、類似している休業制度を紹介します。

休業手当とは?

休業手当とは、使用者(会社側・事業主側)の責任で労働者を休業させた場合に、該当の労働者に対して手当を支給する手当です。

これは、労働者が最低限の生活を行えるように保障をすることが狙いとされています。

通常であれば、使用者は労働者の労働時間や成果によって報酬を支払うので、労働をしていなければ給与を支払わなくても良いと考える人も多いかもしれません。

確かに、労働者の都合によって働かない場合は、その考え方が当てはまるケースもあります。

しかし、使用者側の事情によって労働者を休業させた場合には当てはまらず、一定の金額を保障しなければなりません。

これは、労働基準法第26条の休業手当の項目において、「使用者の責に帰すべき事由による休業」という言葉で明記されています。

「使用者の責に帰すべき事由」とは?

休業手当は使用者側の理由で労働者を休業させた場合に支払う義務がありますが、具体的にはどのようなケースを指すのでしょうか。

特に人事担当者は、ある程度のケースを知っておくと、従業員から問い合わせを受けた時や、会社理由で従業員に休業させざるを得なかった場合に役立ちます。

例えば、経営不振や業績悪化のケースが挙げられます。

会社によっては、販売が落ち込んでしまい、当初は販売増加を見込んで雇用していた従業員が余剰人員となってしまうケースもあるでしょう。

このような事情で従業員に休業をさせた場合は、会社側に責任があると考えられるため、休業手当を支給する義務を負う可能性があります。

休業手当の目的

休業手当が労働基準法第26条において整備されている目的は、労働者の生活を保護するためです。

厚生労働省のホームページには、「労働者の最低限の生活の保障を図るため」という文言が明記されています。

仮に、会社側が都合の良い時に労働者を働かせたり、あるいは自由に休業させたりできる状況では、労働者側にとって不利になるでしょう。

特に、雇用契約を結んでいる場合にはそれが当てはまります。

労働者側はその会社での勤務を前提としており、所得もその会社に頼っているのに、急に休みを言い渡され給料も支払われなければ、生活に困ってしまうのは明らかでしょう。

休業手当は、そういった事態を防ぐために、法律によって生活を保障するよう規定したものなのです。

休業の種類

ここまで、労働基準法第26条に関する休業手当について説明してきましたが、休業にはさまざまな種類があり、同じく労働基準法によって休業や手当や規定されているものもあります。

ここでは、4つの休業制度について紹介しましょう。

産前・産後の休業

産前・産後の休業については、第65条と第66条で定められています。

条文によると、使用者は6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合と、産後8週間を経過しない女性に対して、原則として就業させてはなりません。

また、労働時間の規定や、休日労働、時間外労働についても制限がされています。

多くの場合、制限を超えて働かせるには労働者本人からの請求が必要です。

負傷・疾病の休業

負傷や疾病にかかった場合の休業については第75条で、その際の休業補償は第76条で定められています。

条文によると、業務上負傷または疾病にかかり療養が必要な労働者に対して、使用者が費用を負担しなければなりません。

また、療養で休業する場合には、使用者は平均賃金の60%の休業補償を行う必要があります。

第76条では休業補償の金額の細かい算定方法も規定されており、人事担当者はシミュレーションが可能です。

育児休業

育児休業は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(通称「育児・介護休業法」)で定められている休業制度です。

これは育児や子どもの看護などに関する休暇について規定がなされており、使用者側が取るべき措置や、子どもの養育を行う労働者への支援措置などが盛り込まれています。

この制度は、子育てをしながら仕事もしやすい環境を整備して再就職や雇用継続を促進し、職業生活と家庭生活の両立を促すことが狙いです。

育児休業は国が定めている制度であるため、定められている期間について労働者は育児休業を取得する権利が認められています。

また、その間は休業することで所得がなくなってしまうという問題への対策として、育児休業給付金といった金銭的な支援も制度化しているのです。

介護休業

介護休業も「育児・介護休業法」で定められている休業制度です。

介護などに関する休暇が規定されており、基本的な概要は育児休業と変わりません。

金銭的支援としては介護休業給付金があり、家族を介護するために介護休業を取得した際に支給されます。

休業手当の金額

休業手当の金額は労働基準法第26条において定められています。

1日あたり支給金額の計算方法は、平均賃金の60%と計算し、休業期間の日数に応じて支払うという規定です。

ここで示されている「平均賃金」は、労働基準法第12条に計算方法が規定されており、基本的には「算定すべき事由が発生した日以前」の3カ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数によって1日あたりに割り戻して算出します。

具体的に見ていきましょう。

まずは、直近の3カ月間の賃金総額を計算します。

賃金総額とは、基本給に加え、残業代、通勤手当、皆勤手当、職能手当といった各種手当も含んだ税控除前の金額です。

ここで指す直近の期間には2通りの考え方があり、賃金締切日が設定されている場合は直近の賃金締切日から起算しますが、そうでない場合は「算定すべき事由が発生した日」から起算します。

なお、1日あたり平均賃金を算出する際は、労働日数ではなく暦日数で計算するため、注意が必要です。実際にシミュレーションしていきましょう。

休業手当の金額シミュレーション

例えば、賃金締切日が毎月15日と定められている会社で、休業を3月19日に通告・即日実施して10日間休業させたケースを考えます。

賃金は毎月固定されており、諸手当も含んだ直近の賃金総額は毎月30万円です。

この場合、直近3カ月間は2月16日から3月15日(1カ月目)、1月16日から2月15日(2カ月目)、12月16日から1月15日(3カ月目)までの合計90日間となります。

3カ月間の賃金総額は「30万円×3カ月=90万円」です。

平均賃金は、賃金総額を該当期間日数で割るため、「90万円÷90日=1万円」として計算されます。

つまり、平均賃金は1万円と算出されました。

休業手当の1日あたり支給金額は平均賃金の60%のため6000円で、10日間休業させたため、休業手当の総支給額は6万円となります。

なお、パートや派遣従業員でも労働基準法の適用対象であるため、計算方法は同じです。ただし、こういった非正規の雇用形態は正社員と比べて賃金が低い傾向があるため、平均賃金を計算する際に本来であれば賃金総額を暦日数で割るところを実労働日数で割って、その金額の方が大きければ最低保障額として適用されます。

休業補償、有給休暇との違い

休業手当と内容が近い制度に、休業補償有給休暇があります。

それぞれの意味や、休業手当との違いを解説しましょう。

また、雇用調整助成金についても紹介します。

休業補償とは

休業補償とは、労働基準法第75条と76条において定められているものです。

先述の通り労働者が業務上負傷や疾病にかかり休業を余儀なくされ賃金を受けられなくなった場合、企業が療養中の平均賃金の60%の休業補償を行うことになっています。

休業手当は「使用者の責に帰すべき事由」の際に支払わなければならない手当です。一方、この休業補償は業務上の負傷・疾病で働けなくなった労働者に対して支払う義務があり、適用の要件が違います。

有給休暇とは

年次有給休暇(有給休暇)とは、労働基準法第39条において定められているものです。

有給休暇を取得すれば、労働者は休暇を取っていても賃金が支払われます。

休業手当は会社側都合における休業で支払う手当であるのに対して、有給休暇は一定の条件を満たせば付与される労働者の権利です。

雇用調整助成金とは

雇用調整助成金とは、やむを得ない理由によって一時的な雇用調整を行なった事業主に対して、政府が助成金を支払うものです。

ここで対象になる理由とは、例えば、景気変動や産業構造の変化、経済的な理由などが該当します。

一時的な雇用調整とは、休業や教育訓練、出向といった措置が対象です。

例えば、経営状態が悪化した企業がやむを得ず余剰人員を休業させた場合、企業は対象の労働者に対して休業手当を支払わなければなりませんが、その一部を政府からの助成金によって補填することができるようになっています。

受給額は企業規模によって分かれており、休業、教育訓練、出向などを実施した場合の企業の負担額に対して、中小企業は3分の2、中小企業以外は2分の1です。

よくある質問

休業手当とはなんですか?
休業手当とは、使用者(会社側・事業主側)の責任で労働者を休業させた場合に、該当の労働者に対して手当を支給する手当です。
休業手当の金額はいくらですか?
休業手当の金額は労働基準法第26条において定められています。
1日あたり支給金額の計算方法は、平均賃金の60%と計算し、休業期間の日数に応じて支払うという規定です。
新型コロナウイルス予防、緊急事態宣言を受けての休業手当について教えてください。
2020年6月30日までの緊急対応期間中は、全国で全業種の事業主を対象に、雇用調整助成金の特例措置が実施されています。詳しくは、厚生労働省の「雇用調整助成金」のページを参照しましょう。

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