スループット会計とは?注目される理由や利益を上げる情報を紹介

製造業を中心に、スループットという考え方を取り入れる企業が増えています。しかし、比較的新しい考え方ですので、そもそもスループットとは何か、原価計算などの従来の会計と何が違うのかよくわからない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、スループットの意味、スループット会計の特徴、スループットが注目される理由などを解説します。

スループットの意味とは?

スループット(throughput)は製造業などのビジネスシーンで使われる用語と、IT業界の用語で違いがあります。それぞれについて意味を解説します。

ビジネスでの使い方

ビジネス用語としてのスループットは、主に製造業で使われ、製品の売り上げからコストを差し引いたものです。言い換えれば、スループットとは製品を販売することで獲得できるお金です。

計算式で表すと、以下のとおりです。

スループット=売り上げ-真の変動費=売り上げ-(材料費+外注費+輸送費)

スループットは原価計算と異なり、いわゆる工場経費(光熱費、減価償却費、労務費)を含みません。原価計算との違いについては、後ほど解説します。

IT業界での使い方

IT用語としてのスループットとは、単位時間あたりに処理できるデータ量です。通信速度を表す場合は1秒当たりのデータ転送量を指し、「ダウンロード速度が1Gbps(1秒間に1ギガビット転送できる)」のように使います。データ処理速度としてのスループットの場合、パソコンのベンチマークなどで相対的に表現される場合もあります。

通信速度に関してスループットが使われる際は、「レイテンシ(遅延時間)」という用語がしばしば一緒に使われます。通信速度を正確に把握するには、スループットとレイテンシをセットで考えたほうが妥当であるからです。一方的にデータ送信する場合はスループットが重要ですが、双方向的なやり取りが多い通信ではレイテンシが大きく影響します。

スループット会計とは?

「スループット会計」とは、スループットの考え方を取り入れた管理会計手法です。ここではスループット会計とは何か、原価計算と何が違うのかについて解説します。

スループット会計の特徴

スループット会計とは、主に製造業で用いられている管理会計手法です。「スループット」「在庫」「業務費用」の3つの指標によって、利益を最大化する意思決定を行います。

スループット会計の特徴は、記録と報告が主目的の従来の会計に、経営視点をプラスしている点です。端的にいえば、利益を高めるための会計です。例えば、新たな設備を導入する際は、十分なスループット(時間当たりのキャッシュ獲得量)を見込めるか検討してから、意思決定を下します。

原価計算との違い

原価計算が生産を基準に利益とコストを算出するのに対し、スループット会計は販売を通じて得られた収益を基準にします。この違いは、利益を求める計算式を比べるとわかります。

【スループット会計の場合】
利益=スループット-業務費用=売り上げ-真の変動費-業務費用=売り上げ-(材料費+外注費+輸送費)-業務費用

【原価計算の場合】
利益=売り上げ-コスト=売り上げ-(直接原価+間接原価+販売にかかる費用)

スループット会計の利益計算では、在庫は真の変動費に含まれます。つまり、在庫を抱えるほどスループットが下がり、利益も落ちます。また、業務費用を「直接労務費」と「間接労務費」に区別しません。

スループットが注目される理由

従来の会計手法に限界を感じてスループット会計を導入する企業が増えています。ここでは、スループット会計にどのようなメリットがあるか解説します。

損益計算書(P/L)と実際の経営実態の乖離

スループットに着目すると、損益計算書(P/L)と実際の経営実態が乖離してしまう状態を回避しやすくなります。先にも述べたように、スループットの計算では、在庫商品を真の変動費に含みます。したがって、不良在庫を抱えるほど経営状態が悪化していることを、明確に把握できるわけです。

一方、原価計算の場合は、不良在庫を抱えていても資産としてカウントします。したがって、売れない商品を生産したとしても、経営状態がよくなったように錯覚する恐れがあります。こうなれば経営判断を誤り、利益につながらない商品を増産する可能性があります。

キャッシュフローの重要性の高まり

キャッシュフロー(資金の流れ)を改善することは、ビジネススピードが高まっている現代で特に重要です。たとえ将来売れるかもしれない商品が在庫にあったとしても、今お金に変えられないなら、ビジネスチャンスを逃すかもしれないからです。

さらに価値観が多様化した現代では、たとえ優れた商品を作ったとしても売れるとは限りません。つまり、なるべく在庫を減らしてキャッシュを持っていたほうが、健全な経営につながりやすい傾向があります。このため損益よりもキャッシュフローを重視するスループット会計の重要性が高まっています。

スループット会計で利益を上げる方法

スループット会計の利益は、「利益=売り上げ-真の変動費-業務費用」で計算できます。

したがって、利益を上げるには「売り上げを向上する」「真の変動費を下げる」「業務費用を下げる」のいずれかが必要です。それぞれについて解説します。

売上を上げる

売上を上げるのは、最も基本的な利益向上の条件です。スループット会計における重要なポイントは、「時間当たりの売り上げ」を意識することです。

例えば、同じ100万円の売り上げを達成できるとしても、1週間で達成できるのか、1カ月で達成できるのか時間効率を考えます。つまり、1商品あたりの生産時間や販売時間も検討して戦略を立てることが重要です。これによって、原価計算では見えなかった課題や問題点を発見できるようになります。

在庫を減らす

スループット計算では、在庫商品を資産とは考えず、真の変動費の材料費に分類します。したがって、在庫を減らすほど「真の変動費が少なくなる→スループットが増える→利益が増える」という関係があります。

もちろん、経営戦略によって在庫についての考え方は分かれるところです。スループット会計の考え方においても、在庫は「活用するべきもの」と考えられています。無用な在庫は減らすべきですが、適切な在庫量は確保するべきです。

コストを削減する

業務費用のカットによっても、スループット会計の利益を増やせます。コストカットできる対象を見つけるポイントは、実際に支出された費用で経費を洗い出すことです。

例えば、工場で働く社員の費用(直接労務費)も、輸送業者に支払う費用(間接労務費)も同じように考えます。また、減価償却費などの要素も入れずに費用を計算します。従来の会計と違った視点で支出を見直せば、余分な支出をみつけられるかもしれません。

スループット会計で業務の無駄を改善しよう

経営実態の正確な把握や、キャッシュフローの改善を目的として、スループットの考え方を取り入れる企業が増えています。スループット会計を導入すれば、従来の原価会計では見えなかった経営課題を発見できる場合もあるでしょう。

スループット会計を実施した後は、改善サイクルを回していきます。売上向上や、在庫削減、業務費用のカットなど、現状に合った施策に取り組むことで、成果を高められます。

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