人事評価制度とは?種類や評価基準、効果的な人事評価制度の作り方を紹介

人事評価制度について解説
(写真=Keepsmiling4u/Shutterstock.com)

「人事評価制度」は、評価に基づき社員を育成して生産性の向上を図り、究極的には企業の目標達成や業績のアップに繋げるためのシステムです。社員を評価するには、社員が持つ能力やスキルだけでなく、会社への貢献度を加味して判断することが重要です。

しかし、「実際にどのような基準で社員を評価すればよいのか?」「現状の評価制度をブラッシュアップしたいが具体的にどこを改善すべきか分からない」と悩んでいる人事担当者様も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、

  •  人事評価制度のシステムや用いる基準、評価項目の考え方 
  •  人事評価制度を導入する手順や成功のためのポイント 
  •  中小企業が人事評価制度を導入すべき理由 

を解説します。

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人事評価とは

人事評価制度の目的と要素、評価手法

人事評価とは、企業の目標と従業員のパフォーマンス、労働生産性を比較し、具体的、定期的な手順を経て評価を行うことです。また、各従業員の行動や成果、将来の成長可能性、得手、不得手を把握するのにも活用されます。

人事評価と人事考課の違いとは?

人事評価と似た用語として「人事考課」があります。人事考課は主に給与(昇給)や賞与、昇進の決定を目的とするものです。広義の人事評価の中に、査定を目的とした狭義の人事考課が含まれると考えましょう。

一般的に人事評価制度は内容や基準がオープンにされるのに対し、人事考課は役員・役職クラスでクローズドな運用をされる傾向にあります。

一方、人事評価が賃金や配置転換の判断材料とされるケースもあり、そもそも人事評価と人事考課を同義としてとらえる企業も多くあります。無理に切り分けて検討する必要はないといえるでしょう。

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人事評価制度とは

人事評価制度とは、組織内の従業員の業績や能力を定量的・定性的に評価し、その結果に基づいて報酬や昇進などの処遇を決定する制度のことです。人事評価制度は、組織の目標達成に必要な人材を確保し、従業員のモチベーションを高め、人材育成につなげることが目的とされています。

人事評価制度は、個人目標設定やフィードバック、面談などの手法を用いて、従業員の業績を評価することが一般的です。評価基準には、業務遂行能力や成果、コミュニケーション能力やリーダーシップ力などが含まれる場合があります。

人事評価制度は公平性や透明性が求められるため、評価基準や評価方法の明確化や公正な運用が必要とされます。ただ、従業員の能力や業績を考課者の主観的な要素を含まず、どのように客観的かつ公平公正に評価すればよいかについて悩みを抱える企業も少なくありません。

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人事評価制度の意義、目的とは

そもそも、企業は何のために人事評価制度を導入しているのでしょうか。賃金を決めるためだけに制度を活用しているのではありません。

企業のビジョンや経営方針、目標の明示

人事評価制度の評価項目や基準は会社によって異なりますが、制度には会社の理念やビジョン、会社の目指す方向性や会社が求める社員像が色濃く表れます。

企業が成長するには社員の育成が欠かせません。同時に、社員が目指す方向性や目標が、企業のそれと同じベクトル上にあることが必要です。人事評価制度は、最終的に生産性の向上や企業業績のアップにつながるものであることが重要なのです。

人材の最適な配置や待遇の決定

これまで日本独自の雇用システムとして戦後の復興を支えてきた年功序列型賃金体系や終身雇用制度は、長引く景気低迷や企業のグローバル化など、社会や労働環境の変化に伴い崩壊しつつあります。

現在では年功序列型ではなく、各社が定めた人事評価制度をもとに賃金を決定するようになりました。人事評価制度では従来のように年齢給と職能給の合算で給料を決めるのではなく、客観的に社員の能力や業績、貢献度などを判断し、設定された目標への進捗状況や達成度、担当業務への適合性などを見極め、人材配置や昇給・昇進などの待遇に結び付け、組織内の人材配置の材料にもします。

社員の人材育成

公平、適正で透明性がある人事評価制度を導入、運用すると社員の会社へのエンゲージメント(貢献度)が高まります。評価の項目や基準が明らかで、成果が適切に昇給や昇進に結び付くことが分かれば、社員は納得して目標や業務の達成に励むでしょう。人事評価制度は社員の成長を促す重要な役目も担っているのです。

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人事評価制度の種類・基準とは

企業が社員を人事評価する方法はいくつかの種類に分かれます。社員のスキル、能力や会社の業績、働きぶりから総合的に判断していきます。

能力評価

業務上求められるスキルや知識などで社員を判断します。どの会社にも共通するような数値化ルールは存在しません。通常、企業ごとに定めたルールに従って評価することになります。

業績評価

社員の能力や成果を評価期間ごとに判断する方法です。主に成果や目標への達成度を客観的に数値化していきます。数値化しにくいプロセスについては、上司や同僚、部下らからヒアリングして数値化するのが有益です。

情意評価

社員の意欲や行動、勤務態度などから査定します。担当業務への意欲や責任感、組織協力する姿勢などが評価の対象となります。

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人事評価制度を補う評価手法とは

人事評価には個人のスキルや会社の業績、勤務態度などをもとにしますが、それを補う手法もあります。これを用いると社員の意欲向上にも役に立つでしょう。

コンピテンシー評価

企業や組織で高い成果や業績を上げている社員に共通する行動特性(コンピテンシー)は、人事評価を円滑に進めるために有用です。あらかじめ業績が高い社員の行動特性からパターンを事前にモデル化し、それに沿って行動する社員を評価するものです。コンピテンシー評価では実際に会社に貢献している社員の行動パターンを分析し、目標達成に向けてどういう行動をすれば良いのかが明確になるので、人材育成の面でも有用なものです。

目標管理制度(MBO)

あらかじめ社員が自主的に目標を決めて会社と認識を共有し、管理していく方法です。設定する目標はなるべく具体的にし、到達するためのプロセスも具体的に定めることも大切です。社員と企業双方の目標が同じベクトルであるかを常に確認しながら、社員が企業に貢献していると認識すれば、さらに意欲を高めることが可能なのです。

目標と成果指標(OKR

OKRは「目標と成果指標」を指すワードで、インテル社やGoogle、Facebookなどの企業が積極的に取り入れている手法です。MBOよりも高めに目標を設定するのが特徴で、目標は四半期に一つが原則となっています。

まずは企業全体の目標を掲げ、社員はそれをもとに個人目標を一つ設定します。また、一つの目標に対し、複数の成果指標を設置するのが定番です。OKRは企業全体の生産性向上や社員育成を目的に活用されています。

360度評価(多面評価・周囲評価)

上司はもちろん、同僚や部下、異なる部署の社員が一人の社員を評価する手法です。評価を可能な限り客観的で公平なものにすることが狙いですが、360度評価は、普段評価を担当していない社員が評価に関わります。評価する人が評価に関する知識や経験を持っていないケースもあるでしょう。360度評価は人事評価に反映するというより、本人に評価を伝え、業務に生かすために使うのが一般的です。

バリュー評価 

バリュー評価とは、企業の行動規範(バリュー)を社員が理解・実践できたかを評価する手法です。会社の行動規範に則って活動していることを前提に、仕事の成果や成果に至るまでの過程、日頃の活動などを評価します。

上司の指示待ちではなく、行動規範をしっかりと理解したうえで自発的に行動できる社員が求められているなか、評価に役立つ手法の一つといえるでしょう。

 1on1 

1on1は、上司と部下が1対1で行う定期的な面談です。部下の成長を促すために、業務の進捗や悩みなどについて話し合い解決策を探ります。

上司から部下へ働きかける一方的なコミュニケーションではなく、社員が自発的に発言できるよう上司がうまく促すことがポイント。将来のビジョンや悩みを共有することで、上司は部下をサポートすることができます。

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人事評価制度が決めるものとは

では、人事評価制度をもとにして、会社側は何を決め、社員に何を与えるのでしょうか。

行動指針

企業が社員を評価することは、すなわち社員が目標達成に向けてどのように行動すべきかを表す基準を示すものです。

等級

人事評価は、企業や組織で求められる役割や社員の等級を示すものです。この指針にしたがって会社が社員に求める能力やスキル、役割や業績を示し、かつ序列化するのが等級制度の役目です。

報酬

評価や等級の各制度を総合し、結果や役割、地位に基づいて給料を決めます。

代表的な3つの人事評価制度

ここでは、代表的な3つの人事評価制度を紹介します。

職能等級制度(メンバーシップ型)

職能等級制度は、従業員の職務遂行能力、勤続年数などを基に、職能等級を設定して評価する日本独特の制度です。従業員は、それぞれの職能等級に応じた報酬や昇進のチャンスが与えられます。職能等級制度は、年功序列や終身雇用と前提として勤続年数が長くなれば、それだけ職務を遂行する能力が高いとして運用されるのが一般的です。

職務等級制度(ジョブ型)

職務等級制度は、組織内の職務に必要な知識やスキル、責任、役割などを基に、職務等級を設定して評価する制度です。職務等級制度は、欧米をはじめ海外で発展してきました。職務記述書(ジョブディスクリプション)に記述された職務内容に限定され、資格や熟練度などの項目で審査・評価し、賃金や報酬を決定する成果給となります。従業員は、それぞれの職務等級に応じた報酬や昇進のチャンスが与えられます。

役割等級制度(ミッショングレード制)

役割等級制度は、従業員が担う役割や業績目標の達成度、能力などを基に、役割等級を設定して評価する制度です。管理職・非管理職に関わらず、社員一人ひとりに企業が求める役割を設定し、その成果に応じて等級を区別・序列化します。年功制を排除し、勤続年数や年齢、キャリアの有無に関係なく、高い成果を出すことで若手社員でも昇格・昇給が可能となります。役割等級制度は、職務や職能に固定されず、従業員の業績や能力に応じて柔軟に評価ができる点が特徴です。

人事評価制度のメリット

ここでは、人事評価制度のメリットを4つ紹介します。

モチベーションの向上

人事評価制度により、従業員が自己評価や他者からのフィードバックを得ることができます。その結果、従業員は自己改善に取り組むことで、自己成長や達成感を得ることができます。また、報酬や昇進のチャンスが与えられることで、モチベーションが向上し、仕事に対する取り組み姿勢が改善されやすいです。

給与・役職を決める基準

人事評価制度は、給与や役職などの報酬の決定に役立ちます。評価に基づいて報酬が与えられるため、公平性が担保されやすく、従業員は自己の評価に基づいた適切な報酬を得ることができます。また、昇進などの役職の決定も評価に基づいて行われるため、適材適所の人事配置が可能となります。

人材育成として効果的

人事評価制度は、従業員の能力やスキルを評価するため、人材育成にも効果的です。評価結果に基づいて、従業員の弱点や改善点を洗い出し、必要なトレーニングや研修を提供することができます。そのため、従業員のスキルアップやキャリアアップが促進されます。

適材適所な人事配置の実現

人事評価制度により、従業員の能力やスキル、適性を正確に評価することができます。その結果、従業員を適材適所に配置することができ、組織の生産性や効率性が向上します。適材適所に配置された従業員は、自己成長ややりがいを感じることができ、組織としても人材の有効活用ができるため、双方にとってメリットがあります。

企業理念やビジョンが社員に浸透する

評価項目に企業理念やビジョンを組み込むことで、それらが社員へ浸透することが期待できます。全社員が理念やビジョンの内容をしっかりと理解し、社員一人ひとりの具体的な行動に落とし込むことが求められています。

人事評価制度のデメリット

イノベーションが起きにくくなる 

人事評価制度に画一的な評価を用いることにより、似たような人材・仕事の仕方に偏り、新たな発想や動きができにくくなる可能性があります。また、評価項目に含まれない分野に得意分野を持つ人は、正当に評価されない危険性もあるでしょう。

評価に影響しない業務が疎かになる

人事評価制度があることで、評価に影響しない業務が疎かになるおそれがあります。社員は評価外の業務に着手しにくくなり、必要な業務であっても集団的な放置が発生する可能性も出てくるでしょう。

評価者の裁量任せになりやすい

人事評価制度は、評価者の裁量によって評価が左右されることがあります。評価者によっては、個人的な好みや主観的な評価が反映される場合があり、公正な評価が難しくなることがあります。

評価に不満が発生する場合がある

人事評価制度によって、報酬や昇進などの重要な意思決定が行われるため、被考課者から評価に対して不満がでる場合があります。また、評価の基準やプロセスが不透明であった場合、従業員の不信感を招き、離職やモチベーション低下の原因になることもあります。

設計にノウハウが必要とされる

人事評価制度は、設計にノウハウが必要とされるため、導入が難しい場合があります。評価の基準やプロセス、評価者の選定など、細かい設計が必要となります。また、運用においても、評価の公正性を担保するために、トレーニングや監査が必要となることがあります。

人事評価制度の運用を成功させる4つのポイントとは

人事評価制度は会社がそれぞれに設定した基準をもとにしています。社員に納得させられるように運用しなければ、社員のモチベーションは上がりません。会社が人事評価制度を導入する際の留意点を挙げていきます。

明確であること

評価する項目や基準、方法や時期が明確で、社員に分かりやすく共有する必要があります。評価項目や基準が社員に伝わっていないと社員がどのように目標設定するか、どういう行動が評価に結びつくのかが分からず、人事評価そのものや企業への信頼性が損なわれる恐れがあります。

具体性があること

社員が納得できるよう、客観的かつ具体的に評価する必要があります。社員にとって納得できるような評価の「理由付け」をし、社員の今後の行動に結びつけるのが何よりも大切です。根拠が不明確では社員に不信感が募り、企業への貢献意欲やモチベーションが下がってしまいます。

絶対評価であること

他の社員と比較するのではなく、各社員が設定した目標に向けて一定の基準に従ってランク付けすることが大事です。相対評価を採用している企業も少なくありませんが、社員に対する説得性や納得度が高いのは絶対評価で、近年主流となっています。

プロセスを重視していること

数値化された結果だけではなく、プロセスにも注目する能力主義も加味するといいでしょう。目的達成に向けてすべき行動が明確になり、行動を評価すれば社員の会社への貢献も高まります。

人事評価シートの作り方・書き方のコツ

業種・職種ごとに項目を最適化する

基本的には先に紹介した業績(期間内に達成した成果)・能力(与えられた職務の遂行能力)・情意(意欲や勤務態度)の3つのポイントを基準に人事評価シートを作成します。

しかし、具体的にどの項目を重視するかは社員全て一律ではなく、業種・職種によって異なります。例えば、営業職では獲得件数など具体的な指標があるため業績評価がしやすいですが、数値目標のない事務職では能力評価や情意評価が重要になるでしょう。

適切なコメント(フィードバック)で社員の成長を促す

人事評価シートは、企業が各社員の業績や能力を適切に把握・評価するためだけでなく、社員がより良いパフォーマンスを発揮するための指針となるものです。

「なぜこのような評価になったのか」「何が良くて何が悪かったのか」を社員自身にきちんと認識して改善につなげてもらうためには、最適な評価項目を設定して数値化するだけでなく、上司から有益なフィードバックを与えることが不可欠です。

フィードバックを実施する際には、なるべく具体性をもたせたコメントと、良かった点と悪かった点の両方を伝えることを意識しましょう。

仕組み化によって評価の質と公平性を担保する

せっかく人事評価シートを作成しても、評価項目や内容が不明確なものであると思うような効果が得られません。また、評価が定量的でなく評価者の主観に左右される部分が大きいと不公平さが生じて、社員のモチベーションを下げる結果につながる恐れもあります。

評価の質と公平性を保つために人事評価制度をきちんと仕組み化した上で適切な評価シートを作りましょう。また、人事評価シートを運用する際は、紙やファイルで管理するよりも、クラウドで管理するほうが効率的です。

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人事評価制度の変遷|今後企業に求められるものとは

日本ではなぜ年功序列型賃金体系から人事評価制度を採用するように変化したのでしょうか。人事評価制度の変遷を説明します。

年功序列から成果主義や能力主義へ

従来、多くの企業では一般的に年齢や勤続年数に比例して給料や地位がアップする年功序列制度を採用していました。制度が変わらないまま、就職した会社で一生働く終身雇用制度は日本の高度経済成長を支え、戦後の復興を果たす大きな原動力となりました。

その後、長引く景気の低迷や雇用情勢の変化に加え、急速なグローバル化もあり労働に対する考え方は変化し、日本型の雇用システムは衰退の一途をたどっています。人事評価においても、年齢を重ねるたびに評価が高くなる年功序列型のものから、仕事の結果や業績、貢献度などで評価する「成果主義」、プロセスも評価する「能力主義」へと変わってきています。

非正規社員の格差を是正する同一労働同一賃金

1990年代から日本では非正規労働者が増え、現在では日本の全従業員のうち非正規社員が約40%を占めるようになりました。

ところが、徐々に正社員との賃金格差が広がり、社会問題化しています。政府の方針も成果主義に傾き、2016年12月に働き方改革実現会議で「同一労働同一賃金」のガイドライン案を公表。同ガイドラインは仕事の内容が同じか、同等の社員に対しては同じ賃金を支払うべきだという考え方に基づいています。

欧米では定期の人事評価を廃止する動き

欧米では近年、期間を区切った人事評価や社員のランク付けを廃止する「ノーレイティング」という動きが注目を集めています。多様な人材や労働環境の急変に伴い、あらかじめ設定した期間に評価することが現場の動きに合わないことが背景にあります。ノーレイティングでは期間を設定せず、必要な時にリアルタイムで目標設定して社員を査定し、フィードバックします。

独自の人事評価制度を取り入れている企業事例

ここからは、独自の人事評価制度を採用している企業5つの事例を紹介します。

株式会社ディー・エヌ・エー 

インターネットやAIを活用し、モバイルゲームの開発配信などを行う株式会社ディー・エヌ・エー。同社では約130名のマネージャーに対し、記名式の「360度評価」を実施しています。一般的には無記名式のことが多い評価方法ですが、あえて記名式にすることで上司と部下の信頼関係を構築できると考えられています。

ただし、評価の内容はあくまでもフィードバックが主な目的となり、給与へ反映するものではありません。評価内容の透明性が社員のモチベーションアップにつながると期待されています。

Chatwork株式会社

ビジネスコミュニケーションツールの開発・運営とソフトウエア販売を行うChatwork株式会社では、2017年にOKRを導入しました。途中から達成率ではなくチャレンジ度で評価する仕組みを採用し、それらを業績評価に反映しています。四半期に一度OKRを実施するなどサイクルを短くすることで、目標と業務内容に分離が起きにくい仕組みを構築。

「完璧を求めない」「カッコつけない」「継続して改善していくこと」を前提に、中長期的な成長を目標としています。

株式会社GEEK

ウェブ関連のフロンドエンド開発を中心に行う株式会社GEEKは、社員が10名近くになるタイミングでスプレッドシート方式のMBO評価を導入しました。より公平性を高めるため、まずは定性評価に基づいて社員が目標を設定し、半期ごとの評価、さらに360度評価を実施。のちにスプレッドシート方式からクラウド型の人事評価へと切り替えました。

上司・部下のコミュニケーションが取れるようになったことで目の前の課題を解決しやすくなり、評価全体にかかる工数も30%削減したという成功事例です。

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントでは、半期ごとに企業全体の目標を掲げ、それをもとに個人の目標設定を行います。ひと月ごとに上司と部下が中間面談(ヒアリング)を行い、目標達成を確認することに加え、自己評価や上司の評価にズレが出ないよう配慮しています。

また、評価制度が社員に浸透するよう、ネーミングを重視しているのも特徴。制度ごとに「あした会議」、「マカロン」、「F休」など特徴的な名前がついています。評価制度が企業風土となることで、社員がチームプレーを意識しながら働ける環境を目指しているのも、ユニークな点です。

株式会社サイボウズ

ソフトウェア開発会社 株式会社サイボウズの人事評価の特徴は「100人100通りの人事制度」です。同社は多種多様な働き方を早い段階から採用しており、コロナ禍前の2010年から在宅勤務制度を導入しています。性別や国籍などとは関係なく、社員一人ひとりが望む働き方を実現できるよう努力している企業です。

また、2013年から給与決定に市場価値を取り入れるなど、新しい評価の仕組みづくりも開始。「あなたが転職したら給与はいくら?」という考え方をもとに、給与を「社外的価値」「社内的価値」の2軸で定めています。さらに、この2軸に納得感を持てることから等級制度は不要と考え、4段階評価の廃止にも踏み切りました。

人事評価制度を導入したときに起こりうる「ミス」とは

人事評価制度は導入されるようになってからまだ日は浅く、成熟した制度とは言えません。制度を導入した際に起こりうるミスや、その対処法を紹介します。

人事評価エラー

評価者が意図的または無意識に心理や感情に影響されて評価することを人事評価エラーと呼びます。人事評価エラーのうち、特に起こしやすく、陥りがちなエラーを整理しておきます。

ハロー効果 学歴などの特徴的な印象に影響され、実際よりも高い評価を付けてしまうケース
寛大化と厳格化 社員に対する私情が影響し、評価が主観的に変化するケース
中心化傾向 極端な評価を嫌い、「社員に良く思われたい」などの理由から評価が平均値に寄りすぎるケース
論理誤差 「良い成績だと積極的だ」などと、結果と過程など異なる項目を同一視して評価してしまうケース
近隣誤差 全体の評価期間を見て評価するのではなく、直近に起きた出来事に評価が左右されるケース
対比誤差 評価基準に基づかず、評価する人自らが持つ基準に照らし合わせて評価するケース

評価者としての適性が欠けている

人事評価を担当するには評価できる能力や知識、経験があることが前提です。公平で客観性に評価するためには、企業の定めた評価項目や基準を正確に理解し、適切に判断する能力が必要です。評価者としての適性が欠けていれば評価の価値が下がり、社員の納得や信頼を得ることはできません。

適切なフィードバックをしない

社員が次のステップを目指すために人事評価の結果をフィードバックすることを忘れてはいけません。社員が納得できるように評価の根拠を示して説明し、今後の業務や次の目標達成に向けて活用してこそ評価する意味があるのです。評価を下した後、フィードバックしてコミュニケーションを取ることは人材育成の面で大きな役割を果たしています。

人事が評価に悩む内容と解決策

人事評価を行う際にはさまざまな悩みが発生することもあるでしょう。ここでは、それらの悩むポイントと解決策について解説します。

残業時間の評価方法 

従来、日本の企業では残業することは美徳という認識が定着しており、残業が多い社員を高く評価する一方、定時で帰宅する社員には「やる気がない」というレッテルを貼りがちでした。

しかし、残業のし過ぎは心身に悪い影響を及ぼすため、昨今では残業時間の多さを人事評価に反映しないのが一般的です。残業の有無など目に見える基準で社員を評価することなく、成果を評価することが大切です。

生産性の評価方法

昨今は働き改革の影響もあり、生産性を評価対象に含める動きも出ています。生産性の評価ポイントは「決められた時間内に成果を出した人をより高く評価する」こと。

人事が評価しやすくするためには、社員一人当たりの生産性を把握できる「労働生産性(粗利益÷総労働時間)」の指標を活用するのがおすすめです。労働時間や成果だけでなく、生産性もしっかりと評価することが必要でしょう。

勤務態度の評価方法

日本の企業では周囲と協力して働くことが求められる傾向にあるため、いくら成果を出せたとしても周囲と協力できない、早退や遅刻が多いなど、勤務態度に問題がある場合は評価が低くなる可能性があります。

一方、仕事の出来は普通ながら、勤務態度が良い社員は企業への貢献度を評価されやすいのも事実です。とはいえ、勤務態度は評価しづらい項目の一つなので、複数の評価項目を設定し、それらを総合的に判断する必要があります。

人事評価制度を導入する方法・手順

人事評価制度を作成・導入する際は、以下のようなフローで進めます。

  • 社員からヒアリングを行い現状の課題を分析
  • 人事評価制度の目標を設定
  • 具体的な評価項目を作成
  • 評価をどのように処遇に反映させるか決定
  • 評価シミュレーションの実施
  • 規定としてまとめた上で社員への説明会・評価者研修を実施

導入までのスケジュールは、半年~1年程度を見ておくとよいでしょう。

社員からヒアリングを行い現状の課題を分析

人事評価制度を導入する前に、社員から意見を聞き、現状の課題を分析します。社員のモチベーション低下や評価の不公平感など、課題を明確にすることが重要です。

人事評価制度の目標を設定

人事評価制度の目標を設定します。目標は、従業員のモチベーション向上や生産性の向上、適材適所な人材配置の実現など様々です。目標を明確にすることで、評価制度の設計や評価項目の決定に役立ちます。

具体的な評価項目を作成

目標に基づき、具体的な評価項目を作成します。業務遂行能力や貢献度、リーダーシップ能力など、適切な評価項目を決定することが重要です。

評価をどのように処遇に反映させるか決定

評価をどのように処遇に反映させるかを決定します。報酬や昇進など、評価に基づく処遇方法を明確にすることで、公正な評価が行われるようになります。

評価シミュレーションの実施

評価シミュレーションを実施します。評価シミュレーションは、評価者が実際に評価を行い、評価結果に基づいて処遇を決定するプロセスです。評価シミュレーションを行うことで、評価の公正性を確認することができます。

規定としてまとめた上で社員への説明会・評価者研修を実施

評価制度の規定をまとめ、社員への説明会や評価者研修を実施します。評価制度の詳細や評価方法などを明確にすることで、評価の公正性を確保することができます。また、評価者研修を実施することで、評価者が公正な評価を行うことができるようになります。

人事評価制度を見直す際の注意点

ここでは、人事評価制度を見直す際の注意点をいくつか紹介します。

自社の課題に照らし合わせる

人事評価制度を見直す際は、自社の課題に照らし合わせて見直しを行うことが重要です。例えば、採用競争率が低い、社員の定着率が悪い、社員のモチベーションが低いなど、様々な課題があるかもしれません。その課題に対応するため、人事評価制度を見直す必要が出てくる場合があります。

評価項目が多すぎないように設計する

人事評価制度の導入により、少なからず評価にかかる業務の負担が増えてしまいます。そのため、評価項目が多すぎると運用だけで手一杯となり、適切な評価ができない可能性も。

評価をスムーズに行うためにも評価項目を厳選し、運用に手間と時間がかからないようにすることが大切です。また、期末など業務が忙しくない時期に実施することも心がけましょう。

誰が見ても評価基準がわかりやすい

人事評価を行う際には、誰が見ても評価基準がわかりやすいこともポイントです。評価者の主観によって評価内容が異なるようでは社員が不公平に感じ、企業に不信感を持ってしまいます。

そのため、誰が見ても明らかな評価基準に則った評価ガイドラインを作成することが必要です。例えば、目標を100%達成できたら5段階評価の「5」とするなど、基準が定まっていることで評価者も安心して運用できるでしょう。

等級と報酬が連動するよう設計する

人事評価制度を見直す際は、等級と報酬が連動するよう設計することが重要です。会社の設定した人事評価制度を基に社員がパフォーマンスを発揮しているにもかかわらず、報酬が上がらないようではモチベーションの低下を招いてしまいます。等級と報酬が連動することで、公平な評価を行うことができます。

クラウドシステムを活用する

人事評価制度を見直す際は、近年、人事評価制度に使用されることが増えているクラウドシステムを活用するとよいでしょう。クラウドシステムを活用することで、社員はいつでも自分の目標や進捗状況、上司からのフィードバック、評価項目などを確認できるようになります。また、考課者もクラウドシステムを使ってスムーズに評価を行うことができます。

PDCAを実施する

人事評価制度を見直す際は、PDCAサイクルを実施することが重要です。人事評価制度は一度構築してしまえば終わりではありません。PDCAサイクルを実施し、人事評価制度の改善点を見つけることが大切。PDCAサイクルを回すことで、人事評価制度をより良くしていくことができます。

人事評価制度が中小企業に必要な理由とは

人事評価制度は大企業を中心に採用されていると思われがちですが、中小企業にこそ必要なのです。適切な人事評価制度の導入、運用は中小企業の経営を効率化しうるものです。

人事評価制度を採用した際は

  • 評価対象の決定
  • 評価項目の設定
  • 評価基準の決定
  • 評価の実行
  • 評価結果を判断
  • 評価結果のフィードバック

上のような流れで評価します。

厳しい企業間の競争で生き残るためには、社員がみな同じ方向性を持つ必要があります。正規、非正規を問わず、適切な人事評価制度で社員を客観的に評価し、公平な昇給や昇進に反映させれば従業員の働く意欲が高まり、目標の達成に向けて大きく前進できるのです。

次代のリーダーを見つけ、育てることにもつながるでしょう。これこそが人事評価制度を導入、運用する最大のメリットなのです。

社員から不満の出ない最高の人事評価制度を作るために

人事評価制度は、公平性・透明性が高く誰にでも分かりやすい納得感のあるものでなければなりません。また、長期的に負担なく運用でき、変化にも対応できる柔軟性と効率性を兼ね備えたシステムであることも重要です。

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あした式人事評価シート