格差社会とは?日本の現状と原因・対策までを解説

(画像=bee32/iStock)

格差社会は、日本のような先進国であっても取り上げられることが多いテーマです。

格差社会については、その言葉の意味だけでなく背景や対策も合わせて知っておくと理解が深まります。

今回は、格差社会の概要や現状、歴史的な経緯、対策について紹介します。

格差社会とは?

格差社会とは、人々の収入や財産といった経済的な差が著しく、ある水準ごとに階層が固定化されてしまっている状態の社会を指します。

格差社会という言葉を理解するには、単純な「所得差」「資産額の差」だけでなく、その背景にある問題も含めて考えなければなりません。

つまり、どのような社会であっても一定の格差は存在するのが普通ですが、それでもあえて「格差社会」と称するからには、何らかの問題を示唆していることが多いのです。

例えば、経済的な格差が非常に大きく、富の再分配が機能していないという問題が挙げられます。

あるいは、富裕層は非常に裕福な一方で低所得者層は貧困によって困窮しており、貧困者対策が不足しているという問題もあるでしょう。

いずれにせよ、格差社会とは、格差そのものだけでなく、それと複合的に生じている何らかの問題とセットになって語られることが多い言葉です。

日本の「格差社会」の現状

日本の格差社会の現状はどのようになっているのでしょうか。

ここでは、高度経済成長期から現代に至るまでの経緯を振り返ります。

高度経済成長時代

高度経済成長時代は、格差が縮小していった時代と言われています。

これは経済が飛躍的なペースで成長していく中では、労働力が常に不足する状態にあり、新しい人材を雇用するために賃金を引き上げていったことが背景にあるようです。

社会全体の労働力が枯渇している中では、高技能者よりも低技能者の数が不足しやすい傾向があり、企業側が低技能者を確保するために重点的に待遇を改善したことで、高技能者と低技能者の所得格差が縮小していったと考えられています。

そのような背景もあり、1950年から1960年代の高度経済成長期や1970年代の安定期は「一億総中流の時代」と呼ばれるまでになりました。

ただし、地域によって労働力需要には地域格差があったことも事実で、大都市圏と地方間での所得格差もないわけではなかったという指摘もあります。

小泉政権

小泉政権時代は、「聖域なき構造改革」をスローガンとして郵政民営化などさまざまな改革に取り組み、労働者派遣法改正にも着手しました。

その結果、派遣という形で雇用の柔軟性が生まれたという成果はありますが、一方で非正規労働者を増加させた側面があります。

非正規労働者は、正社員と比較して、雇用が不安定で所得が低いという問題があることも事実です。

また、キャリア形成や長期的なスキルの習得も不利であり、低所得から抜け出せないケースも多くあります。

この時代は、非正規雇用が増加したことで所得格差の原因になったという指摘もされている点が特徴です。

現代の格差

2000年以降の現代の状況を確認すると、世帯単位の所得格差は拡大しているものの、再分配によって、再分配調整後の所得格差は横ばい傾向です。

特に、高齢者の所得格差は開いている傾向にありますが、再分配調整後の格差は比較的平準化されています。

ただし、所得格差は横ばい傾向である一方、資産格差はそれよりも大きい状況です。

この背景には、高所得者の高貯蓄率や資産格差が大きい高齢者世帯の増加、低貯蓄世帯の割合の上昇傾向などが挙げられます。

もう1つ現状を把握するための要素として挙げられるのは相対的貧困率です。

現在、先進国の中でも日本の相対的貧困率は高い傾向にあります。

相対的貧困率とは?

相対的貧困率の定義とは、国・地域の一般的な生活水準と比べて困窮している状態です。

正確には、世帯所得がその国・地域における可処分所得の中央値に対して半分を下回る人々と定義されています。

「OECD経済審査報告書」(2017年)によると、日米欧主要先進7カ国のうち、日本は米国に次いで2番目の高比率でした。

格差社会の原因

格差社会にはどのような原因があるのでしょうか。

さまざまな研究者やエコノミストによって意見が分かれるところでもあり、統一した見解があるわけではありません。

ただし、いくつか有力と考えられる仮説があるのも事実です。ここでは経済同友会が2017年に発表した資料「子どもの貧困・機会格差の根本的な解決に向けて」にもとづいていくつかの例を紹介します。

産業構造の変化

デジタル化に代表される産業構造の変化は、格差社会を助長したと考えられています。

IT化は肉体労働を必要としないデジタル産業の発展を助け、高度なスキルや専門知識を持つスペシャリスト人材が求められるようになりました。

一方、従来型の労働集約的な産業は相対的に低スキルで低賃金となり、人材の二極化が進んだのです。

そういった背景の中で、所得格差が広がったと考えられています。

賃金・処遇の決定方法の変化

労働者の賃金・処遇を決定する方法が変化していったことも格差社会の原因と考えられています。

日本では伝統的に春闘によって業種ごとにほぼ横並びの賃金が分配されてきました。

これによって労働者間で大きな格差が生じる事態は起こりづらい構造だったのです。

しかし、高度経済成長を経ると徐々に成果主義・能力主義が導入され、横並びが崩れて個別に賃金を設定する傾向になっていき、所得格差の原因になったと考えられています。

非正規雇用の増加

非正規雇用者の増加も格差を招いた原因とされています。

先述の通り、日本国内では2000年代の小泉政権時代に労働者派遣法の改正を進め、雇用の柔軟化を進めました。

これは労使双方がさまざまな雇用形態を選びやすいというメリットもあった一方で、非正規雇用者の増加を招き、格差の原因になったと指摘されているのです。

格差社会への対策と取り組み

格差社会は、経済的に恵まれず困窮する世帯を生むもものです。

このような状態は放っておいても自然に解決するわけではなく、むしろ格差の固定化につながる可能性もあります。

そこで、状況を改善するには格差対策が欠かせません。

ここでは、格差社会への対策や取り組みの例を紹介します。

働き方改革

働き方改革は、さまざまな境遇の人材が活躍する環境を整備し、これまでは就労が難しく所得を十分得られなかった人材が収入を得る選択肢を広げることで、格差社会の是正にもつながる可能性があります。

働き方改革を推進する厚生労働省のホームページにも、「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現」という文言が明記されており、年齢や性別、家庭環境といった事情によって人々に働くことを諦めさせることなく、就労機会を増やす方針が読み取れるのです。

働き方改革の主要な論点として、長時間労働の是正、有給休暇の取得などが挙げられます。

長時間労働に関しては、時間外労働の罰則付き上限が掲げられており、これまでは子育て・介護や健康面の問題などで長時間働くことが難しかった人でも働きやすい環境が整備されつつある状況です。

有給休暇の取得についても、年次有給休暇の取得が義務化されたことによって、同様の効果が期待できるでしょう。

同一賃金同一労働

働き方改革の論点として、同一労働同一賃金も重要です。同一労働同一賃金については、「同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止」とされています。

従来であれば、同じような仕事をしていても、正社員か非正規社員かによって待遇が異なるという企業も珍しくありませんでした。

これが原因で正社員と非正規社員との間での所得格差を生み出し、格差社会の助長にもつながっていた可能性があります。

しかし、働き方改革で示されたガイドラインによって、正規・非正規といった雇用形態によらず公平な待遇を確保することが企業に求められました。

これにより、格差社会の状況を是正する効果が期待されるでしょう。

ベーシックインカム

ベーシックインカムとは、政府が全ての国民に対して、生活するために必要な最低限の金額を無条件で支給する制度です。

日本国内では、労働しているにもかかわらず所得が低く貧困に苦しんでいる、いわゆる「ワーキングプア」という層が存在します。

また、どうしても生活に困る人のためには生活保護という制度も用意されていますが、財政難などを背景に必要な人に支給が行き渡らないケースもあり、セーフティネットとしての役割としては課題があるのが現実です。

そこで、生活に必要な金銭を国が無条件で提供するベーシックインカムであれば、こういった格差社会の課題に対して是正効果を発揮する可能性が期待されます。

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