ナラティブとは?ビジネスで注目される理由や活用事例を解説

近年マーケティング業界で耳にする機会が多いナラティブ(narrative)は、「物語」や「語り」を意味する用語です。

「物語」とマーケティングの関連性がわかりづらいことから、理解することが難しいビジネス用語の1つですが、マーケティングや人材採用など様々なシーンで活用できます。本記事では、ビジネスにおけるナラティブの意味や、どのように活用されているかについて解説します。

ナラティブとは

ナラティブとは、語り手視点の物語を意味する単語です。本来は文芸理論で登場する用語でした。現在は看護や介護、臨床心理、ビジネスなど様々な分野で使用されています。

元々は文芸理論の用語

ナラティブは元々文芸理論の用語です。文芸とは文学に近い意味を持ちますが、学問として見た場合、目的が異なります。

文学は作品自体を研究することを目的としていますが、文芸は既存の文学作品を研究することにより、新しい文章表現を創造することを目的としています。ナラティブは文芸の領域の、主に物語の「語り方」を研究するための枠組みの1つです。

ナラティブの語源

ナラティブは「ナレーター」や「ナレーション」と語源を同じくしており、「narrate」から派生した単語です。

「narrate」は日本語で「話をする」を意味しており、そこから派生して、主体的に自身の出来事について書き連ねる文学作品のことをナラティブと呼ぶようになりました。

ストーリーとは何が違う?

ナラティブと同様に物語を意味する言葉にストーリーがあります。直訳では同様の意味を持つ「ナラティブ」と「ストーリー」ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

ストーリーは小説やドラマなど、作り込まれたシナリオに沿って一方的に物語が進行します。対してナラティブは、語り手自身が主人公となるため自由に物語を紡ぐのです。

聞き手と受け手が別れるストーリーとは違い、ナラティブでは一人ひとりが自由に物語を語れることを意味します。

ナラティブがビジネスで注目されている理由

近年では、様々なビジネスシーンでナラティブが活用されています。ナラティブがビジネスにおいて活躍するようになった理由にはSNSの普及やSDGsへの取り組みなど様々な要因があります。

企業と顧客双方からメッセージを発信できる

SNSの普及により、企業と顧客の双方向でのコミュニケーションが一般的になりました。そうした状況の中、一方的に企業が発信を行う「ストーリー」だけでは、顧客を惹きつけるのが難しい状況になっています。

企業・顧客双方が主人公となり、メッセージを発信できる「ナラティブ」によっていかに自社ブランドに共感してもらうかが重要になっています。

企業の社会課題への取り組みが重視されている

SDGsなどの活動に対しての認知が高まり、自分はどうすれば社会に貢献できるかについて考える機会が増加しています。社会問題に対し主観的にとらえる割合が増加していることから、個々人の主観にフォーカスしたナラティブは効果を発揮しやすくなりました。

オンラインでのコミュニケーションが一般化した

コロナウイルスの感染拡大などが原因で、急速にオンラインでのコミュニケーションが一般化しました。ビジネスにおいても、対面でのコミュニケーションが難しくなったため、オンラインで完結できるコミュニケーション手法・情報発信の仕方が求められています。

例えばリモートワークが一般化されたことにより、社内のコミュニケーションが減ったり、チームの一体感が感じにくくなったりと、オンラインでのコミュニケーションへの課題も多く出てきました。

そうした中で一人ひとりが主体的に発信でき、社内の信頼感や共感を強める「ナラティブ」が注目されています。

ナラティブアプローチとは?

ナラティブアプローチとは、相談者が主体的に自身が抱える問題について語り、専門家との対話を通してネガティブな「思い込み」を肯定的な価値観に置き換える手法です。1990年代に臨床心理学で活用され始め、現在では医療やソーシャルワーク、キャリアコンサルティングなど幅広い分野で実践されています。

ナラティブアプローチでは、相談者の話を聞き出し、質問を繰り返す中で相談者が自身で悩みを解決するように促すことが可能です。次の章で具体的に解説します。

ナラティブアプローチの手順をわかりやすく解説

ナラティブアプローチは質問の中で相談者の悩みを解決する手法ですが、どのように行うのかイメージがついていない方も多いのではないでしょうか。ここでは、ナラティブアプローチの手順をわかりやすく解説していきます。

ナラティブアプローチは以下のような手順で実施されます。

  1. ドミナントストーリーを聞く
  2. 問題・悩みを外在化する
  3. 反省的問いかけをする
  4. 例外的な結果を出す
  5. オルタナティブストーリーを導き出す

1.ドミナントストーリーを聞く

「ドミナント」とは支配を意味する単語です。「ドミナントストーリー」は悩んでいる人が、支配されているもしくは思い込んでいる物語のことを指します。ナラティブアプローチの目的は、ドミナントストーリーの支配から解放された別のストーリーであるオルタナティブストーリーを生成し置き換えることです。

オルタナティブストーリーを生み出すためには何に支配されているか・思い込んでいるかを理解する必要があり、ドミナントストーリーを理解することはナラティブアプローチの中で重要な工程です。

ドミナントストーリーには、「人に嫌われている気がする」「上司は仕事ができるはずだ」といった思い込みが当てはまります。

ドミナントストーリーについて聞く際に重要なのは、否定したりアドバイスをしないことです。相談者がどのように感じているのかをそのまま聞き出すことが、問題解決に必要になります。

2.問題・悩みを外在化する

相談者が主観で話した内容を、客観的に捉えられる状況にすることを外在化と言います。

人間は自身のことになると悲観的になりがちです。問題を客観的に見られる状況を作り出すことで、必要以上に悲観せず物事を判断できるようになります。

ドミナントストーリーでは、相談者自身が主人公となり物語が語られますが、その物語を第三者として聞いたらどのように思うのかを考えてもらうのが、外在化のフェーズです。

外在化の具体的な手法として「あなたなら今の話にどのような題名をつけますか」などのように質問し、物語に命名してもらうことで、物語と相談者を切り離し客観的に考えられるようにします。

3.反省的問いかけをする

反省的問いかけとは、問題の原因が明確になるような質問のことです。「誰によって引き起こされたか」「どのような問題が生じているか」「問題によってどのような経験をしたか」などについて掘り下げて質問をしていきます。

問題を掘り下げる目的は、相談者が思い込みすぎている部分を明確にすることです。否定的になりすぎてしまい、ポジティブな部分が見えなくなってしまっている恐れがあることから、質問を繰り返す中で主観を取り除いた本質的な状況について把握できます。

「嫌われている気がする」ことが悩みの場合であれば、「具体的に誰が嫌ってるか」「嫌われる原因は何だと思うか」「なぜ嫌われていると感じるのか」などの質問を繰り返すことが効果的です。

4.例外的な結果を出す

反省的な問いかけを元に、例外的な結果が見つかる場合があります。

例えば、嫌われていると思っている人によく話しかけられていたり、親しい人にしか話さないようなセンシティブな内容を話してくれていたりする場合です。

上記のような「例外的な結果」は、嫌いな人に行うものではありません。そのため例外的な結果は、嫌われていることが思い込みであると説明する上での証拠になります。

5.オルタナティブストーリーを導き出す

例外的な結果についてさらに掘り下げて質問し、悩んでいる内容が思い込みであることを認識させることでドミナントストーリーが間違っていたことを理解し、新たにポジティブなオルタナティブストーリーの生成を促します。

例えば、親しい人にしか話さないようなことを話されている場合であれば、「あなたは親しくない人に対してこのような質問をしますか」などのように質問することで、嫌われていないことを認識させられる可能性があります。

嫌われているというドミナントストーリーを、親しく接してくれるというオルタナティブストーリーに置き換えられればナラティブアプローチは完了です。実際は嫌われていないことを認識させることで、相談者はアドバイスではなく自身で間違っていたことに気づくことができるのです。

ビジネスでナラティブアプローチが活用されている分野

現在ナラティブアプローチは様々なビジネスシーンで活用されています。

人材採用・マネジメント

求職者の多くは「仕事内容」や「企業のビジョン・ミッション」を重視し入社する企業を決定しています。ナラティブを活用した人材採用では、企業の理念や姿勢、考え方、メンバーやプロジェクトに関するストーリーを伝え、求職者に対して企業の魅力をアピールします。

物語の中に企業の芯となる理念や哲学を盛り込むことで、求人情報以上の「本質的な会社の魅力」を伝えられる点が特徴です。本質的な魅力を伝えることで共感を生み、「ミスマッチを防ぐ」「意識の高い優秀な人材を採用できる」といったメリットを得られます。

また、ナラティブはマネジメントでも活躍します。上司が部下から相談を受けた際に、ナラティブアプローチを活用することで客観的な判断を促し、悩みの解決につながります。

ナラティブアプローチは否定やアドバイスを行わないため、上下関係を部下に強要せずに済み信頼関係を築きやすいという特徴があります。

キャリアカウンセリング

キャリアカウンセリングとは、社員にとって望ましい職業選択やキャリアを支援することです。ナラティブアプローチによって、本当は何を目指したいか、どのようにキャリアを重ねていきたいかなどについて細かく分析するように促します。

本当は自分に向いている仕事で合っても、少しの失敗で「向いていないと思い込む」こともあります。このような場合に役立つのがナラティブアプローチによるキャリアカウンセリングです。

ナラティブマーケティング

ナラティブマーケティングを使用することで、消費者の視点から企業との接点を考えることが可能です。現在SNSの普及によりユーザーと簡単に接点を設けられるようになりました。SNSなどを介して獲得した情報に基づき、商品やサービスを開発することで顧客のニーズに合致した商品を開発できます。

消費者の視点に立った企業活動を行うことが、ナラティブマーケティングです。

ナラティブマーケティングのメリット

ナラティブマーケティングを実施するメリットは以下のとおりです。

企業や商品に親近感を感じてもらえる

ナラティブマーケティングではユーザーの想いを反映した商品やサービスを展開するため、ユーザーにとって思い入れの強い商品になりやすいといった特徴があります。愛着を持っているユーザーが増えることでリピート率が上昇し、結果的に売り上げアップにもつながります。

商品・サービスの本質を伝えやすい

ナラティブマーケティングでは、ユーザーごとに商品やサービス活用時のイメージを持つように促すため、商品やサービスの本質的な価値を伝えやすいという特徴があります。

例えば、商品の材料や加工方法からいかに優れた商品なのかを語るのはストーリーです。一方ナラティブでは、商品を購入した後の生活を語り、生活にどのような変化があるのかを伝えます。

商品の使用、サービスの利用を通して得られる体験に価値を感じてもらうという、本質の部分を伝えられる点でナラティブマーケティングにメリットがあるといえます。

市場でのポジションが明確になる

ナラティブマーケティングを行う際は、企業側も消費者に対しどのような価値を持たせたいか考え尽くす必要があります。

つまり、上記で紹介した商品・サービスの本質を伝えるために、その本質を企業側が明確にしておく必要があるということです。

商品・サービスを通してどのような価値を届けたいかを明確にすることで、ターゲットや商品の方向性が確立し、市場でのポジションも定まり販売しやすくなります。

ナラティブマーケティングを活用する企業の事例

現在、多くの企業がナラティブマーケティングを実施しています。代表的な5つの企業について紹介します。

SUBARU

自動車ブランドのSUBARUはCMや小説を利用したナラティブマーケティングを実施しています。SUBARUはCMのテーマを「あなたとクルマの物語」と設定し、よくある家庭のシーンを切り取り、登場人物に共感できる内容のCMを放映しています。

このCMでは、SUBARUの車の説明などはされず、車を通した人間模様を描くことに終始しています。CMを見る消費者は、登場人物に自らを投影することで感情移入し、SUBARUの車に対し親近感を持つように促しています。

パンテーン

パンテーンはTwitterのハッシュタグを活用したナラティブマーケティングを実施しています。例えば学校の校則に対して異議を唱えることを目的に「#この髪どうしてダメですか」を拡散しました。パンテーンはこのハッシュタグで髪の問題で悩んでいる学生の共感を獲得することに成功しました。

パタゴニア

パタゴニアの経営理念は「私たちは故郷である地球を救うためにビジネスを営む」です。パタゴニアは経営理念に基づき再生可能エネルギーの利用などの活動を展開しています。

地球に対して危害を加えるような活動に対しての批判を積極的に発信しており、例えば、アメリカのトランプ前大統領が国定記念物の保護地域を縮小した際も活動に対して大々的に批判しました。経営理念や積極的な批判に対しユーザーの共感を獲得しています。

無印良品

無印良品はInstagramを使用したナラティブマーケティングを実施しています。商品を発表する際に全ての機能について紹介するのではなく、ユーザーが見つける余白を用意しています。

掲載されていない機能について発見したユーザーはまるで自分で新機能を発見する体験ができ、ユーザーは自身の物語として世の中に拡散します。

消費者の共感を軸に、企業と消費者双方の作用によって商品が売れるというナラティブマーケティングの成功事例です。

ウォルト・ディズニー・スタジオ

ウォルト・ディズニー・スタジオは作品の制作に携わる社員一人ひとりに焦点をあて、働いている雰囲気や温度感を伝える動画を公開しています。作品を身近に感じるユーザーが増え、作品をあたかも自身で製作したかのような視点で見るようになるため愛着を持つように促しています。

ナラティブで組織を活性化しよう

一方的に物語を語るのではなく、受け手も語り手になることで共感を生むナラティブはビジネスのさまざまな現場で活用されています。

人材採用、マネジメント、キャリアカウンセリングなど人事領域でも有用なため、「ナラティブ」を活用し組織の活性化を検討してみてはいかがでしょうか。

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