ワーケーションの課題と効果とは?企業の導入事例から具体的に解説

コロナ禍において、感染リスクが少ない自然環境の中でクリエイティブに仕事ができるワーケーションに注目が集まっています。

環境省が補助金を出すなど、企業の活用を後押しする動きも見られますが、ワーケーションはただ単にブームに乗って導入しても成功しません

期待される効果と課題を勘案したうえで、自社にとってプラスであれば導入することをおすすめします。

本記事では、自社へのワーケーション導入を検討している担当者に向けて、効果と課題、課題への対応策について解説します。

1.ワーケーションとは

ワーケーションとは、Work と Vacation を組み合わせた造語で、主にリゾート地や観光地などで余暇を楽しみつつ、テレワークを行うことを意味します

一番の特徴は、働く人個人を中心に、仕事と休暇という本来は相反する概念を融合させている点です。

テレワークと混同されやすいですが、ワーケーションはあくまでもテレワークの中から生まれた新たな手法のひとつ。テレワークとは在宅勤務やモバイルワークなど、就業場所を限定しない働き方全般のことを指します。

1‐1.ワーケーションの種類とは

ワーケーションは、テレワークの一歩先をいくニューノーマルな働き方であり、現時点において複数の定義・解釈が存在します。

令和2年に実施された観光戦略実行推進会議においては、ワーケーションの在り方として、下記4つの型が提示されました。

  • 有給休暇中など観光地に一定期間滞在して、一部仕事を織り込むタイプ
  • 日常的に仕事と休暇を重ねて織り込むタイプ
  • 出張後に余暇を付け足すタイプ
  • 研修やオフサイト会議に余暇を付け足すタイプ

一言にワーケーションと言っても、取り入れ方は様々にあるので、自社に合ったワーケーションを検討する必要があるでしょう。

2.ワーケーションへの企業の関心は?

それでは、実際にワーケーションへの企業の関心は、どれくらい高まっているのでしょうか?

ワーケーションへの企業の関心度を示すデータとして、あしたのチームとワーケーション支援事業に取り組むWe’ll-Being JAPAN、日本旅行との3社共同で実施した実態調査の結果の一部を紹介します。

2020年8月にテレワーク導入企業の経営者323名を対象に調査したところ、50.4%の経営者が「自社でのワーケーション導入に興味がある」と回答しました

加えて、テレワーク導入企業の会社員332名を対象にした調査においても、そのうちの62.0%が「ワーケーションに取り組んでみたい」と回答しています

これまで認知度の低かったワーケーションですが、コロナ禍を機に多くの人に周知され、導入を検討されていることがわかります。

引用文献:
https://www.nta.co.jp/news/2020/__icsFiles/afieldfile/2020/08/31/workation.pdf

3.ワーケーションの5つの課題

ワーケーションを導入するにあたって、課題となっている点は何なのでしょうか?

ワーケーションは「仕事と休暇」という本来相反する概念を融合させるものであるため、企業での導入にあたってはいくつか課題も懸念されます。具体的には、次の5つの課題が挙げられます。

3-1. 労働時間の管理

最初の壁は、社員の稼働時間の管理です。目の前にいない社員の労働時間管理の難しさは、テレワーク全般の課題ですが、ワーケーションではそこへさらに休暇というプライベートの概念が加わります。

テレワーク以上に、公私の線引きが曖昧になりやすい環境であることは言うまでもありません。

3-2. 業務内容・成果の把握

稼働時間の管理が難しい以上、社員の実施した業務内容や成果の把握も困難です。成果の把握ができないと、適正な人事評価も行えません

加えて、成果だけでなくそこに至るまでのプロセスも評価軸に加えられるべきでしょう。ワーケーションに適用できる、公平かつ透明性の高い人事評価制度は、社員のモチベーション維持にも不可欠です。

3-3.導入・運用コスト

ワーケーション実施には、初期費用や運用費用もかかります。滞りなく仕事を行うためのWi-Fi環境や作業環境、テレワーク用のチャットツール、WEB会議システムなどの導入も必要です。

これらの利用料に加えて、作業場所の光熱費や水道代、宿泊施設を利用する場合はその使用料も発生します。

3-4.セキュリティリスク

仕事の端末・情報を遠方へ持ち出す以上、情報セキュリティへの対策も重要です。

リゾート地などでは社員の気も緩みやすくなり、機密情報を含む機器の盗難や紛失、のぞき見などのリスクが高まる恐れがあります。

私用のパソコンやUSBなどからのウイルス感染にも気を付けなければなりません。

3-5.家族の同行

共働きが主流となっている現代においては、家族を連れて行っても実践できる仕組みづくりも求められます。

厚生労働省によると、2019年時点で、共働き世帯(1245万世帯)は専業主婦世帯(582万世帯)の2倍以上となっており、今後さらに差が広がっていくと予想されます。

家族も同行可能な制度の有無は、ワーケーションの実用化におけるひとつのポイントでしょう。

引用資料:https://www.mhlw.go.jp/content/000684406.pdf

4.ワーケーションで期待できる4つの効果

ワーケーションがもたらす効果にも目を向けてみましょう。ここでは、ワーケーションを導入した企業に期待できる4つの効果について解説します。

4-1.休暇取得促進

まず、リゾート地や観光地での仕事は、社員の休暇取得促進に効果的です。

働き方改革に伴う労働基準法の改正により、2019年4月1日からすべての企業において社員に対して年5日間の有給休暇取得が義務付けられています。

仕事を終えた足でそのまま休暇に入れるワーケーションはその対策として有用です。

4-2.創造性の発揮

社員の創造性の発揮・向上も狙えます。都会の喧騒とは無縁の非日常的な環境に身を置くことで気分転換になり、新しい発想が生まれやすくなります。

普段と違う視点から業務を見直すことで、課題解決の糸口が見つかる場合もあるでしょう。受け入れ地域の住民との触れ合いも、社員にとってよい刺激になります。

4-3.社員の健康維持

社員のヘルスケア効果も見逃せません。コロナ禍においては、感染症の拡大や行動制限、在宅勤務のストレスに帰結する「コロナうつ」の増加も問題視されています。

リゾート地などの自然豊かな環境がもたらすリフレッシュ・癒しにより、ストレス軽減効果が見込めます。

テレワークで課題となっている社員の健康への影響について、緩和させる効果が期待できるでしょう。

4-4.従業員満足度の向上

従業員満足度の向上も期待できます。ワーケーションという選択肢の提供は、柔軟な働き方を叶え、個人の人生の自己実現にも貢献します。

自分らしい働き方を支援してくれる企業に対しては、従業員満足度も向上していくはずです。離職の防止にとどまらず、社員の企業への自発的な貢献意欲をかき立ててくれるでしょう。

5.ワーケーションの2つの企業導入事例から見る課題と効果

すでに国内でもワーケーションの実証実験が進んでいます。ここでは、目的の異なる2つの事例の概要や見えてきた課題・効果について紹介します。

5-1.栃木県日光市と民間企業との共同の実施事例における課題

1つ目は、観光産業の復興・活性化を目的とした事例です。

新型コロナウイルスの感染拡大により観光客数の低迷に悩んでいる栃木県日光市は、NTT東日本と共同で2020年8月に旅先で仕事をする「ワーケーション」の実証実験を行いました。

参加したNTT東日本栃木支店の社員からは、「自然を見てリフレッシュできた」「仕事のアイデアも浮かんだ」と肯定的な意見があった一方、課題も浮き彫りになりました。

主には、企業側の労務管理の難しさや公私の切り分けの難しさ、ワーケーション時に発生する費用の分担などが問題提起されています。

参考文献:https://www.sankeibiz.jp/business/news/201003/bsd2010030800001-n1.htm

5-2.NTTデータ研究所など3社共同の実施事例における効果

2つ目は、ワーケーションの効果検証を目的とした事例です。

NTTデータ研究所とJTB、JALの3社は共同で、ワーケーション研究の第一弾として2020年6月に沖縄のリゾート地において同社の社員などを対象に実証実験を実施しました。

その結果、ワーケーションは業務の生産性、社員の心身の健康にポジティブな効果をもたらすことが分かりました。

具体的には、参加前と比べて、ワーケーション中の仕事の生産性が約20%アップし、終了後も効果が5日間も持続していた他、心身のストレス反応も約37%軽減しました。

同研究チームでは今後さらに多くのデータを集め、効果的なワーケーションプログラムの提案にも生かしていきたいと述べています。

参考文献:
https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/200727.html

6.ワーケーションの課題を克服する導入時の5つのポイント

ワーケーションを成功させるためには適切な準備が肝心です。これまでに挙げた課題の対策として効果が見込める5つの施策を紹介します。

6-1.基本ルールの作成

最初に着手すべきは、対象者や対象時期などの基本ルールの作成です。対象者として候補に挙がりやすいのは、遠隔でも作業しやすいとされているデスクワークを中心とした業務を行う社員です。

また、自己管理能力も問われる以上、ある程度主体的に業務を推進できる中堅社員以上が適切でしょう。

そのうえで、まずは通常業務への影響が限定的な閑散期や、家族も同行しやすい夏季休暇などからトライアル的に実施していくとスムーズです。

6-2. 就業規則の更新

既存の就業規則ではカバーしきれない場合には、ワーケーションを行う社員にのみ適用される就業規則を新たに作成する必要があります。仕事と休暇の境界線を決め、周知しておきましょう。

ワーケーションの取得単位(1日単位、半日単位、時間単位など)や許可される業務範囲や経費の負担者についても明確に定めましょう。

6-3.労働時間管理方法の確立

ワーケーション時の労働時間の管理方法には、チャットツールを使った出退勤報告ルールの導入、業務日報の提出やパソコンのログ確認などのやり方があります。

労働時間ではなく、成果での管理に切り替えるのも手です。業務を一元管理できるクラウドシステムを導入すれば、仕事の進捗や成果をリアルタイムで把握できます。

6-4.目標管理制度の導入

ワーケーションの働き方に適した人事評価制度も整備しておく必要があります。おすすめは目標管理制度の導入です。

目標管理制度とは、組織と個人の目標をリンクさせたうえで、社員が自主的に目標を設定し、進捗や実行なども社員が管理することで、「やらされる感」が無くなり、より大きな成果を得られるとする考え方です。

プロセスの評価(コンピテンシー)も活用することで、ワーケーション中の社員にも適正な評価を実施しやすくなります。

6-5.セキュリティ対策の強化

業務用パソコンやモバイル端末の持ち出しや機密情報を含む資料やデータの取り扱いについてのルールを決め、社員のセキュリティ教育も実施しておきましょう。

宿泊施設を選ぶ際には、高セキュリティのWi-Fi環境やプライバシーを保てる作業スペースの有無も加味して決定します。

ワーケーションの課題を克服して効果的に導入しよう

ワーケーション中の仕事であっても、適正に評価される仕組みがあれば、社員も安心して利用に踏み切れます。

あしたのチームの「あしたのクラウド®」は、ワーケーションの課題克服に役立つ人事評価クラウドシステムです。目標の進捗管理や人事評価、給与改定までをシステム内で一元管理でき、同時に社員育成も叶います

テレワークでも問題とされる課題に有効なツールを活用しつつ、ワーケーションの効果を最大限に発揮させましょう。

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