みなし残業の注意点とは?種類やメリット・デメリットをわかりやすく解説

残業のイメージ画像

企業の人事担当者の方は、みなし残業に関する正しい情報が気になるのではないでしょうか。主なみなし残業の種類は、「みなし労働時間制」と「固定残業代制」の二つです。それぞれの意味を理解しておくことが大切です。

また、「みなし残業の違反事例」や「みなし残業制度を導入するメリット・デメリット」も理解しておきたいポイントといえます。

今回は、みなし残業についてわかりやすく解説していきます。

みなし残業とは

みなし残業は「みなし労働時間制」と「固定残業代制」に分けて考えるとわかりやすいでしょう。まずはそれぞれについて解説します。

みなし労働時間制の概要

みなし労働時間制とは、あらかじめ1日の労働時間を決めたうえで、「働いたとみなした」時間の給与を支払う制度です。

たとえば会社と労働者側が「労働時間を1日8時間」で合意したケースで考えてみましょう。この場合、労働者の実際の労働時間が1日6時間でも8時間働いたとみなされます。8時間を超えて10時間働いた場合は、2時間がみなし残業です。

詳しく後述しますが、みなし労働時間制の種類は、事業場外労働のみなし労働制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の3つです。

固定残業代制とは

固定残業代制とは、実際の労働時間にかかわらず、毎月の給与に残業代を含める制度です。最初に設定した毎月の残業時間分がみなし残業となります。

みなし残業の仕組み

割増賃金を給与に含むことがみなし残業のポイントです。割増賃金には以下があります。

・1日8時間、週40時間を超える時間外労働

・夜10時から朝5時までの深夜労働

・休日出勤に伴う休日労働

ただし実際の残業時間がみなし残業時間を超えた場合は、その超えた分の残業代を支払わなければなりません。

みなし労働時間制の種類

みなし労働時間制には次の3種類があります。

事業場外労働制

労働基準法第38条の2に規定されている制度で、社外業務が多く、労働時間を把握することが難しい場合などに適用されます。主な職種として営業職、旅行添乗員、バスガイドなどがあります。

ただし社外労働でも、使用者から携帯電話などで随時指示を受けているなど、労働時間の算定が可能な場合は適用されません。

裁量労働制

裁量労働制には次の2種類があります。

・専門業務型裁量労働制

労働基準法第38条の3に規定されている制度で、労働者の裁量に任せる方が効率的な専門業務に適用されます。

主な職種としては、新商品や新技術の研究開発者、情報処理システムの分析や設計者、テレビなどのプロデューサーやディレクター、コピーライターや編集者、デザイナー、インテリアコーディネーター、弁護士、公認会計士、中小企業診断士などがあります。

企画業務型裁量労働制

労働基準法第38条の4に規定されている制度で、専門業務型裁量労働制のように、時間配分や仕事方法などを労働者に任せる方が効率的な業務に適用されます。

対象業務は経営企画、人事・労務、財務・経理、広報、生産、営業領域の調査・企画・計画・分析業務に限られます。

みなし労働時間の算定方法

事業場外労働のみなし労働制における労働時間の算定方法は、労働基準法の第4章(労働時間の算定)に適用されます。算定に必要な所定労働時間と通常必要時間について解説します。

1.所定労働時間

所定労働時間とは、みなし労働時間制で定める労働時間です。仕事の始業から終業までの時間のうち、休憩時間を除いた時間をいいます。

2.通常必要時間

通常必要時間とは、所定労働時間を超えて働いた場合の労働時間です。その業務を行うために通常必要とされる時間なので、通常必要時間といいます。

算定の具体例

算定方法の具体例を以下の2パターンに分けて解説します。

労働時間の全部を事業場外で労働した場合

労働時間の全てが事業外の場合の労働時間は以下です。

・所定労働時間≧通常必要時間 → 所定労働時間

・所定労働時間≦通常必要時間 → 通常必要時間

労働時間の一部を事業場外で労働した場合

労働時間の一部が事業外の場合の労働時間は以下です。

・所定労働時間≧通常必要時間+事業場内の労働時間 → 所定労働時間

・所定労働時間≦通常必要時間+事業場内の労働時間 → 通常必要時間+事業場内の労働時間

みなし労働時間制は違法にならない?

事業場外労働制や裁量労働制に該当しない場合も、みなし労働時間制は必ずしも違法ではありません。

労働基準法の要件を満たせば導入できる

労働基準法に規定された要件を満たすことで、みなし労働時間制を導入できます。一般的には「残業代が労働基準法の割増賃金(月60時間以下で25%以上など)であれば問題ない」と解釈されています。

みなし労働時間制導入の条件

みなし労働時間制導入の条件は下記です。

・基本給と残業代の区分けが明確であること(基本給および時間外労働、深夜労働、休日労働の残業代を明示する)

・労働者にみなし労働時間制の採用を示していること(就業規則や雇用契約書などで明示する)

残業代を別途支払うケース

実際の残業代がみなし残業制度の残業代を上回る場合、企業は上回る分の残業代を支払わなければなりません。逆に実際の残業が少なくても、みなし残業制度による残業代は支払う必要があります。

みなし残業制度を導入するメリット・デメリット

みなし残業制度を導入するメリットとデメリットを解説します。

メリット

みなし残業制度のメリットには以下があります。

・残業代の計算が楽になる

・業務効率化につながる

所定労働時間を超えなければ残業代は発生しないので、労働者個別の残業代計算は不要です。その結果、給与計算を行う総務部の負担を減らせるので、業務の効率化につながるでしょう。

労働者にとっても、残業代にかかわらず毎月安定した給与を得られることはメリットです。「定時に仕事を終えよう」という意識が定着すれば、労働者のモチベーションアップも考えられます。

デメリット

一方のデメリットには以下があります。

・労働者が残業しなくても残業代が発生する

・サービス残業が促進する可能性がある

労働者の労働時間がみなし残業時間を下回っても、一定の残業代を支払う必要があります。そのため、みなし残業制度の導入により、かえって人件費のコストがかさむリスクがあります。

また、労働者がみなし残業時間を超過した場合、企業は別途残業代を支払わなければなりませんが、残業代を申告しづらい状況が促進する可能性があるのもデメリットです。労働者からサービス残業による訴訟が起これば、企業のダメージは計り知れないでしょう。

みなし残業制度を導入する際の注意点

みなし残業制度を導入する際の注意点を解説します。

雇用契約書や就業規則などに必須事項を記載する

雇用契約書や就業規則などに以下を記載する必要があります。

・割増賃金の該当額の支払いについて

・みなし残業代を超えた分の支払いについて

・みなし残業代に該当する時間外割増賃金、深夜割増賃金、休日割増賃金について

従業員の労働時間を正しく管理する

労働者がみなし労働時間を超えて働けば割増賃金が必要なケースがあるので、会社は労働時間を正しく管理しなければなりません。

適切な金額設定を行う

基本給が最低賃金を下回らないように適切な金額設定を行います。

超過分の残業代発生に気をつける

超過分の残業代発生には注意が必要です。たとえば労働時間9時~18時(休憩1時間)の8時間労働、時給1,000円のケースで考えてみましょう。

この場合に21時まで残業を行えば、18時~21時までの3時間が時間外労働となり、残業代は1,000円×125%×3時間=3,750円となります。週5勤務で考えると3,750円×5=18,750円です。

みなし残業代を2万円支給していれば超過しませんが、支給額が1万円の場合は差額の8,750円を支払う必要があります。

給与明細に残業時間やみなし残業代を記載する

超過分の未払いを防ぐためにも、給与明細に残業時間数とみなし残業代の金額を区分して明確に記載します。区分されていない場合は違法の恐れがあるので注意しましょう。

36協定で定められている時間外労働の上限を超えないようにする

36協定の時間外労働は月45時間以内なので、45時間を超えないように時間外労働の上限を定めます。

求人広告に記載する際は表記に気をつける

求人広告に記載する場合は、みなし残業代の金額や設定する残業時間数、見なし残業代の計算方法などを明示しなければなりません。

労働者がみなし残業代を請求する方法

労働者がみなし残業代を請求する条件や方法を解説します。

残業代を請求する条件

実際の残業時間が、みなし残業代の残業時間を超えていれば請求できます。

たとえば月のみなし残業代が10時間と定められていた場合、実際の残業時間が20時間であれば、差額の10時間分の残業代が支払われることになります。

未払い残業代請求の手順

未払い残業代請求の手順として、まずは就業規則と給与明細、タイムカードなどを確認して、未払いがあるかどうかを判断します。

実際に未払いがあれば会社と交渉し、法的な訴えが必要な場合は弁護士に相談すると良いでしょう。

未払い残業代を請求する方法

未払い残業代を請求するその他の方法に労働基準監督署への通報があります。労働基準監督署から会社に警告があれば、会社は対応を迫られるでしょう。

みなし労働制は残業代に注意が必要!導入の際は確認を

みなし労働時間制を導入することで、会社としては残業代の計算が楽になり、労働者としては毎月安定した給与を得ることができます。

しかしみなし労働時間制を採用しても、実際の労働時間が超過した場合は、別途残業代が発生するケースがあるので注意しましょう。

その場合に残業代を支払わなければ違法の恐れがあり、労働者から残業代を請求される可能性もあります。みなし労働時間制導入の際は、記事で紹介した内容をぜひ参考にしてください。

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