セレンディピティとは?シンクロニティとの違いや具体例、高める方法など紹介

予期せずとも偶然に価値ある発見をする能力がセレンディピティです。新しいアイデアをひらめくことがビジネスの成功につながるケースも少なくないため、社員のセレンディピティ向上を促すことは有意義といえます。

本記事ではセレンディピティの概要やシンクロニシティとの違いから、セレンディピティの具体例、ビジネスでの実例、高める方法などについて解説します。

セレンディピティとは

セレンディピティとは、賢明さによって求めずとも予期せぬ発見ができる能力を意味する言葉です。18世紀イギリスの作家ホレス=ウォルポール作の寓話に由来する言葉であり、主に科学分野で使われてきました。ビジネスにおいてもよく使われるようになったのは20世紀後半以降です。

シンクロニシティとの違いとは

セレンディピティと似ている言葉にシンクロニシティ(共時性)があります。シンクロニシティは心理学者のユングが提唱した概念であり、因果関係のない2つの事象が類似性・近接性を持つ現象です。

両者の違いとは、シンクロニシティが偶然発生した現象そのものを指すことに対し、セレンディピティは偶然の発見を引き寄せる能力を指すという点です。

セレンディピティの具体例

セレンディピティの例として有名なエピソードの1つが「万有引力の法則」の発見です。アイザック・ニュートンはリンゴの実が木から落ちるところを目撃したことによって「万有引力の法則」をひらめいたといわれています。

また、アレクサンダー・フレミングによる「ペニシリンの発見」もセレンディピティの例です。細菌を培養するシャーレに青カビを生やしてしまった際、青カビの周辺で細菌が繁殖しないことにフレミングが気付いたことから、抗生物質ペニシリン抽出法の発見につながりました。

つまり、セレンディピティとは、偶然起きた現象から新しいものを見出し、活用できる能力といえます。現代のビジネスにおけるセレンディピティの事例として有名な例は、3M(スリーエム)が開発した付箋「ポストイット」やTwitter株式会社によるSNSサービス、Google社の起業などです。

「ポストイット」は接着力の弱い失敗作を「剥がしやすい接着剤にも需要がある」といった異なる視点によって活用につなげました。また、Twitterはもともと社内のメッセージ交換ツールだったものに人気が出たことから、改良してオープンSNSサービスとして実用化したものです。Google社は米国スタンフォード大学院生2人が偶然に出会ったことをきっかけとして生まれました。

その他のセレンディピティによるビジネス成功事例については後ほど、くわしく紹介します。

セレンディピティのメリット

セレンディピティの主なメリットとして、「新しい発想の喚起につながる」「新しい経営戦略につながる」「イノベーションにつながる」「マーケティングに活用できる」の4つがあります。それぞれのメリットについて以下で解説します。

新しい発想の喚起につながる

社員がセレンディピティを養えば、多角的に柔軟な視点でものごとを見て考える習慣が生まれます。新しい発想を喚起することによって、通常業務の改善やトラブル解決、新しい製品やサービスの開発などに際して、いままで予想もしなかった手法を生み出せる可能性が高まるでしょう。

また、いままで明確化できていなかった課題に気付くこともできるようになるため、業務や製品・サービスを改善する機会も増やせます。

新しい経営戦略につながる

経営戦略を立てる時は、ありとあらゆる状況を予測しなければなりませんが、普通の人間が予測できることは限られています。そこで、セレンディピティを発想に取り入れることが重要です。それまで思いつかなかった発想を生み出すことにより、画期的な新戦略を立てられるようになるかもしれません。

イノベーションにつながる

セレンディピティから生まれる発想の中には、従来の常識を根本から変えてしまう可能性を持つものもあります。セレンディピティによって社内はもちろん、業界や社会にまで大きな影響を与えるイノベーションにつなげていくことも可能です。

マーケティングに活用できる

予測不可能なことを求める消費者をターゲットにするマーケティング手法が「セレンディピティ消費」です。消費者に「この商品に出会えたことは偶然で二度とチャンスはない」と感じさせることで購買意欲を高めます。

セレンディピティのデメリット

セレンディピティの主なデメリットとは、「必ずしも新しい発見ができるとは限らない」「タイミングよく偶然が起きるとは限らない」「発見からアイデアにつなげる努力と環境が必要」「意図した通りの結果につながるとは限らない」の4つです。各デメリットについて以下で解説します。

必ずしも新しい発見ができるとは限らない

セレンディピティは偶然に発生した現象によって新しい有益なアイデアを得るものです。そのため、幸運な偶然が起きるかどうかに左右されてしまいます。

タイミングよく偶然が起きるとは限らない

偶然から新しい発想を生み出すスキルを備えていても、偶然の現象がタイミングよく発生するかどうかは保証されません。偶然が起きた時には既に競合が商品化してしまっているなど、セレンディピティがあっても活用できない可能性もあります。

発見をアイデアにつなげる努力と環境が必要

偶然の現象から革新的な発想を得られたとしても、それを実用化するには多くの検証が必要であり、人的・時間的・金銭的コストがかかります。

また、新しいアイデアをひらめいた社員がいたとしても会社がそれを支援できる環境になければ、単なる思い付きで終わってしまいます。

意図した通りの結果につながるとは限らない

セレンディピティは偶然に起きた現象に基づく発想のため、活用や実用化にむけてコストを費やしたとしても必ずしも意図した通りの結果を得られません。同じ現象を再現できず検証が困難であったり、実用化や実現をしてみても予測したほどの効果が得られなかったりする可能性もあります。

セレンディピティのビジネスにおける事例

ここでは、グッドイヤー(ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー/米国グッドイヤー)の事例を紹介します。

グッドイヤー:加硫法の発見と開発

1839年、アメリカ・オハイオ州の研究者チャールズ・グッドイヤーは天然ゴムの実用化に取り組んでいました。加工法を模索していた時、偶然によりストーブの上に落とした天然ゴムと硫黄の混合物が優れた特性を有することを発見し、加硫法の確立に至ったのです。

ゴム製品・タイヤメーカーとして知られる米国グッドイヤー社はチャールズ・グッドイヤーにちなんで社名が付けられています。加硫法の発見・開発がなければグッドイヤー社の創業も、ゴム製品メーカーという業界が生まれることもなかったことでしょう。

グッドイヤーの事例は、偶然の現象による発見が大規模なビジネスにつながることを象徴的に示すものといえます。

参考:糀谷信三著 連載高分子見どころ「第1回ゴムの加硫GoodyearとHancock」

セレンディピティを高める方法

セレンディピティを高める主な方法として、「他者との人間関係を積極的に持つ」「どんなことにも好奇心を持つ」「気付いたことは記録する習慣を持つ」「チャレンジ精神を支援する」の4つがあります。それぞれの方法について以下で解説します。

他者との人間関係を積極的に持つ

自分とは立場や考え方の異なる他者と関われば、自分や自社からはなかなか出てこない新しい視点に触れることができます。仕事やプライベートで多様な価値観を持つ多くの人と接し、さまざまな刺激を受けることがセレンディピティの向上を促すのです。

また、自分とは異なる価値観に対してもオープンマインドに接する心構えも大切です。会社としては、異業種交流会などを通じて社員がさまざまな人とつながりを持つことを推奨するとよいでしょう。

どんなことにも好奇心を持つ

一見、自分や自社の業務とは無関係なことであっても、なにごとにも好奇心を持って接することがセレンディピティを養います。好奇心の有無によって、体験から得られる気付きの度合いは大きく異なるためです。

また、好奇心に従って普段とは違う行動をしてみることからも視野を拡大することができます。

気付いたことは記録する習慣を持つ

新しい発見や発想、気付きやひらめきは瞬間的なものであるケースが多く、記録しておかなければ忘れてしまう可能性があります。どんな内容であっても、気付いたことはすぐに記録する習慣を持つことが、セレンディピティ獲得につながるのです。

記録方法は紙にメモしたり、スマートフォンのメモ帳やカメラ、ボイスメモなどを使用したり、社員が実践しやすい方法を選択させると良いでしょう。

チャレンジ精神を支援する

社員がセレンディピティを養った結果として新たな発見をしても、それを追求できる環境の職場でなければ、成果につなげることは不可能です。また、失敗を恐れず、失敗した場合も前向きに考えることも重要です。失敗から得られる気付きや経験を活用できるかどうかも会社の支援体制次第です。

気付いたことを社員一人ひとりが気軽に共有したり検証したりできる風通しの良い職場環境づくりを支援しましょう。部署や社歴などを問わず誰でも企画を提出できるシステム整備や会議でのブレーンストーミングなどを実践してみてはいかがでしょうか。

セレンディピティの視点で事業を見直そう

事業計画に新しい発想を取り入れるためには、偶然の現象から有用な発見ができる能力であるセレンディピティの視点が重要です。確実な成果をすぐに得られるとは限らないものの、セレンディピティは大きなイノベーションをもたらす可能性を秘めています。

日常業務の中でもセレンディピティを養うことは可能ですが、社員一人ひとりがセレンディピティを高めていけるよう、会社としてバックアップ体制を整えていく必要があります。

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