EVPとは?注目の理由やメリット、施策例と導入事例を解説

働き方が多様化する中、従業員に待遇面での付加価値を提供する「EVP」という施策が注目されています。

給与や福利厚生といった目に見えるものだけでなく、モチベーション工場や柔軟な働き方のように目に見えないものも付加価値に含まれるのが特徴です。

転職市場が活発化していることもあり、これまで従業員を選ぶ側だった会社が優秀な人材の獲得・定着に向けて、戦略的に働きかける時代が訪れたといっても過言ではありません。

今回は、EVPを導入する効果や注目される理由を、具体的な施策例や企業の導入事例とともに紹介します。

EVPとは?

EVPとは「Employee Value Proposition」の略語で、従業員が提供する労働などの成果に対する価値(見返り)を提案するプログラムです。

それぞれの単語は、以下の意味合いを持っています。

  • E(Employee)…従業員・労働者
  • V(Value)…価値・正当な見返り
  • P(Proposition)…提案・計画

労働の見返りには給与・賞与といった金銭的報酬だけでなく、福利厚生制度や企業独自の休暇・教育研修プログラムなどの非金銭的報酬も含まれます。

近年では、EVPを通じて育児・介護との両立をはじめとする多様な働き方を提言する企業もみられます。

EVPの提供によって、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上が期待できます。

また、求職者には待遇面の情報を企業から積極的に公開することで、他社との差別化を図れるでしょう。

EVPが注目される理由、時代背景

雇用の流動化が進む中、優秀な人材を確保する戦略としてEVPが注目されています。

脱・年功序列の流れを受け、優れた待遇や仕事へのやりがいを求めて転職するのが一般化しました。

高齢化による労働力不足を補うだけでなく、ビジネスでの競争力を高めて市場で生き残っていくために優秀な人材へのニーズが高まり、人材確保の競争が激化しています。

一方、既存従業員とのバランスを考えると、給与・賞与での好待遇の提示に限界があるのが実情です。

そのため、福利厚生をはじめとする制度面で職員の暮らしやキャリアアップをサポートしようという発想が生まれました。

加えて「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方も登場しており、従業員の多様性を受容しながら市場の変化に対応する成長戦略をとる企業もみられます。

これらの背景から、EVPを通じて人材活用に関する企業価値を提示する企業が増えているのです。

EVP導入の効果、メリット

EVPを導入することで、従業員のエンゲージメントが向上して人材・技術の外部流出を防ぐ効果を発揮します。

求職者に対して情報提供を行う採用ブランディングを通じて、企業価値が向上するメリットも生まれるでしょう。

EVPを導入することで得られるメリットを、具体的に確認してみましょう。

従業員エンゲージメントの向上

EVPを通じて企業の経営理念や行動指針を明確化することで、企業への愛着心を基盤として従業員と企業が一体となった成長を目指せます。

成長の過程で、従業員のモチベーションとエンゲージメントの両方を高められるのがメリットです。

高いパフォーマンスで仕事に取り組んで企業に貢献し、その結果が十分な価値として従業員に還元される相互作用も期待できます。

「企業に大切にされている」という安心感も相まって、長期勤続につながるわけです。

離職率の低下

会社の待遇や人間関係に満足することで長期勤続につながり、離職率を下げる効果も期待できます。

キャリアパスを明確化すると同時に資格取得や研修参加への支援を提供して、従業員が成長できる環境作りも有効です。

現場へのヒアリングやアンケートで意見を集め、従業員のニーズに合った施策を推進することで、従業員満足度(ES)も向上するでしょう。

離職率の低下は採用コストの節減と直結するため、節減できたコストをEVPの充実に振り向けることで、従業員満足度(ES)を更に高めるシナジー効果も発揮できます。

採用ブランディング

求人サイトや自社の採用情報からEVPを発信することで採用ブランディングにつながり、優秀な人材を確保しやすくなるメリットが生まれます。

自社ならではの魅力を豊富に伝えることで求職者の目に留まりやすくなり、応募・入社の決断材料も増えるでしょう。

具体的に「従業員になった後、どんな未来を実現できるか」をイメージできる情報の提供が大切です。

優秀な社員が入社することで新たな知見が加わり、既存社員の成長意識も高まります。

EVP 具体的な施策例

EVPでは従業員に対する待遇・福利厚生面をはじめ、多様な働き方に対応する柔軟な人事制度やキャリアアップ支援などさまざまな施策が行われるのが特徴です。

ダイバーシティ経営の一環として、女性の活躍を戦略的に促進する企業もみられます。

EVPで提案される具体的な施策について紹介します。

柔軟な働き方の実現

柔軟な働き方ができる制度を提供することで、ライフスタイルや住んでいる場所にとらわれずに優れた人材が活躍でき、企業価値と生産性向上につながります。

短時間勤務やフレックスタイム制度の導入で、時間に制約がある人も働きやすい環境を作ることができます。

副業人材を採用して、豊富なスキルや経験を自社に取り入れることも可能です。

在宅勤務やリモートワーク(テレワーク)制度があれば、育児・介護中の人や障害のある人が能力を発揮できる可能性が広がります。

通勤の負担を軽減できるだけでなく、企業のBCP対策としても有効です。

待遇・福利厚生の充実

待遇や福利厚生は従業員・求職者にとって大きな関心事です。

能力やコンピテンシー(優れた行動特性)の評価結果に応じて昇給チャンスを提供することで、目標達成へのモチベーションが高まります。

あわせて、福利厚生制度の中に従業員の暮らしを豊かにするサービスを導入すれば、従業員本人だけでなく家族の満足度にもつながるでしょう。

待遇面の充実を通じて、従業員の満足度を高めるだけでなく、待遇面を理由とした他社への流出も回避できます。

技術・知見の外部流失も避けられるため、企業が独自性を保ち続けるためにも有効な方法です。

キャリア支援の充実

キャリアアップを実現できる環境を整備することで、従業員の成長と組織の生産性向上を目指すために有効な施策です。

キャリアデザイン支援やキャリア面談の実施は、従業員自身の気付きと主体的なキャリア形成を促すのに役立ちます。

社内・社外で研修に参加できる機会を設けて、スキルアップを支援するのも効果的です。

従業員に資格取得支援制度を提供し、資格取得を実現した際には資格手当を支給するようにすると、頑張りが待遇に反映されたと実感でき、より高いレベルを目指す意欲も高まるでしょう。

女性活躍促進の実施

女性の戦力化・管理職登用への取り組みも、人材の多様化には有効な施策です。

性別にかかわらず平等な基準で採用・評価を行う姿勢をEVPとして表明することで、女性も能力を発揮できる企業だと印象づけることができます。

育児休業の取得促進は、育児退職によるキャリア分断を防ぐ効果をもたらします。

男性育休の推進も、女性が活躍するチャンスを提供するには効果的です。

一度退職して子育てにじっくり取り組みたいニーズもあることから、育児後の出戻り採用制度を設けるのも女性活躍促進の一つの形といえます。

EVP 企業事例

EVPでは報酬面の提案にとどまらず、多様な人材活用への取り組みや女性活躍の推進など職場環境・企業風土づくりのツールとしても機能しています。

EVPを通じて多様な人材が活躍できる環境づくりに取り組んでいる企業の事例を紹介します。

多様な人材に活躍してもらう(日本マクドナルド株式会社)

日本マクドナルド株式会社では「人」に最高の競争優位性があると考え、ビジネスの生命線であるクルー(店舗スタッフ)の満足度の向上に力を入れています。

主婦やシニアを含む多様な人材を受け入れ、業務を細分化して自分の強みを活かせる場を多数提供するなどの施策で、チーム力を発揮しているのが特徴です。

「フレキシビリティ(自由)」「ファミリー&フレンド(チームワーク)」「フューチャー(未来に通じるスキル)」の3点をEVPとして明確に訴求し、学生主体の職場から多様な人材が活躍できる場への変革を実現しています。

女性活躍促進制度(株式会社サイバーエージェント)

株式会社サイバーエージェントでは、社員が安心して大きな挑戦を続けられる環境づくりをEVPと位置づけ、多彩な福利厚生制度を提供しています。

女性活躍支援制度をパッケージ化した「macalon」も、その一つです。

周りに知られず取得できる妊活休暇をはじめ、認可外保育園料金の補助・子どもの看護時の在宅勤務制度など、出産・育児と仕事の両立を前提に設計されています。

部署ごとに年2回実施する「全社棚卸会議」を通じて全社的に業務量を圧縮する取り組みを行うなど、生産性向上とワークライフバランスの両立を意識しているのが特徴です。

従業員を「個」として捉える(ソニー株式会社)

ソニー株式会社では人材を最重要ステークホルダーと考え、「Attract(人材獲得)」「Develop(人材育成)」「Engage(社員エンゲージメント)」とした人材戦略が推進されています。

社員一人ひとり(個)の挑戦心と成長意欲を尊重して、持続的な価値創造につなげているのが特徴です。

ダイバーシティ&インクルージョンも経営課題の一つで、障害・LGBTなどの多様性を相互に尊重・受容して働ける仕組みも構築されています。

ライフイベントに合わせた働き方も選択でき、長期にわたって働き続けられる環境整備も継続されています。

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