マトリクス組織とは?メリット・デメリットや具体的な事例など踏まえわかりやすく解説

近年問題となっている人手不足。採用をしたくても良い人材が入らない、そもそも採用をかけても応募が少ないといった問題に頭を抱えている経営者や人事担当者も多いのではないでしょうか。

そんな人手不足問題の解消できる一つの方法として、「マトリクス組織」が注目を集めています。マトリクス組織とは一体どのような組織を指すのでしょうか。

この記事では、マトリクス組織のメリットやデメリット、具体例などをあげて詳しく説明していきます。

マトリクス組織とは

マトリクス組織とは、マトリクス図のように職能別、事業部別、プロジェクト別、地域別、製品別など複数の軸で構成され、1人の社員が複数のミッションに取り組む形態の組織のことを指します。

言い換えれば、横軸と縦軸の双方の指揮命令系統を設け、1人の社員が二元管理の元業務を遂行する組織ともいえます。

マトリクス組織のはじまりは、1960 年代の米国航空宇宙産業と言われています。

当時、政府からコストと納期に責任を持つプロジェクト管理者を配置するように求められ、マトリクス組織がはじめて導入されたようです。

米国企業では、職能部門制組織形成つまり「経理」や「営業」といった、部門ごとの組織編成を採用されていましたが、航空宇宙産業での導入をきっかけに複数の目標を並行できるマトリクス組織が世界へと普及していきました。

そして、マトリクス組織の成果に多くの企業が注目し、導入すればいかなる環境でも対応できるようになると信じられ、利点だけがどんどんフォーカスされていきます。その結果、1970年代から1980年代にはこぞってマトリクス組織形成を取り入れる企業が増え大流行しました。

しかし、導入するも失敗する企業があとを絶ちませんでした。理由は、役割の配置や両軸のパワーバランスに配慮せず、管理能力が不十分であったにも関わらず無計画にマトリクス組織を導入したことが原因と言われています。

実際のマトリクス組織とは

実際のマトリクス組織とはどのように編成されているのでしょうか。製造部や営業部のマトリクス組織を例に紹介していきます。

製造部や営業部においてのマトリクス組織編成は、職能部門制組織と事業部制組織を組み合わせたマトリクス組織編成が取られる場合が多くあります。

職能部門制組織は、多くの企業が導入している組織編成で、営業部・人事部・開発部など部門に分かれ指揮系統は部門内に一元化されています。

事業部制組織は、取扱い製品や担当地域ごと編成され、各事業部内に、営業や開発といった機能が配置されており、各事業部が自己完結できるような組織形態をとっています。

製造部や営業部のマトリクス組織では、一つの軸に職能部門つまり設計・開発・調達・物流などを職能軸として設定します。そしてもう一方の軸に事業部つまり製品名やプロジェクトなどの軸を設定し、それぞれの部門の人がそれぞれ製品やプロジェクトでも役割を果たします。

その際に、職能軸では部門内で、適材人材のアサインや管理をする各製品のプロジェクトリーダーを配置し、製品軸では進捗の管理を行うなどの、部門間をコーディネートする製品担当のプロジェクトリーダーを立てます。

各部門でのプロジェクトリーダー、製品・プロジェクト別でのプロジェクトリーダーといった2人のリーダーを有する体制で事業が進むようになるのです。

マトリクス組織のメリット・デメリット

 マトリクス組織の編成を成功させるにはメリットやデメリットを把握することが鍵となります。実際にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリット1:業務効率が向上

マトリクス組織では、部署などの垣根を超えて、周りとコミュニケーションを取り調整しながら業務を行います。そのため、業務が円滑に進むだけでなく、プロジェクトの全体像も見えるようになり、全員が同じ目標を持てるようになります。

そして、職能部門と事業部門双方に相乗効果が生まれ、それぞれの部門での仕事遂行が両部門で円滑に仕事をするためのスキルとなり、業務効率も向上していきます。

メリット2:品質の向上

たくさんの職能にまたがって業務を行うため、視野が広がり、たくさんの角度から見た見解も加わるため、社員の能力が最大限発揮させる事に繋がります。

また、同じ職務同士では切磋琢磨できるのでより高い技術力を磨くことができます。このため、業務の品質向上に繋がるだけでなく社員育成効果も期待できるのです。

メリット3:トップマネジメントの負担軽減

マトリクス組織では、ある程度の決定権を指揮命令者に与えるため、トップマネジメントの負担が軽減される利点があります。

そのため、管理側も効率の良い業務を行えるだけでなく、指揮命令者が現場をわかっている人という点で、意思疎通が図りやすくトップマネジメントとのコミュニケーション上でのストレスの軽減といったメンタル的な負担も軽減できるのです。

デメリット1:パワーバランスの維持

マトリクス組織の最大のメリットでありデメリットでもあるのが命令系統の二元化。双方の指揮命令機能があるため、双方のパワーバランスを上手くとることが成功の鍵ともいえるでしょう。

このパワーバランスを上手く保たなければ、双方の対立を生む危険性がありますし、担当者が何を優先的に取り組むべきか把握できず、業務に混乱をきたす場合があります。

デメリット2:複雑化しやすい

指揮命令が2つあるということは、意思決定に統一性がなければ、どんどん複雑化し業務上の大きなトラブルを引き起こす原因にもなってしまいます。意思決定をする指揮命令者同士で意思疎通を行う必要があります。

デメリット3:ストレスがかかりやすい

指揮命令者が2名いるということは、少なくとも気を使う相手が2倍になるため場合によってはストレスを抱えやすくなります。

指揮命令者同士が対立関係にあればさらにストレスはたまりやすくなり体調不良の原因にもなります。

マトリクス組織の成功例

マトリクス組織の成功例として、スイスの電機機器の多国籍企業は ABB(アセア・ブラウン・ボベリ)と、村田製作所のケースを紹介します。

ABBのグローバル事業におけるマトリクス組織事例

ABBは、世界を股に掛ける大企業であるため、マネジメントにおいても各国に合う適応力が必要となり、マネージャーにはグローバルな視点とローカルな視点の両方が必要となっていました。

そのため、地域マネージャーと事業部門マネージャーを配置するマトリクス組織を編成し、適応力を持ちつつ効率化を高めることに成功しました。

村田製作所の製造工程等におけるマトリクス組織事例

もう1つの成功例は、セラミックス・コンデンサーなどの電子部品を製造する村田製作所です。

「コンデンサー」「圧電部品」などの製品別の軸と、「調合」「成形」など製造工程の軸となるマトリクス組織編成を行いました。

さらに、本社の管理機能スタッフがそれぞれのグループ横断で間接業務を行う機能の付け加え、マトリクス組織を応用した「3次元マトリックス組織」を編成しました。

製造工程で重複する作業をカットしコスト削減、効率化を上げると共に、間接業務を一本化することで無駄を排除することに成功したのです。

マトリクス組織の失敗例

前にも述べたように、マトリクス組織を導入するものの、失敗する企業は後を立ちません。多くの場合では、指揮命令者同士のパワーバランスを配慮することができず、対立を生んでしまったことが失敗の原因となっています。

その要因の一つとして、組織文化やサポートシステムを一新せず、部門独自のやり方を通した上で、マトリクス組織を編成してしまったことが挙げられます。

同じ企業にある部門といえども、各部門で組織文化は異なってきます。その文化を踏襲した上での編成は、対立が生まれてしまうことは容易に想像できるでしょう。

また、マトリクス組織では、指揮命令が2方向になるため、指示に統一性がないとただ混乱を生むだけになります。

マトリクス組織は、ただ導入すれば良いというわけではありません。従来のシンプルな組織より複雑になるため、問題も生じやすくその問題をクリアにしていくことが必要となります。

多くの失敗例はその問題を解消できずに組織編成を行ってしまったことに原因があるでしょう。

マトリクス組織のまとめ

マトリクス組織では、業務で得た知識で技術が蓄積されていくことで社員の能力も成熟していき、人材開発観点でも有効で、会社としても新しい人材を確保しなくともよいなど、高いメリットがあることがわかりました。

しかし、マトリクス組織編成を成功させるには、社員の管理能力やスキルなど細かく把握した上で、編成しなければ失敗例の二の舞になりかねません。さらに、マトリクス組織に合う新たな人事評価制度の導入も必要となってきます。

あしたのチームでは多くの企業様の組織づくりを支援させて頂いてきたノウハウにより、様々な組織体制における人事評価制度もご相談いただけます。組織編成をされる際には、同時に人事評価制度の見直しも検討してみてはいかがでしょうか。

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