人事戦略の立て方や課題、フレームワークを使うメリットについて解説

世の中の変化が目まぐるしく、企業が慢性的な人手不足となっている昨今では、人材の適材配置を実現してパフォーマンスを最大限に高める「人事戦略」の考え方が広まっています。

人事戦略の実現には、人事担当が経営に関わる存在として認知されるとともに、経営ビジョンに直結した人材活用の手腕を発揮する必要があります。

この記事では、人事戦略の概要や重要性、企業が抱えている課題、人材戦略の立て方やフレームワークを活用した分析方法について解説します

人事戦略とは

人事戦略とは、一般的な人事とどのような違いがあるのでしょうか。人事戦略の概要を解説します。

人事戦略の概要

人事戦略という概念は、1990年代にミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授によって、かつて切り離されていた経営戦略と人事を合致させる目的で提唱されました。

多岐にわたる人事業務の中でも、企業の事業戦略や経営ビジョンを理解し、その達成のために必要な人材を確保・育成・配置することが人事戦略の役割です。

元より、人事の意義は経営目標の達成に必要な人材の適材配置や開発を行うことですので、経営戦略と切って離せないものです。経営戦略から求められる人材を分析し、従業員全員が目標達成に即した成果を発揮できるようにすることが人事戦略の目的です。

人事戦略が注目される背景

日本の多くの企業では、従来の年功序列の終身雇用制度が一般的であり、現在でもその風潮は根強く残っています。

この時の人事はこの終身雇用制度をうまく運用していくことがメイン業務であり、人事が経営戦略を理解する必要があまりありませんでした。

しかし、ITによる技術革新やグローバル化によってビジネスシーンが目まぐるしく変化するようになったこと、少子高齢化により人材確保が難しくなったことを背景に、終身雇用制度の維持が困難になってきています。

少ない人材でも生産性を高めて経営のスピード感に対応することが必要となり、人事戦略の重要性が再認識されるようになりました。

人事戦略の課題

企業を取り巻く大きな変化に対応するため必要不可欠である人事戦略ですが、多くの企業が人事に課題を抱えています。人事戦略における代表的な課題を紹介します。

経営者の認識不足

経営側が人事戦略の重要性を認識しておらず、人事を経営におけるパートナーとして認めていないことも、大きな課題のひとつです。

経営目標の達成は従業員の努力によってなされるものであり、それは人事によって実現されます。人事は経営者の右腕ともいわれる時代ですが、人材をコストと認識している経営者は少なくありません。

人事をスペシャリストとして経営とセットで考えられるかどうかが、日本企業の大きな課題となっています。

人材が足りない

慢性的な採用難が続く昨今では、人事戦略を立てようにも人手が足りない、新しい人材が入ってこないという悩みを抱える企業も数多く見受けられます。

日本の労働人口は2008年から2018年の10年間で670万人減少したとされており、今後も少子高齢化がますます加速していく見通しであることから、優秀で人材を確保することはさらに難しくなると予想されます。

企業には、若年層にとって魅力的な職場作りや、ワークライフバランスの実現により休職・退職者を減少させる取り組みが求められています。

人事自体の人手が足りない

人手不足は、「そもそも人事の人手が足りず、戦略立案まで手が回らない」という事態も引き起こしています。

人事が担当している業務は人材育成や採用といった経営に直結する業務以外にも、労務管理や給与計算、税制や法改正への対応など、多岐にわたります。大企業であればこれらの業務は細分化されて割り振られていますが、中小企業では少ない人事担当者が一手に担っている例も多く見られます。

実業務をこなすことだけで精いっぱいで、新たな課題に対応できないという声も多く聞こえてきます。

人事戦略の立て方

企業にとって最適な人事戦略は、その企業の業種や人材の特性などによって様々です。

そのため、まずは企業の現状を分析することからスタートします。具体的な人事戦略の立て方を解説していきます。

企業理念や経営ビジョンの確認

人事戦略は、経営戦略を基に策定されます。まずは、あらためて企業理念や経営ビジョン、現在の経営状況を確認することから始めます。

達成したい目標と現状の課題や改善点をはっきりさせないと、どんな能力が足りていないのか把握することができません。まずは経営の実情を明確にすることで、採用から育成、人材配置までの人材戦略に一貫性を持たせます。

「求める人材」の設定

経営の目標と改善点を確認したら、そこから「求める人物像」を設定します。経営目標を達成するためには、従業員にどんな働きを期待するのか、そのためにどんな技能や経験が必要か、どんなマインドを持っていて欲しいか、そのような人材がどのくらい必要か決定していきます。

注意として、従業員数は不足しても過剰でも経営スピードに影響を及ぼします。人数を考えるときは、繁忙期や閑散期を基準にせず、長期的なデータを基に決定するようにしてください。

現行制度の見直し

併せて、人事制度を含めた現行の社内制度の見直しを行います。現状で人事に問題が発生しているということは、制度にも何か問題があるということです。

制度上の問題や欠点がそのままの状態で新しい戦略を立てても、うまく機能しない可能性があります。

例えば、採用する未経験者の数と育成予算は見合っているか、従来の年功序列の人事制度は社内の実情とあっているか、採用しようとしている人材の募集要項は業界内で適切な賃金ポジションか、といったことが考えられます。

具体的なプロセスの設計

求める人材と現状の改善点が明らかになったら、いよいよ具体的な改革プロセスを立てていきます。改善点に合わせて、採用方法の再検討、教育プログラムの改定、配置転換などを行います。

また、計画は最終目標だけでなく、細かいマイルストーンを設定し、途中で進捗状態の見直しを行うようにすることが大切です。理想を膨らませすぎて実現ハードルの高い計画を立てず、現在の人的リソースや予算で実現可能かどうかよく考えてください。

人事戦略にはフレームワークが有効

人事戦略を立てる上で行う課題のピックアップや原因の分析には、フレームワークを活用することが有効です。

具体的な人事戦略のプロセスを作成するまでには、現状の経営や人事制度における問題や改善点を全て洗い出し、1つ1つの原因を解明することで、根本にある課題をとらえていきます。

フレームワークを活用すると、それぞれの原因の関係性を把握し、分析状況を見極めやすくなります。

それでは、人事戦略に活用しやすい代表的なフレームワークを解説します。

SWOT

SWOT分析とは、「Strength(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の頭文字をとったもので、それぞれのマトリクスを組みあわせて、多面的に分析します。

例えば、強みは「IT技能が高い」、弱みは「人手不足」だとすると、機会は「少数精鋭で低コストで利益を出せる」、脅威は「1人の負担が大きく離職率があがる」という形です。強みが必ずしもポジティブな結果を生み出すとは限らず、客観的な分析ができます。

TOWNS

適材適所の人材配置を実現したい場合には、TOWNS分析が役に立ちます。SWOT分析と同様に、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの軸で分析していく方法ですが、より具体的な解決策を導き出すことができます。

先ほどと同様に「IT技術の高い人材が豊富」という強みを考えてみると、高度な製品づくりという機会を創出でき、人材流出という脅威に対しては、労働環境の改善という改善策で対応できます。このように、脅威の解消にスポットを当てて分析を進めていきます。

プロダクトポートフォリオマネジメント

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)とは、もともと経営資源の投資を考えるためのフレームワークで、市場シェアと市場成長率を軸に、「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」に分類します。

人材を会社の経営資源と置き換えて考えると、「現分野では優秀だが、新しい分野での成長は期待できない」「ポテンシャルはあり、今後の伸びしろに期待できる」「知識も経験もあるはずだが、成果が出せていない」といった人材分析を行うことができます。

人事戦略を見直す際は人事評価制度の整備もマスト

従来主流だった年功序列型の人事制度を見直す企業が増え、変動の激しい情勢にも対応できるフレキシブルな人事制度が必要とされています。人事担当者には、単に業務をこなすだけでない、経営の根幹にかかわる部署として、経営戦略に直結する戦略的な人事が求められます。

人材戦略の策定には、まず人事評価制度も含めた現行の制度を見直し、適切な人材活用の実現を目指してください。

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