多くの企業では、管理職候補や現任者が「部下の動かし方がわからない」「評価や面談の型が定まらない」「研修後の実践が続かない」などの課題を抱えています。
管理職にとって、現場で成果を出すには、評価制度やコミュニケーションの仕組みを整えることが重要な役割の1つです。
そこで本記事では、管理職研修の全体像と設計のポイントを解説します。記事の後半では、研修後に人事評価をスムーズに運用する方法や、専門支援の活用も紹介しています。
管理職研修後の人事評価制度を短期間で整えたい方は、「あしたのチーム」の支援をぜひ活用してください。
目次
管理職研修とは?

管理職研修は、組織運営を担う立場に求められる知識と技能を体系的に学ぶ教育プログラムです。
扱う領域は広く、リーダーシップ、目標設定、面談、評価、法令遵守、労務対応、戦略思考、数値管理までを含みます。
成長段階や役割に合わせて内容を変える設計が重要です。新任には基礎、課長層には部門運営、部長層には戦略と人材最適化、と段階を分けると定着が進みます。
管理職研修の狙いは、現場で成果を出す管理職を増やし、組織全体の再現性を高める点にあります。
管理職研修を実施する4つの目的

研修の狙いを先に共有すると、内容選定と効果測定がぶれません。以下の4点を軸に設計し、現場の実務へ接続させましょう。
- リーダーシップスキルの習得
- マネジメントに関する知識の習得
- コンプライアンス意識の醸成
- 経営者候補の育成や選定
上の順で詳しく説明し、現場で使える形に落とし込みます。
リーダーシップスキルの習得
管理職研修は、部下を率い、組織の方向性を示すリーダーシップを養うことを目的としています。単に指示を出すのではなく、ビジョンを示し、モチベーションを引き出すマインドセットやスキルが求められます。
研修の方法は1つに固定せず、状況で使い分けることも大切です。リーダーシップスキルを身につけることで、変化の激しい環境下でも迅速な意思決定が可能になります。
関連記事:リーダーシップとは?種類や目的、リーダーに必要な能力とは
マネジメントに関する知識の習得
管理職は、プレイヤーではなく組織運営の担い手です。研修では、人材配置や業務分担、数値に基づく業績管理、部下の育成や評価などのマネジメントの基本を学びます。
研修では、目標を数で置く練習、進捗指標の選び方、課題の分解、次のプランの決め方を、題材を使って繰り返します。報告・連絡・相談の流れや、任せた後の支援も具体化します。
マネジメントの基本を学ぶことで、組織全体の成果を引き上げることができます。
マネジメントの詳細はこちらのページで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:マネジメントとは?ドラッカーの理論や能力を向上させる方法
コンプライアンス意識の醸成
管理職研修では、法令や社内規程の理解を深め、想定されるリスクを前もって減らす力を養います。ハラスメント防止、労働時間の管理、個人情報の扱い、トラブル発生の対応まで、研修で意識づけを行うことが大切です。
役割ごとの責任範囲を言語化し、迷った場面の相談経路と記録方法まで整えると、組織の信頼が守られます。
さらに、研修後は月次でケースを持ち寄り、再発防止策を更新します。管理職自身がコンプライアンスの意識を高めることで、組織全体の信頼性が担保されます。
コンプライアンスの詳細はこちらのページで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:コンプライアンスとは?適用範囲や違反事例、対策をわかりやすく紹介
経営者候補の育成や選定
次世代の経営者候補を早く見極め、経験の幅を計画的に広げる狙いがあります。研修では、部門横断の課題に挑む機会、数値責任を持つ経験、意思決定の振り返りを重ね、視座を上げます。
行動基準を公開し、要件に合う人材へ段階的に任せる運用へ切り替えると、周囲の納得も生まれます。
選抜と育成が別々に進むと摩擦が増えるため、評価、配置、育成を一体で設計します。最終的に、代行可能な人が複数名存在する状態まで高めると、組織の耐久性が増します。
管理職研修の種類

研修は、立場と課題の違いに合わせて段階を分けることが大切です。管理職研修を以下の3つに分類して説明します。
- 新任管理職研修|組織運営とマネジメントの基礎知識の習得
- 中間管理職研修|目標設定や人事評価などのマネジメントスキルの習得
- 上級管理職研修|経営戦略の知識や組織を統率するスキルの習得
新任管理職研修|組織運営とマネジメントの基礎知識の習得
主任やリーダーから昇任した直後は、役割の転換がポイントです。権限の使い方、成果で語る姿勢、任せ方、面談の基本、チーム目標の置き方などの習得を研修で目指します。
新任管理職は「自分で動く」から「人を動かす」へ意識を切り替える場面が続きます。プレイヤーから管理職への意識転換を促し、組織運営や人材育成の基本の習得が、研修内容の中心です。
中間管理職研修|目標設定や人事評価などのマネジメントスキルの習得
課長や部長クラスを対象に、目標設定、進捗管理、人事評価、部下育成などを実務ベースで学びます。
評価を人事イベントで終わらせず、日常の成長対話へつなげる視点を持てば、従業員が成長し、結果が出やすいです。数字だけでなく、プロセスの記録を残し、月次で見直す流れを染み込ませると、再現性が高まります。
自社の方針を現場に浸透させ、成果を上げるための実践的スキルを、中間管理職研修では磨きます。
上級管理職研修|経営戦略の知識や組織を統率するスキルの習得
上級管理職研修では、役員候補や上級管理職を対象に、経営戦略や財務分析、組織統率のスキルを習得します。
研修では、市場分析、ポートフォリオの組み替え、要員計画、次世代リーダーの育成計画を題材に、意思決定の質を磨きます。
部門最適と全体最適のバランスを意識し、短期の成果と中長期の強みを両立させます。上位方針の翻訳や、現場の声の吸い上げまで含め、組織の推進力を高めます。
管理職研修の2つの手法

実施手法は大きく2つに分かれます。
- eラーニング|オンラインで受講できる研修
- 集合研修|受講者を集めて実施する研修
各手法を詳しくみていきましょう。
eラーニング|オンラインで受講できる研修
eラーニングは、オンラインで受講できる研修です。インターネット環境があればどこでも学習可能で、動画やオンラインテストを通じ効率的に知識を習得できます。
事前学習で事前知識を補いつつ、ライブ講義で疑問を解き、業務で小さく試す流れに組み込む流れで、理解を深められます。
反復学習に適し、基礎知識の定着に有効ですが、受動的学習に偏りやすい点に注意が必要です。
集合研修|受講者を集めて実施する研修
対面形式で行う集合研修は、グループワークやディスカッションを通じて学びを深める手法です。
対面ならではの強みは、演習での気付きと社内ネットワークの形成です。ロールプレイやケース討議で、面談や評価の場面を実感に近い形で練習できます。
講師との直接対話や他部署との交流により、実務に直結する理解が得られる一方、会場手配やコスト面の負担が伴います。
管理職研修を効果的に行うための5つのポイント

研修の狙いを現場で実装するには、設計と運用を段階的に整える必要があります。管理職研修を効果的に行うために、以下のポイントを押さえてください。
- 育成対象を明確に設定する
- 研修目的を事前に共有する
- アクティブラーニングを取り入れる
- 研修後のフォロー体制を充実させる
- 定期的に研修内容を見直す
各ポイントを詳しく解説します。
育成対象を明確に設定する
対象の定義があいまいだと、内容も評価もぶれます。新任、課長層、部長層など段階を分け、役割と課題に合わせて学ぶ範囲を切り分けましょう。
新任は任せ方と面談の基礎、課長層は評価と運営、部長層は戦略と人材最適化を中心に据える設計が有効です。到達目安を数値で設定すると一段と締まります。
例として、面談実施率、一次評価の期日順守、横連携の提案件数などを指標にすると、研修と人材育成計画の連動が進みます。対象が明確だと、現場で使いやすい流れになります。
研修目的を事前に共有する
研修の目的が見えない状態では、受講姿勢が受け身になりやすいです。狙い、扱うテーマ、成果の測り方、現場への移し方を資料にまとめ、受講者との認識の統一を図りましょう。
受講前に困りごとを集めるアンケートを行い、課題別に教材へ反映すると自分ごとになりやすいです。研修後の現場実践につなげる意識を高めるうえでも、研修目的の事前周知は重要です。
アクティブラーニングを取り入れる
アクティブラーニングを取り入れることで、受講者の能動的な研修への参加が期待できます。アクティブラーニングは、受講者自身が参加して、思考や行動によって知識の定着やスキルアップを促す方法です。
面談ロールプレイ、評価コメントの添削、会議設計の演習など、業務に近い題材で手を動かす研修内容がおすすめです。
研修後のフォロー体制を充実させる
研修後のフォロー体制の充実が、研修の効果を高め、定着させるために大切です。フォローアップを早めに設定し、研修での学びを実践できているか、改善点の確認やアドバイスが重要です。
社内のメンター制度やピアレビューにつなげ、相談の窓口を一本化すると、行動の継続が進みます。研修を実施するだけでなく、知識や技能が定着しているか、必ず確認しましょう。
フォローアップの詳細はこちらのページで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:フォローアップとは?目的・実施方法から注意点まで解説
定期的に研修内容を見直す
環境は変わり続けるため、研修内容も時代の変化にあわせてアップデートしなければなりません。受講者アンケート、上長の所感、業績の変化を手掛かりに、年次で教材と手法を更新しましょう。法改正や市場動向、新しい働き方に合わせて、古い事例は置き換えてください。
学習ログや理解テスト、現場での適用事例数を指標にすると、改善の起点が見つかります。見直し会は四半期ごとに短時間で実施し、次の期へ反映します。
更新を前提に運用する姿勢が、実効性の高い管理職研修を支えます。
管理職への適切なフォローやモチベーション向上には評価制度の構築が重要

管理職研修は、マインドセットや知識・スキルを磨く有効な手段ですが、研修だけでは成果の定着は難しい状況です。
その後のフォローと公正な評価制度があってこそ、学んだ行動が現場で生き、モチベーション維持につながります。
評価制度の導入で得られる効果は次のとおりです。
- 管理職の業務や成果を正当に評価できる
- 成長意欲や挑戦への動機づけが高まる
- フィードバックを通じて改善サイクルが回る
特に、評価とフィードバックを組み合わせることで、管理職の意欲が高まり、組織全体のパフォーマンス向上につながる点は大きなメリットです。研修と評価制度を両輪での設計が、管理職育成を成功させるために重要です。
人事評価制度の詳細はこちらのページで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:人事評価制度とは組織内の評価制度!導入方法や評価シートの書き方・例文も紹介
管理職研修後の人事評価の構築は「あしたのチーム」がおすすめ

管理職研修は、役職に必要な力を養い、組織の推進力を高めるために欠かせない取り組みです。研修内容を現場で活かすには、面談の頻度や評価観点をそろえ、定期的なレビューへつなげる仕組みが重要です。
知識やスキルの定着、意欲の維持を実現するには、評価制度とフォロー体制を組み合わせることがポイントになります。
そこで「あしたの人事無料相談窓口」では、管理職研修後の人事評価の設計や運用方法を、専門家が無料でアドバイスしています。目標設定の手順や面談記録のひな形、評価ルールの整備までサポートを受けられるため、自社に合った制度を効率的に構築できます。
研修効果を高めたい方は、ぜひご相談ください。
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