世界最大級のHRテック・イベントから基調講演の事例をご紹介

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(写真=Wright Studio/Shutterstock.com)

世界最大級といわれるHRテック・イベント「HR Technology Conference & Exposition 2017」が2017年10月10日から4日間、アメリカ・ラスベガスで開催されました。今年20回目を迎え、HRテックに関わる世界を代表する企業からスタートアップ企業まで、数百社がブースを出展。多くの事例を踏まえたセミナーやセッションも行われました。

その中から、Googleの人事担当トップである上級副社長だったラズロ・ボック氏の基調講演「誰もが間違えるイノベーションの起こし方と解決法」から要点を紹介します。

たくさんの企業が間違えるイノベーションの起こし方

多くのイノベーション(技術革新)で最先端を走る、世界40ヵ国以上のGoogleオフィスで働く約5万人の人事最高責任者を務めたボック氏。イノベーションは経営戦略やプロジェクトから生まれるものではなく、自然発生的なものだと指摘しています。

ボック氏は主体的に考え、動ける環境づくりの重要性を語り、環境づくりには日々の細かな工夫や改善が大切と強調しました。

数多くの企業が間違えがちで、イノベーションを生むための環境づくりについて、成功への道筋は「6つの簡単なステップ」に集約できるとボック氏。この6ステップは次の通りです。

重要な任務を持つ人々を繋ぐ

伝統的な手法だった「売上目標」などを掲げるより、従業員に任務を掲げて共感させる方が効果的。その事例として、ベストセラーの「Option B」の共著者でトランプ米大統領も卒業したペンシルベニア大学ウォートン校のアダム・グラント教授の研究を紹介しました。

この事例では、奨学金の募金を受け付けるコールセンターで、実際に支給される学生が来てスピーチしたことで募金額が3倍にアップしたのでした。数値目標を単純に掲げるより、どんな課題を誰のために解決するために働くのかを伝え、共感させることが効果的なのです。

人々の内面的なモチベーションを触発する

ボーナスという外的なものより、人々の内面に働きかける方が重要と指摘します。というのも、答えや目標を与えられるより、自ら面白いと思う疑問に対しては自主的に解決策を考えようとするからです。

Googleではファウンダー・アワードという、素晴らしい発明や問題を打開した社員を表彰し、イノベーションの促進を図ったそうです。ただ、結果的に社員の約半数に相当するエンジニア以外の営業やマーケティング担当の社員は該当しないという問題が起きてしまいました。

さらに、中心となるエンジニアも一度受賞すると、再びプロジェクトに挑戦するモチベーションをダウンさせてしまうのでした。そこから、イノベーションに継続的に取り組むには、内面的なモチベーションを触発し、自ら見つける方がパフォーマンスが高いことが明らかになっています。

恐怖心を無くして安心感を高める

失敗への恐怖心がモチベーションへの最大の阻害要因なので、恐怖心を減らすことが重要だと強調。実例として、ハーバードビジネススクールの卒業生は、卒業して10年後に伸び悩むという研究結果を紹介しました。

優秀な人材ほど、過去に大きな挫折や失敗を経験してないことが多く、現実の失敗に直面した時に対処できないケースが結構あるということです。そこで、Googleのような多くの優秀な人材を採用している企業なので、社員が失敗を恐れないような環境を整える必要があったそうです。

ただし、ボック氏は、「失敗を許し、そこから学ぶことが重要」と語っています。現実に、Googleの機密施設で次世代の技術開発を担うプロジェクトGoogle X(現、X)では4半期ごとに「最大の失敗」をしたマネジャーを表彰し、併行して定期的に過去に犯した失敗の反省まで実施したそうです。

野心的なプロジェクトと成功確率が高いプロジェクトを一覧化

イノベーションという言葉からイメージできるのは野心的なビッグプロジェクトですが、これだけに集中すると小さくても確実性が高い重要なプロジェクトを見逃しがち。地味でも重要な業務に励む社員にとっては、モチベーションを失わせる結果となります。

これを防ぐためには、あらゆる社内のプロジェクトに満遍なく関心を持ち、全社挙げてのミーティングでも触れることで、きちんと注目されているという自信を担当者に与えることが大切だと述べています。

また、社員が社外より社内に関心を持ち、最終的には組織間で敵対したことで悲惨な結果を招いた企業もありました。これを踏まえて、Googleでは事業部門は設けないことを企業の方針にしたそうです。

幸運を祈り偶発的な衝突を許す

ボック氏が最後に挙げたのは、偶然の発見や出会い、偶発的な衝突が起きるような環境をつくる重要性です。ルーマニア難民としてアメリカ生活をスタートしたボック氏ですが、ラッキーな出会いの連続だったそうです。こういう幸運は偶発的な衝突が起きる機会を許している時の方が頻繁に起きるものだ、と言います。

Googleのオフィスは現実に、スタンフォード大学を見本に異なる業務に取組む社員同士がカフェテリアやコーヒーマシンなどの周りで、各自が持っている情報や考え方を共有できるようにデザインされています。ここから生まれたイノベーションの事例として、あるエンジニアがカフェテリアで、複数のニュースサイトから情報を集めることの不便さを口にしたことを契機にGoogle Newsが誕生しています。

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