成果型賃金制度とは?注目の理由やメリット、最大130万円の助成金

働き方改革により年間の残業時間規制が始まり、限られた時間内での生産性向上が求められる中、成果型賃金制度が注目されています。

年功序列制度とは異なり、業務の質や責任に応じて昇給・昇格が決定されるため、労働時間や在籍年数の長短にとらわれない賃金設計が実現するのがポイントです。

同一労働同一賃金の実現にも結びつくでしょう。成果型賃金制度が注目される理由や、導入にあたってのメリット・デメリットについて解説します。

最大受給額が130万円の、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)の詳細も要チェックです。

成果型賃金制度とは

成果型賃金制度は、企業業績への貢献度に応じて賃金を決定するシステムで、成果主義賃金制度ともいわれています。

ちなみに成果主義は、年齢や在籍年数(社歴)にかかわらず、個人の実力や成果に応じて、職務・給料の妥当性に関して評価するという考え方です。

日本では1990年代半ばから、職能給に加えて成果給・業績給を導入する形での運用が始まりました。

バブル崩壊を皮切りとした長期不況の中、終身雇用や年功序列賃金制度の運用に限界を感じる場面が相次いだからです。

成果本位の賃金体系と労働時間規制を両立させようと、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入検討が行われた時期もありました。

実力に応じて昇給・昇格を短期間で判断できる仕組みなので、既存の従業員にはもちろん、中途採用者や有期雇用で働く人にも好待遇を得るチャンスを提供できることも特徴です。

「能力主義」と「成果主義」の違い

成果主義は、業績や個人の実力を中心に評価する仕組みです。優秀な人材へのインセンティブ提供を通じて生産性向上を促せる反面、組織力の維持向上が課題とされています。成果次第で高い年収や地位を獲得できるチャンスがあるのが特徴です。

一方、能力主義は個人の潜在能力や職務への姿勢に着目した評価制度です。成果や業績への注目度が低いため、新たな業務にチャレンジする人と現状維持を貫く人に二分されるという課題がみられます。

長期間の教育を予定している点で年功序列制度と類似する部分があるものの、年齢や在籍年数が評価結果に影響することは少ないでしょう。

成果主義が注目される理由

雇用形態の多様化や働き方改革に伴い、年功序列による待遇決定に支障を来たす場面が増えてきました。

有期雇用契約は月単位で締結されるケースが大多数であり、業務の成果を短期間で見極める必要性が高まっているのも実情です。そのため、個人の能力に着目した成果主義が注目を集めています。

1.雇用形態の多様化

バブル崩壊以降、派遣社員やパートなど雇用形態の多様化が加速しました。

企業が経費削減を推進する中で、必要な期間だけ即戦力を活用したいニーズや、業績に応じて柔軟に雇用調整を図りたいというニーズが定着したからです。

経済低迷により正社員での就職が困難を極めた末、非正規雇用としての就労が長期化したという背景も無視できません。

ジョブ型正社員やパラレルワーク(副業・複業)など、正社員も働き方が多様化しており、年齢や社歴ではなく実力を基準に評価を受けたいという働く側のニーズも増加傾向です。

2.働き方改革

働く人の健康を守り、ワーク・ライフ・バランスの実現を徹底する目的で、2020年4月から国内すべての企業で残業時間の上限規制(原則として月45時間・年360時間)がスタートしました。

年5日間の有給休暇の取得義務も定められ、限られた時間内で業務の成果を上げる必要性に迫られているのが現状です。

労働時間数だけで従業員のパフォーマンスを判断する難しさも相まって、新たな客観的指標の一つとして成果型賃金制度の導入を検討する企業もみられます。

成果型賃金制度のメリット

成果型賃金制度を設けることで、社員のモチベーション向上と企業全体の業績向上のきっかけとなるなど、企業・社員双方にメリットをもたらします。

評価基準に基づき、客観性が高い給与改定や人材配置を実現できる点もポイントです。

1.社員のモチベーションアップ

営業成績や売上アップなどの結果を賃金や昇進に反映させることで、社員のモチベーション向上が見込まれます。

役職や高年収などのステータスを短期間で手にできる可能性をエネルギー源として、半期・四半期ごとの評価結果を意識しながらスキルアップを目指しやすいのも特徴です。

社員同士やチーム同士の競争が促進され、企業全体の業績アップに結びつく効果も期待できます。目標管理制度(MBO)と組み合わせて運用すると、能力開発を促進する面でも効果的です。

2.公平な評価

会社への貢献度の高さ、すなわち個人の業績を基準に評価を行うため、公平な賃金制度の運営を確立できます。

年功序列や能力主義による賃金決定では、同じ実力・業績であっても評価時期や評価者の主観により、寛大化傾向や対比誤差などの評価エラーが生じる可能性を否定できません。

ローパフォーマー社員が評価の運・不運を言い訳に業績向上を怠り、優れた社員の意欲に水を差すというリスクにも要注意です。

成果型賃金制度を導入することで、年齢や学歴に左右されない実力本位の評価が可能となると同時に、社員(被評価者)が社内でおかれている現実に直面しやすくなるメリットももたらされます。

3.優秀な人材の確保

実力や成果に見合った待遇を提示する企業は、目標達成意欲の高い人材にとって魅力的です。

新卒採用でも特別枠を設ける企業も出始めており、ITベンチャー企業のディー・エヌ・エー(DeNA)では、高い技術を持つAI人材に対し最大1000万円の年収を提示しています。

成果主義に基づく評価や賃金提示を実践することで、優秀な人材が定着するのはもちろん、実力に見合った待遇を個別に提示することで人材確保を有利に進められます。

リファラル採用や人材紹介を併用して、自社のビジョンに合った人材を選択することも効果的です。

4.人件費の適正化

成果型賃金制度を導入することで、年功給など成果が伴わない部分の給与を削減し、評価結果に基づく適正な賃金配分が実現できます。

全社員の賞与を予算化して、個人の評価点に応じて配分を行う方法も一つの配分例です。

給与ダウンを伴う評価制度を構築する場合は、労働条件の不利益変更となるため、社員に対して十分な説明を行った上で合意を得ることが重要です。

成果型賃金制度のデメリット

成果型賃金制度では、個人のパフォーマンスが正当に評価される反面、運用次第では長期的視点での人材育成や組織力の強化に支障を来たす恐れがある点がデメリットとされています。

公平性を念頭に置きながら、業務のプロセスや社員・部署同士の連携に対する取り組みを考慮した評価制度を設計することで、デメリットの払拭が可能です。

1.チームワークの希薄化

成果型賃金制度では個人の実績に着目した査定が行われるため、高評価を得ようとする余り、同僚や他部署などの協力を無視した個人プレーが起きやすいことが懸念材料の一つです。

チームワークが希薄化した結果、職場環境の悪化を招いたり企業の信頼性を損ねたりする事態も発生し得ます。管理職が部下に対し対話を促すことで、個人主義化を防ぐことは可能です。

2.評価基準の設定が難しい

成果型賃金制度では、業績や目標達成率などの形で評価基準が可視化されるため、客観性が高い制度設計が求められます。

営業職や開発職の場合は成果を数値化しやすい反面、管理部門や研究部門の場合は数値化できる指標に乏しいのが実態です。

そのため、部門ごとに評価基準を定めにくいのがデメリットになり得ます。

成果主義での評価が難しい部署については、スキルマップで定めた目標達成度をスコア化して評価を実施するなどの対策も必要でしょう。

3.社員の格差が広がる

評価を通じて個人別の実力・業績が明確化された結果、「できる社員」「できない社員」の二分化が進む恐れがあります。

個人の実績を追求する余り、新人や部下への教育が不十分となり、業務遂行能力の格差が生じる危険性も否めません。

人材育成業務が評価期間にかかる場合は、教育対象者の成長度合いを評価基準に加えることも一つの対策です。

4.短期的な成果に走りやすい

人事評価は3か月(四半期)あるいは6か月(半期)単位で行われるのが一般的なため、短期間の成果だけを追求する社員が出現しやすいことも、成果型賃金制度のデメリットです。

腰を据えた(年単位の)経営課題への取り組みが疎かになり、企業成長を停滞させる結果を招くリスクも潜んでいます。

地道な努力が報われないと感じ、離職に至るケースもあるようです。プロセス評価を組み込むことで、長期継続的な仕事への取り組みを促すことができます。

人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)とは

生産性の向上に寄与する人事評価制度を整備し、その評価制度を運用して2%以上の賃金アップを実現した事業主は、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)の申請が可能です。

人事評価クラウドなどの評価システムを導入したり、企業内における教育訓練制度を拡充したりする使い方が想定されます。

評価制度を効果的に運用することで、従業員のモチベーションと定着率を高める効果も期待できそうです。

評価制度の整備を行うことで50万円(制度整備助成)、評価制度を継続的に運用して生産性を向上させるなど諸条件を満たせば、さらに80万円(目標達成助成)が支給されます。

受給までの流れ

助成金を受ける場合は、評価制度を構築する前に「人事評価制度等整備計画」の作成が必須です。

評価制度の概要や賃金の増加予定額などをまとめ、評価制度の整備を始める月の前々月末日までに、本社所在地を管轄する都道府県労働局に提出します。

例えば、6月1日から整備を開始したい場合は、4月30日が提出期限です。

計画が認定されたら、評価制度を労働協約や就業規則に明文化し、評価対象となるすべての従業員に開示します。

評価基準を決める際は、職務能力や成果など従業員個々の意思により向上させることができる項目を設定しましょう。

人事評価に基づいて賃金を増額改定し、改定後の賃金を支払った(人事評価制度を実施した)後、2か月以内に制度整備助成の支給申請を行います。

その後3年間賃金の引き下げを行わず、生産性と離職率の要件を満たすことで、目標達成助成の支給申請が可能となります。

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