アファーマティブアクションとは?その意味と日本や海外での取り組み・具体例・課題を解説

あらゆる人にとって暮らしやすい社会の実現を目指す活動を「アファーマティブアクション」と呼びます。

これは社会的な取り組みであると同時に、企業においても重要な意味を持ちます。企業における多様性を確保するために、アファーマティブアクションを推進する企業も多いのです。

この記事では、アファーマティブアクションの基本的な知識だけではなく、日本や海外での取り組みに関する具体例・課題などを解説します。

アファーマティブアクションとは

アファーマティブアクションが重要であるという認識が、社会のなかで広がりつつあります。まずは、アファーマティブアクションがどのようなものであるか、どのように認められてきたのかについて見ていきましょう。

アファーマティブアクションの概要

アファーマティブアクションは、日本語訳として「積極的各社是正措置」「積極的差別是正措置」と呼ばれます。

基本的な理念として、「少数派(マイノリティ)が過去に受けてきた教育などの差別を改善する」ことがあげられます。

歴史的に差別を受けてきた少数派の代表例として「黒人(有色人種)」「女性」「障がい者」などがあり、こうした人々がほかの人たちと変わりなく暮らしていける社会をつくることが、アファーマティブアクションの目的です。

アファーマティブアクションの歴史

アファーマティブアクションの起源といわれているのは、1965年にジョンソン大統領が発した大統領行政執行命令です。

これは、マイノリティの優遇的な雇用を推進するものです。1971年になると、雇用だけではなく高等教育においても少数派の優遇措置が適用されるようになります。

アファーマティブアクションの取り組み(日本・海外)

アファーマティブアクションは世界的な取り組みになっており、さまざまな企業で実践されています。ここからは、日本における活動だけではなく、海外の企業で実施されているアファーマティブアクションの実態について紹介します。

日本におけるアファーマティブアクション

日本におけるアファーマティブアクションの取り組みの1つに「男女共同参画基本計画」があります。

これは閣議決定されたものであり、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度にすること」が目標とされました。

取り組みの内容としては、「女性の働き方に関わる環境整備」「女性に向けられるあらゆる暴力の排除」「女性の健康支援」などがあります。

このように、日本のアファーマティブアクションの対象として、特に大きく扱われているのは女性です。このほかにも、障がい者の雇用支援なども行われるようになっています。

海外におけるアファーマティブアクション

アファーマティブアクションが活発に行われているアメリカでは、入学試験や採用試験において「クオーター制」を採用しているケースがあります。

クオーター制とは、前合格者の定数について、一定の割合をマイノリティに割り当てる方式です。

たとえば、200人の入学枠のうち、50人を必ずマイノリティに割り当てると決めたうえで、合格者を選定するというものを指します。

あらかじめマイノリティのための枠を決めておくことで、教育機関や企業における多様性を確保できるというメリットもあります。

ただし、このような方法については、「多数派(マジョリティ)に対する差別になっていないか」といった反対意見もあるのです。

アファーマティブアクションの具体例

アファーマティブアクションを実践するための取り組みには、いくつもの種類があります。ここからはアファーマティブアクションの具体的な実践例について解説します。

差別を排除する法令の整備

アファーマティブアクションには、マイノリティへの差別をなくし、権利を取り戻すといた意味があります。

そのため、社会全体としてマイノリティの権利を保護するための法整備を進めることも重要です。

日本国内においては、2016年に始まった女性活躍加速化助成金の実施や女性活躍推進法の制定などがあげられます。

また、アファーマティブアクションの対象となる障がい者についても、雇用の促進などに関する法律を定め、特定の企業に採用を義務付けるようになっています。

政府によってマイノリティの教育・雇用を推進する法律を定めることで、社会全体としてのアファーマティブアクションの実践へつなげる取り組みが行われているのです。

ゴール・アンド・タイムテーブル

アファーマティブアクションを実践する方法として、「ゴール・アンド・タイムテーブル」という方式を採用するケースがあります。

ゴール・アンド・タイムテーブル方式は、指導的地位に就くマイノリティの人数や割合について、達成すべき目標と達成までにかかる期間の目安を示すことで、マイノリティに対する差別をなくそうとする方法です。

たとえば、「管理職における女性の比率を5年間で30%まで引き上げる」といった目標を立て、そのための計画を実施していくというものです。

単純に割合などを決めるだけではなく、目標達成までの期間も定めることで、より積極的に差別の是正を推し進めることができます。

制度や設備の改善

企業におけるアファーマティブアクションは、採用におけるものばかりではありません。

男女従業員のどちらも利用しやすい器具や設備を導入したり、女性従業員に対する積極的な教育・研修を実施したりするなど、採用後もマイノリティが働きやすい環境を整備することも重要です。

また、設備や整備といったものだけではなく、ともに働く男性授業員の意識改革にも力を入れる必要があります。

どれだけ設備や制度が充実しても、同僚たちのなかに差別意識が残っていては意味がありません。

性別などの違いにかかわらず、協力して仕事を進めていくための意識を従業員全員が持てるように啓発するため、定期的な研修の実施などを推進する企業もあります。

アファーマティブアクションにおける課題

アファーマティブアクションは、社会における差別をなくすための活動であり、重要な意味を持っています。

しかし、アファーマティブアクションのために実施される方策が問題を引き起こすケースがあることも理解しておくべきです。

逆差別につながる

アファーマティブアクションでは、過去に差別を受けてきたマイノリティに対し、それらの差別をなくするための優遇措置を実施するケースが少なくありません。

かつて差別的に扱われてきた人々を救済することが目的ですが、あまりにも優遇しすぎてしまうと、今度は「逆差別」が起こるという指摘もあります。

たとえば、女性の採用について「女性だから採用枠がある」といった状況が発生し、個人の能力や個性を無視した採用が行われてしまうというものです。

女性の採用枠数に決まりがあるため、より能力が高い男性を不採用にしなければならないケースも発生します。

差別を受けてきた人々を救済するという目的に対し、どこまでの優遇が許容されるかは、いまだに社会的な議論になっています。

マジョリティに対する差別

これまで差別を受けてきたマイノリティにとって、その差別によって失われてきた機会を取り戻すアファーマティブアクションはとても意義のあるものです。

しかし、アファーマティブアクションは「マジョリティに対する差別である」という意見もあります。

たとえば、アメリカにおいては歴史的に黒人が差別されてきました。そうした事実から、黒人を優遇する措置は少なくありませんが、これによって今度は白人がさまざまな権利を奪われているというのです。

また、現代に生きる人々は過去に差別を行ってきた人たちとは違います。「過去の人たちが行った差別について、どうして自分たちが負担を強いられるのか」という意見もあるのです。

ただし、これまでの差別が教育の領域にまで及んでいた経緯もある以上、機会の平等を確保するという視点は重要になります。

ここでも、「どの程度の優遇なら許容されるか」という点について意識しなければなりません。

差別を残してしまう

アファーマティブアクションは、差別によって不利益を受けてきた人々の救済が目的です。

しかし、そうした措置によって、ほとんど差別がなくなった領域に「差別」を残す可能性があります。

たとえば、黒人に対する優遇措置を続けることで、「黒人と白人は違う」という意識がいつまでも消えなくなってしまうのです。

本来であればアファーマティブアクションによって差別の是正がなくなった場合、それらの措置は意義を失うため、廃止しなければなりません。

しかし、「本当に差別はなくなったのか」を確認するのは難しいため、どのタイミングで優遇措置を終えるのかを決めるのも簡単ではありません。

そのため、アファーマティブアクションのために方策を打つ場合は、「優遇措置を取りやめるための目標設定」も重要になります。

社員が心地よく働ける職場づくりは正しい人事評価制度から

企業においても、アファーマティブアクションの実施は重要です。

差別を是正し、誰でも働きやすい職場環境を実現してこそ、企業として成長していけるからです。そして、企業内における差別の是正と同時に、人事評価制度を整備することも必要になります。

評価者の偏見や主観にとらわれず、従業員を適切に評価しすることで、より高いモチベーションで働いてもらうことができるようになります。人事評価の効率化に悩んでいる場合は、外部コンサルティングへの相談や、ツールの導入を一度検討してみるとよいでしょう。

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