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ノーレイティングとは?先進企業が導入する人事評価手法を解説

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(写真=Pressmaster/Shutterstock.com)

従来型の人事評価制度が機能不全を起こす中、「ノーレイティング」と呼ばれる評価手法が注目されています。ここではノーレイティングの概要と、メリット、デメリット、ノーレイティングが従来型の人事評価制度の課題を解決し、IT化やグローバル化に対応できる組織づくりを実現できるのかを解説します。

ノーレイティングとは

ノーレイティングは、「S」「A」「B」といった評価で社員をランク付け(レイティング)しない新たな人事評価制度のことです。海外の有名企業を中心に採用している企業が増えてきています。

ノーレイティングが考案された背景

従来型の人事評価制度に、米ゼネラル・エレクトリックが推進してきた「9ブロック」があります。これは年に1度のペースでレビューを行い、社員一人ひとりにCランク、Sランクといったランクづけを行う人事評価制度のことです。

また、ピーター・ドラッカーが考案した「MBO(目標管理制度)」は、目標の管理を通じて評価を行う人事評価制度のことです。MBOは評価のタイミングでレビューを行うため、レビューの頻度は半年から1年に1回のペースになります。

また基本的に評価は「目標を100%達成しているかどうか」で行われるため、達成していれば評価されますが、未達であれば評価は下がります。

新たな経営課題「アジャイル(俊敏)化」

こうした従来型の人事評価制度は、IT化やグローバル化が始まるまでは経営においてかなりの効果を発揮していました。ところがIT化やグローバル化が始まると、経営課題として「アジャイル(俊敏)化」が浮き上がってきました。

これによりグローバル競争の激化とビジネスサイクルの短期化が進み、経営側には意思決定のスピードと正確性が求められるようになったのです。

そのため年に1度のペースでレビューを行って、その後1年間同じランクで社員を評価する9ブロックや、半年から1年前の目標の達成度に沿って社員を評価するMBOでは、目まぐるしく変化するビジネス環境には対応できません。

ノーレイティングは目まぐるしい環境変化に対応可能

そういった問題を解決するために新しい人事評価制度である「ノーレイティング」が考案されたのです。ノーレイティングは、1on1ミーティングやコーチングを通じて絶えず評価を行うため、ビジネス環境の変化に俊敏に対応できます。そのため従来型の人事評価制度の柔軟性の不足が課題の場合は、ノーレイティングで解決できるのです。

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従来型の評価手法「レイティング」との違い

社員のカテゴリー化やランク付けによる人事評価制度は「レイティング」と呼ばれます。レイティングはカテゴリーやランクに基づいて給与を決める評価の仕組みのことです。しかし、これには2つの問題点があります。

従来型のレイティング評価が行き詰まっている2つの理由

1.社員のパフォーマンス低下を招く

アル・ゴア副大統領のスピーチライターを務めたダニエル・ピンクの著書『モチベーション3.0』では、従来の人事評価制度では管理される側を視野狭窄に陥らせ、むしろパフォーマンスを下げると書かれています。例えるならば、目の前にニンジンをぶら下げられた馬がニンジンしか見ずに突進するのと同じ状態になるのです。

2.外部環境への適応力が弱い

従来型の人事評価制度では管理する側(ニンジンをぶら下げる人間)が、管理する方向を間違えると組織全体が間違った方向に突進するおそれがあります。

めまぐるしく状況が変化するグローバル時代において1人1人の対応の幅が広範囲にわたる中、部下全員の動向にまで目を配れないおそれもあり、たとえ評価の仕方が実際の状況とずれていても、ずれに気づきにくくなるのです。

ノーレイティングのメリットとデメリット

前述のような状況において従来の人事評価制度の問題点を解決すると期待さているのがノーレイティングです。上述したとおり、海外の有名企業ではノーレイティングを導入している企業が増えていますが、それにはメリットとデメリットがあります。それぞれについて確認しましょう。

ノーレイティングのメリット

社員のパフォーマンス向上

ノーレイティングでは上司と部下が日常的に1対1でミーティングを行い、そこから目標設定や日々の業務のフィードバックや問題改善を行います。これにより給与のような外発的動機付けではなく、社員本人の中からモチベーションを引き出す内発的動機付けができ、パフォーマンスアップが実現します。

優秀な人材の確保

また、上司が日常的なミーティングの中でリアルタイムに部下の評価を変動できるのもメリットのひとつです。これにより外部環境の変化にも柔軟に対応でき、状況に適応した優秀な人材の確保や再発見が可能になります。

評価に対する納得感の醸成

評価を受ける社員にとっても自分の業績に対してリアルタイムに評価が変化するため、評価に対する納得感がありますし、納得感があればモチベーションやパフォーマンスのアップにもつながります。

ノーレイティングのデメリット

ノーレイティングは従来の人事評価制度が抱える問題点を解決する一方で、大きなデメリットも抱えています。

管理職の負担増加

ノーレイティングのデメリットは、管理職の負担が増えることです。その理由は、評価をする立場にある上司は部下との密接なコミュニケーションを何度も繰り返しながら、状況に応じた目標設定やフィードバック、アドバイスを求められるからです。時間も手間もかかるうえ、精神的な負担の大きさが否めません。

ノーレイティングのデメリット解消方法

それでは、ノーレイティングのデメリットである管理職(プレイングマネージャー)の負担をどのようにして減らすのがよいのでしょうか。その解決策としてはプレイングマネージャーがマネジメント業務に専念できる環境を作ることが大切です。

コーチング研修や人事評価システムの導入

例えば1対1でのミーティングをスムーズに進めるためのコーチング研修や、複数の社員による評価制度である360度評価の導入を検討するのがよいでしょう。また、ノーレイティングを制度化せずに、まずは上司と部下の関係を密にするために現場のコミュニケーションの活性化を支援するという方法もあります。

上記のような環境を整備するために人事評価システム(人事評価クラウド)などのツール導入も有効的です。従来の評価方法に限界が見えつつある今、どうすれば今の制度を維持できるかではなく、どうすれば次の制度に移行できるかを問われているときだと言えます。

ノーレイティングを導入する際の注意点

ノーレイティングは、単に導入すれば良いという話ではありません。なぜなら、1on1ミーティングやコーチングという手法を使うことからもわかるように、ノーレイティングは上司と部下の密接なコミュニケーションが前提になっているからです。

真の課題は「コミュニケーション不足」

仮に形式的な1on1ミーティングやコーチングを行うだけで、そこにコミュニケーションが成立していなければ、ノーレイティングも従来型の人事評価制度と同じ轍を踏むことになります。

というのも実は9ブロックやMBOといった、従来型の人事評価制度が機能不全に陥ってしまった原因も、コミュニケーション不足によるものとされているからです。

そもそもMBOを考案したドラッカーは「MBOを導入すれば上司は評価だけしていればよく、コミュニケーションをおろそかにしてもいい」とは言っていません。ドラッカーは著書の中で「コミュニケーションの4原則」を示すなど、組織内のコミュニケーションの重要性についても言及しています。

つまり、企業としての真の課題が人事評価制度そのものではなく、コミュニケーション不足にあるのなら、まずはその課題を解決する施策を講じなければ意味がないということです。

まずは自社の人事評価制度の課題分析から

ノーレイティングは従来型の人事評価制度の課題を解決するために生まれたものです。そのため従来型の人事評価制度が直接的な課題なのであれば、ノーレイティングの導入によって解決される可能性は十分にあります。

しかしノーレイティングを機能させるためには、上司と部下の密接なコミュニケーションが不可欠です。これを無視してノーレイティングの形だけを取り入れても、人事評価制度として機能しません。

したがって、ノーレイティングを導入するうえでは、まず自社の真の課題がどこにあるのかを冷静に分析する必要があるでしょう。

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