政府が掲げる生産性革命と人づくり革命とは

(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

「生産性革命」と「人づくり革命」は、政府が掲げる新しい看板政策パッケージです。生産性革命は安倍政権が掲げる「新・三本の矢」の1つのカギで、力強い賃金アップと投資を後押しするものです。人づくり革命は一億総活躍社会とするために、質の高い教育を受けやすくして個々の能力を高める取り組みとされています。

少子高齢化という課題に立ち向かうには、この2つがアベノミクス最大の勝負と位置づけられており、中長期的には日本の将来を左右する政策となりそうです。長時間労働の是正にフォーカスされがちな「働き方改革」も含め、本来はすべてが生産性の向上が最終目標です。それぞれについて解説します。

生産性革命とは何か

政府は「名目GDP(国内総生産)600兆円」、「出生率1.8」、「介護離職ゼロ」を新三本の矢としており、その中でも「名目GDP600兆円」を実現するには「生産性革命」が必要としています。

2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略・改訂2015」のサブタイトルには「未来への投資・生産性革命」とあります。そこでは、未来への投資・生産性革命は、稼ぐ力を高める企業行動を引き出し、新時代への挑戦を加速、個人の潜在力の徹底的な磨上げという3項目で構成されています。

中心となるのが、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、ロボットや人工知能(AI)による産業構造、就業構造の変革です。政府はロボットやIoT、AIなど、これまでにない革新的なビジネスやサービスで生産性を劇的に押し上げる最先端のイノベーション(技術革新)が世界を一変させようとしている、と現状を認識。その上で、日本が生産性革命をリードすることが次への成長戦略の最大の柱と位置付けています。

世界に先駆けて実現するために、2020年度までを生産性革命集中投資期間と位置付け、意欲的な中小企業や小規模事業者を支援する補助金や固定資産税の減免、人材への投資も促しています。

生産性革命を実現するには、3%以上の賃上げなどに積極的、または生産性の向上にトライする企業には法人税の減税など、大胆な税制や予算、規制改革などを進める方針です。

人づくり革命の内容は

「人づくり革命」に関しては、すでに10代から80代までの財界人や起業家などを起用した有識者会議「人生100年時代構想会議」で、次の4項目を中心に議論が進んでいます。

・ 高等教育無償化、リカレント教育の充実
・ 人材育成のあり方、大学改革
・ 企業の人材採用の多元化、多様な高齢者雇用
・ 高齢者給付中心の現行制度から全世代型社会保障への改革

政府は、2020年度までに3歳から5歳までのすべての子どもの幼稚園、保育園にかかる幼児教育の無償化、低所得家庭の子どもに対して大学や私立高校などの高等教育の無償化を実現するとし、さらには介護人材の確保にも注力し、社会保障制度を全世代型へ大きく転換する意向です。同会議は、2018年前半には具体的な政策を取りまとめる方針です。

今後の課題や働き方改革との関係

人づくり革命では、幼児教育の無償化や高等教育の授業料免除などに消費増税の一部を充当する計画ですが、生産性の向上に寄与するかは不透明です。大学への進学率をさらに高めることで、内閣府のいう第4次産業革命を担う人材が育つのかもまだ明確ではありません。

イノベーションを起こすような人材を飛躍的に増やす教育を担当するのは現状の大学や大学院でいいのか、国内のどの研究機関が担うのか?中高年の生涯教育を今後どうするのかなど、今後、国会などでの議論を待つ必要があります。

日本的な雇用システムのまま労働時間や残業を減らせば、結果的に給与総額が少なくなる恐れがあります。これでは、結局「働き方改革」本来の長時間労働の是正が空回りすることにもなりかねません。

成果主義の導入は、一般労働者には解雇や賃下げに繋がるという不安感が漂っています。経営者側も、「優秀な社員は欲しいが人件費が高騰する」と消極的な側面もあります。

多様な働き方を取り入れることで労働市場は拡大しますが、数値目標の達成だけではなく、社員の業務を客観的に絶対評価する制度が必要です。

人材不足はさらに深刻化すると予測され、生産性革命や人づくり革命なしに実質賃金のアップはあり得ません。働き方改革も含め、生産性が向上し、経済の成長を活かして、社会保障を充実させることが目標なのです。経済がさらに成長、強化できれば、一億総活躍社会の実現は夢ではありません。

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