中小企業はボーナス(賞与)の金額をどう決めるべき?中小企業のボーナスの平均額とは

(写真=stoatphoto/Shutterstock.com)

真面目に仕事に取り組んできた社員や貢献度の高い社員には、適切なボーナスを支給することが求められます。しかし、ボーナスの金額はどのように決定すれば良いのでしょうか。

社員に対して適切な人事評価を行い今後のエンゲージメント向上を促すためにも、できる限り双方が納得できる金額を支給する必要があります。

今回は、ボーナスの計算方法について詳しくみていきましょう。

また、社員に納得感を与え、業績にも好影響を与える賃金制度のあり方についても解説します。

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そもそもボーナスとは?

そもそも、ボーナスとはどのような定義なのでしょうか。ここでは、ボーナスの定義や種類、近年増加している業績連動型賞与について紹介します。

ボーナスは、企業業績の配分

厚生労働省はボーナス(賞与)を

「定期又は臨時に労働者の勤務成績、経営状態等に応じて支給され、その額があらかじめ確定されていないもの」

と定義しています。そのため、毎月の給与とは違い、その都度支給額を決定する必要があります。

ボーナスの種類

従来は単純に基本給に対して一律〇ヵ月を乗じて支給額を決める「給与連動型」が一般的でした。

しかし、現在では企業の業績に応じて賞与総額(賞与原資)を決定する「業績連動型」が主流となりつつあります。

賞与総額(賞与原資)が決まったら、人事評価などをもとに配分を行い、最終的に個別賞与額を決定します。

増える業績連動型賞与

従来の「給与連動型」は基本給比例方式で計算できるため、予算どおりの場合は非常に計算しやすいといえるでしょう。

しかし、企業のために必死に努力してくれた社員には適切な評価が求められます。

努力をたたえると同時にエンゲージメントを高める効果もあるとして「業績連動型」を選択する企業が増えています。

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中小企業の定義

中小企業として定義されるのは、「資本金の額または出資の総額が一定以下の会社」あるいは「常時使用する従業員の数が一定以下の会社および個人」です。

具体的な基準は業種により異なり、以下のとおりです。

 資本金額または出資の総額常時使用する従業員
製造業その他3億円以下300人以下
卸売1億円以下100人以下
小売5千万円以下50人以下
サービス業5千万円以下100人以下
出典:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義

中小企業庁のデータによると、中小企業は日本の企業の99.7%を占めています。

ボーナス・賞与総額(賞与原資)の算出方法

賞与総額(賞与原資)を決定するベースとなる業績指標は、

経常利益(営業利益+営業外収益-営業外費用)

営業利益(売上総利益-販売管理費および一般管理費)

上記のどちらかである企業が多いといえます。
そもそも「賞与とは利益配分」という考え方があるためでしょう。

賞与総額の算出方法には大きく2つの方法があります。

1つは、業績指標にもとづいて算出した利益比率とそれに連動した平均支給月数を決めておく方法です。たとえば、半期売上高対経常利益比率が〇%だった場合は、半期賞与支給月数は平均〇ヵ月といった形です。

もう1つは、業績指標にあらかじめ決めておいた一定の係数を乗じることによって賞与総額を算出する方法です。シンプルな方法ではあるものの、運用面では柔軟に使えない部分もあり、前者の方法を使う企業が多い傾向にあります。

個別賞与額の算出方法

社員への個別の賞与額を算出するにはさまざまな方法があり、中小企業ではボーナスを算出する際に迷う原因になります。ここでは、ボーナス算出方法のうち主なやり方を紹介します。

算出方法の主な例

個別賞与額を算出するためには人事評価を活用する方法が多いでしょう。

一般的によく使われているのは、「基準額×平均支給月数×評価係数」という計算方法です。

基準額とは基本給+各種手当(何が含まれるかはその企業の就業規則などで決まりあり)のことであり、それに既に算出された平均支給月数を乗じ、さらに人事評価の結果にもとづいた評価係数を乗じます。

評価係数の基準は、企業によってそれぞれ設定している場合が多いでしょう。たとえば、人事評価がSの場合の評価係数は1.2といった形です。

また、評価ポイントを使った賞与配分方法もあります。人事評価結果に、役職や資格・スキルなどを等級(ランク)に分け、それぞれの係数を乗じて算出した評価ポイントによって賞与を配分する方法です。

計算方法の一例としては、

各人の評価ポイント(評価点×等級別係数)×1ポイントあたり単価(賞与原資÷全社員の評価ポイント合計)

などとなります。役職や資格・スキルなどを加味した等級別係数を乗じることにより、企業への貢献度の高い人の賞与額が高くなります。

中小企業のボーナスの平均額とは

ここで、中小企業のボーナスの平均額はどの程度なのか、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」をもとに、一般的な水準を紹介します。

まず、事業所規模5~29人の企業については、2022年年末実績で全業種平均が27万4,651円でした。電気・ガス・熱供給等といったインフラ系企業は約69万円と最も高く、金融業・保険業は約51万円と続き、平均の2倍ほどになっています。

一方、医療・福祉(約21万円)や生活関連サービス業等(約13万円)、そして飲食サービス業等(約5万円)が平均を下回っているという結果でした。

次に、従業員規模30~99人の企業について、同じく2022年年末実績を見ると、全業種平均が35万4,645円とやや高めです。業種別のうち最も高かったのは電気・ガス・熱供給等で約76万円となっており、金融業・保険業が約55万円と続きます。

一方、医療・福祉(約24万円)やその他サービス業等(約24万円)、そして飲食サービス業等(約6万円)が平均を下回っており、事業所規模5~29人の傾向と同様の結果でした。

大企業と中小企業のボーナス平均額の差は?

先述の通り、2022年年末実績での中小企業のボーナス平均額は5~29人の企業で27万4,651円、30~99人の企業で35万4,645円でした。

一方、「平成28年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況 」(厚生労働省)によると、企業規模5,000人以上の大企業における平成27年年末賞与の平均額は81万1,338円でした。

支給年は異なるものの、大企業と中小企業のボーナス平均額は46万~54万円違うことがわかります。

賃金体系を見直す際に意識すべきポイント

ここまで、中小企業におけるボーナスの算出方法を解説してきました。中小企業の経営者や担当者がボーナス金額の算定や、賃金体系の見直しに着手する際、何か意識しておくと良いポイントはあるのでしょうか。ここでは3つのポイントを紹介します。

ボーナス額の算定理由を明確に説明すべき

ボーナスに関しては、中小企業やベンチャー企業に限らず、業績に応じたボーナス支給がない企業もあるでしょう。しかしながら企業の発展のために貢献してくれた社員への説明を怠ると、その後の信頼関係にも良い影響はありません。

今回のボーナス支給の有無や総額の理由など、企業としての分析結果や今後の経営戦略などを社員にしっかりと説明する責任が企業にはあります。

社員に対して誠実に説明をすることが、社員一丸となって目標に向かって頑張っていくためのエンゲージメント向上につながるでしょう。

運用しやすい制度設計にする

制度設計をなるべくシンプルかつ明確にすると、運用がスムーズです。

もし計算方法が複雑であったり、算定基準が曖昧であったりすると、企業側の運用が困難になるばかりか、社員にとってもわかりにくい制度になってしまいます。

ボーナスの算定方法や評価基準を設計する際は、なるべく運用する際のことを考慮に入れて、わかりやすい体系を目指しましょう。

適切なタイミングで新制度に移行する

新制度を導入する際は、適切なタイミングを見極めることも重要です。

大きなプロジェクトの途中など中途半端なタイミングで新制度に移行してしまうと、社員に余分な労力をかけてしまい、混乱を招くリスクもあります。

組織改編や業務の区切りがつく時期など、制度導入のタイミングを選ぶことでスムーズに移行することが可能です。

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ボーナスは支給しなくても良い

ボーナスは必ず支給しなければならないものではないため、支給をしないという選択肢もあります。

ボーナスを支給しなければ、人件費の管理がしやすくなります。ボーナス支給後の時期にまとまって退職者が出ることも防げるでしょう。

一方、ボーナスがないと給与面から従業員のモチベーションをアップさせられません。もともと支給していたボーナスを廃止する場合はなおさらです。その結果、生産性が下がったり退職者が増えたりするおそれがあります。

ボーナスがない企業はその分基本給を多めに設定してバランスを取っている傾向にあります。ボーナスを支給しないデメリットをどうカバーするか考える必要があるでしょう。

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