マイナス査定あれこれ 給料を減らすのはあり?なし?

Boss
(写真=fizkes/Shutterstock.com)

社員のやる気を引き出すには、頑張った成果を給与に反映させることが何よりも大切です。ただ、これまではハイパフォーマーに高い給与で還元する仕組みはあっても、成果を出せない人の給与を減らす「マイナス査定」には二の足を踏む企業が多かったように思われます。

今後、会社の業績を向上させるためには、人事評価制度にマイナス査定を取り入れることも必要になってきます。導入と運用に当たって、注意すべきことなどを考えてみましょう。

マイナス査定導入が必要な理由

ある一般的な大手企業の事例をみると、人事評価制度における評価点をS、A、B、C、Dの5ランクに分けていました。Sランクを最高に、給与の増額に序列がつけられていましたが、最低のDランク評価でも給与の増加はゼロとしているだけで、マイナスになることはありませんでした。

これは、まったく頑張らなくても、これまでもらってきた給与が減らされることがないということです。これでは、モチベーションの低い社員は現状維持以上の努力をすることはありません。一方、ハイパフォーマーの社員にとっては、いくら成果を出し続けても頑張らない社員と待遇面でさほど差が出ないため、それ以上の頑張りにつながらないことにもなりがちでした。

社員の仕事ぶりを、よりフェアに評価していることを示すためには、やはり給与に格差をつけることが必要なのではないでしょうか。マイナス査定で浮いた給与原資をハイパフォーマーに回せば、成果に対する給与増減の不公平感は緩和されるからです。

これまでありがちだった、前述のような評価方式よりも推奨されるのは、さらに評価を細分化し、S+、S、A+、A、B+、B、C、C-、D、D-の10ランクに分けることです。Cランクを給与プラスマイナスゼロとし、S+からプラスの序列をつけ、C-から順にマイナスの幅を大きくします。

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マイナス査定導入にあたって注意すべきこと

ここで、注意すべきことは次の4点です。

1. D-ランクでもその減額幅が基本給の10%を超えないこと
2. 絶対評価であること
3. 事前に説明会などで周知徹底し、社員が納得していること
4. 最低賃金を下回らないこと

この4点を守れば、マイナス査定の導入が「就業規則の不利益変更」と批判されることを回避できます。特に社員に覚えておいてもらうことは、相対評価だと一定数がマイナス査定となるのですが、あくまでも絶対評価による査定なので、高得点を取りさえすれば全員がプラス査定になるということでしょう。これは社員に希望を与えることになります。

マイナス査定ばかりを受けると、不満を感じて退職してしまう恐れを持つかも知れません。しかし、評価2回の平均点で査定すれば、たった一度の評価でマイナスになることはなく、たとえ一度マイナスの評価となっても挽回のために一定の期間が担保されていますので、公平性は高くなります。

一方、評価する側にも緊張感が求められます。評価者が受け持つ人数は8~10人が適正とされています。それ以上になるなら、中間管理職を増やすか組織変更をすることをおすすめします。この程度の人数なら、四半期評価であっても負担は大きいとはいえず、むしろマネジメントする上で必要な業務の範囲内と言えます。

このほか、四半期ごとに目標設定をしていくのは社員にとっても負担になるとの指摘もあります。ただ、担当部署や仕事内容が前期と大幅に変化したり、掲げた目標が実績と大きく乖離していたりするような一部社員以外は継続して同じ目標を掲げることが多くなるため、それほどの負担にはならないと言えるのではないでしょうか。

適切な導入・運用はメリットになる

マイナス査定の目的はコスト削減ではありません。頑張っている人もそうでない人も一律に給料を上げる「平等という名の不平等」をやめ、「フェアに差をつける」ことで成果を出している社員に報いることこそ、真の目的です。

社員のやる気が醸成されると、結果として生産性の向上につながります。それによって会社の業績が向上し、評価結果と整合性のある賃上げで社員に還元するという好循環が生まれるといえます。

ただ、こうしたメリットを生むには、評価する立場の人にフェアであることを徹底させ、適切に運用していくことが条件になります。社員から反感を買わずにマイナス査定を推進していくためにも、このポイントだけは外してはならないでしょう。

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