ブルームの期待理論とは?心理学で学ぶ社員のモチベーションアップの方法

従業員の生産性を高める経営戦略の一環として、モチベーションアップへの取り組みが注目されています。

テレワーク制度の導入が進む中で、遠隔での社員の生産性アップは企業の重大な課題にもなっているでしょう。社員の取り組みの実効性を高めるためには、心理学に基づく理論を知っておくことが大切です。

この記事では、モチベーションアップに取り組む企業の実例に触れながら、モチベーション理論の基礎となるブルームの期待理論やその発展形である「ポーター&ローラー・モデル」について解説します。

期待理論とは?

期待理論とは、動機付けのプロセスに着目したモチベーション理論の一つで、1964年にブルームによって提唱されました。

1968年には、ポーターとローラーによって期待の変化要因が再定義された上で、ビジネスや教育など様々な場面で活用されています。

目標(成果)への道筋が明確化されていることを前提に、目標達成後に何らかの報酬が得られる(結果が報われる)ことの確信があれば、積極的な努力に結びつくという考え方です。

報酬には、昇給やボーナスといった金銭的報酬の他、承認や労いなどの心理的報酬も含まれます。

人事評価制度の普及やテレワークの推進によって業務の成果が重視される中、従業員の価値観を受け入れながらモチベーションアップを目指す方法の一つとして、期待理論への注目が高まっています。

ブルームの期待理論

ブルームの期待理論では、職務遂行への努力が個人的報酬に結びつくという期待の連鎖と、報酬に対して個人が抱く主観的な価値(誘意性)によって動機付け(行動の方向性)が決まると提唱されています。
期待の連鎖を成立させながら、好ましい成果を実現するには次の3つの要素が必要です。

  1. 魅力ある報酬の設定
  2. 個人の実力や潜在能力に応じた適切な目標設定
  3. 職務遂行を円滑に進めるための戦略策定

    これらの要素が確立されてはじめて報酬への魅力を実感でき、目標達成に向けた合理的な行動を選択できるようになります。

    モチベーションの高さを数値化するために、わかりやすく表記すると、「モチベーション=期待×誘意性×道具性」と表されます。

「誘意性」とは、提示された報酬に対しての魅力度を指します。報酬が魅力的であれば魅力的であるほど、誘意性は高まります。
「道具性」は、目標達成を達成することで、目指すさらに上の目標を達成する際にどれくらい有用かどうかを示す指標です。
自己成長への努力量と報酬への魅力感との相乗効果で、高いモチベーションを引き出せるのが特徴です。

ポーターとローラーの期待理論

ポーターとローラーの期待理論では、ブルームの期待理論に報酬への満足度という指標を加えた上で、次のようにモデル化されました。

  1. 目標実現への期待値と報酬の価値の大きさにより、行動量と努力量が決まる。
  2. 能力や資質・役割に応じた努力により、得られる成果や達成感の大きさが決まる。
  3. 成果や達成度への満足感は、成果に対して正当な報酬であるかの認識度合いに左右される。
  4. 報酬への満足度が、次の行動(仕事)へのモチベーションに影響する。

    つまり、高いモチベーションを持って仕事に取り組めば、次の仕事でも良い結果を残して満足いく報酬を得られるという好循環を生み出すというモデルです。

    好循環を生み出すためには、企業として従業員の能力を適正に把握する必要がある他、従業員としても提示された課題への克服が求められます。

    従業員のモチベーションを高く保ち続けるためには、企業と従業員との間で目標を共有することと、正当な人事評価を実践することが大切だといえます。

期待理論をベースとしたモチベーション理論とは

期待理論や心理学の研究が進むにつれて、現在では多くのモチベーション理論が公表されています。欲求や動機の変化に着目した、3つのモチベーション理論について解説します。

マズローの欲求5段階説

「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」という仮説から作られた理論で、人間の欲求が5段階に分類されるという考え方です。

現在では、マーケティングや教育など幅広い分野で活用されています。

  1. 生理的欲求(生命を維持したい)
  2. 安全欲求(生活の安定を維持したい)
  3. 親和欲求(他人と関わり合いたい)
  4. 承認欲求(他人から認められたい)
  5. 自己実現(創造的活動をしたい)


    人事の現場に置き換えると、親和欲求は「チームワークで仕事をしたい」、承認欲求は「業務成果を正当に評価されたい」にそれぞれ読み替えることができます。

    職場で健全なコミュニケーションをとりつつ、成果に対して正当な評価を受けるプロセスを経て、自分の能力を最大限に発揮して業務の幅を広げるというステージに到達できるわけです。

アンダーマイニング効果

アンダーマイニング効果(undermining effect)は、主体的(内発的)な行動に対し、人為的(外発的)な動機付けを行うことでモチベーションを低下させる効果です。弱体化させる・傷つけるという意味が含まれています。

例えば、自発的に職場環境の改善に取り組む従業員が昇給された後、報酬目的での取り組みに変化してしまい、やる気が低下してしまうケースです。

自分の裁量で実施できていた業務に突然口出しされることで、自己実現の場を失うばかりでなく、状況次第では承認欲求が満たされない状況にも発展しかねません。

内発的な行動に対してモチベーションを高めたい場合は、感謝や承認の気持ちを言葉で伝えることが効果的です。

ピグマリオン効果

他人から期待されることで、その期待に沿った成果を出すことができる効果を、ピグマリオン効果といいます。彫刻家ピグマリオンが彫った乙女像を愛し続けた結果、神から命が吹き込まれたというギリシャ神話が、名前の由来です。

前向きな言葉で従業員とコミュニケーションをとり、注意指導の場面でも行動の変革を促すスタンスを保ち続けることで、上司や会社の期待に応えようとする気持ちが高まるでしょう。

反対に、「この人は高い成果を出せない」などネガティブな感情(オーラ)を出し続けたり、注意指導時に本人の素質に繰り返し言及したりすると、モチベーションを低下させる結果となるので要注意です。

期待理論を活用する企業にとってのメリットとは

期待理論の発展により、様々な識者が期待理論を活用することで人のモチベーションをアップできると論ずるようになりました。

それでは、実際に期待理論を活用して社員のモチベーションアップを図ることで、企業にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?

離職率の改善

社員の仕事へのモチベーションを上げることで、社員が離職する可能性を軽減することができます。離職率の上昇は、企業にとって頭の痛い問題。

期待理論をベースに自社ならではの取り組みを実施することで、社員の会社への帰属意識を高めることにつながります。

労働生産性のアップ

社員がモチベーションを高く持って仕事を行うことで、一人ひとりの労働生産性のアップが期待できます。企業の財産である「人」に注力することで、労働生産性がアップした事例は多くあります。

中でも、期待によりモチベーションを高めることで、人が仕事をする根幹に関わる部分にアプローチし、継続的に労働生産性の向上を図りましょう。

新たなアイデアが創出される

期待理論を活用することで、新たなアイデアが創出される可能性も高まります。

「報酬」を手に入れるまでのプロセスの中で、「成果」にだけフォーカスするのではなく、プロセスによっても報酬が得られるようにすることがポイント。

報酬に対してのプレッシャーを感じさせず、自由に意見を出してもらうことで画期的なアイデアが創出される可能性を高めます。

期待理論を活用した社員のモチベーションアップに取り組む企業事例

期待理論の考え方を取り入れて、従業員のモチベーションアップに取り組む企業の実例を紹介します。

株式会社フォルシア「3C制度」

データベースソリューションを提供する株式会社フォルシアでは、制度の対象となる社員全員で、毎年2月に支給される特別賞与の額を決める「3C制度」が導入されています。

次の3つの指標に基づき、自分以外の役職員氏名が書かれたシートに、ボーナスの分配額を記載し、結果を取りまとめる仕組みです。

• Contribution(会社への収益の貢献度)
• Commitment(業務に対する責任感・献身度)
• Consistency(会社への安定的関与)


「誰かが必ず気付いて見ている」という企業風土を構築し、社員間の信頼を高めています。

株式会社ベネフィット・ワン「BIPo(Benefit-one Incentive Point)」

企業・個人に福利厚生サービスを提供する株式会社ベネフィット・ワンでは、360度評価制度の一環として社内ポイント制度「BIpo」が導入されています。

会社への貢献度や業績、仕事への関わりなどインセンティブとしてポイントが付与され、好きなアイテムやサービスと交換できる仕組みです。

ポイントが付与されるチャンスが多岐に渡ることと、社員同士でポイントを贈り合えることから、社員同士の承認欲求が満たされることが特徴です。

個人ごとのプロセス評価の結果もポイント付与対象で、成功体験の積み重ねによるモチベーションアップにも一役買っています。

株式会社カヤック「スマイル給」

ITソリューションをはじめ地域プロモーションなど多彩な事業を展開する株式会社カヤックでは、社員の長所を見つけて言葉で伝える「スマイル給」制度が導入されています。

全ての社員に毎月1回、ランダムに別の社員1人を褒める仕組みで、褒めた言葉(スマイル給)は給与明細に記載された上、社内全員がスマイル給を参照できるのが特徴的です。

褒める行動を通じて相手を尊重するコミュニケーションが定着している他、他人のスマイル給から自己実現のヒントを得て業績向上につなげるという好循環が実現しています。

株式会社リクルートホールディングス「Ring」

各種メディアを通じた生活情報の提供など多彩な事業を展開する株式会社リクルートホールディングスでは、従業員が新規事業を提案・展開できる「Ring」制度が設けられています。

審査が通過した案件についてはグループ企業全体で事業開発が推進され、提案者がスタートメンバーとして直接事業に関与することも可能です。

条件を満たせば、外部のメンバーを新規事業に参画させることも認められています。「新しい価値の創造」という企業ミッションのもと、従業員一人ひとりがモチベーション向上や自己実現を継続できる環境が整っているといえます。

株式会社資生堂「カンガルースタッフ採用」

化粧品の国内シェア第1位を誇る株式会社資生堂では、ビューティーコンサルタント(美容部員)が育児時間を取得して不在にしている間、顧客対応や店舗支援業務を実施する「カンガルースタッフ」制度を採用しています。

ワークシェアリングを通じて、育児と仕事の両立を実現できる環境を整えることにより、従業員の企業への帰属意識を高めているのが特徴です。

社員への期待を「働きやすさ」として表すことで、従業員のモチベーションアップを図っている事例と言えるでしょう。

期待理論を活用した制度を導入する3つのポイント

期待理論を活用した制度は、どのようによって導入するかで有効性に違いが出るでしょう。ここでは、モチベーションアップさせる制度を取り入れる際の3つのポイントを紹介します。

社内アンケートの実施

まずは、社内アンケートを実施することで、社員がどのようなことが原因でモチベーション低下を招いているか状況を確認しましょう。

働き方なのか、給与面なのか、仕事・成果・報酬までのプロセスの中でどこにつまずきを感じているのか調査します。アンケートは匿名で実施することで、本音での回答が引き出しやすくなるでしょう。

小規模からの導入

まずは一部分の役職、職種など部分的に導入することや、手の付けやすいことから実施することをおススメします。

大々的に実施しようとなると、実施までに時間がかかる割に成果がそれほどなかった場合にインパクトが大きいです。

「期待」の活用は、実施した相手が心からモチベーションのアップにつながらなければ意味がありませんが、みなが一様にモチベーションの上がる制度を導入するのは難しいもの。まずは、少しずつ手をつけましょう。

新たなITサービスを活用

先の事例でも紹介した通り、クラウド上で社員同士が報酬を与え合うなど、現在IT技術を活用した新たなサービスが次々に登場しています。

評価者ではなく社員同士が自主的に報酬を与えるサービスは、社内のコミュニケーションの活性化につながり、企業への帰属意識も高めます。

新たな面白いITサービスを取り入れて、期待理論を活用するのも一手でしょう。

正しい人事評価で社員のモチベーションアップを後押し

企業の生産性向上と従業員のモチベーションアップを両立させるためには、人事評価の結果に基づき行動の変革を促すことが大切です。

日々の協力に対する従業員への感謝も、忘れないようにしたいものです。「ゼッタイ!評価」では、業務の成果はもちろん行動特性(コンピテンシー)に関する評価も正しい指標で実施できます。

評価制度への納得を得ることが、社員の能力を最大限発揮できる環境を保ち続ける秘訣です。

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