慶弔見舞金とは?法律や税金の取り扱い、相場、規程作成のポイント・規定例を紹介

従業員の結婚や出産、葬儀などの際に企業が支払う「慶弔見舞金」。

多くの企業で慶弔見舞金制度が設けられていますが、規定について詳しく理解しているでしょうか。慶弔見舞金の規定を作成・変更する際には、会計上の取り扱いや、相場金額について把握している必要があります。

本記事では、慶弔見舞金の種類や法律上の取り扱い、金額の相場や規定を作成する際のポイントを解説していきます。

慶弔見舞金とは?

慶弔とは、出産や結婚といった慶事と、誰かのお葬式などの弔事を指す言葉です。つまり、慶弔見舞金とは、これらの慶弔事について支払われる祝い金や見舞金のことをいいます。

企業では、従業員やその家族の慶弔事について慶弔金を支払う「慶弔見舞金制度」を設けていることがあります。慶弔見舞金の支払いには法的義務はなく、福利厚生の一環として企業の任意で支払いが行われます。

約9割の企業が慶弔見舞金制度を設けているといわれていますが、見舞金の金額や支払う条件は企業によって異なります。制度の目的は企業によって様々ですが、一般的には従業員の業務に対するモチベーションアップや離職率の低下、求職者にむけた企業のイメージアップなどが目的とされます。

支払われる見舞金には、一般的に以下のような種類があります。

  • 本人の結婚:結婚祝金
  • 本人または配偶者の出産:出産祝金
  • 本人や家族の死亡:死亡弔慰金
  • 病気やケガ:傷病見舞金
  • 本人の住居が被災:災害見舞金

慶弔見舞金の法律上の支払義務とは

慶弔見舞金について法律上の規定はないため、企業に支払い義務が課せられるものではなく、支払わなくても違法にはなりません。労働基準法第11条では、支払い義務のある金銀について、以下のように定義しています。

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

労働基準法第11条

つまり、福利厚生として支給される見舞金は「労働の対償」にはあたらないため、義務が生じないのです。

ただし、行政通達では、就業規則や労働契約の中で支給条件や具体的な金額が明記されている場合には支払い義務が発生するとされています。規定に書いてあるけど払わない、では違法になってしまいますので、注意してください。

慶弔見舞金は課税それとも非課税?社会保険料は?

基本給等の賃金は、所得税等の課税や社会保険料の控除の対象となります。では、慶弔見舞金はそれらの対象となるのでしょうか。

基本的に、慶弔見舞金は給与ではなく、「福利厚生費」として処理されます。そのことから、冠婚葬祭にかかる慶弔見舞金は所得税非課税となっており、消費税の課税対象にもなりません。また、例え賃金であったとしても、社会保険や労働保険はかからないものとされています。

ただし、慶弔見舞金が福利厚生費として認められるためには、以下3つの条件を満たしている必要があります。

  1. 就業規則等の社内規定に基づいて支給されていること
  2. 支給額が社会通念上相当の金額であること
  3. 役職によって金額に差異がないこと

条件を満たしていない場合、「臨時的な給与」とみなされる可能性がありますので、注意してください。

慶弔見舞金の相場とは

慶弔見舞金の金額は企業によって自由に設定することができますが、福利厚生費として認められるためには金額の相場を抑えておく必要があります。一般的な見舞金の種類と相場は、以下の通りです。

種類 支給事由 金額相場
結婚祝金 本人の結婚 1~3万円
出産祝金 本人または配偶者の出産 1~3万円
死亡弔慰金 本人が業務上もしくは業務外の事由により死亡、または家族が死亡 本人が業務上で死亡の場合:10万円前後 本人が業務外で死亡の場合:5万円前後 家族の死亡:1~5万円
傷病見舞金 本人が業務上のケガ、もしくは業務外のケガや病気により休業 業務上の場合:3万円前後 業務外の場合:1万円前後
災害見舞金 本人の住居が被災 2~5万円前後

以上の金額が相場とされていますが、労務行政研究所が2017年に調査した結果によると、実際の支給平均額は以下の通りとなっています。

  • 結婚祝金(初婚):36,500円
  • 本人出産祝金:18,884円
  • 本人死亡弔慰金:229,921円
  • 本人傷病見舞金:12,152円
  • 災害見舞金(全損失):152,118円

このように、種類によっては相場額と大きく差異があることがわかります。調査結果の詳細を見ると、結婚祝金の最低額は1万円、最高額が18万円、死亡弔慰金は企業が保険に未加入の場合で最低額2万円から最高額300万円までと、大きく幅があります。企業の規定や支給理由などによって金額が異なるようです。

慶弔見舞金の勘定科目とは

慶弔見舞金の会計上の取り扱いはどのようになるのでしょうか。基本的には、支払いの相手や見舞金の種類によって勘定項目を使い分けることになります。

従業員やその家族に支払った慶弔見舞金は「福利厚生費」得意先等に支払った場合は「交際費」交通事故の見舞金は損害賠償金の支払いと同様の処理になるため「雑損失」として、損金算入されます。

ただし、前述の通り、慶弔見舞金を福利厚生費として計上するには、その金額が社会通念上相当額である必要があります。相場と著しくかけ離れた金額にならないよう、規定を作る必要があります。

慶弔見舞金規程作成の4つのポイント

慶弔見舞金制度がある企業では、規定を設けることが一般的です。規定を作ることに法的義務があるわけではありませんが、トラブル防止のためにも規定を作る方がベターです。

就業規則とは別に、「慶弔見舞金規定」を作成する形式がおすすめです。就業規則を変更する場合は労働基準監督署に届け出る必要があります。そこで、就業規則にはあまり詳細な記載をせず、「慶弔見舞金規定を参照する」としておくと、変更手続きの手間を削減することができます。

慶弔見舞金規定を作成する際は、以下のポイントについて検討してください。

支給金額と条件

支給する金額は、全社員一律とするか、勤続年数や役職によって違いを設けるか決定します。年数や役職で差異をつける場合、記載内容によっては社員のモチベーションに影響を与えますので、よく検討してください。

支給範囲

支給の範囲を、全社員支給とするか、パートや嘱託の社員も含めるか記載します。法的には、正社員以外を除外しても問題はありません。

親族の範囲

例えば、従業員の子供が結婚した場合に結婚祝金を支払う企業もあります。対象家族をどこまで広げるかも、検討が必要です。

役員の支給額

役員に対してあまりに高額な支給を行った場合、相場や規定を超過する分については「役員賞与」に認定される可能性があります。役員に所得税等が課されるだけでなく、企業にも法人税が課税されることがありますので、注意してください。

慶弔見舞金の規程例

それでは、慶弔見舞金規程の記載例を紹介します。

目的

この規定が、従業員の慶弔禍福に際して支給される見舞金である旨を記載します。

手続き方法

従業員が慶弔金を受け取りたい場合の様式や届け出について記載します。所定の様式のことや、添付書類の必要性などについても記載します。

支給事由

結婚や出産、罹災など、慶弔見舞金が支給される事由と範囲を記載します。

結婚祝金

結婚祝金については、以下の3点をポイントに記載してください。

  1. 勤続年数によって金額に差異をつける場合は、区分と金額を記載
  2. 再婚も対象とするかどうか、再婚以降はどうするか
  3. 結婚届受理証明書等の添付書類が必要か

出産祝金

対象者とその金額を記載します。

死亡弔慰金

死亡弔慰金のポイントは以下の2点です。

  1. 死亡事由が業務上・業務外によって金額に差異があるか、ある場合はその金額
  2. 保険に加入している場合は、保険会社と保険金で支給する旨を記載

家族の死亡弔慰金

以下の3点について記載します。

  1. どこまでの家族を対象とするか
  2. 家族ごとの支給金額
  3. 死亡診断書や火葬許可証等の添付書類が必要か

災害見舞金

同様に、災害の種類と金額、罹災証明書等の添付書類について記載します。また、住居や家財の損失を対象とするときは、住居や家財の定義も記載しておきます。

重複支給について

例えば、同一世帯の社員が社内に2名以上いる場合、家族の死亡や災害など、同一災害によって複数社員が支給対象となる場合があります。

その際に、重複支給が認められるかどうか規定が必要です。種類ごとに、役職や年齢が上の者1名に支給するなど、対象者をしてしておきます。

改定と廃止

業績の変化などを理由として、協議の上改正や廃止することがある旨を記載します。

慶弔見舞金は相場の範囲内で充実させよう

慶弔見舞金の支払いについて法的義務はありませんが、従業員のモチベーションアップなどを目的として、約9割の企業が慶弔見舞金制度を設けています。

また、慶弔見舞金規定の作成は必須ではありませんが、トラブルを防止するためにも、可能であれば用意することが望ましいといえます。

支給条件や金額は企業の任意で決められますが、相場を大きく超える金額を設定すると課税対象となる可能性があるため、注意が必要です。社内でよく検討し、制度の充実を目指してください。

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