失業保険を受給するには? 条件や基本手当の額・手続きの流れなどを解説

失業保険について理解しているつもりでも、実際どのような制度なのか、その詳細を正しく理解している人は少ないかもしれません。

失業保険は、失業した時に安定した生活を送りながら、早期に再就職できるようにするための支援として給付されるものです。ただし、失業したすべての人が失業保険の手当を受けられるわけではありません。

この記事では、失業保険の受給条件や基本手当の額、必要書類、手続きの流れなどを詳しく解説します。企業の労務人事担当の方はもちろん、自分自身の失業保険について知っておきたい方もぜひ参考にしてください。

失業保険を受給できる条件とは?

会社を退職した際、一定の条件を満たすことで失業保険を受給できます。失業保険の正式な名称は雇用保険ですが、雇用保険の基本手当を失業保険と呼ぶケースが一般的です。今回は、雇用保険の基本手当を失業保険と表現して解説します。

なお、失業保険を受ける条件は以下です。

失業状態であること

失業状態とは「働く意思と能力があり、積極的に仕事を探しながらも、職業に就けない状態」を指します。退職後に家事に専念したり、すでに転職先が決まっていたり、独立して起業した場合などは失業状態に該当しません。

退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12か月以上あること

自己都合退職のような一般的な離職者は、「離職日からさかのぼった2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること」が条件です。賃金が支払われた基礎日数が11日以上、または労働時間80時間以上の月を1か月として計算します。

ハローワークに求職の申し込みをしていること

退職した会社から離職票を受け取り、住所地を管轄するハローワークで渡される求職票に氏名、住所、希望条件などを記入して申し込みを行います。失業状態かどうかの判断はハローワークが行います。

特定受給資格者と特定理由離職者について

特定受給資格者とは、離職理由が自己都合ではなく、倒産や解雇などの人です。

また、特定理由離職者とは、労働契約の更新を希望しながらも更新されず離職した人や、両親の介護など急な家庭の事情で離職した人などを指します。

一般的な離職者には「離職日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上」という条件がありましたが、特定受給資格者と特定理由離職者は「離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上」と条件が緩められています。

失業保険の受給期間と給付日数

失業保険は受給できる期間が決められています。その期間内で実際に受給できる給付日数も定められています。

また、待機期間と給付制限があるため、ハローワークで手続きを行えば、すぐに受給できるわけではありません。

待機期間と給付制限

ハローワークの受給資格決定日から7日間は待機期間です。待機期間は失業保険を受給できません。一般の被保険者だけでなく、特定受給資格者・特定理由離職者も待機期間は同じく7日間です。

自己都合によって会社を辞めた場合、待機期間の7日間に加え、2か月~3か月間は失業保険が支給されません。

令和2年9月30日までの給付制限は3か月でしたが、令和2年10月1日以降の退職に関しては、過去5年で2回まで、給付制限が2か月間に短縮されています。

参考:厚生労働省

「給付制限期間」が2か月に短縮されます

受給日数

失業保険の受給期間は離職日の翌日から1年間です。その期間内で離職者の退職理由や年齢などにより、失業保険を受給できる所定給付日数が異なります。

画像引用:東京ハローワーク

「求職者給付に関するQ&A」

自己都合退職の所定給付日数

自己都合退職の所定給付日数に年齢による違いはありません。算定基礎期間(退職前に失業保険の被保険者になっていた期間)に応じて、90日、120日、150日に分かれます。

会社都合退職の所定給付日数

解雇のような会社都合退職の所定給付日数は、年齢と算定基礎期間によって細かく区分されています。1年未満は90日ですが、最長期間は45才以上60才未満、算定基礎期間20年以上の場合の330日です。

失業保険基本手当の額

基本手当日額とは、失業保険で受給できる1日当たりの金額です。在職中に支払われた平均賃金(賃金日額)に一定の給付率をかけて求めます。

基本手当日額の計算

基本手当日額の計算式は以下です。

基本手当日額の計算式

  • 基本手当日額=賃金日額(離職前6ヶ月間の賃金総額÷180日)×給付率(年齢に応じて45~80%)

なお、賃金日額に臨時に支払われる賃金やボーナスなどは含まれず、給付率は賃金が低い人ほど高い割合となります。

賃金日額と基本手当日額の上限

賃金日額と基本手当日額は、必ずしも算出した金額どおりとは限りません。離職者の給料が高額だった場合は上限額を超える可能性があります。超えた場合は上限額が元になります。

画像引用:厚生労働省

雇用保険の基本手当日額が変更になります(PDF)

上記の表を見ると分かりますが、離職時の年齢ごとに区分されていて、45~59歳が最も高い上限額となっています。

また、賃金日額と基本手当日額は下限額も定められています。

画像引用:厚生労働省

雇用保険の基本手当日額が変更になります(PDF)

下限額に関しては年齢による違いはなく、共通しています。

失業保険の必要書類と流れ

失業保険を受給するために必要な書類と手続きについて解説します。

必要書類

失業保険を受給するために必要な書類は以下のとおりです。

雇用保険被保険者離職票

雇用保険被保険者離職票は離職した事実を証明する公的な書類です。会社を退職し失業状態で失業保険の受給を希望する場合、ハローワークに提出します。交付の手続きは、所属していた会社が行います。

雇用保険被保険者証

雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入した際に発行される証明証で、雇用保険の加入者であったことを証明できます。また、転職先でも雇用保険は引き継がれるため、再就職をした場合、再就職先の会社にも雇用保険被保険者証の提出が必要です。

マイナンバーカード

マイナンバーカードがない場合は通知カードと個人番号が載っている住民票が必要です。

  • 運転免許証などの本人確認書類
  • たて3cm×よこ2.5cmの証明写真2枚
  • 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
  • 本人の印鑑

参考:ハローワークインターネットサービス

雇用保険の具体的な手続き

手続きの流れ

必要書類を揃えた後、離職者が住所地を管轄するハローワークで手続きを行います。基本的に次の流れで進んでいきます。

1.ハローワークで求職の申し込みを行う

雇用保険被保険者離職票と求職申込書をハローワークに提出します。求職申込書とは、ハローワークで求職活動をする際、仕事内容や労働条件などの希望を記載して提出する書類です。受理されれば、求人情報の紹介が受けられます。なお、失業認定を受けようとする期間中に、原則2回以上の求職活動の実績が必要です。

2.待機期間後に雇用保険説明会に参加する

雇用保険説明会は、ハローワークに求職申し込みをした後、第1回目の失業認定までに受講する必要があります。ハローワークの窓口で雇用保険説明会についての説明を受け、指定された日時に雇用保険説明会に参加します。この段階で失業認定日が決定します。

3.失業認定日にハローワークで認定を受ける

失業認定日とは、失業中に仕事をしていないか、求職活動をしたか、すぐに働ける状態かなどを失業認定申告書に記載し失業状態の確認を受ける日です。認定を受ける際は、受給資格者証と失業認定申告書を提出します。

4.失業保険の支給が開始される

失業保険は4週間に1回、失業の認定を受けた日数分が指定口座に入金されます。

失業保険の再就職手当とは?

再就職手当は早期再就職の促進を目的に設けられた制度です。再就職に対する祝い金のような性質と考えられています。

失業保険の受給者の中には「失業保険を満額もらってから就職しよう」と考える人がいるかもしれません。その結果、失業状態が長引くことを防ぐため、一定の条件を満たした受給者に対して再就職手当を支給しています。

再就職手当の支給要件

再就職手当の支給要件は以下です。

再就職手当の支給要件

  • 7日間の待機期間後に就職や事業を始めたこと
  • 失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  • 1年を超えて雇用されることが確実な職業に就いたこと
  • 退職した職場の再雇用や密接に関連した職場ではないこと
  • 求職の申し込み前に内定していた就職先ではないこと
  • 待機期間から1か月間はハローワークや職業紹介事業者の紹介で就職したこと
  • 原則として雇用保険の被保険者であること
  • 再就職手当の支給決定までに離職していないこと

受給額

再就職手当の受給額は以下に分かれます。

失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上のケース

  • 基本手当日額×支給残日数×70%

失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上3分の2未満のケース

  • 基本手当日額×支給残日数×60%

手続き方法

再就職手当の手続き方法は、まずハローワークに再就職の報告を行います。次に再就職先の職場から証明書類をもらい、ハローワークで最後の失業認定を受けましょう。

再就職手当を受給できる場合はハローワークの担当者から説明を受けるので、説明に従って再就職手当支給申請書を作成して提出します。

再就職手当支給申請書が受理された約1か月後、再就職手当が指定の口座に入金されます。

失業保険受給中の健康保険と国民年金の支払い

基本的には失業保険を受給していても健康保険や国民年金の支払いは必要ですが、ケースごとに異なる部分があるので説明します。

任意継続保険

任意継続保険とは、退職前の健康保険に引き続き加入できる制度です。退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間があり、退職日から20日以内に手続きを行うことで、最長2年間加入できます。

ただし保険料は全額自己負担となり、失業中も支払い義務があります。

国民健康保険

退職後に国民健康保険に加入した場合も支払い義務は継続しますが、会社都合による解雇、リストラ、倒産などで退職した場合や、前年と比べて年収が極端に下がった場合は減免される可能性があります。

配偶者の扶養

一定の条件を満たせば配偶者が加入している健康保険に入ることができます。その場合は本人に保険料の支払い義務はありませんが、失業保険の金額が収入制限に抵触しないかどうかを確認する必要があるでしょう。

国民年金と住民税

国民年金と住民税に関しては、各自治体によって扱いが異なることが考えられるので、管轄先の市役所・区役所で相談しましょう。

失業保険の受給条件や期間など状況によって確認が必要

この記事では、失業保険に関する情報を詳しく解説しました。

失業保険を受給するには「退職前2年間に12か月以上の被保険者期間」などの条件を満たす必要があり、所定給付日数も細かく区分されています。

支給額に関しても一見して分かりづらく感じるかもしれませんが、手続き自体はハローワークの説明を受けながら進めることが可能です。

また、企業の労務人事担当者としては、失業保険に関する知識を深めることで、日常業務をスムーズに進められるでしょう。

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